連載資金調達スタートアップのヨコガオ

最新技術で、空気中から年間10億トンものCO2の回収を目指す。気候変動防止の新たなソリューション実現へ。シードで総額2.5億円を調達──Planet Savers株式会社

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重要なのは、調達額の大きさ?バリュエーション?ラウンド?いやいや、スタートアップの資金調達とは、もっと奥深く、緻密で複雑なものである。

FastGrow編集部では、調達リリースを見るたび、その裏側について思いを巡らせ、その後のビジョンについて予測や仮説立てをしてきた。そのために知りたい情報を、ぜひ外部向けにも記事としてまとめてみよう──そんな想いで始まったこの連載。

今回は、2024年4月に資金調達を発表したPlanet Saversについて、その「横顔」をまとめる。

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FastGrow編集部が注目するポイント

注目ポイント1

代表 池上氏は、JICAで電力やエネルギーを含むインフラ開発・政策支援のバックグラウンドを持つ連続起業家。CSO 伊與木氏は、東京大学・MIT等でCO2吸着材「ゼオライト」の研究開発に長年従事してきた研究者

注目ポイント2

2050年の市場規模が5,000億ドルに達すると予想されるDirect Air Capture(DAC:大気中二酸化炭素直接回収技術)について、日本で初めて本格的にシステム開発に取り組むスタートアップ

注目ポイント3

創業1年目から環境省のSBIRや経産省のJ-StarX、特許庁のIPAS等に採択

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代表を始めとした、同社のメンバーについて

(1)代表取締役 池上 京 氏

調達に際してのコメント

Planet Saversは気候変動を食い止め、次世代に美しい地球を残すことをミッションに掲げる日本初のDACスタートアップです。

年間50万トンのCO2を回収可能な超大型のDACプラント開発にブラックロックが5.5億ドル(約800億円)を投じる等、グローバルでDACは気候変動を緩和する切り札として注目を集めており、ここ数年で多くのスタートアップが生まれました。11億ドルという巨額のM&Aによるイグジット事例も出ています。

他方、DACの技術は未だ黎明期でCO2回収コストは高止まりし、ブレイクスルーが求められています。 弊社はDACの社会実装のため、圧倒的な低コスト化を実現する革新的なDACシステム開発に取り組んでおります。

これまでは自己資金と助成金等のご支援により開発を続けてきましたが、今回の資金調達で日本を代表するベンチャーキャピタルである二社からの支援を受け、これらの開発を更に加速するとともに、事業開発と社会実装までのロードマップの早期実現に向けて邁進したいと考えています。私達は、日本発で世界を気候変動から救うべく、挑戦してまいります。

プロフィール

新卒でJICA(独立行政法人国際協力機構)に入構し、中東のインフラ開発、政策支援に従事。ケンブリッジ大学でのMBA取得を経て、ソフトバンク・ロボティクスに入社し、AIロボットの海外展開に取り組む。

その後、株式会社MIRAIingを設立し、リーダー教育を2,000名以上の学生に提供。気候変動を食い止めたい、インパクトあるスタートアップを立ち上げたいという想いで、2023年にPlanet Saversを設立し現職。京都大学法学部卒、公共政策修士。


(2)取締役 Chief Science Officer 伊與木 健太 氏

プロフィール

東京大学大学院大学院環境システム学専攻准教授。ゼオライト吸着材開発、システム設計研究に従事。日本学術振興会海外特別研究員としてMIT派遣に選抜。2021年、JSTさきがけ研究員に採択。経済産業省カーボンニュートラル若手有識者研究会委員。東京大学大学院工学系研究科にて博士(工学)を取得。


(3)研究開発チーム リードサイエンティスト 大木 知則 氏

プロフィール

日系の化学メーカーやデュポン、ジョンソン・マッセイ等の外資系企業で主に電子機器・自動車向けの導電性ペースト、触媒などの開発に従事。原材料・製品開発から量産立ち上げ、品質トラブル、顧客対応と、製造業の川上から川下まで幅広く経験。これらの経験・知識を活かして日本のモノづくりに貢献したいという想いから2024年にPlanet Saversに入社。東京理科大学大学院修士課程修了。

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調達の概要

プレスリリース
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000005.000130404.html
調達額
2.5億円
ラウンド
シード
主な使途
サービス・プロダクトの機能強化
採用強化
事業開発の加速
投資家からの評価
今回投資したSpiral Capitalは、「カーボンニュートラル実現のためにDACは必要不可欠な技術だというコンセンサスが醸成され、グローバルのClimate Techトレンドにおいても最注目テーマの一つとなっている」ことに触れ、Planet Saversが革新的なゼオライト素材をDACシステムに応用することで、従来のDACの常識を大きく覆す可能性があると評価する。また、JAFCOは「近い将来、池上さんと伊與木さんがタッグを組むPlanet Saversが、グローバルで躍進する存在になっていく」として、高い期待を寄せている。

関連ポスト

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主なサービス・プロダクト

Direct Air Captureシステム

DACを商業化して気候変動から世界を救うべく、無機多孔質材料であるゼオライトをベースとした革新的な吸着材を用いて人工的にCO2を回収するシステム。2024年5月には、日本企業が開発した中で最大級のDAC設備(10kg-CO2回収/日)を稼働予定。
革新的な吸着材によってCO2の回収コストを、現状の$1,000/ton(1トンのCO2回収に1,000ドル)から$100/ton(1トンのCO2回収に100ドル)まで下げ、CO2排出量実質ゼロ達成に貢献することを目指す。

サービスサイト

FastGrow編集部の注目ポイント

  • DACスタートアップの間で主流のCO2吸着剤となっているアミンやアルカリ水溶液等の化学吸着の方式を取らず、ゼオライトという物理吸着の方式を用いることで、CO2脱着過程の熱利用を無くし、DACのコストを大幅低減
  • 世界トップクラスのゼオライト合成技術を保有する東京大学発のスタートアップとして、グローバルでも稀有な立ち位置を取れている
  • 先行プレイヤーは、DACのプロセスの中で大量の水を利用することが多いが、Planet SaversのDACでは水を利用しない。さらに、将来的には水を副生物として作れる可能性もある
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採用関連情報

主な募集ポジション
ハードウェアエンジニア
プラントエンジニア
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Wantedly

こちらの記事は2024年05月07日に公開しており、
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