EVENTREPORT
正田 圭 鳥居 佑輝 本間 真彦 稲垣 佑介 西川 ジョニー 雄介
18-04-25-Wed

M&Aは問合せから始まる?
売却したい起業家は何をすべきか

TEXT BY FastGrow Editorial
メディアに公開されないベンチャーM&Aのリアル
#1

FacebookやGoogle、Amazonなどの海外超巨大企業を見ても分かる通り、
大きく成長しようとする起業家や経営者にとって必要な知識となるM&A。

普段ニュースメディアには露出されていない「M&Aの内情」に、買い手、売り手、投資家という、
3者のそれぞれの立場から迫ったFastGrow特別イベントが18年2月10日(土)に開催された。

イベントレポート第1弾では
「買収交渉はどのようにスタートするか?」「売るべき会社の見極め方」
「売却を意識した創業時にやっておくべきこと」について語り合った。

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M&A関係者4名が裏側を語る

ジョニー今日は4名の方に登壇いただきまして、テック系のニュースメディアではあまり報道されないような、ディープなM&Aの話を中心に進めていきたいと思っております。まずは4名の皆様の自己紹介からお願いします。

正田正田と申します。私は中学生の時に起業したんですけども、その時はSEOの会社を立ち上げまして、とんとん拍子で売却できました。そこでM&Aって面白いよねということで自分で買ったり、売ったりするというのをメインの仕事にするようになりました。

今はTIGALA株式会社というところでベンチャー企業をあたらしく去年創業し、現在はM&A Techというような領域に取り組もうと思っています。

M&Aに役立つような業績予測をAIで自動化するようなシステムであったり、仮想通貨を使ったようないわゆるブロックチェーン技術でリーズナブルな企業売買取引ができる世界の実現を目指しています。

鳥居ユニバーサルバンクの鳥居と申します。私は2012年に立命館アジア太平洋大学を卒業して、新卒でEast VenturesというVCに入社しました。そこで3年間ほどそのファンドの組成業務や投資業務、BASE株式会社の立ち上げに携わってまいりました。

その後3年前の2015年にユニバーサルバンクを創業して、エンジェル投資家と起業家を繋ぐ株式投資型のクラウドファンディング事業立ち上げようとしております。

同時並行でいろいろと事業立ち上げてきたり、企業や事業を譲受頂き創業者と一緒に育てて参りました。。そのうちの1つがPedia Newsというテック系メディアで、TechCrunchやThe Bridgeのようなメディアに近い領域で1年間運営していましたが、昨年の12月にTIGALAさんに事業譲渡させていただいた次第です。

稲垣クルーズの稲垣です。私は小さい頃からプログラミングが趣味でして、そこから好きが講じて大学在籍中にをITベンチャーを起業しています。分野としては携帯電話のiモード向けビジネスという領域で、数年間自分でオーナー社長としてやっていましたが、あるタイミングでその会社を売却しました。その次にソーシャルゲーム事業の会社をやり始めて、その会社をクルーズに売却したタイミングでクルーズにジョインしています。

クルーズでは5年となりますが、1年目はCTOのような仕事をしていましたが、2年目以降現在までCFOとして色々やっているというような感じです。CFOとしては具体的には、CROOZ VENTURESというCVCを通じてベンチャー企業に対する純投資もしていますし、M&Aという意味では有名な例ではCandle社の買収、その他売却という部分だと、クルーズのメイン事業であったゲーム事業をマイネットさんに譲渡したプロジェクトなど主導してきました。

本間インキュベイトファンド代表パートナーの本間といいます。インキュベイトファンドは国内でシードステージに称するITベンチャーファンドでして、おおよそ国内200社、東南アジア20社、インド7社ほど投資をしています。M&Aに関しては年に数件が投資先企業でも発生しているので、共有できる範囲で事例をお話したいと思っております。

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買収検討はどのようにはじまるのか?

ジョニーでは早速、買収交渉がスタートするところから買収後に起業家や買収した企業の中で何が起こるのか?というM&Aの時系列にそって話を進めたいと思います。

まずは鳥居さんから、昨年12月のPedia News事業譲渡のお話がどのように始まったのかというところをお聞きかせください。

鳥居実はですね正田さんと初めて会ったのは昨年の10月ぐらいなんです。3回目くらいに会ったときにはもう売却の話はまとまっていました。初めてお会いしてから1.5か月後には売却していたということですね。「正田さんはこのぐらいのスピード感で動くんだな」とびっくりしました。

正田最初会ったときは売却の話はなかったんですが、僕はPedia news買いたいなと思っていたので、「売ってくれないか?」という話を持ち掛けて、具体的な金額の話をしていくと「それならいいかもしれない」という話になり、そこからは早かったですね。

ジョニー買収の提示金額はどのように決めたのですか?

正田僕自身M&Aのアドバイザリーを仕事にしているので適性価格を出したつもりなんですけど、鳥居さんが頑としてそれを譲らなかったんですよ(笑)。提示した5倍くらいの値段を言われて、「それはちょっと無理だ」という話になり、僕が考えていた3倍くらいの値段で買収しました。

その事業は世界に1つしかないモノなので、起業家や経営チームが「その金額では売らない」と言ったら買えないですしね。

ジョニー本間さんも創業したポケラボ社をグリーに売却されたと思いますが、どのようにお話が始まったんでしょうか?

