“意味づけする力”こそが、事業家として最短で成長できた秘訣──26歳で年商40億円の事業責任者、アルゴリズム社・ 酒井の仕事術

インタビュイー
酒井 亮

大学時代に株式会社キュービックでインターンとしてメディア運営の基礎を学ぶ。2018年、株式会社オールアバウトに新卒入社。ECサイトへ送客するお買い物メディアの立ち上げメンバーに抜擢され、SEO/SNSによる集客や、アルバイト40人を率いたコンテンツ制作、アフィリエイト広告/運用型広告/純広告によるマネタイズを担当。入社2年目に年間MVPを受賞。2020年株式会社アルゴリズムに中途入社。半年で売上数百万円から数十億円規模までの事業成長を牽引

金田 卓也

1992年9月生まれ。慶應大経済学部卒。幼少期に父親が病死し、母子家庭で育つ。13歳で個人事業主として活動を始め、19歳で創業した会社を従業員30人規模まで拡大するも大失敗し、投資を受けた5,000万円を失い、四畳半のアパートで再創業。その後始めた自動車メディアを事業売却し、会社を清算。その後ベルフェイスの創業期にCMOとして参画し、シリーズA直後まで在籍。複数の会社のSEOアドバイザーやWeb系事業のM&A支援を手がけた後、26歳でアルゴリズムを共同創業し、副社長に就任。

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「自分のポテンシャルはこんなものではない。もっと自分の力を輝かせることができる環境がどこかにないだろうか」

20代のビジネスパーソンなら誰でも一度は、こんな問いにぶつかったことがあるのではないだろうか?日本には367万もの企業が存在しているわけだから、もっと自分に合う仕事や仲間、職場がどこかにあるはず、それは当然のことだ。では、どのように探すべきだろうか。

この記事で取り上げるのは、新卒入社した大手上場企業で一定の成果を残しつつもモヤモヤを感じていた若者が、転職したスタートアップで非常に大きな成果を上げ始めるまでのストーリーだ。

そのスタートアップとは、創業4年で年商40億円規模にまで拡大を実現させたアルゴリズムだ。これまでの記事で、創業者の勝俣篤志氏、金田卓也氏が持つ独特の世界観と、事業創造力を解剖してきた。そんなアルゴリズムのユニークなカルチャーの中に飛び込んできた26歳の青年・酒井亮氏が、自分の殻を破って40億円もの大事業の全責任を担うようになった経緯は、波乱もありつつ、理想の若手事業家キャリア像の一つともいえる。

そんな酒井氏が、ここに至るまでに培った仕事術や異次元の成果を生み出したマインドを詳らかに語ってくれた。同年代で突き抜けた成果を出したい、何者かになりたい、自分に秘められたポテンシャルを解き放ちたいと思っている方々こそ、ここで語られるすべてをぜひ盗んでほしい。

  • TEXT BY SATORU UENO
  • PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
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事業の全責任を担う者だからこそ、妥協なき「あるべき理想」をひたむきに追い求める

酒井氏は幼い頃からの自分について、「夢想したものをカタチにすることに挑戦してきた」と振り返る。少年時代は、流行り物に飛びつくのではなく、「もっとこうしたらいいのに」と自分が思い描いたカードゲームやマンガを緻密に自作してまわりを巻き込んで楽しんでいた。大学時代には、デジタルマーケティングの雄とも言われるキュービックでの長期インターンに参画し、担ったWebメディアのマーケティングにはまり込んで数千万円レベルのグロースを成し遂げた。新卒入社したオールアバウトでも新規事業の立ち上げを担いわずかな期間でIRでも取り上げられるほどのインパクトをもった事業開発を実現した。そして今、アルゴリズムで40億円規模の売上をつくる事業の総責任者を務める。これが酒井氏の来歴だ。

ではそもそも、ビジネスパーソンとしてはどのような存在なのか。アルゴリズムで取締役副社長を務める金田卓也氏は、こう評する。冒頭からやや長いが、じっくり読み進めてほしい。

金田酒井とは途方もない理想を描くところから“一緒に企むことができる”のがいいんです。大言壮語で理想だけをぶち上げるみたいな感じじゃなくて、高い次元で「あるべき理想」を定義して、その上で具体の実行までを緻密に描ける。そして、何よりもそれを立案して具現化するまでを「トコトン楽しめる」のが酒井の良さだと思います。

