Amazon&Netflixに勝つ!
日系企業は動画配信市場をどう攻略するか

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堤 天心
  • 株式会社U-NEXT 代表取締役社長 

東京大学工学部を卒業後、リクルートに入社。約4年に渡りセールス分野で実績を上げた後、2006年にUSENへ転じ、VOD(サブスクリプション・ビデオ・オンデマンド)サービスの立ち上げを担った。分離独立した2010年以降は一貫してU-NEXTを事業本部長として率い、2017年にU-NEXTの代表取締役社長に就任した。

Li Rutong
  • 株式会社U-NEXT CTO R&D本部長 

中国上海の同済大学卒業後、2005年にソニー入社。HDMI機器の制御など映像関連の開発分野を担った。2010年、パケットビデオ・ジャパンに入社し、黎明期のデジタルコンテンツ配信事業に携わった後、2015年にU-NEXT入社。スクラムマスター、デベロッパーとしてU-NEXTの開発を支えている。2016年にCTOに就任。

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有料動画配信の市場がホットであることは言うまでもないだろう。

日本でも過去3〜4年で急激に拡大し、2017年時点で1700億円規模まで成長。

2〜3年後には現在2000億円台規模である映画興行市場を抜き去るとまで予想されている。

コンテンツホルダーと契約を結んだ配信サービス事業者が、インターネットを通じて作品をエンドユーザーに提供する、というビジネスモデルが定着する中で、複数のサービス事業者が利便性や画質、料金プランなどで競争を展開している。

とりわけ有力視されているプレイヤーは、グローバルで実績を築いてきたAmazonやNetflixの海外勢だが、そこに割って入れる唯一の国内企業とさえ言われているのがU-NEXT。

果たして彼ら独自の戦略とは? そして日本の動画配信市場の未来は?

  • TEXT BY NAOKI MORIKAWA
  • PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
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日本もいよいよ動画配信の成長期へ

「動画配信(VOD。ビデオ・オンデマンド)サービス」と言われてピンとこない人でも、Amazonプライム・ビデオやNetflixの名前を聞けば、誰もが理解するはずだ。インターネット通信を通じて動画を配信するVOD。今やこのサービスを日本で展開する企業は多数存在する。

NTTドコモが運営するdTV、HJホールディングス(日本テレビのグループ企業)が日本版を運営するHulu、カルチュア・コンビニエンス・クラブが運営するTSUTAYA TVなど枚挙にいとまがない。

2015年秋以降にグローバル市場のリーダーであるAmazonとNetflixが相次いで日本に参入したことを機に、こうした企業間の競争が激化しているわけだが、U-NEXTはUSENが2007年に開始した「GyaO NEXT」の時代から日本のVODを一歩先んじる形でリードしてきた特異な存在。

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そして、その当時からこの事業を担い、現在U-NEXTのCEOを務めているのが堤だ。日本におけるVODの変遷を体感してきた数少ない生き証人とも言える。

その堤の目に、現状の市場はどう映っているのか?

日本のVOD市場は、欧米だけでなく他の国や地域と比べても出遅れている感がありました。ですから、ここ数年の急速な発展と拡大をストレートに喜んでいます。

急成長の要因としては、通信に関わる技術のクオリティが劇的に進化・向上したことや、AmazonやNetflixといった強大なグローバル企業が参入したことなどが挙げられます。ただし、それらとは別の背景もあります。

それは日本が長年抱えてきた動画環境の独自性です。これほど無料放送による動画視聴が浸透していた国も珍しいですし、DVDやBlu-rayといったパッケージメディアが根強く支持されてきた国も世界では例がありません。

ところがスマホをひとり一台持つのが当たり前になり、YouTubeを始めとする動画サービスの使い勝手の良さに気づいてしまうと、さすがに時間の融通が効かないテレビ放送や、視聴に手間がかかるパッケージより、配信を選ぶ人の数が増えた。

