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「節約家」で「日本好き」が多い2.7億人。
人口の半分に迫る
インドネシアのミレニアル世代

細谷 元
  • Livit ライター 

シンガポール在住ライター。主にアジア、中東地域のテック動向をウォッチ。仮想通貨、ドローン、金融工学、機械学習など実践を通じて知識・スキルを吸収中。

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2050年には中国、インド、米国に次ぐ4番目の経済大国になると見込まれてる国をご存知だろうか。

現在、約2億7000万人の人口を誇る「インドネシア」だ(PwCレポート)。若年層が多く、ミレニアル世代が中心となって経済をけん引していくと考えられている。

2020年に100万人に達すると見込まれている「ムスリム訪日観光客」の大半を占めるのもインドネシアからの観光客。

今回はインドネシアのミレニアル世代の特徴に迫ってみたい。実は「日本との深い関連」もあるのだ──。

  • TEXT BY GEN HOSOYA
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インドネシア・ミレニアル世代は子どもの頃から「節約家」?

インドネシアのミレニアル世代の特徴の1つに「節約志向」であることが挙げられる。世界のミレニアル世代に共通する特徴でもあるが、その理由は国ごとにさまざまだろう。インドネシアでは、なぜミレニアル世代が節約志向になったのだろうか。

ゴールドマン・サックスは、インドネシアの2017年のGDP成長率を5.2%と予想。しかし、政府支出の割合が大きく、個人消費の伸びは小さいという。インドネシアのジョコ・ウィドド大統領が2014年に就任する際掲げていた目標のGDP成長率7%にはまだ到達できていない。

この状況について、インドネシア地元銀行のエコノミストはブルームバーグの取材で、購買力が問題ではなく、経済信頼感が弱いためであると指摘。お金がないのではなく、支出したくないというのだ。これは特に中間層以上で顕著という。

インドネシアのミレニアル世代ライター、アルチア・ティバニー氏がVICE誌でこの状況について考察している。

アルチア氏によると、インドネシアのミレニアル世代の人々は、子どもの頃から親に「節約」するように厳しく教え込まれるという。子ども向けの節約をテーマにした歌もあるほどだ。

Menabung (Saskia & Geofanny dan Titiek Puspa)

親の世代(X世代)がここまで節約を教え込むのは、1997年のアジア通貨危機や2008年の世界金融危機など、幾度となく経済・社会の混乱を目の当たりにしたためと考えられる。節約志向のミレニアル世代の間では、自動車や不動産の購入率も少ないという。

自動車に関しては、ジャカルタなどの大都市では交通渋滞がひどく、自家用車のメリットがないことも購入を遠ざける要因になってる。ミレニアル世代は、バイク配車アプリ「ojek」や配車アプリ「Grab」などを多用しているようだ。

不動産に関しては、インドネシア国内の不動産価格が高騰しており、購入が困難であるためという。

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日本文化の影響を強く受けるインドネシア・ミレニアル世代

このように節約志向が強い一方で、他の国のミレニアル世代同様、旅行などを通じた多様な文化体験への強いあこがれを持っている。インドネシアからの訪日観光客増加も、そうした特徴の表れとして見てとれるだろう。

日本への観光客が多い理由の1つは、インドネシア国内で日本の文化や食事を体験する機会が豊富であることが挙げられる。

インドネシアのライター、ホウリ・モハメド氏はMedium誌のなかでインドネシア市場の特徴の1つに「Japanese-ness(ジャパニーズ・ネス)」があることを指摘。日常のなかで日本を意識することが多く、それがコンシューマーに影響を与えているというのだ。

日本の影響が強い理由の1つに、多くの日本企業がインドネシアに進出していることが挙げられる。

1967年から2007年までのインドネシアへの海外直接投資(FDI)額は日本が最大であった。また、2007年のインドネシアへのFDI全体に占める日本からの投資の割合は11.5%だったが、2016年には18.5%に増加している。

2008年に日本とインドネシアの間で締結された経済連携協定(EPA)の影響も大きいようだ。2012年時点のインドネシア進出日系企業数は約1400社だったが、2016年まで順調に伸び1810社に拡大している。

モハメド氏は、2008年ごろまでは日本文化に関連するプロダクトといえばマンガかアニメであったが、それ以降は「ENNICHISAI」や「JAK-JAPAN MATSURI」など日本文化を体験できるイベントが多くなっていると述べている。

「ENNICHISAI」の様子(YouTube Ennichisai Blok M チャンネルより)

ENNICHISAIは2010年から始まった日本の食と文化を体験できるイベント。神輿やエイサーなどの伝統文化のほか、コスプレなどのポップカルチャーのプログラムが催される。

2015年から25万人が集まる大イベントとなり、2017年には30万人が来場、「世界最大規模の日本祭り」とも呼ばれるようになっている。来場者数の多さから日本への関心の高さを伺うことができる。

JAK-JAPAN MATSURIは約3万人が集まるイベント。日本の伝統音楽からJKT48など地元人気ミュージシャンのパフォーマンスを楽しむことができる。

日本企業の進出と文化イベントの普及により、インドネシアで日本を感じる機会が増え、その先の体験として日本への観光を選ぶミレニアル世代が多いと推測できる。

実際ジャカルタポストによると、インドネシアのミレニアル世代は上の世代より海外旅行に行く傾向が強く、旅行では「本物」や「新しい体験」を求めていることが調査で明らかになったという。

インドネシアのミレニアル世代は2027年までに人口の50%を占めると見込まれる層。今後日本文化を知り、日本にやってくるインドネシア・ミレニアル世代はさらに増えていくはず。

インドネシアと日本のミレニアル世代がともに影響を与え合うことで、新しいカルチャーが醸成されることも十分にあり得るだろう。今後の展開に注目していきたい。

[トップ]Photo by Robert Collins on Unsplash

こちらの記事は2018年01月25日に公開しており、
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執筆

細谷 元

シンガポール在住ライター。主にアジア、中東地域のテック動向をウォッチ。仮想通貨、ドローン、金融工学、機械学習など実践を通じて知識・スキルを吸収中。

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