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「夢追う人をサポートしたい」完全食COMPを世界に広める最強の5人衆

ビジネスパーソンにとって“食”は十分なパフォーマンスを発揮するため必要不可欠な要素だ。しかし、忙しい中、さほど気に掛けられないというの...
ビジネスパーソンにとって“食”は十分なパフォーマンスを発揮するため必要不可欠な要素だ。しかし、忙しい中、さほど気に掛けられないというのが大半の意見だろう。食べる時間さえもったいない、そう耳にすることも多い。株式会社コンプCEOの鈴木優太も典型的なそのタイプだ。そのため時間がかからず食べられ、栄養も完全摂取できる。そんな“Supreme”なフードを作るのは当然のことだった。
あの注目のスタートアップは、どのようにして生まれ、いま何を目指しているのか──
  • TEXT BY REIKO MATSUMOTO
  • PHOTO BY YUKI IKEDA
17-12-31-Sun
鈴木 優太 (すずき・ゆうた)
株式会社コンプ 代表取締役CEO
荒井 宏之 (あらい・ひろゆき)
株式会社コンプ マネージャー
萩野 貴拓 (はぎの・たかひろ)
株式会社コンプ CTO
田中 宏樹 (たなか・ひろき)
株式会社コンプ 
福田 千里 (ふくだ・ちさと)
株式会社コンプ 

ビジネスパーソンにとって“食”は十分なパフォーマンスを発揮するため必要不可欠な要素だ。しかし、忙しい中、さほど気に掛けられないというのが大半の意見だろう。食べる時間さえもったいない、そう耳にすることも多い。株式会社コンプCEOの鈴木優太も典型的なそのタイプだ。そのため時間がかからず食べられ、栄養も完全摂取できる。そんな“Supreme”なフードを作るのは当然のことだった。

栄養失調から創業した研究者

コンプ代表取締役の鈴木優太は学生時代、専攻していた薬学の研究や趣味のプログラミングに没頭するため、食事に時間を割くのがイヤでたまらなかった。

当時鈴木が空腹を満たすために利用していたのは、片手で食べられるコンビニおにぎりや機能性食品。栄養バランスのよさを謳った商品もよく選んでいたが、毎日食べ続けた結果、あるとき栄養失調で倒れてしまう。

しかしそれが転機になった。「手軽に取れる完全栄養食がないなら、自分で作るしかない」。そう、一念発起するに至ったのだ。

参考にしたのは、栄養失調で倒れたちょうどそのころアメリカで発売された完全食。生きるために必要な栄養素がすべて含まれていることを知り、当初は購入を検討したが、個人輸入するには関税が高い。

しかも、アメリカ人の身体に合わせて作られた商品であったため、日本人に合わせてチューンナップする必要もあった。

そこで早速、研究で身に着けた知識をフルに活用して、Amazonで買い求めた原料をベストなバランスでブレンド。自作の完全栄養食を完成させた。

試作品第一号の実験体はもちろん自分だ。2~3か月間、他のものを一切摂取せずとも身体に支障が出なかった。それどころか極めて体調は優れていた。

そこでまずは、オンラインで配合比率を公開するサイトを立ち上げた。するとすぐに評判となり、開発した自身の商品の販売を決意。

Amazonで購入したタンパク質や炭水化物の粉を大型の袋に詰め込んでブレンドし、同じくAmazonで仕入れたチャック付き袋に小分けしてお手製のロゴを貼るところからCOMPの原型はスタートした。

当時の居住地は福島県。修士・博士を含む東京でのトータル9年間の学生生活を終え、薬学メーカーに就職し、約3年が経った頃だった。

9時出社、17時退社で帰宅した後のプライベートの時間は、すべて粉の調合や発送作業に充てていた。

そんな中、商品を購入してくれた客のひとりに共同創業を持ちかけられる。「考えるより前に心が動いていた」と語る鈴木は、勢いですぐに退社。すぐに東京に引っ越すことになる。

「会社での仕事もそれなりに面白かったけど、私よりその分野に優れた研究者は他にもいましたし、そのうちAIに仕事が代替されてしまう危機感もありました。でも、完全食に関しては日本の第一人者になれると思ったんです」

さらに、食品を扱うのは初めてとはいえ、栄養もつきつめれば原子や分子の集合体。一つひとつがいかに身体に作用するかについて考えることは薬学と似ている。

食品に関わる知識は一から勉強したことではあるが、相当なスピードで吸収していった。

もちろん、OEMメーカーを探したことなどない。工場を作るための資金集めにクラウドファンディングを利用した際も、「健康食品と判断した」という理由から、なかなか掲載許可を出してくれる相手に巡り合えなかった。

しかし、トライアンドエラーの末、資金調達に成功。そこから一気に軌道に乗りだし、鈴木と同じように好きなことに没頭しがちなITエンジニアやゲーマーを中心に顧客層が広がっていった。

拡散にあたってはSNSをフルに活用した。「コンプの中の人」としてアカウントを開設し、自ら消費者の声を拾った。

未だにユーザーからの声を吸い上げ、バージョンアップを繰り返すのがコンプ流だ。2017年7月にはUHA味覚糖と共同で新商品となるグミタイプを開発。こちらもファンの声に応えながら、固さなどを随時調整し改良し続けている。

鈴木「栄養学的には発売直後から100%の商品を提供すべきですが、その他の要素は50%でいいと思ってる。販売してからユーザーの声を聴いてそれを反映していくのが理想。いい商品をいち早く世の中の人に届けることのほうを優先していきたい」

