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INTERVIEW
正田 圭 木暮 圭佑
18-01-24-Wed

なぜ中学生に10億円調達させるのか?
TIGALA新起業プロジェクト、立ち上げの真意に迫る。

PHOTO BY YUKI IKEDA

シリアルアントレプレナーとして数々の起業とバイアウトを繰り返してきた、
TIGALA株式会社代表取締役正田圭氏。

そして史上最年少でVC(TLM1号投資事業有限責任組合)を設立したことで知られる、
TLM ベンチャーキャピタル General Partnerの木暮圭佑氏。

ふたりは今年4月よりスタートする、起業支援プロジェクトの発起人・代表講師である。

同プロジェクトは、中学生を対象とした育成に注力されるが、
その目的とは何なのだろうか。

15歳での起業、23歳でVC設立という、異色のキャリアを持つふたりに、
新たな挑戦への意気込みを聞いた。

正田 圭 (まさだ・けい)
TIGALA株式会社 CEO
正田 圭 (まさだ・けい)
15歳で起業。インターネット事業を売却後、M&Aサービスを展開。事業再生の計画策定や企業価値評価業務に従事。2011年にTIGALA株式会社を設立し代表取締役に就任。テクノロジーを用いてストラクチャードファイナンスや企業グループ内再編等の投資銀行サービスを提供することを目的とする。
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木暮 圭佑 (こぐれ・けいすけ)
TLMベンチャーキャピタル General Partner
木暮 圭佑 (こぐれ・けいすけ)
1991年生まれ。早稲田大学国際教養学部入学後、2013年6月から大学を休学し、East Venturesにて勤務。ファンド運営の業務を学ぶ。退社後、2015年4月TLM1号投資事業有限責任組合を設立。General Partnerに就任。 アプリやインターネットが好き。
TLMベンチャーキャピタル
General Partner
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なぜか起業家には全く練習せずになろうとする人が多い

まず、お二人のご経歴や、直近注力している活動について教えてください。

正田私は中学生であった15歳で起業後、シリアルアントレプレナー(連続起業家)として活動を始め、数々の起業とバイアウトを繰り返してきました。

現在はTIGALA株式会社でCEOを務めており、投資銀行業務にテクノロジーをかけ合わせて業界を変革する「IB Tech」(Investment Banking Technology)の領域に取り組んでいこうとしています。

TIGALA株式会社 CEO 正田 圭

正田17年12月には「pedia」というベンチャーニュースメディアの事業譲受も完了し、金融データ解析に基づくニュースメディアとして「pedia」を生まれ変わらせようと思っているところです。

木暮私は学生時代の2015年4月に、史上最年少の23歳のときに立ち上げたTLMベンチャーキャピタル(以下、TLM)を立ち上げました。現在では創業前後のフェーズを含む、様々なベンチャー投資を手がけています。投資額は500万〜1000万円程度が多いでしょうか。投資領域はウェブサービスが中心です。

TLMベンチャーキャピタル General Partner 木暮 圭佑

木暮日常生活を豊かにするもの、わかりやすいイメージで言えば「いままで5時間かかっていたことを5分で解決する」ようなサービスに投資することにしています。

例えば、スマホ買取価格比較サイト「ヒカカク」を運営するジラフなんかには、創業期から出資してきましたね。ジラフは昨年17年12月に「Peing - 質問箱」を買収したことでも話題になりました。

なぜ正田さんは中学生起業を育成する「pedia Venture Program」を始めようと思ったのでしょうか?

正田起業する中学生が少ないからです。高校生起業家は増えていますが、起業が認められている15歳でビジネスをスタートするケースは稀。しかも現在の日本の高校生で起業する人の多くは、十分な下準備できているとは言えません。

野球だったらリトルリーグや高校野球で揉まれ、甲子園出場やドラフトを経てプロになるのに、そういう育成過程が無いまま「慌てて起業」するのが通例になってしまっています。

でも、どうせ起業をするならもっと早くから準備できていいでしょう。だから、敢えて今回のプロジェクトでは高校生は対象外にしました。私自身、高校時代に既に起業していましたし、高校生だったら自分で稼げますから。

親も巻き込みビジネス経験を積むことで親世代も啓蒙

若くして起業することについては賛否がありそうですが、メリット・デメリットは何でしょうか?