また若いスタートアップにありがちなのは、解像度が低い状態ながら気合と根性でなんとかします!という根性論、あるいは解像度は高いものの理詰めのロジックだけが詰め込まれた無味乾燥な頭デッカチの戦略論だ。だが、酒井氏の描くそれは、柔と剛を持ち合わせたものであると金田氏は言い切る。

金田事業を考える際に「この事業はどこまでいけるだろう」と議論しようとしたとき、例えば勢いだけのある若手だと、「とにかくやりましょう!〇〇億円を目指します!」ぐらいの粗い議論となりがちです。

でも話したいところは金額の大小ではなくて、僕たちにしか生み出せない戦い方や、独自の揺るぎない価値をどれだけ生み出せるのかという「仕組み」の部分なんですよね。因果関係で言えば、その仕組みが「大きな売上」という状態をもたらしてくれるのであって。

僕たちは、その仕組みづくり、唯一無二のものを生み出そうとする創造の過程、「あるべき事業の理想状態とはなにか」といったものを思索・探究していくプロセスに心が踊るし、無上のワクワクを感じるんですよね。

金田氏(右)の熱弁を、照れた表情で聞く酒井氏(左)

金田酒井が出してくるアイデア、見据えている目線、描かれるプランはまさにそういった「理想を追求する」という僕たちの根源からスタートしてくれている。会社が大切にしている考え方・価値観に立脚して、そこから事業像を描けるというのは事業開発人材の最も重要な与件の一つだと思うんです。

ちゃんと実現可能性が練り込まれていても、「僕たちにしか生み出せない創意工夫が何もない」ような単純な金儲け論だけでは、会社がやる“意義”がない。会社の描くビジョン、バリューなどを十二分に理解し、感覚や目線が自分や勝俣とすり合っている。これはいうなれば「会社の社長や創業者と全く同じ目線で事業創造に取り組めている」ということです。

「創業者が最も望むのは、自分の分身である」とも言われますが、会社のアセットやケイパビリティだけで無機質に事業を描くのではなく、「経営者と同じ目線でコトを企み、ワクワクに巻き込んでくれる」ことは、上に立つほど共感されることが少なくなりがちな経営層にとっては何よりも嬉しいことだと思います。

これまで、酒井が持ってきた理想について不安に思ったことは一切ありません。僕たちの会社が掲げる“探究心”が意味する&指し示す方向と同じベクトルで理想を描いてくれるし、その上で“コトを実現するため”に出てくる実行施策・戦略の解像度も高いから、安心して事業を任せることが出来ます。

コミットメントや事業に対しての姿勢もひたむきだし、何より本人が一番楽しんでくれているので、進捗をこちらから確認する必要さえ全くないんです。

「今まで言葉に出して評してもらったことはなかったかもしれません。そんな風に思ってくれていたんですね」と驚くと同時に、取材冒頭から繰り出される経営陣の“べた褒め”にさすがの酒井氏も表情を緩め、照れたそぶりを見せながら応じる。

酒井金田が言うように、「経営のオーダーを実現する、ストレッチして期待を超える」だけが大事なのではないと思っています。

何のためにそれをやるのか、それをやる意義はどれくらいあるのか、自分たちにしかできない絶対的な価値、揺るぎない強みはなにか。そうしたことを、事業面・組織面で多面的に検討して、描き出し、決断し、実行する。このことを当たり前に実行している、というだけです。

酒井氏の頭にあるのは、たった3つのことだけだという。「自分で『こうしたい』と最高の理想像を定め、トコトン向かっていくこと」、そして「上司(≒会社が掲げるもの)と同じ価値観・ミッションに立脚してコトを描き、動かすことで執行者として信頼を勝ち取ること」、「自分が何よりも楽しむ、ワクワクすることで、部下や仲間を巻き込み、この人についていこうと思わせしめること」だ。

この仕事術・マインドを解剖し、あるべき現代の事業家像を探りたい。

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「人から言われたこと」では完全燃焼できない。
自分が意味づけできたものには最高を追求できる、そんな共通点も原動力に

一旦は冷静に「(自分にとっては)当たり前のことを当たり前にやっているだけなんですが…」と謙遜した様子で話した酒井氏だったが、「でも、照れますね」と急に笑顔を見せた。

