INTERVIEW

3度目のCEO職に挑む男が明かす、成功確度を圧倒的に高める起業論

「起業」の多様化が進んでいる。

独立だけでなく、社内起業のケースも増えてきた。
とはいえ、後者の場合は「親会社からの制約で自由度が低い」といったイメージを抱く読者もいるかもしれない。

そのメリットと実状を明らかにすべく、「永久進化構想」を掲げ、
起業家輩出に尽力するクルーズグループで起業した、長浜怜氏に話を伺った。
オンライン商談システムを軸としたインサイドセールス・営業支援を行うYES株式会社で代表取締役社長を務める長浜氏は、
前職のサイバーエージェント時代も含め、これが3度目のグループ内起業だ。

YESとして起業のフィールドに選んだのは、長浜氏が最も得意な「営業」だった。
現在は3名の創業期だが、長浜氏が持つ数々の「営業ノウハウ」もあり、すでに多くの引き合いを得ているという。
自ら「強者の戦い方」と評する、長浜流の起業論を訊いた。

  • TEXT BY MASAKI KOIKE
  • PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
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インタビュイー

長浜 怜 (ながはま・れい)

YES株式会社 代表取締役

長浜 怜

ながはま・れい

YES株式会社 代表取締役

1981年生まれ。2004年株式会社サイバーエージェントへ新卒として入社。ネット広告営業統括を経て、2010年に株式会社App2goを設立し、代表取締役に就任。ネイティブアドや動画広告アドネットワークの開発、販売を行う。2016年より株式会社AbemaTVの広告部門を統括。2018年にクルーズグループに参画すると同時に、CROOZ SHOPZONE株式会社の代表を経験後、現在はYES株式会社の代表を務める。

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たしかな実績と手応えを得て、起業の道へ進む

「営業であの人の上に出る人はそうはいない。ネット関連のサービスなら、売れないものはない」

長浜氏は、周囲からそう評価されている。新卒でサイバーエージェントに入社し、インターネット広告代理事業に従事。一貫して営業畑を歩み、営業部門の統括も経験した。こなしたアポイントの回数は数千にのぼり、決裁権者への営業回数でさえ1,000回を下らない。

入社から9年が経過した頃、顧客が求めている商品を自分自身で生み出せないもどかしさと、0→1での事業創出を手がけたい気持ちが強まり、社内の事業創出制度「あした会議」を利用して代表の藤田晋氏に直接プレゼンすることでチャンスを得て、株式会社App2goを創業した。

長浜サイバーエージェントは「小さく産んで、大きく育てる」を大事にしている会社。M&Aをほぼ行わず、手がけたいサービスは自前で子会社や事業部を立ち上げます。自分の手で事業を創りたい僕のような人間にとっても、非常に良い環境でしたね。

App2goでは動画広告をはじめとした広告商品の提供や、アドネットワークの開発・販売を手がけたが、AbemaTVの広告部門の立ち上げ責任者を打診された機会に、共同創業者へ会社を引き継ぐことに。

AbemaTVでは、それまで手がけてきたインターネット広告とは全く異なる、テレビCMと似た仕組みの広告事業の開発で刺激的な日々を過ごす。

もともとサイバーエージェントには、マネジメントノウハウを身につけたいという希望を胸に入社したという。たしかに期待以上の経験を積めたが、今度は「外へ出て起業をしたい想い」が抑えきれなくなっていった。

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「勇気ある撤退」を評価し、挑戦を後押しするクルーズカルチャー

「投資家からも出資オファーをいただいたし、共同創業しないか?というオファーもいただいた」という長浜氏が、次なる挑戦の場として選んだのは、独立起業ではなく、クルーズグループでの創業だった。代表の小渕宏二氏の魅力もさながら、長浜氏を強く惹きつけたのは起業を支援する体制だ。

長浜「近い距離感で接してくれる小渕社長とであれば自分のやりたいことができそうだ」と思え、かつクルーズなら独立起業と変わらない裁量を持てそうだったので、ジョインを決めました。

またメイン事業を常に刷新しながら、17年間黒字経営を維持してきたクルーズに蓄積された経営ノウハウを学びたかったことも、理由のひとつです。

以前にFastGrowでも取り上げたが、クルーズは「永久進化構想」のもとにグループ内での起業家輩出に注力している。基本スタンスは「お金は出すが、口は出さない」。月に1回30分だけ、最低限の報告を行う機会はあるものの、それ以外の義務を負うこともない。もはや1社から投資を受けて独立起業するのと変わらない状況ともいえる。

