連載0→1創世記

ダズルが国内VR業界で「ちょっと未来」を創る──新興市場でも“地に足付いた”ビジネスモデルの創り方

インタビュイー
出口 雅也

慶應義塾大学卒業後、2010年4月に株式会社オープンドアへ入社。 約1年間、自社SNS向けブラウザソーシャルゲーム立ち上げに携わり、ソーシャルゲーム立ち上げの基礎を学んだ。その後Klab株式会社にてiOS、Android、Mobage向けのRPGゲームを約2年担当し、ディレクターを経てプロデューサーに。
2014年7月より、株式会社バンク・オブ・イノベーションにて、既存4ラインを統括するSAP事業部の部長を務め、100人規模の部署マネジメントを経験。
その後株式会社ダズルにて取締役COOとして事業、広報、採用を担当。
モバイルゲーム業界の企画職出身で、現在はVR事業に注力。

川上 紗耶

早稲田大学卒業後、新卒で株式会社キャリアデザインセンターに入社。
Webディレクターとして、女性向け転職サイトの企画・運用に携わり、サイト運用に関わる一連の業務(データ分析・企画立案・Webデザイン・コーディング等)を担当。
その他メルマガ作成・配信やWebマガジン記事執筆(のお手伝い)など、幅広く業務に携わる。

その後、株式会社Cygamesにて人事を担当。
中途・新卒採用共に担当し、その他社内外のイベント企画・運営など、管理部として幅広く組織作りに注力。
現在、株式会社ダズルで採用・広報を担当。

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今はまだ「ゲームやエンターテインメント領域のもの」という印象が強いVR。

そのためVRサービスの提供を行っているダズルの「進化するテクノロジーで『ちょっと未来』を創りつづける」というミッションを聞いても、「『ちょっと未来』とは?」とピンと来ない人も多いだろう。

しかし、「VRは次なるプラットフォームだ」と語る同社。彼らがイメージする未来とは?

  • TEXT BY MISA HARADA
  • PHOTO BY YUTA KOMA
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新しい事業だからこそロードマップは堅実に

ダズルは、ゲームアプリ事業を始めとしたスマートフォン向けサービスを開発・実現する会社として2011年に設立された。

2015年よりVR事業に注力し始めて力を伸ばしている。同社で働く出口も川上も、ゲーム好きで、ゲーム業界に身を置いていたことが共通点だ。

取締役COOである出口は大学時代の4年間、給料の高さに惹かれてキー局でアルバイトをしていた。しかし、大企業の年功序列感を肌身に感じたことにより、自身の就職先としては外資系やベンチャーに興味を持つようになる。

「若くしてスキルアップするためには成長産業に身を置くことが大事だ」という話を耳にしたこともあり、ちょうどスマートフォンが普及してきたタイミングだったため、モバイルコンテンツに目を付けてオープンドアに入社した。

その後、縁あって転職したKLabでは、結果を出したことで、ゲーム作りだけでなくマネジメント経験も積み、50名ほどのチームを運営する立場にもなった。

その後にもバンク・オブ・イノベーションで事業部長を担当。マネジメント人数は100人にまで増えた。

そのタイミングで、接点のあったダズル代表取締役CEOである山田泰央から、今まで受託中心でアプリを開発していたのを自社サービスに切り替えていくという話を聞き、ダズルへのジョインを決意。

当時は社員20名ほどの規模だったため(現在は約60名)、そのぶん自身が持てる裁量権も大きいことに魅力を感じたことが決め手だった。

出口が「ポジションが上がりきったら転職」ということを繰り返しているのは、“起業に向けて、いかに上位マネジメントを経験しておくか”という考えでキャリア選択をしているためだ。

一方、採用・広報チーフである川上は、小さな頃からモノづくりが好きだった。

中学生時代には自分でホームページを運営したり、高校生になるとバンド活動に加え音楽イベントのオーガナイズも始めたりするなど、何かをクリエイトすることへの関心が強まっていく。

1社目では転職サイトの運営会社でウェブディレクターを経験し、2社目はゲーム会社で人事を担当。「毎月約30人入社していた」と話す通り、当時はソーシャルゲーム全盛期だったため、その盛り上がりを間近で感じることができた。

しかしあるとき、ウェブ系のモノづくりと、バックオフィスの仕事、どちらもそれなりにこなせたからこそ、「自分の強みは何だろう」と悩み始める。

再び転職することを決めたとき、絶対ブレないようにしようと決めたのは、「自分がわくわくできる業界で働きたい」ということ。そのすべての感情に気持ちよくハマったのがダズルでのバックオフィス業務だった。

エントリーからわずか1カ月足らずで入社に至り、同社史上最速でジョインが決まった。

川上は、ダズルに魅力を感じた理由を「ベンチャーなのに地に足付いているから」と語る。

川上前職でVRに触れたとき、これが今後スタンダードになるのかなと、すごくわくわくしました。とはいえ新しいものをテーマにした事業を始めるのは、リスキーなことでもありますよね。

でもダズルは、スマートフォンアプリの開発事業を7年間やってきた事業基盤がある上でVR事業に投資して、さらに『VR事業の主軸を担うのはコンテンツではなく分析ツールだ』としっかり事業計画も立てている。

VRという新しいものを扱っていくにしても、何でもいいからやりますっていうんじゃなくて、きちんとコースを定めているのが好印象でした。

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草創期のスマホも持てたものじゃなかった

“VR元年”と呼ばれる2016年より少し早く、ダズルでは2015年にVR事業をスタートさせた。

スマホ向けゲームアプリ業界が大いに盛り上がっていた時期のことだが、そこで「これからもゲームアプリをどんどん作っていこう」というのではなく、新たにVRを始めようとなった理由を出口は、「盛り上がっているということは既に“成熟期”に入っているから」と説明する。