酒井金田から直接こんな風に言われたことはないから、めちゃくちゃ照れますね。思えば、社長の勝俣から成果を褒められたこともほぼありません。アルゴリズム社の年間MVPを取ったとき、賞状の文面で多少褒められたくらい。

でも、勝俣や金田から褒められたいという承認欲求で動いているわけではまったくないので、気になったことはありません(笑)。

とにかく、「自分で『こうしたい』と理想を決め、自分で向かっていくこと」を突き詰めたいし、何よりも自分自身が当事者として楽しみ尽くしたい。これが脳内の8割か9割を占めますね。

念のために書いておくが、アルゴリズムという会社で「他人を褒める」ということが起こらないというわけでは決してない。膨大なハードシングスを共に乗り越える中で、3人の関係性が揺るぎないものに昇華されたからこそのコミュニケーションスタイルだ。インタビューの中でも、強い絆で結ばれた3人は(表面的な承認の有無を超えて)経営チームとして一枚岩になっていることを感じさせた。

さて、なぜ酒井氏は、金田氏が舌を巻くほどに、アルゴリズムの掲げる知的探究心という哲学を理解しながら、解像度高く理想を描いて探究できるのか。その思考・思想が育まれた少年時代から探ってみる。

酒井三兄弟の末っ子でした。親からはさまざまなことで「ああしなさいこうしなさい」と言われていましたが……いつも「自分の人生は自分で決めるんだ」と思って、ほとんど聞かずにいました。

小学校の頃は、習い事なんて一切やらず遊んでいました。放課後はみんなで『遊戯王』や『デュエル・マスターズ』といったゲームをよくやっていましたね。でもある時から自分だけ、独自のカードとルールをつくって、友人を招いて披露して遊ぶようになりました(笑)。

マンガや小説も、読んでいるうちに自分で見よう見まねでつくるようになったりして。尖った変なヤツでしたね。

これは、“強すぎる好奇心”の一つと言えそうだ。代表取締役社長を務める勝俣氏は、以前の取材で、「好奇心ドリブンで、リスクがあったとしても、知的好奇心を大切に突き進む道を選びとりたい」といった話をしていた(勝俣氏の単独インタビュー記事はこちら)。

「勝俣氏と似た部分を感じる」と伝えると、「そうかもしれない」と金田・酒井両氏は答える。

金田この二人だけでなく、うちはみんな“頑固”な一面を持っています。僕も昔、習い事から逃げ出したことがあります(笑)。

勝俣も、「やれ、と言われたら絶対にやれない人」ですね、完全に(笑)。

酒井「なんの意味づけもないままで、ただただ切り出された仕事をやらされる時、そこにはコトを実現するための馬力が湧いてこないというか。逆に、自分が意味づけできたことであれば、途方もなく不可能に思えるようなどんなことでもやり遂げてやろうという意思が湧いてくるんですよね。自分が意味づけ出来たことであれば、「絶対に出来ない」と周りが言うことでも、「どうすれば実現できるだろう」と考えが巡りだす。

これまでの人生を通して、“意味づけ”という行為が持つ重要性やパワーを何よりも肌身に染みて感じていること。

これが、他の人と少し違うところかもしれません。

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「意味づけ力」で成功体験を積み重ねたインターン時代。
一方で、1人でできる限界を、これでもかと味わい行き詰まった新卒時代

少年時代に抱いていた「夢想したものをカタチにする」という想いをそのままに、大学時代には長期インターンで、人並外れたコミットを見せる。

酒井メディア業界の巨人である株式会社キュービックでインターンに打ち込んだのも、小さいときと同じ営みの延長線にあった出来事だと思います。Webマーケティングというフィールドで、「こうしたらいいんじゃないか」という理想を描いて、自分でトコトンやってみる。そうして大きな成果を上げるという成功体験も積むことができた。これは天職だと思うくらいにのめりこみました。

その時も「人から何かを言われて、それをやるのが苦手で、とにかく自分で意味づけしたい」というのは一貫していました。指示を聞いて動くというのではなく、自分でこうありたいという理想像を定めて進めていました。

酒井氏が担当していたのは、ある金融系メディアのグロースだ。さまざまあるメディアの中でも、収益性が高いながらもユーザーの特性が独特で、ユーザー獲得のマーケティングが難しい。また、SEOで重視されるパターンも頻繁にアップデートがかかるため、キャッチアップが大変な領域である。そんな中でインターン生ながら、SEO業界トップクラスの難易度とも評されるようなキーワードでの上位表示を実現させ、月間数千万円規模の売上創出に貢献した。