コンプの愉快な仲間たち

そうしたスピードの速さや独自の発想が支持され、メンバーも徐々に増えている。設立直後から付き合いをはじめたのは、経営企画・人事を統括するマネージャーの荒井宏之。

荒井宏之

ITのスタートアップ立ち上げや成長期に過去に6社ほど携わってきたという荒井は、COMPを自宅で製造していた時代から鈴木の身近にいたというが、初期のころは「まずすぎるし、栄養機能食品なんて自分には必要ない」と反発気味だった。

しかし、鈴木の唯一無二の言動に触れ続けるうち、「この男は日本のスティーブ・ジョブスになれるに違いない!」と確信。鈴木からのスカウトを何度も断り続けていながら、最終的には自分から入社を直談判したという。

さらに、HR Tech系ベンチャー企業の社員として活動しながら、週末はスタートアップの事業立ち上げやマーケティングの支援をしていた萩野貴拓との出会いも、コンプにとっては有益だった。

現在萩野は、休日をコンプのECシステムの開発や顧客のデータ分析に充てていることに加えて主要な会議にも出席する、いわゆるパートタイマーという立ち位置でありながらCTO職に従事している。

萩野貴拓

「才能あるイノベーターは、周りが後押ししてあげる必要があるものなんです」という言葉通り、「もともとはウェブサイトを作ったり商品をブランディングしたり、採用のことに口を出ししたりと、色々手を広げていましたが、現在では本来担うべきテクノロジーの部分を手伝っています」と、コンプの強みや注力すべき点のすべてを知り尽くす男だ。

半年前にジョインしたのは、前職では国立研究所に勤務していた田中宏樹。

田中宏樹

大学時代にトレーニングにのめりこんだことで機能性食材が生態に及ぼす影響に興味を持ち、修士課程を経て研究所に入ったという生粋の研究好きでもある。まさにコンプ社が完全食を完成させるために不可欠な人物だ。

転職を考えた際には、スポーツサプリメントのメーカーも考えてみたというが、サプリの顧客はアスリートに偏りがちであることに対して、完全食の顧客はより幅広い層であることに着目。「多くの人に栄養に関する正しい知識を広めたい」とコンプへの入社を決めた。

また4か月前には、出版社や広告業界で制作全般に関わってきた福田千里も参画。クリエイティブまわり全般を担当する人材が参入したことで、企業や商品のブランディングがより理想的なものに近づいた。

福田千里

鈴木「入社3週間後にはサービスのブランディングに付随する企画書を渡されたんです。こちらが頼んでいないのに、コンセプトから発注先企業の選定まですべて勝手にやってしまっていた。」

そう語る鈴木だが、実際にその企画書に目を通し「なるほど…」と目を瞠らされたという。

これに対して福田は、「任せてもらえることが多いから、そのぶんきついけど楽しい。それに鈴木さん自身の意思決定が早いから、すぐに答えが返ってくる。仕事しやすい環境です」と本音を明かした。

さらに荒井も、「今の規模だからこそ味わえる、会社がどんどん伸びていくことに対する高揚感もあると思う」と仕事の楽しさを語る。

過去に数社のスタートアップに関わり、成功も失敗も経験している荒井にとっても、フードテックベンチャーは初めての事業。「IT業界からコンプに飛び込んだ楽しさはそこにある」と語り、現在人材系のITベンチャーに所属する萩野も同調した。

また、研究開発を担当する田中は現在、現行品のパウダーのバージョンアップを任されているという。

田中「今後は不足している栄養を補う以外に、新しい機能も追加していきたい」

そうはいうものの、現行品自体もレベルが高い。栄養面において一日の必要摂取量を十分に満たしているだけでなく、通常の食事を取ったときと比べて血糖値があがりにくいのもコンプが提供する食品の大きな特徴だ。

鈴木「昼食後に眠くなることにストレスを感じてるエンジニアは多い。COMPの場合は栄養素のバランスを調整し、血糖値があがりにくいようにしています。その点に対しての支持も大きいですね」

また、どんな栄養素がどれほど配合されているかをきちんと明示しているのも大きなポイントだ。

鈴木「日本人は栄養リテラシーが低いから、そこにつけこんで曖昧なエビデンスしかない健康食品がまかり通ってしまいます。コンプの役割は、そうした情報弱者を騙して商品を売るビジネス形態を打破することにもあると思っているんです」

将来的にコンプは、普段の食事においてはどんな栄養素が摂取しづらく、どんな栄養素が必要不可欠であるかも伝えていける存在を目指している。

完全食のパイオニアとして正しい姿勢を示すことで、すべての食品販売関係企業にも、栄養についての意識を高めてほしいと考えているのだ。

「将来的には、おいしいから毎日食べていたらこれって完全食なんだね、と思う人がたくさんいるくらい、もっとおいしさにもこだわっていきたい」

グミのように手軽に口にできるものを増やしていくだけでなく、味のバリエーションも増やしていく予定だ。

また、販売経路の拡大も検討中。スーパーやコンビニでCOMPの販売がスタ―トした暁には、日本人の栄養リテラシーも大きく向上するだろう。

「コンプが完全食を提供するのは、夢を追う人をサポートしたいからです。体型1つとっても、ユーザーそれぞれが目指している理想の姿は違うはず。なりたい姿になるという夢も叶えられるように、カスタマイズしていけるような商品も開発していきたいと考えています」

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あの注目のスタートアップは、どのようにして生まれ、いま何を目指しているのか──