連載GLOBAL INSIGHT

オリンピックも興味なし。
世界で若者がスポーツ観戦離れ、
復活のカギは?

細谷 元
  • Livit ライター 

シンガポール在住ライター。主にアジア、中東地域のテック動向をウォッチ。仮想通貨、ドローン、金融工学、機械学習など実践を通じて知識・スキルを吸収中。

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2018年平昌オリンピックが閉幕したが、6月にはFIFAワールドカップ・ロシア大会、2019年には世界陸上ドーハ大会、2020年には東京オリンピックと、大型スポーツイベントが目白押しとなっている。

こうしたスポーツ大会主催者たちがいま頭を悩ますのが「ミレニアル世代視聴者」の獲得だ。

日本国内でも「テレビ離れ」が進みプロ野球などスポーツ番組の視聴者が減少しているといわれているが、この傾向は海外のミレニアル世代においても顕著になっており、ミレニアル世代視聴者の獲得に向けてメディア企業やスポーツ団体はさまざまな施策を打っている。

今回はミレニアル世代のテレビ・スポーツ観戦離れの現状をデータで追うとともに、企業・スポーツ団体がどのような施策でミレニアル世代流出を防ごうとしているのか、最新の取り組み事例を紹介していきたい。

  • TEXT BY GEN HOSOYA
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データが示すミレニアル世代のテレビ・スポーツ観戦離れ

ミレニアル世代のテレビ離れはどれほど進んでいるか。

コンサルティング大手のL.E.Kコンサルティングが米国市場を対象にしたメディア消費に関する調査では、ミレニアル世代(18〜34歳)とその他の世代(35歳以上)で大きな違いがあることが明らかになった。

メディアコンテンツの消費時間割合は、35歳以上のグループではテレビが32%と最大、次いでインターネット21%、紙媒体11%、OTT(Huluなど)9%、ラジオ9%、音楽7%、ゲーム7%、映画4%という結果になった。

一方、ミレニアル世代では、OTTが20%で最大となり、次いでインターネット18%、テレビ13%、音楽13%、ゲーム12%、映画9%、紙媒体8%、ラジオ7%となったのだ。

35歳以上のグループと比較して、ミレニアル世代はテレビを視聴する代わりにNetflixやHuluなどのOTTに時間を費やしていることが分かる。

インターネットの普及でテレビ以外のメディア視聴手段が発展したことが背景にあると思われるが、スポーツコンテンツの多様化も伝統的なテレビ・スポーツ観戦離れを加速させているようだ。

L.E.Kコンサルティングのこの調査では、eスポーツと伝統的なスポーツの好みについても聞き取りを行っている。この調査項目では、ミレニアル世代のeスポーツを好む割合が35歳以上のグループに比べ多いことが明らかになっているのだ。

お気に入りの伝統的スポーツとeスポーツを比べた場合、どちらを好むのかという質問に対してミレニアル世代の27%が「eスポーツを大いに好む」と回答。35歳以上のグループで同じ回答は13%にとどまった。

eスポーツ|Photo by Riley McCullough on Unsplash

一方「伝統的なスポーツを多いに好む」と回答した割合は、35歳以上のグループで45%だったのに対して、ミレニアル世代では27%となった。

eスポーツがミレニアル世代においてスポーツ観戦と同様に楽しめるメディアコンテンツになっていることが分かる。実際、eスポーツの観戦者数はこの数年でうなぎ登り状態。世界中の観戦者数は、2017年に前年比20%増の3億8500万人に達したという調査(Newzoo調べ)もあるほどだ。この傾向は今後も続き、2020年には5億8900万人まで増加する見込みもある。

テレビ離れだけでなく、スポーツ観戦離れはスタジアムでの観戦数にも影響を及ぼしている。

ニューヨーク・ヤンキース・スタジアムでは観戦者数が激減し、チケット販売額が2009年比で1億6600万ドル(約170億ドル)も減ったと報じられている。スタジアムは、バーや子ども向けの遊具エリアを新設し、観客数の減少に歯止めをかけようとしている。

