INTERVIEW
正田 圭 一岡 亮大
18-01-16-Tue
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「お金ではなく富が欲しい」
MUGENUPを売却した一岡氏が明かす
“連続起業”のモチベーション

TEXT BY REIKO MATSUMOTO
PHOTO BY YUKI IKEDA
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連載 TIGALA正田が迫る “エグジットした起業家の思考法”
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「投資銀行業界のGame Changer になる」ことをミッションに掲げるTIGALA代表の正田氏が、
企業売却を経験した起業家にその選択をした真相に迫る連載企画。

第二弾のお相手は2011年に設立したMUGENUP社の自己株式を2015年に売却、
同年、アンドディー株式会社を創業した一岡亮大氏。

売却後すぐに起業した理由を一岡氏は、
「お金ではなくて富を生み出したいから」と語った。

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会社を買う側のリテラシー向上がM&A増加につながる

一度エグジットを経験している一岡さんから見て、日本国内のM&A案件を増やすために必要な施策には何がありますか?

一岡最近エンジェル投資も行っているんですが、企業売買のセカンダリーマーケットがもっと大きくなれば良いなと思いますね。例えば、年商数億円程度の規模で、年収も数千万円もらえて、という状態で結果的に満足してしまう経営者の方もいます。

そのような状態でなんとなく過ごすのであれば、いっそのこと会社を売ってしまって一度自由の身になってみた方が良いと思うんですよね。

でも、いざ「会社を売りたい」と思った時に日本はマーケットが小さい。どうやって日本企業の流動性を高めればいいんだろう?という問いには興味があります。

アンドディー株式会社 代表取締役 一岡 亮大氏

正田買収を積極的に行える会社って上場企業がメインなので、日本でも新規上場が増えているのは良いニュースです。ただ、買収には興味があっても、その仕方や仕組みが理解しきれていないから手を出せない、という要因から思ったほどM&Aマーケットは活発になっておらずもったいない気がしています。

TIGALA株式会社 CEO 正田 圭氏

一岡そうですね。マザーズで時価総額100億円前後の会社が自社だけで事業をグロースさせていくのは難しい。そんなときに積極的に企業や事業を買えるようなスキームであったり、売り買いしやすいマーケットだったりがもっと整備されれば、結果的に「やりたいことに情熱を注ぐ起業家」が増えそうです。

正田TIGALAでM&Aアドバイザリーを行っているお客様の中にも「売却をきっかけに次のやりたいことを見つける起業家」は実際に多いんですよ。

特に40代中盤の創業オーナーに多いんですが、「まだ事業を続けて大きくしていく気力はあるけど2つある事業のうち1つを売却して1つに集中したい」、「一度会社を清算して旅行や世界一周を楽しみながら残りの人生何をすべきか考えたい」という経営者は思っている以上に多く見かけます。

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「市場成長率」が鈍化したときが売却タイミング

どんな状況の場合、経営者は売却という選択肢を考えると良いでしょうか?

一岡いわゆるIT業界にはまだあてはまりにくいですが、事業や業界自体の“うまみ”というか、市場成長率が極端に鈍化したときでしょうね。実は私の実家は木材を扱う会社と呉服問屋の2社を売却した経験があるんです。

木材ビジネスを始めたのは戦後の木材が足りていない時代で、呉服問屋も業界自体が急成長していた時代でした。だけど、50年以上も同じ成長率がずっと維持できるはずはありません。会社の成長が鈍化したタイミングで2社とも大手企業に売却しています。

正田起業家は自責の人が多いので、「自分ががんばっていないからうまくいかないのではないか」と考えがちですけど、そうではなくて「伸びる業界・儲かる業界にいないからうまくいかない」ということはよくありますよね。

一岡成長トレンドに乗れるかどうかは、成長を志向するならものすごく重要です。私は事業を作るときには、「市場成長率が高くて、市場代替率が高いもの」をやるべきだと言っています。

中には、市場の成長率は低いけど、既存プレイヤーからの代替率がものすごく高いサービスでうまくいく“ラクスル”のような例も存在しますが、古くから存在する業界の2代目・3代目オーナー全員がラクスルのようなモデルを思いつくかと言ったらそうではありません。

正田事業モデルを転換しなければ会社が伸びないタイミングは、たしかに売却を検討する時期としてふさわしいですね。もう一度0から事業を作り直す大変な数年間を経験してもいいですが、一度会社を売却してそこで得た資金を元手に0からやりたい会社や事業を作る、という選択肢を取る起業家がもっと増えていいはずです。

一岡「代々続いているからがんばらないと」みたいな根性論だけでは成長企業は経営できませんからね。

市場成長率を最重要のKPIとして、それが鈍化したら事業モデルや業界内でのポジションを変え続けなければ企業は成長し続けられない。経営者が真剣に考えた結果どうしてもそのどちらの方法も思いつかなければ、売るしかないと思うんです。