金田金融系メディアをグロースさせた力は、疑いようのないもの。まさに、先ほど紹介した「自身で理想を定義できる力」が育まれた時期だと思います。

ただ、キュービック時代を振り返ると、「チームプレーの精神に欠けていた」として当時の先輩に会うといつも平謝りしていると明かす。当時の酒井氏は「個人としての力を伸ばすことばかりに腐心していた」という状況でもあったのだ。

酒井当時の自分は「売上をつくれば、なにしててもいいでしょ」と思ってさえいました。完全に協調性が欠如していましたね。無駄な飲み会やコミュニケーションの場に巻き込まれたくないから、誰にも見えないようにオフィスの端っこで、ディスプレイの裏に隠れてずっと作業している状況。組織に身をおいて誰かと事を成すという観点では、非常に良くない立ち居振る舞いをしていました。一方で、目覚ましい成果を出し続けられたこともあり、自分のスタイルを正す機会をつくることなくインターン時代はそのまま終わってしまいました。

そして、そういった仕事のスタイルで限界にぶちあがったのが前職のオールアバウトでした。社内のリソースとアルバイトの人材を駆使して、またしても担当事業を月商数千万円ほどまで大きくしたのですが、正直そこからは踊り場に差し掛かってしまい……。さらなるグロースを探りましたが、「これ以上を自分の個の力だけでやっていくのは難しい……」と行き詰まりを感じたんです。現実に直面させられた感じでした。

事業としてはたしかに大きくなっているのですが、なんだか芯を喰わない。もっともっと、本当に高みを目指して大きくしていくのであれば、優秀な人たちを採用・育成し、ちゃんとマネジメントしてまとめ上げていく必要があると思い至ったんです。チームの力で一つのコトに向かうということですね。今思えば当たり前なのですが、当時はこの考えに至ることが、なかなかできませんでした。

そう、なんとなく気付き始めはしたものの、それまで培った立ち居振い舞いを大きく変えないかぎり、事業の非連続成長を生み出すことはできない。そんな現実が酒井氏の前に立ちはだかっていた。そんな試練を前にして、酒井氏が「プロフェッショナルプレイヤー」の延長から事業家へと変容をはじめたときに、金田氏との運命の出会いが訪れることになる。

金田僕たちの出会いは本当に運命的だったと思います。僕がオールアバウトさんに協業の提案を持ちかけたことがあったんですが、その事業部長が酒井の上司でした。その時、オールアバウト社内で「アルゴリズム社の金田さんという人からこんな提案が来たんだけど、どう思う?」と投げかけられた当の人が酒井だったんです。酒井もそれで僕の名前を知ってくれて「面白いことをやっている人がいるんだな」と思ってくれたようで、その3日後にはなんと転職サイトでそうとは知らずにスカウトを送ったらたまたま酒井とマッチングできてしまって。

翌日の朝にはすぐに会って選考を進めるなかで、僕たちの「自分たちにしか出来ない突き抜けた事業や仕組みをつくりたい」「何をやるかよりも、どうやるかが大事」「自分たちが探究するプロセスをトコトン楽しみたい」そんな価値観にとても共感してくれて、すぐにジョインを決めてもらいました。

酒井勝俣と金田の価値観への共感がものすごく大きかったですね。絶対に、“人”のせいにしない、失敗があれば仕組みを疑う、そんな姿勢が、理想的だと感じました。

加えて金田は、前職で協業提案をもらったときからキレッキレの提案内容を見ていて、目の前に相対して話す中で、自分の何倍もすごいビジネスパーソンであることが明らかでした。一緒に働くことで自分にないものを学びたいと強く感じました。

運命的に思える邂逅となった当時、アルゴリズムは組織課題が思い切り表出したフェーズでもあった。そんな火中に飛び込むことになった酒井氏は早速、試練を迎えることになるのだが、これが、ビジネスパーソンとして一皮むけ、非連続成長を請け負うことができるようになるきっかけにもつながっていく。

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「知的探究」への共感が、事業家としての脱皮につながる

アルゴリズム入社後2か月のこと。酒井氏は、事業責任者を担うこととなる。これだけ聞くと「大抜擢だ」とポジティブに感じるかもしれないが、そんな生易しいものではなかったと振り返る。