いままで押さえつけられていた分、成長が急速に感じられるのでしょうね。

堤が指摘したように、アメリカを筆頭に他の国々ではアンテナで電波を受信する無料の放送システムよりも、有料契約に基づくケーブルテレビが早い時期から主流であった。通信衛星を用いたBSやCS放送も発達したが、通信技術が猛スピードで進化する過程で「カッティング・コード」、つまり配線の要らない動画視聴方式が市民権を得ていった経緯がある。

また海外の大半の地域は国土が広すぎるなどして日本ほど十分に物流網が整備されていないのでパッケージメディアを購入、レンタルするのもずっと大変だった。相対的にVODが発展する下地が整っていたといえる。

VODのプラットフォームが整備されれば、放送が担っていた役割は急激に縮小します。公共的な役割は存続するべきだと私も思っていますが、ことエンターテインメントについては、見たいものを好きな時に好きなデバイスで視聴できるVODに人々の気持ちは動きます。

ユーザー側の利便性や満足度、あるいはコンテンツホルダーの利潤追求の立場から考えても、VODは効率的なんです。さらに言えば、放送やパッケージビジネスの場合には、国境を越えていくのが難しかったわけですが、インターネットを介したVODの場合にはいきなりグローバルにサービスを提供していくことも可能です。

良くも悪くもガラパゴスだった日本の動画環境。それもネット技術の進化と、Amazon、Netflixという最強のグローバル勢力の上陸で大いに揺さぶられている。テレビと向き合う時間よりも、スマホの画面を見ている時間の方が長くなった現代において、デバイスも選べるVODに軍配が上がろうとしているのも当然の現象といえる。

若者によるテレビ離れの傾向が年々強まってもなお「ネットで見ているのは無料の動画だけ。そもそも日本人にはコンテンツにカネを払う感覚がない」などという主張が数年前には聞かれたが、冒頭で提示したように日本の有料動画市場は劇的に拡大している。

「日本人は水をカネで買わない」という言説が覆されミネラルウォーターが定着したように、「日本人だってカネを払って動画を見る」ことは証明されているのだ。

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技術の革命は「放送」ではなく「通信」で起きる

ここで、U-NEXTのCTOであるLi Rutongが技術者ならではのアングルから語り始めた。

Li Rutong放送の現場では今、フルハイビジョンや4Kの高画質で視聴できることをアピールしていますよね? でも、すでにU-NEXTやAmazon、Netflixなど、VODのトップ企業ではフルハイビジョンや4Kと同等の画質で視聴できるようになっています。

パッケージメディアとの比較で言えば、もうBlu-ray以上の画質を実現できているんです。それどころか次世代規格の5Gがスタートすれば、放送では現状提供できないほどの高画質動画を、無線で、読み込み時間すら感じることなく視聴できるようになります。

「ネット経由で動画を見る場合、画質では放送に劣る」と思い込んでいる人が多いのですが、そんなことはないんです。映像のクオリティはすでに逆転しています。技術上のことで言えば、インターネット通信技術は放送の2世代先くらいまでのレベルにまで到達しています。

乱暴な言い方かもしれないが、放送と通信の違いは「届け方」の違いでしかない。超高画質の動画コンテンツをユーザーに視聴してもらおうと思えば、膨大なデータをいかにスピーディーに安定した状態で届けられるかが問われる。

すでに容量的な限界がきている放送波と異なり、技術革新が続くインターネット通信にはまだまだ可能性があるということ。

そうなれば、いよいよコンテンツホルダー、すなわちコンテンツの作り手の事情にも影響が出始める、と堤が言う。

2017年の夏にWalt Disney Companyが発表した内容は、今後のメディアおよびコンテンツ産業のあり方を予見するようなものでした。これまでコンテンツホルダーであるディズニーは、保有するコンテンツをNetflix経由でユーザーへ届けていました。

その契約期間が2018年いっぱいで終了するのですが、それ以降ディズニーは自らVODを開始すると発表したんです。先ほども言ったように、VODは従来の放送やパッケージに比べて、格段にグローバルビジネスを展開しやすい特性を持っています。