本間調達しようと動いていたときに売却も選択肢に入ってきた、という流れです。

ポケラボの交渉の始まりは現在メルペイ社長の青柳さんが、グリーで当時アメリカで国際担当かつ買収担当をされておりまして、スマートフォンベースの良いゲーム会社を探しているという話を聞いたのがきっかけです。、当時のアメリカにいたポケラボの株主経由で青柳さんと会う約束となり、最終的に、株主と経営陣と買い手で、様々な角度で今後のことを議論した結果、その週に買収に応じることが決まりました。

会社側は、最初から売るという気持ちは全くありませんでしたね。調達過程の選択肢の中に「事業会社と一緒になる」というのが弊社とって意味があるな、という判断になり、最後まで悩みに悩んで決まったという形です。

稲垣私たちもたとえばCandle社のケースで言うと自ら会いに行きました。

当時クルーズとしてメディアだったりSEOだったりの領域の強化を考えていまして、その時によく名前を聞くCandleっていう会社あるよね、という話が出て、最初はM&Aはまったく考えていなかったんです。「何か一緒にできないか?」という話になったタイミングで当社役員が代表の金さんと実際話してみると、相当優秀な22歳だなあ、と思って、「一緒にやろうよ」と。そしたら最終的に形として買収するという話になりました。

なんだかんだこちらから会いに行くことが多いです。

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売却を検討するならこれをやっとけ

ジョニー本日の参加者の中にも会社経営をされていて、売却も検討されている方もいるようです。売却を検討したときにこういうアクションしたほうがいいよ、というアドバイスはありますか?

鳥居私はまず売却先候補になりそうな大企業をリストアップして、オープンイノベーション担当である数名に話を聞きに行きました。

正田リストアップしてその問い合わせフォームから直接メールを送るのは僕もおすすめしてます。買収候補を見つけるのは上場企業もファンドも苦労していますから。

稲垣クルーズにも問い合わせメールはきますね。どんな形であれ必ず僕のところに連絡は入るので、話は進むと思います。

僕も2社目をクルーズに売却をしたときにはFacebookで代表の小渕に連絡しました。そしたら次の日には会っていただいて、ものの数日で大筋合意っていう感じです。

正田さんが仰ったとおり、買収候補を見つけるのは大変なので、連絡をいただくのは大変嬉しいです。

ジョニーITベンチャー界隈の場合、事業会社同士が直接交渉することも多いと思いますが、M&Aアドバイザリーを専門にする企業に手伝ってもらうメリットにはどんなものがあるでしょうか?

正田複数社と同時に話していると経営者の方が疲れてしまうんですよね。

当社ようなアドバイザリーを使ってもらうことで、経営者の皆さんに負担なく、高値で買ってくれる会社をとことん探せます。あとはバリエーションが3倍になる、なんてことは実現できなくても、うまく節税できるスキームをアドバイスすれば残るお金が数億円違ってきたりしますし。

稲垣いろんな買い手と交渉するのが疲れるのはその通りだと思います。Candle社と交渉をした時には、ビジネス的な話は経営陣と、最終的に金額の話というのはリードインベスターであるB Dash Venturesがまとめてくださっていたのは経営陣としては助かったと思います。

ジョニー投資家から売却をもちかけることはあるんでしょうか?

本間インキュベイトファンドの場合、投資先にM&Aを持ちかけることをまずありません。経営陣が売りたいと決めたときには、基本的には売値の絶対額を決めるようにしてもらっています。もっと高値で、とか、もっと安くてもいい、とか言い出すとキリがない交渉事がM&Aだからです。

本当に売却したいならまず売る決意をする、そしてその許容範囲を決める。そこをまず決めてもらってから、インキュベイトファンド側も動くようにしている、というのが私たちのスタンスです。

一方で、オフィスは別がいい、とか、ブランドは維持したい、といったどうしても譲りたくない価格以外の条件もあると思うので、そのポイントと価格は分けて話してもらうことは意識しています。

ジョニー適正価格はどのように決めていくのでしょうか?

本間VCであればベンチャーのバリエーションは横のつながりでだいたい知っています。それらをヒアリングしながら起業家とコミニケーションをして適正値を探していくので、数式ではじき出せるものではないですね。

加えてポケラボの場合は増資しようとしていたので、その時の時価総額と比較して「100パーセント売却するとしたらどうなるんだ」というような話の天秤で決まりました。

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売却を意識した創業時に気をつけること

ジョニー参加者からの事前質問として、売却を意識して創業するときに意識すべきことはあるか?というものがあったんですが何かありますか?