酒井前者でNo.3だった事業責任者が辞めることになったんですよ。15人居たチームのメンバーが、いきなり宙ぶらりんの状態になりました……。その時に勝俣から「事業部長を任せたい」と。

本当は、キュービックのときのように1人で隠れて仕事して成果を出していこうと思ってしまう自分がまだいました。そうではなくチームを率いるのであれば、自分に合う人を一から採用して業務委託や組織をつくれたほうがおそらく効率がいいと感じてもいました。

それでもふとした瞬間に、「もしかしたら、ほぼ初対面のこの15人を率いて成果を出せたら、相当すごいチャレンジになる」と思い至ることができたんです。それまでの自分では絶対に選び取らないような選択肢でしたが、前職までに積み上がっていた課題意識も背中を押してくれて、自分なりにここでの挑戦に深い意味づけができて、勝俣のリクエストを引き受けることにしました。

「個としてもがき、結果を出そうとする」ところから「チームを率いて、コトを成す」。言葉にすれば簡単だが、認識の転換・変容には途方もない痛みを伴う道のりだ。そうした茨の道を、自らの意味づけと共に歩みだした酒井氏に、遂に事業家としての才能が開花した。もがき苦しみながらも、実質的な組織崩壊から1年半ほどで、売上数十億円を生み出すまでの事業・チームを成立させたのだ。

一人で黙々と取り組むマーケターからの脱皮。それを可能にしたのが、まさに彼が希求し、大切にし続けた「意味づけする力」であり、自分自身すらアップデートしていくことを楽しみ続け、ビジネスマンとしてもどこまでも深みを目指そうとする「知的探究心」だったと言える。

金田理想を描けること。それに執着して考えつづけられること。そして、ちゃんと実行していくこと。何よりも、こうしたプロセスの全てに自分なりに意味づけをして、楽しみを見出して自走できることが、酒井のなによりの強みだと思います。

しかも、理想に対しての飽くなき探究、こだわりが強いだけでなく、常にクリエイティブな思考を忘れず、遊び心があって、たくさんの手法をとれる。

20代のうちからこうした進め方ができる人はそう多くないと思います。たぶんそれができるのは、ただの「仕事」として取り組んでいるのではなく、自分なりに深い意味づけが出来ているからこそ、純粋な好奇心やワクワクするモチベーションが湧いてきて、それによって「仕事」が探究という活動にまで昇華されているからなんだと思います。

ここまで聞くと、勝俣氏や金田氏と共通する「知的探究」への強い共感があったから、あるいは「意味づけする力」を多分にもっていたからこそ、強くコミットできているのではないかと感じられる。それももちろんそうなのだが、一方でこの経営陣二人とは明確に異なることを意識してもいると語る。

酒井勝俣や金田と一緒に仕事をしつつ、現場のこと・メンバーの気持ちを何よりも理解してあげられる立場として会社やチームに貢献したい、という気持ちを強く持っています。

僕自身はずっと会社員でしたから、経営陣よりは現場の社員の気持ちがわかる。例えば、経営者は意味づけ力の塊みたいなもので、「これをやるんだ!」という強い動機や理由をもって、最高のモチベーションから物事をスタートできますよね。でも社員はそうはいきません。

場合によっては本意ではないかもしれないけれど、必要に迫られて「組織の中で与えられた役割」を果たさなければならないシーンも少なからずあったりします。それらに対して、後付けだとしても「これをやる意味が、自分にはあるのだ」と言い聞かせて動くことが必要になります。

誤解を恐れずに言えば、勝俣はこうした“意味づけ力”を考えるよりも、とにかく自由に挑戦し続けている感じです(笑)。金田も、直感を大事にして事業に邁進している。二人は純粋な探究心の塊みたいな存在だから、“必要に迫られてしなければいけない”というメンバーの葛藤や悩みは共感しづらいかもしれない。

だからこそ、そんな経営陣と社員一人ひとりの間で、自分が橋渡しになれる。そう信じていますし、自分がアルゴリズムという場にいたい理由の一つでもある。そんな風に自分の立場やこれまでの経緯にもすべて自分なりに深く意味づけを行っています。

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「アルゴリズムでの仕事に命をかけると決めた」
自分が見出した意味を経営陣に赤裸々に語り、生まれた信頼。これが組織の成長に