ミレニアル世代のテレビ・スポーツ観戦離れは、オリンピックでも顕著になっている。

ニールセンの調査によると、米国における夏季オリンピック視聴者の年齢中央値は、2008年北京オリンピックでは46.9歳だったが、2012年のロンドン・オリンピックで48.2歳に増加。冬季オリンピックでも同様だ。ホライズン・メディアの調査では、2002年のソルトレイクシティ・オリンピックでの米国視聴者の年齢中央値は48歳だったが、2014年のソチ・オリンピックでは55歳に増加していたのだ。

直近の2016年リオデジャネイロ・オリンピックでは、ミレニアル世代のテレビ視聴数がロンドン・オリンピック時に比べ30%近く下落したともいわれている。

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ミレニアル世代獲得、「モバイル」と「ソーシャル」がカギとなるか?

ミレニアル世代のテレビ・スポーツ観戦離れを防ぐカギは「モバイル」と「ソーシャル」にあるのかもしれない。

グーグルの米国市場を対象にした調査によると、スポーツ観戦者の80%がテレビ視聴しながら、スマートフォンやタブレットでもほかのスポーツ番組や選手の過去動画などを視聴していることが明らかになったのだ。また30%がテレビではなく、スマホやタブレットでスポーツのライブ中継を視聴していることも分かった。

さらに、マッキンゼーがニールセンのデータを分析したところによると、NFLやNBAなど米国のスポーツ番組の視聴率は減少しているものの、観戦者数自体は若干増えていることが分かった。視聴者はさまざまなスポーツ番組を短時間で行ったり来たりしていることが視聴率減少の主な要因と結論付けている。

テレビ番組だけでも非常に多くのスポーツ番組や専門チャンネルが放送されているが、YouTubeなどの動画投稿サイトでも数え切れない動画がアップロードされており、視聴者はコンテンツにおいても、視聴手段においても多様な選択肢を得たということがいえるだろう。

多様な選択肢を得た視聴者、特にデジタルネイティブであるミレニアル世代にアピールするにはソーシャルメディアを介したアプローチが必要になってくるはずだ。

米三大ネットワークの1つNBCは、リオデジャネイロ・オリンピック時に多大な予算をソーシャルメディア上のインフルエンサー・マーケティングに投じたといわれている。YouTube、フェイスブック、インスタグラム、ツイッターなどさまざまなソーシャルメディアを介して、NBCが関与するスポーツチャンネルへの流入を促した。また出資先のネットメディアBuzzFeedやスナップチャットを活用したプロモーションも実施したようだ。

ただ、上記で述べたようにリオデジャネイロ・オリンピックでは視聴率が大幅に減少しており、ミレニアル世代はオリンピック自体に興味・関心を失っている可能性がある。

ソーシャルメディアの重要性はプロスポーツリーグや各チームも認識しており、ソーシャルメディア上の活動を活発化させている。

スポーツビジネス・ジャーナルが実施した調査(2016年6月〜2017年6月)では、ソーシャルメディア上でもっともインタラクションとコンテンツ視聴数が多かったのはNBAで、1年間の動画再生回数は76億回以上に達したという。NBAはコンテンツシェア数でも1位となり、ソーシャルメディアのコンテンツは計2600万回以上シェアされたという。NBAだけでなく、NFLやワールドサーフリーグなどもソーシャルメディア上の取り組みが活発だ。

NBAツイッターアカウント

このほかには360度動画やVR・ARを活用したプロモーションを試験的に導入する事例も出てきている(テニス全仏オープンなど)。

テレビによるスポーツ観戦が減っているのは確かなのかもしれないが、ミレニアル世代は健康意識が高くスポーツそのものへの関心は低くないはずである。eスポーツといった新しい分野を取り入れながら、モバイルやソーシャル向けのコンテンツを増やしていくことで、スポーツ市場を活性化することができるのかもしれない。

参考:L.E.K. Sports Survey — Digital Engagement Part One: Sports and the “Millennial Problem”We are wrong about millennial sports fansSocial study: How leagues, teams stack u|Sports Business JOURNAL

こちらの記事は2018年03月01日に公開しており、
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細谷 元

シンガポール在住ライター。主にアジア、中東地域のテック動向をウォッチ。仮想通貨、ドローン、金融工学、機械学習など実践を通じて知識・スキルを吸収中。

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