インターネット環境を持つ人々全員がターゲットユーザーになるわけですからね。全世界に通用するようなコンテンツを保有し、今後も優れた作品を制作できるディズニーのようなコンテンツホルダー、メディアコングロマリットは、VODが持つ可能性の大きさに気づいたわけです。

堤が語った内容以外にも、ウォルト・ディズニー社は近年、旺盛な買収戦略でメディア業界の覇権を固めようとしている。コンテンツ制作領域においてはピクサー、マーベル、ルーカスフィルムといった大型買収を繰り返してきたし、昨年暮れにはついに21世紀フォックスの買収を発表。

買収規模はこのディールだけで600億ドル、すなわち6兆円を超える。

過去の買収で獲得した『スター・ウォーズ』シリーズや、マーベル・コミックスの『アベンジャーズ』シリーズ、『トイ・ストーリー』『モンスターズ・インク』などのPIXAR作品に加え、今度は『X-MEN』シリーズや大ヒットドラマの『EMPIRE 成功の代償』などを保有したことになる。

ヒットを生み続けることができる超強力コンテンツ群を携えた自前のVODによって、さらなる高収益を目指していくだろう。

一方、NetflixやAmazon、米国Huluのような有力VOD事業者サイドも、自社制作コンテンツへの注力を公言しています。自ら優れた映像作品を生み出し、VODにおける強みにしていく事業戦略です。

つまり「メディアコングロマリットvs有力VOD事業者」という構図が本格化しつつある。Rutongが示したように、今後画質の面でも優位性が高まれば、配信ビジネスというステージの上でサービス面、技術面、事業戦略面の熾烈な競争がさらに強まります。

アメリカなどでは、今まで以上に優秀な人材がこの業界に集まってくるでしょうね。

堤の言う通り、Amazonはこれまでオリジナルドラマシリーズ『高い城の男』や『ロア~奇妙な伝説~』など、多くの自社制作ドラマをヒットさせている。Netflixも『ストレンジャー・シングス』や『ゴッドレス-神の消えた町』などヒット作を連発。

米国Huluは近年会員獲得に苦戦していたがエミー賞とゴールデングローブ賞で作品賞に輝いたオリジナルドラマ『The Handmaid’s Tale』で会心の一撃を放っている。

つまり、「コンテンツホルダー→配信事業者→エンドユーザー」という従来のVODの流通プロセスのうち、上流2工程間の境界線が消えて、世界規模の「コンテンツ囲い込み」競争が始まっているということ。言い換えれば、制作領域においても、配信領域においても、ダイナミックなビジネスチャンスが広がり始めている。

優れた人材(技術者もマーケターもクリエイターもプロダクトマネージャーも)は今、間違いなくこの領域に熱い視線を注いでいるということだ。

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動画市場で勝ち抜けるのは「世界基準の技術者」が集うチーム

人材の話題が出ると、Li Rutongは悔しそうに言った。「アメリカのAmazonやNetflixは大量のエンジニアを雇用している。しかも、スタンフォードやハーバードでドクターの学位を取得したような、世界中から支持される開発言語やフレームワークを作ったような、文字通り世界トップレベルの逸材がごろごろいる」と。

Li Rutong今のアメリカではソフトウェア・エンジニアという職業が、日本と比べものにならないくらい高く評価されています。要するに給料も高いし、尊敬もされている。そうなれば、優秀な若者たちの多くはエンジニアを目指しますよね。

すでに飛び抜けたエンジニアが揃っている輪の中に、また高いポテンシャルを持った若手が世界中から集っていくのだから、当然成長もします。

「文系出身のあなたでも、すぐにエンジニアになれます」なんて言えるのは、日本だけですよ。グローバル基準じゃ、地頭の良い若者が学生時代にも勉学を重ねて、実業も経験したりしながらソフトウェア産業に入っていく。

そして、とんでもなく高度な競争の中で、さらに磨きをかけていく。悔しいけれど、シリコンバレーから次々に技術革新が起こっているのも無理もない。だけど、そんな恵まれた状況のAmazonやNetflixに対して、日本では私たちが対抗できる。それは自信に思っています。