木暮トライアンドエラーを多くできることはメリットとして挙げられるのではないでしょうか。例えば15歳で起業したら、30歳までに15年トライすることができるわけです。でも、もし大学を卒業して22歳くらいから起業したら、30歳までにあと8年しかトライできない。およそ2倍の差が開いてしまうわけです。

さらに、人ってどんどん歳を取るごとに背負うものが増えていくので、なるべく早いうちにたくさん失敗できた方がいいと思います。そもそも起業は、一度目で成功する確率の方が低いのですから。打席数が多くなるだけ、成功するチャンスが増えるとも言えます。

実際に、私は普段の仕事で20代前半の起業家に投資することが多いのですが、投資先を見ていると、21歳で起業したパターンと28歳で起業したパターンの成長曲線にそこまで差が感じられ無いんですよね。だったら早くから起業できるはずだし、そのほうが有利だろうなと思うんです。

木暮よく高校くらいは行ったほうがいいとか、3年間サラリーマンを経験してから起業したほうがいいと言われるじゃないですか。そういう考え方も一理あるとは思います。

ただ、そういう意見に流されてしまった人の多くは、なんとなく毎日を過ごしているうちに結婚して、子どもが産まれて、マンションを買って。気が付けば「何もできなく」なってしまうパターンが多いのではないでしょうか。

正田そうですね。私も子どもが生まれてから一つ一つの買収や事業再生案件に重みを感じ始めています。 それに自分自身を振り返ると、「長く」経営者を務めているからこそ磨かれている感覚もありますね。

デメリットという点でいうと、自分が10代で起業したとき、一番の壁は“親”でした。資金を調達するにしても、携帯の契約ひとつとっても親の連帯保証を求められる。そこをクリアするのがまずは困難だという人は多いはずです。

「15歳で起業したぼくが社長になって学んだこと」(CCCメディアハウス)という本を出したときも、世の中の「お母さん」たちからのクレームがすごかった。「学生のうちからお金儲けに走るなんてあるまじきこと。うちの子には絶対に起業させません」というようなメールがたくさん届きましたね。

木暮結果的に私の場合は逆でした。

親に黙ってファンドを作っていたんですよ。そしたら、その情報がTechCrunchに掲載されちゃったんです。その記事が配信された2時間後に親からLINEで呼び出されました(笑)。母親は私が何をしているのかあまり理解はできていないようでしたが、「がんばって」と背中を押してくれました。

でも私の親のような人は実際には少ないんでしょうね。全体として日本には「お金を儲けること」がポジティブにとられない風潮があるんだと思います。マイノリティを排除したい傾向があるのかもしれません。

正田そうですね。逆に親世代から歓迎されるのって「兄弟三人、東大理Ⅲに行かせました」みたいな子育て本ですから。一般家庭の親は生々しい起業の話はわからない。だからできるだけ“キレイ”に成功してほしくて、プログラミングを学ばせたり、学歴を重視したりするのだと思います。

一方で、年収3,000万円くらいまでいった、いわゆるエリートサラリーマン家庭の親が、子どもに起業を勧めることはよくあるんです。親自身がサラリーマンの「高収入」がいずれ頭打ちになることを、身を持って知っているからでしょうね。子どもにはもっと稼いでほしかったり、もっと大きなことをしてほしかったりするから、起業を勧めるんです。

だから、親にも起業を体験してもらうことで、起業に反対する親を減らせるんじゃないかと思っています。

正田これからはじめる中学生起業プロジェクトへの参加に反対する親に出会ったら、「お父さんお母さんも一緒にやってみましょうよ。BASEでネットショップ作ってみたら、起業は怖くなくて楽しいことだってわかりますよ」という風に、親も巻き込んでいきたい。直接の対象は中学生ですが、できれば親世代にも起業の価値を啓蒙し、偏見を無くしていきたいんです。

起業したら「1週間に1回は辛い思いをして当たり前」

中学生に限らず、起業家に投資をするときには何を一番見るのでしょうか?