今でこそ“人生の全てを賭している”といってもいいほどこの会社で働くことに深い意味を見出した酒井氏。だが、こうした意味を見出したのは、事業責任を負ったばかりで暗中模索の中でもがきながらも成果を創出しようとする最中だったという。「意味づけ」を象徴する物語として、最後に当時のエピソードを具体的に聞いてみたい。

金田酒井が入社してくれたのは組織の崩壊直後だったこともあり、メンバーからの信頼関係も地の底まで堕ちていて、経営陣自体が誰かに「なにかを信じて託す」ということ自体、怖くてできなくなっていた時期でした。

そんな中で希望の光として入ってくれたのが酒井でしたが、正直、酒井に事業を任せたとしても、「彼もいずれはいなくなってしまうんじゃないか」という不安や恐れの気持ちはすごくありました。「一緒に頑張っていこう」といっていたメンバーが次々と去っていたから、「何が本当で何が嘘なのか、誰かを信じても裏切られるんじゃないか」とトラウマになっていた感じです。でも、2021年夏の経営合宿が転換点にはなりましたね。

その状況を打破するためにはまず本当に深い信頼関係を築くことが必要だと思ったんです。そのためには会社や事業云々ではなく、まず「人」の話をしようと決め、6時間くらいかけてお互いの人生について深く語り合いました。この場で、酒井と勝俣と、文字通り「自分の人生の物語」をすべてさらけ出して伝えて、どんな思いでこの会社に向き合ってきたのかを伝えたんです。

酒井この時のやりとりを通して、自分の中で意識が変わりました。二人の人生の物語を聞いて、自分の中で「会社を成功させる」「事業家として成長する」といったわかりやすい意味だけではなく、この場に自分が存在することのもっと深い意味が見えてきたんです。

価値観の共鳴しあう彼らと一緒に「二人が描く景色を一番近い場所でどこまでも見届けたい。応援したい」と思ったんです。合宿のすぐ後に勝俣と二人で喫茶店に行き、この気持を赤裸々に伝えました。そして、「いくつかやっている副業もすべてやめて、アルゴリズムでの仕事に命をかけると決めました」と、ちょっと臭いセリフではありましたが、敢えて思いの丈を飾らない言葉で伝えました。

そしたらこんな真剣で青臭い思いをぶつけられたのが初めてだったのか、勝俣も面食らったようで「それ、とても嬉しい話で、金田さんにも伝えてほしいので、いま呼びますね」と嬉しそうな、小っ恥ずかしそうな感じ言われて(笑)。そうして、改めて金田にも「なぜ自分がこの会社にいるべきか」「自分がこの場で果たしたい役割」「この会社をどうすればもっと良くできるか」といった想いをトコトン伝えました。

出会ってから一番真剣で、そして、静かな熱を帯びた酒井氏の決意表明は、組織崩壊を経て信じることに臆病になっていた経営陣の心をほどくには十分だった。二人とも、この対話、時間があったからこそ今の関係があると、恥じらいながら語り合う。

金田僕も勝俣も、どちらかというと一人ぼっちでもくもくと探究しているタイプです。でも、ずっと一人でやるだけというのも少し寂しいじゃないですか。同じ価値観に共鳴してくれた仲間と、一緒に旅を楽しめたら喜びは何倍にもなるし、苦しいことは何分の一にもなる。そんな仲間に出会えるのは何よりも幸運なことだと思っています。

その意味で、これまで「この会社に命をかける」と言ってくれる仲間は他に居ませんでした。酒井がそうやって宣言をしてくれたことによって本当の意味での仲間が増えたと感じて、本当に、本当にうれしかったですね。その時は恥ずかしさもあり、「そうすか!」みたいな不器用すぎる反応になってしまったのですが(笑)。

酒井僕も「ありがとう!」とか言われたかったわけではなかったのですが、ただこの時、金田がおどおどした感じだったのは印象的ですね(笑)。

こうして酒井氏はより一層、以前はできなかったような挑戦ができるようになった。金田氏はより多くのことを、酒井氏をはじめとしたメンバーたちに信頼して任せることができるようになった。スタートアップの組織とは、このようなハードシングスを乗り越えられるかけがえのない仲間に出会えること、そして「意味づけ」に真剣に向き合うことで、一人ひとりがこの場にいる「深い意味」を見出していく過程を通じて、成長していくのだろう。

