連載GLOBAL INSIGHT

首位の成長率は70000%超!
2017年、アジア太平洋テック企業の成長率トップ10

細谷 元
  • Livit ライター 

シンガポール在住ライター。主にアジア、中東地域のテック動向をウォッチ。仮想通貨、ドローン、金融工学、機械学習など実践を通じて知識・スキルを吸収中。

関連タグ

世界のミレニアル世代の60%近くが住んでいるとされているアジア地域は世界平均を上回る経済成長率を実現している。

国際通貨基金によると、世界経済は2016年に3.1%、2017年に3.4%の成長率を記録した。

一方、アジア地域の経済成長率は2016年5.3%、2017年5.4%と世界経済をけん引していることが分かる。

デジタルネイティブであるミレニアル世代が多いことから、新しいプロダクトやサービスを展開するテック企業も多く、経済成長を後押しする要因になっているようだ。

デロイトが2017年末に発表したレポート「2017 Asia Pacific Technology Fast 500」では、アジア太平洋の急成長中のテック企業トップ500社がランク付けされている。

今回はこのランキング上位の企業を紹介しながら、域内で盛り上がるビジネス領域を見つけてみたい。

  • TEXT BY GEN HOSOYA
SECTION
/

トップ10のうち5社が中国企業、1位は700倍以上の成長率

「2017 Asia Pacific Technology Fast 500」は、アジア太平洋9都市のテクノロジー企業500社を調査し、その成長率でランク付けしているレポートだ。

9都市は、オーストラリア、中国(香港を含む)、インド、日本、韓国、マレーシア、ニュージーランド、シンガポール、台湾。企業規模は大小さまざまで、民間企業だけでなく、国営企業も含まれる。

対象となるセクターは、ハードウェア、ソフトウェア、情報通信、半導体、生命科学に加え、クリーンテクノロジーなど新興分野が含まれている。ランク付けは売上成長率で行われる。

まず調査結果の全体感をお伝えしたい。今回のトップ500社のうち、地域別でもっとも多かったのは中国で118社。次いで、台湾101社、オーストラリア90社、インド63社、日本46社、ニュージーランド45社、韓国43社、シンガポール3社となった。

セクター別では、ソフトウェア分野がもっとも多く、昨年の199社から今年は212社に増加。次いで多かったのはハードウェアで全体の約18%の割合となった。

売上成長率の平均は600%で昨年から27ポイント増加。トップ10の企業の平均成長率は1万1995%で2008年以来で最高となった。

トップ10は以下の企業だ。

順位 企業名 分野 成長率
1位 Whuhan Douyu Network Technology 中国 コミュニケーション 700776%
2位 Hireup オーストラリア ソフトウェア 7713%
3位 Guangzhou Fengei Network Technology 中国 ソフトウェア 7481%
4位 Qindao Yeelight Information Technology 中国 ソフトウェア 7189%
5位 WeLab Holdings 中国 ソフトウェア 7130%
6位 Beijing Duiawang Education & Technology 中国 メディア 5179%
7位 ZipMoney オーストラリア ソフトウェア 4021%
8位 ZeroLatency オーストラリア ハードウェア 3611%
9位 Egis Technology 台湾 ソフトウェア 3580%
10位 Connexion Media オーストラリア ソフトウェア 3278%

トップ10のうち5社が中国企業、4社がオーストラリア企業、1社が台湾企業となった。中間層が台頭する中国経済の勢いを物語るランキングといえるだろう。

SECTION
/

1位のDouyu、テンセントも出資する有望ストリーミング・スタートアップ

700倍以上の売上成長率を達成したWuhan Douyu Network Technologyとはどのような企業なのだろうか。

同社は、douyu.comというアマゾンのTwitchのようなライブストリーミングサイトを運営する企業。設立は2014年とまだ3年ほどのスタートアップだが、テンセントやセコイア・キャピタルからの出資を受け、評価額は10億ドル(約1000億円)の規模となっている。

中国市場を専門とする調査会社iResearchによると、中国国内のライブストリーミング人気は急速に高まっており、4億人近いアクティブユーザーがいるという。中国のライブストリーミング市場は売上ベースで30億ドル(約3000億円)、年間200%近い伸びを見せる急成長市場といわれている。競合する企業は200社以上。そのなかで急成長を遂げるWuhan Douyu Network Technologyへの注目度は非常に高い。

ライブストリーミングサイト「douyu.com」

以下、2〜10位の企業概要を簡単に紹介する。

2位のHireupは、2015年に設立されたオーストラリアのスタートアップ。身体障害者とケアワーカーをつなぐプラットフォームを提供している。同社ウェブサイトによると、これまでに4700人以上の支援を行い、支援時間は37万時間に上るという。オーストラリアには46万人の身体障害者がいるとされており、今後も利用者は拡大していく見込みだ。

3位のGuangzhou Fengei Network Technologyは、中国だけでなく東南アジア市場をカバーするソフトウェア/ゲーム開発会社。

4位のQindao Yeelight Information Technologyは2012年設立の中国スタートアップ。モバイル、ウェアラブル、AIスピーカーに連動する「スマートライト」を開発している。

5位のWeLab Holdingsはモバイルレンディングサービスを開発・提供する香港拠点のフィンテック企業。

6位のBeijing Duiawang Education & Technologyはオンライン学習プラットフォームを通じて、会計、公務員、ITスキル、外国語などさまざまな分野の学習コンテンツを提供している。

7位のZipMoneyは、オーストラリア・シドニー拠点のフィンテック企業。同社の支払いシステムは、クレジットカードやペイパルではない新しい形の支払いサービスとして注目を浴びている。

8位のZero Latencyは、バーチャルリアリティーゲーム用の動ける空間とそのためのシステムを開発するスタートアップ。2015年に北メルボルンに世界発のバーチャルリアリティーゲーム連動施設をオープンし、ゲーマーや投資家の関心を集めた。

9位のEgis Technologyは指紋センサーデバイスを開発する台北拠点のバイオメトリック・セキュリティー企業。同社は、サムスンのスマートフォン「ギャラクシーシリーズ」の指紋センサーサプライヤーである可能性が高いと報じられている。

10位のConnexion Mediaは自動車やトラックをクラウドで一元管理するスマートカーソフトウェアを開発するオーストラリアの企業。米自動車大手ゼネラル・モーターズの車両管理システム「Commercial Link」の開発元。

これら10社を見ていると、モバイルゲーム、IoT、フィンテックなどその活況が広く知られたビジネス領域だけでなく、障害者向けサービスやVRゲーム施設などこれまであまり話題にならなかったビジネス領域の可能性を知ることができる。

Zero Latencyが提供するVRゲームシステム(Zero Latencyウェブサイトより

また、今回のランキングトップ10の半数が中国企業だったことから中国市場の勢いを見てとることができるだろう。

人口13億人以上、デジタル化の進展、中間層・ミレニアル世代の台頭などさまざまな要因が絡み合い、国内の消費者市場はかつてないスピードで大きく変化している。今回ランキング1位となったWuhan Douyu Network Technologyは7万%以上の成長率を達成したが、今後もこうした企業が登場してくるに違いない。

[トップ]Photo by Florian Wehde on Unsplash

こちらの記事は2018年02月22日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

次の記事

記事を共有する
記事をいいねする

執筆

細谷 元

シンガポール在住ライター。主にアジア、中東地域のテック動向をウォッチ。仮想通貨、ドローン、金融工学、機械学習など実践を通じて知識・スキルを吸収中。

おすすめの関連記事

会員登録/ログインすると
以下の機能を利用することが可能です。

新規会員登録/ログイン