人材のレベルだって決して悲観するような状況じゃない。むしろ逆で、グローバルでも通用する優秀なメンバーに恵まれています。僕らの生み出す製品は確実に日本マーケットで支持されていますから。

映画や映像コンテンツ事業に特化したマーケティング・データを提供しているGEM Partners社は、2月に2017年の国内VODサービス・事業者別市場シェアを発表した。12.6%を獲得したU-NEXTは、1位のdTV(20.3%)、2位の日本版Hulu(13.5%)に次ぐ第3位。Amazon(11.5%)やNetflix(7.1%)よりも上の位置にいる。

ただし、国内プレイヤー3社がトップを占め、3社合計で46.4%ものシェアを築いているものの、前年度からの伸び率でいえばAmazon、Netflixが飛び抜けている様相だ。

では、何を以て彼らは世界の強豪と渡り合っていくのか?と問うと、「日本は米国に次ぐ世界第2位のエンターテイメント市場大国。しかも極めてユニークな性質を持っていて、グローバルスタンダードはそのまま通用しないのは、米国Huluが苦戦し撤退したことからも明らかです。

私たちは日本市場に根ざすプレーヤーとして、日本のユーザーに求められるコンテンツ、機能を妥協なく作り込んでいく。先行する欧米市場を眺めると、大半の国ではグローバル2&ローカル1という現象が起こっている。

つまりAmazon、Netflixとその地域のナンバーワンプレーヤーの3強体制で安定している。我々はローカルナンバーワンになるしかない」と堤はいう。

「グローバルプレイヤーが世界最高のプロダクトをひとつ磨き上げるのだとしたら、私たちは日本マーケットで最高のプロダクトを作っていく」とLi Rutongが続ける。

Li Rutongグローバルスタンダードは必ずしもローカルナンバーワンとは限らない。例えば、北米と日本では好まれるUIの傾向が全然違う。日本人は進学率も識字率もほぼ100%で、海外に比べて複雑な構造や文字を読み解く力が格段に高い。

だから欧米基準では複雑すぎる画面要素でも、何の問題もなく受け入れられる。こういう違いを積み重ねていけば、海外の強豪とも戦っていけると信じています。

「日本マーケットで勝ち抜く」というビジョンを本気で追っているから、扱う技術領域も広い。求めていくクオリティも高い。厳しい環境と捉えることもできるでしょう。

けれど「楽しんで仕事すること」も僕らは絶対に忘れてはいけません。僕らが扱っているのはエンターテインメント。金融システムを作るのとは違うし、企業の基幹システムを作るのとも違う。作り手である僕ら自身が楽しんで作らなければ、唯一の顧客であるユーザーが喜んではくれないでしょう。

良い意味で型にはまらず、まさにアジャイルな姿勢で楽しんで作る。

このように、スクラム型アジャイル開発のスタイルを純粋に採用した現在のU-NEXTでは、チーム編成やメンバーの異動に挙手制も取り入れられ、自由度が高いのだという。

そんなに自由なやり方で組織がまとまるものなのかと尋ねると、「逆に、そうじゃなければ本当に良いものをハイスピードで生み出せない。他に選択肢はないから、自由を尊重するカルチャーが維持できるように努力する」のだとRutongは話す。

でも、自由には責任が伴います。ちゃんと誰がどういう部分で貢献したのかは、皆が見ている。エンジニア評価システムは完全匿名性による360度評価です。良い評価を得るためには、関係者みんなに対して責任ある仕事をするしかない。

だから、マチュアな人間、つまりきちんと成熟した大人の集団になっているんです。見ていてください。日本代表として、必ずグローバルの巨人たちと互角以上に戦って、ユーザーの皆さんに喜んでもらいますから。

確実に世界標準と同じ環境へと変貌しつつある日本の動画事情。そして、間違いなくブレークする有料動画配信市場。その中で、すべてを自前で作り上げる野心的な集団が、世界のトップと本気で渡り合おうとしている。しかも楽しげに。

こちらの記事は2018年04月13日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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執筆

森川 直樹

写真

藤田 慎一郎

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