木暮辛いときも逃げないこと。辛抱強さが起業においては最も大切です。どれだけ頭がよくてもメンタルが弱い人はどこかで折れてしまいます。

起業は1週間に1回くらい辛い思いして当たり前の世界です。それに耐えられなくて諦めてしまうような人は起業に向いていない人。だから、過去に何度も逃げ出した経験があることを知っている人に対しては、私は一度も投資したことがありません。

正田ストレス耐性は本当に大切です。地頭のよさだけじゃなくて、ストレスがかかった状態でどれだけ頭を働かせられるかもすごく重要。

例えるなら、50m走が速いだけじゃなくて、50mの障害物競争も速くないとダメという感じでしょうか。事業再生案件だったら、(会社を)買った瞬間に修羅場から始まります。「会社の資金が来月15日にショートします」というような危機迫る状況を乗り越えるメンタルの強さがないとやっていけません。

実際に私も15歳で起業したときに、自分よりも年上の方のマネジメントをしないといけない場面、退職をそれとなく勧める場面にはかなり困惑しました。どうしたらいいのかわからず知り合いの社長に相談したところ、「何よりも勢いが大切だ!」という教えをもらってなんとかしのげたことは今でも覚えています。

学生起業家が増えてきている昨今ですが、このところのスタートアップ事情に対して想うことはありますか?

木暮起業や資金調達のニュースが増えてきていてバブルだとか呼ばれますが、バブルではないと思いますね。実際に、IPOしようと思っても難しくなってきています。

正田そうですね。個別の案件で言うと、高すぎる評価がついているなと感じる企業もあると思いますが、ベンチャー界隈全体については、相場が実体より高まってしまっているとは思いません。

私が最初の会社をはじめた頃なんかは、お金を出してくれる人がとにかくいませんでした。銀行も貸してくれませんし、VCにいたっては存在したのかすらよくわからない時代でした。

正田 起業の第一歩の段階では、お金を貸してもらえる、出資してもらえる方が早く前にすすめますので、昔にくらべて資金調達のしやすい環境であることは起業家にとって明らかにプラスなことです。

大人が「教える」訳でなく、世代を越えた“感性”を学ぶ場へ

これから起業する学生に何を教えたいですか?

正田私たちがはじめるプロジェクトは「起業の学校」のように見えてしまうかもしれませんが、私は「自分が10代の子に教えられることの方が多いのではないか?」と思っています。最近色んな起業家と話していても、年下から学ばせてもらうことは本当に多いんです。

一方的に経験や知見を「教えてやろう」というように押し付けるつもりは全くありません。10代の子が「何を思っていて、どういう事業モデルを作っていくか」が知れることを楽しみにしていますし、そこから私を始めとした講師陣自身が学ばせてもらうことは多いと期待しています。

木暮学校の勉強が意外と起業に役立つということも教えられるかもしれませんね。

正田木暮さんは海外で盛り上がっているサービスを実際に購入して試すのが早くて、情報収集量が半端じゃない。それも英語がわからないとできないことですよね。

木暮起業家って、情報を人に発信したり、ビジョンを文章にして人に伝わる言葉で語ったりすることも仕事の一つです。そういう意味では現代文なんかも起業に役立ちます。ビジネスですから、数学ももちろん使いますしね。

正田たしかに私も、「先端技術を扱う会社に投資しないか?」という相談を受けたとき、結局何がすごいのかわからなくて、科学なんかを勉強し直すことがあります。

私自身が「学校の勉強をしておけばよかった」と痛感した経験をもとに、「将来起業家や社会人になった時、こういう風に学校の勉強が役に立つ可能性がある」というメッセージもあわせて伝えられたらいいなと思っています。

最後に、いま中学生の方に伝えたいメッセージがあればお願いします。

木暮自分しか持っていない感性を大切にしてほしいですね。今回の起業プロジェクトでも、大人の私たちが過去の経験から色々な話をすると思いますが、大人の言うことを聞くかどうか、最後は自分自身の感性を信じて判断してもらえればいいと思います。

感性を信じて事業を創って、間違いを見つけたら自分で修正していく。そういうトライアンドエラーに、ぜひ多くの人がいち早く取り掛かってほしいと願っています。

サクッと起業してサクッと売却する 就職でもなく自営業でもない新しい働き方|正田圭(著)

[撮影]池田 有輝
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