ただ、この会社がユニークなのは、どんなハードシングスも「知的探究の対象」としてワクワクする心で楽しみ、過去を振り返って「自分たちの成長には必要なプロセスだった」という前向きな意味づけを徹底してできるということ。勝俣氏も金田氏も、そして酒井氏もみな、過去の失敗やチャレンジをいつも笑顔で懐かしむように語ってくれるのだ。

さて、年商40億円を実現しつつ、さらなる成長を目論む彼らは今、本格的な組織づくりに着手している。「事業ありきではないその背景にある”知的探究”を大切にする」「各自がこの場にいる深い意味を見いだせる場をつくる」というメッセージは、自分の力を解き放ちたい、輝ける場所を探したいと希求する若者によく刺さっており、採用活動を順調に拡大させている。

それでも彼らは決して気を緩めない。なぜか?それは、組織づくりはメンバー一人ひとりの深い意味づけ抜きには成立しえないからだ。各自がここで頑張ることに深い意味づけを見出せるようにサポートする、もっと言えば、全員がこの場で「活かされる」と感じられるような場づくりに挑戦するのは、知的探究の対象としても最高のテーマだからだ。そんな想いを胸に、メンバーが輝くために常に「あれはできないのか?」「こうすればもっと良くなるのでは?」と酒井氏を筆頭にした経営チームは常に考え続けている。

そんな中、最後に、金田氏はこの記事を読んでいる20代へのメッセージを語ってくれた。

金田会社の売上が大幅に伸びて、人もどんどん入ってくる状態で、何よりも重要になってくるのは、社内でのロールモデル・成功事例だと思っています。僕や社長はどうしても異質な存在に見えがちで、ともすれば「彼らは雲の上の人で自分は到底そんな風になれない」と思ってしまう人も多いと思っています。

そんなときに、苦悩し葛藤しながらも自分なりに”この場にいる”ことの深い意味を見出して変容を果たした酒井の姿は、社内のメンバーやこれから入ってくる若手の方たちにとってロールモデルになると思っています。

「個人として能力を開花させていきたい」という思いからスタートしたところも、若手の人には共感をしやすいところだと思います。30人という少数精鋭の組織だからこそ、酒井氏と近い距離で対話して、その真髄をダイレクトに学び取れる。これも“今のアルゴリズム”ならではのメリットだと思っています。

弱冠26歳ながら、短期間で成長ステージをどんどん駆け抜けている酒井氏が紡ぐ生の言葉、感情を、眼の前で仕事を通して、あるいは背中を通して学びとれる。そして自分が抱く悩みや葛藤にも、同年代だからこそ等身大で分かち合える。

金田こんな人と一緒に働いてみることに少しでも価値を感じる方、あるいはここまでの物語を見てアルゴリズムという場で一緒に探究という営みに挑戦してみたくなった方、さらには「働く」という言葉だけでは語り得ない高次の意味を見出したい方はぜひアルゴリズムの門戸を叩いていただけたら嬉しいです。

酒井自分の人生をこの会社にかけるに足る意味を自分自身で見いだせてから、人生も事業もあらゆる側面で、何十倍にも学びが加速して、深まっている実感があります。

成長を強く望む方や、「ただ上を目指すだけみたいな生き方はなにか違う」ともやもやしている方、なんとなくもっと出来ることがあるんじゃないかと思っているが今の職場ではそれが実現できていないと感じる方。そんな皆さんに対して、アルゴリズムでは知的探究心を大切にしつつ、自分が人生を通して学んできた「意味を見出す力」を伝えていきたいと思っています。

自分が腹落ちできる意味が見出せた時、その人の人生は何倍にも深みが増すし、仕事を通して感じる喜びもひとしおになると思います。そのうえで、そうした状態をもとにして、一緒に理想の事業も追求していくんです。こんなチャレンジ・変容ができる環境はほかにないと、胸を張れるような場づくりをこれからも目指して探究を続けていきます。

金田氏と酒井氏を中心に、アルゴリズムがこれからどんなドラマを描くのか。まだ、その幕は上がったばかりで、年商40億円といっても序章に過ぎない。各自が紡ぐ物語、そこに見出される深い意味新たな物語が紡がれていくのを楽しみにしたい。

こちらの記事は2022年08月30日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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執筆

上野 智

写真

藤田 慎一郎

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