出口もう勝者が決まっている戦いに後追いで入っていって、そこで勝ち続けられるかというと絶対そうじゃない。代表の山田は、たまたま2013年頃にオキュラスを体験していたので、『次はVRだ』と直感していた。

2015年はまだ一部の人しかVRには目を付けていなかったんですが、山田の直感に皆が賛同した形で、ダズルもVRに参入していくことになりました。

ダズルでは、「進化するテクノロジーで『ちょっと未来』を創りつづける」をミッションに掲げている。

VRに対して、「ゲームなどのエンターテインメント領域のもの」というイメージを抱いている人はまだ多いだろう。しかし、すでにビジネス領域にもVRは進出してきているのだ。

たとえば車の整備などの職業訓練や、アルバイトの研修。今までわざわざ地方から中央に人を招集して行っていたトレーニング内容を、VRによって簡単に伝えることができる。

さらに今後、一般ユーザーにまでデバイスが普及してきたら、ウェブブラウジングやECサイトでのショッピングだってVRを使ってすることに変わるかもしれない。

出口は、ノートパソコンを指して、「将来はこれの代わりになっていくものだと思っています」とニヤリと笑う。

出口今は伝達ツールとして、動画が人気じゃないですか。それは、視覚も満たされて情報量が文字よりずっと多いからです。となると、360度カバーできて情報量が一層多くなるVRが次なるプラットフォームとして注目されるようになるのは自然な流れと言えましょう。

川上世に今出ているVRデバイスは、重いし有線だしで不便に感じられるものです。でも、最初期のスマホだって持てたものじゃありませんでした。今後VRデバイスもスタンドアロン型が出てきて、軽量化も進んでいって、安価になって広く普及していくと考えています。

そんなダズルが今年8月に正式ローンチしたのが、VR プロダクトの分析・運用サポートサービス「アクセシブル(AccessiVR)」だ。

AccessiVR

設定したKPIやユーザーの行動データを取得することで、ユーザーのVR体験を可視化し、サービスの改善・目標達成をサポートするためのVRグロースハックツールである。

ユーザーが楽しんでいるかを解析し、高速で改善し続けることが、良いサービスを生む。そしてそれがVR業界の盛り上がりにつながっていく。フロントランナーとして、業界自体を盛り上げることにも貢献しないといけない──。

「アクセシブル」には、ソーシャルゲーム業界の高速PDCAを体験したメンバーが集うダズルの、そんな意気込みが込められている。

もちろん「アクセシブル」のローンチには、ビジネス的な戦略もある。ダズル内でもVRアプリの自社サービス開発を行ってはいるが、「VRでどの分野が盛り上がったとしても分析は必要になっていく」と予測した結果、ニーズの必然性という意味で解析サービスである「アクセシブル」をリリースした。

出口は、「ちょっと小賢しい発想ですけどね」と頭をかいていたが、この辺りが川上の言う、ダズルの「ベンチャーなのに地に足付いている」ところなのだろう。

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勝ち馬に乗りたいのか、乗った馬を勝たせたいのか?

ダズル代表取締役CEOの山田は、もともとフリーのエンジニア。だからこそ同社では、クリエイターが働きやすい環境を重視している。

完全フレックスタイム制を導入しているのに加えて、オフィスは「出社ではなく帰宅のように」をコンセプトに、リラックスできる雰囲気作りにこだわった。

それぞれのライフスタイルを重視できる企業カルチャーだからこそ、家庭持ちのスタッフも安心して働くことができる。

そんな山田の人柄を出口と川上は、「とにかく器が大きく、いい意味で社長らしくない」と評する。

自分ができないことは素直にできないと伝えて、周囲を信じているからこそ好きにやらせてくれる。ワンマンなところは一切ない。「社員を絶対に“社員”と呼ばず、必ず“メンバー”と呼ぶようにしている」というこだわりも、山田のメンバーを想う温かい人柄を表すエピソードだ。

川上一般的にリーダーは『俺についてこい』というタイプと、『俺1人じゃできないから力を貸してくれ』というタイプと2種類に分かれると言いますが、山田は完全に後者です。

メンバー1人1人のことを仲間だと捉えて会社作りをしている人なんだと、すごく感じています。

最後に、社会人として一介のプレイヤーから成果を上げ、100人のマネジメントを経験、そして現在では取締役という、「社会人のフルコース」を経験した出口は、「若くしてリーダーになりたい人こそ、VRのような新しい領域に身をおくべき」と、若者にメッセージを残した。

出口スマホゲーム業界を始めとして、人気が出てきた業界には人が多すぎて、なんでもかんでも『あれは俺が作ったんだよ』って言えちゃう、いわゆる“あれ俺詐欺”が横行しているんです(笑)。

でもVR業界は、まだ参入者がほとんどいません。そのため、たとえば5年後にVR市場が今のスマホゲーム市場みたいになっていたとき、『自分はVR業界に5年いました』と言えたら、それは大変な希少性、大変な人材価値になるのは当然です。

そういう“ロジカルな逆張り”のようなキャリアの考え方ができる人は、今のダズルにぴったりだと思いますよ。

現時点での勝ち馬に乗りたいのか、乗った馬を勝たせたいのか──。あなたはどちらのタイプだろうか。

こちらの記事は2017年12月30日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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小間 優太

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