私がMUGENUPの売却を決断した要因には、「今の事業ドメインとは関係ないけどもっと伸びる領域」に個人として注力したい、という想いもありました。

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会社は金融商品である

自分が創ってきた会社を売ることに抵抗がある経営者もいるように思います。

正田そのように考える経営者に私がいつも伝えていることは「会社は売るか・潰れるか」のどちらかしかない、ということです。「潰れるか・成長するか」じゃないんですよ。

事業承継を繰り返しても最終的にはどこかのタイミングで売却して別企業に吸収合併されて消滅するか、潰れてしまい残った財産を分配して消滅するかのどちらかしかない。

潰れてしまうくらいだったら、売却したほうが経営者自身にも株主全員にとっても資産的にメリットがあります。

一岡そもそも株式会社というものは、株主が利益を享受するためのものですしね。

正田経営者になった途端に株主視点が抜ける人は私の周りにも多いです。起業して経営者になるということは、代表取締役という役目と、株主という役目の2つの役目がいきなり同時にスタートするということ。

売却したほうが良いタイミングで意地になって会社を売れない経営者は、代表取締役としてのエゴが前面に出てしまって、株主としての視点が抜け落ちている典型例です。

雇われグセがついてしまった、「社員として成果を上げたあとに起業した人」に多い気がします。

一岡上場を経験した経営者も同じだと思うんですが、私もMUGENUPの売却を意識して初めて、「会社は金融商品なんだ」ということに気づきました。

そのような認識をしっかり持てていると、経営者としての意思決定もシンプルになります。「この決断は企業価値向上につながるのか?」ということだけを意識すれば良いですから。

代表取締役も、自分がやるよりも企業価値を向上できそうな適切な人がいるのであれば、その人に任せればいいんです。それこそ、「今の会社の代表をそこまで続けたい理由ってなんですか?」という問いにはっきりと応えられる経営者ってそこまで多くないんじゃないでしょうか。

一岡松下幸之助さんのように、生涯を一社に捧げた経営者だけが素晴らしい、みたいな空気感が日本にはあるから、「一度会社を創ったらずっと続けなければいけない」という思い込みをもってしまっている人が多いんでしょうね。

正田辞めたいけど辞め方がわからない、辞めた後に何をすればいいかわからないから辞めない、という経営者も多いですよね。「あなたは経営者なんだから、自分で次の案件見つけてください」と私はいつもいっています(笑)。

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「富が欲しい」のか?「お金が欲しい」のか?

一岡さんはMUGENUPを売却して個人的には資産も形成できたと思いますが、その後すぐまた起業されています。そのモチベーションの源泉はなんでしょうか?

一岡「お金」ではなく「富」を作ることに興味があるんです。経営者に限らず、「お金が欲しい人」と「富が欲しい人」の間には相当違いがあります。

例えば流行りの仮想通貨でいっても、マイニング用のサーバーを作って大儲けする人は「お金が欲しい人」で、ブロックチェーンを駆使して新しい仮想通貨の流通システムを作ろうとする人は「富が欲しい人」。自分はこのどちらのタイプなんだ?という認識が経営者にとっても重要です。

一岡「お金が欲しい人」にとっては、キャッシュマシンである自分の会社を売るなんてあり得ないんだと思いますが、私は「富を作ること」、つまり「自分にしかできないオリジナリティのあること」がしたい人。次の「富を作りたい」対象がMUGENUPとは離れた領域だったので、自分が持っていた株式を売却するという決断をしました。

一方でやはり「富を作る」には株式会社であるほうがやりやすいので、また別の会社を起業した、という経緯です。

正田私の知り合いにも、大阪で「伝説のラーメン立ち上げ人」みたいな人がいるんです。1店舗か2店舗だけ売れるコンセプトのラーメン屋を作ってはすぐ他の経営者に売却する、ということを繰り返しています。

一岡その人はまさに「新しいコンセプト」、という「富」を生み出すことが好きな人なんでしょうね。

正田私も思わず、「なんでうまく拡大できそうなのに1店舗で売却しちゃうんですか?」って訊いてみたんですよ。そしたら本人いわく「飽きちゃうから」と(笑)。

一岡日本でもスタートアップ界隈のエグジット事例だけでなく、そういう色んなタイプの経営者のエグジット・事業承継に関するメディア露出が増えたらいいですよね。

松下幸之助やスティーブ・ジョブズのような経営スタイルだけが正解というわけではなくて、色んなスタイルがあっていい、という考え方が広まれば経営者の自由度も高まります。

その結果として、日本にも企業規模に合わせた「プロ経営者の流通マーケット」のようなものが生まれれば、経営者の雇用も安定し、今いる会社を離れるという決断がしやすい環境も作ることができると思うんです。

正田 2、3回くらいイグジットしたからこそ、自分が得意な経営スタイルが見えてきます。例えば、(ソフトバンクの)孫さんと(ファーストリテイリングの)柳井さんが事業を交換したとしても、お互いに今の企業規模までにはならないと思うんですよ。

孫さんは私の印象だと小売業的な事業拡大が得意な経営者。色んな事業をやっていく中で、経営者として何が得意で、どこに注力していけばモチベーション高くやり続けられるのか?が見つかるのではないでしょうか。

サクッと起業してサクッと売却する 就職でもなく自営業でもない新しい働き方|正田圭(著)

[文]松本 玲子
[撮影]池田 有輝

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