正田調達後に事業転換していて、当時のバリエーションが次の事業から見ると高すぎる、ということは稀にありますが、そういう場合は(会社や事業を)売りづらいですね。

あと、赤字の会社は正直本当に売れないですね。本当に高値で売ろうと思ったら理想的なのは、IPO直前期での売却です。「IPOもできるんですけど同じぐらいの金額だったら売却も考えています」みたいな交渉だと高く売れますね。

典型的なのは去年のBAKEをポラリス(正式名:ポラリス・キャピタル・グループ)に売却した案件です。おそらくIPO直前期だった気がするのですが、だいたい一般的な飲食系の企業っていEBITDA 2.5~3.5倍ぐらいでしか売れないんですけど、IPOの確度が高いおかげで、多分その何十倍もの値段をつけて売っていると思います。

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投資家は嬉しいの?嬉しくないの?

ジョニーでは次に、クロージングに向けた交渉フェーズに話を移したいと思います。

投資家である本間さんからして、正直に売却は嬉しいのか、嬉しくないのか、という観点ではいかがでしょうか?

本間オモシロイ質問ですね。売却の判断というのは本当に難しくて、ポケラボのときも他のM&Aに関しても不思議なんですが、売ったほうがいいのか、そのままやったほうがよかったのかわからない絶妙なときに良いM&Aが発生しているような気がしています。

これは一般的な株式投資の世界とにているかも知れません。今売るべきか、そのまま事業を独立して継続すべきか、起業家の判断が50:50くらいの感覚じゃないと売れないというのが僕の感覚です。会社側が「いま売らないとやばいな」と思ってるときは買い手の人もそれが分かるものです。

インキュベイトファンドで最終的に売却が決まったほとんどの案件では確定する前日まで「ほんとうに売却すべきか?」を考えています。

投資家として嬉しいか嬉しくないか、ということについてですが、僕らのスタンスとしては「経営陣の意志を尊重」し、それに従うということに尽きます。ただ、まずは価値のあるサービス作りを第一義にしておくべきです。そうでないとIPOも売却の話にもなりませんし、そのオプションも持てません。

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売りたくない会社、売り先としてオススメの会社

ジョニー売却経験者の方に伺いたいのですが、交渉していく中で「どれだけ高くてもこの会社には売りたくない」という企業もあるんでしょうか?

鳥居自分たちが作ったサービス、ブランドを伸ばしてくれなさそうな企業には売りたくなかったですね。「すぐサービス閉じちゃいました」というような雰囲気を持ってるところには売りたくない。

ジョニー投資家として「こういう会社なら売却にオススメ」というアドバイスをすることもありますか?

本間もちろんあります。まず事業会社の話でいうと、トップである社長とちゃんと話ができるところを推薦しています。契約がまとまりそうな最後の最後の面談だけであう関係性の大企業へ売却するというよりは、IT系ベンチャーの場合はオーナーがまだ若いこともありますし、そのような相手とちゃんと1対1で話して、買収されたらどうなるのかをじっくり話していける会社をオススメします。

ジョニーそのような売り手側の意見がある一方で、買い手として交渉する企業としてはどのようなことを意識するのでしょうか?

稲垣その経営陣と大きな絵が描けそうか・意気投合できそうかという点と、事業が伸びていったときにどのくらいの期間で回収できるか、という2つを意識しています。もちろん、割安感があってもちょっと一緒にやっていける雰囲気がない経営チームは遠慮しています。

金額でいうと、「クルーズが一番高かったからグループ入りしてくれた」という事例ばかりではありません。

正田僕は基本ロックアップなしで売却しますし、アドバイスするときもそれをオススメするので、逆に「1番高く買ってくれるところに売りましょう」という話を良くしますね。

買い手と売り手の社長同士のミーティングに同席することが多いんですけど、とある業界では、常に一番安い金額を出してくる会社があるんです。値段は厳しいんですけど、トップ面談はものすごく和やか。優しいんですよ。そうすると売り手の感想として、「安くても人がいいからココに売りたい」っていう人がいるんです。

自分が経営に残らないなら1円でも高いところに売ったほうがいいと思いますし、結構ベンチャー界隈のM&Aはロックアップつけられたりとか、自分が残る前提でディールを進めちゃうんですけど、「なんで残るんだろう」というのが僕は不思議ですね。

僕は自分の会社を売る時も「売る」と決まったら半年間ぐらいかけて自分の匂い消しをするんです。自分がいなくても会社が回るようにしているので買う側からの不満もきいたことがないですね。

ジョニーもしロックアップなし、自分が経営に残らないで売却することを意識しているなら、早めに「自分の匂いを消す」ことが売却交渉時のコツということですね。

※【イベントレポート第2弾は近日公開予定】

メディアに公開されないベンチャーM&Aのリアル
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M&Aは問合せから始まる? 売却したい起業家は何をすべきか
TIGALA株式会社 CEO 正田 圭 ユニバーサルバンク株式会社 代表取締役社長 鳥居 佑輝 incubatefund General Partner 本間 真彦 クルーズ株式会社 取締役 最高財務責任者(CFO) CROOZ VENTURES(クルーズベンチャーズ)株式会社 取締役 稲垣 佑介 スローガン株式会社 FastGrow部門 部門長 西川 ジョニー 雄介
[文]FastGrow編集部

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