長浜若手時代から意識的に「決断」する機会を増やせるようにキャリア形成してきた自負もあるので、自分の決定には自信を持っています。だからこそ、起業家としての決断を尊重してくれるクルーズが向いていたんだと思います。

そしてグループ内起業であれば、お金から人脈、信用力まで、親会社の潤沢なリソースを十二分に活用して、スピード感を持ってビジネスを進められます。対して、自己資本をベースにする独立起業では、資金繰りのためのステークホルダーとの調整や契約書対応など、起業以外の庶務に奔走する必要が出てきてしまう。だからこそクルーズは「起業後の失敗確度を低くし、事業拡大を進めたい人」に向いている環境ではないでしょうか。

親会社の事業ドメインに関係なく、手がけたい領域で起業できるのもクルーズの強みだ。「永久進化構想」のゴールは「インターネットの時代を動かす凄い100人を創る」であり、そのための領域には制約がない。

蓄積された親会社のナレッジを活用できる機会もある。たとえば、上場企業であるクルーズの創業後17年間の事業ノウハウがふんだんに盛り込まれた、リスクヘッジを目的としたチェックリストは、なんとスライドで500ページを超える。こうした「上場企業だから把握できた経験知やノウハウ」を、上場を経験せずとも活用できるのは大きなメリットだといえるだろう。

そんな長浜氏はクルーズへジョインすると、かつてより手がけてみたかった衣食住に関わるサービスに狙いをつける。そして、ファッション通販サイト「SHOPLIST.com by CROOZ」の姉妹サイト「SHOPZONE」を分社化し代表として事業拡大を担うことになった。

ファッション業界は未経験ながらも、ブランド誘致から広告での集客、顧客単価アップ施策まで、10ヶ月間立ち上げに奮闘したが、数ヶ月たった段階で、様々な理由でSHOPLISTと統合した方が、ユーザーにとっても、ブランドにとっても、またクルーズの売上にとっても良い方向に貢献できると判断し、2018年12月にはSHOPLISTに統合する決断を下した。

長浜もちろん僕個人の意思決定としては辛さも感じましたが、クルーズではそうした意思決定を「勇気ある撤退」と呼ぶんです。その選択自体をポジティブに評価してくれる文化があるので、怒る人なんて一人もいませんでした。やってみて「違うな」となったら潔く軌道修正し、適材適所で別のビジネスに人を配置する。その文化のおかげで、スムーズに次の挑戦へ移れましたね。

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自分が最も得意とする領域で起業せよ

次なる起業のフィールドとして長浜氏が選んだのは、最も得意な「営業」である。

SHOPZONEのSHOPLISTへの統合の相談を行なった直後に、小渕氏や新規事業担当の管掌役員と合宿し、YES株式会社の創設を決めた。YESはオンライン商談システムの販売を軸にテクノロジーを使って営業の効率化、インサイドセールスを行う。長浜氏が長年の営業経験で培った現場目線を活かしたインサイドセールス支援だ。

長浜既存の(営業支援)システムは、「デモツールとほぼ変わらない」という声を知り合いの営業経験者からよく耳にします。検討期間が長く、商談が長期化するようなコンサルティング型商材の営業には、適していないんですよね。対してYESでは、受注率が高い商談を自動解析し、AIが最適なカウンタートークを行なってくれるような、今までカバーしきれなかったタイプの商談にも対応できる営業支援システムをつくりたいんです。

現在パートナーと共同で販売を進めているそのツールは、商談を自動で録画してくれる機能があり、トークスクリプトや提案手法を、YESのノウハウを活用してブラッシュアップ。クラウド型ツールとコンサルティングをかけ合わせ、クライアントの営業効率を最大化する事業モデルを構想している。

設立から1ヶ月あまり、3名で運営している創業期だが、既に多くの引き合いを得ているという。YESの強さの根幹は、サイバーエージェント時代から何千回もの実戦経験を通じて身につけた、長浜氏の類い稀なる営業ノウハウだ。

そもそも社名の由来も「僕の営業ルールの中には『No』がないから。難しい相談に対しても必ず代替案を示せないと、営業の存在意義がない」点にある。

長浜あえてお客様の想像を超える範囲で、代替案を出すようにしています。たとえば「1,000万円で提案してください」と言われて、予算を聞いてしまったがゆえに効果がなさそうな1,000万円のプランで提案するのは、すごく勿体無いと思っていて。

そこでもっと高い投資対効果が得られる5,000万円のプランを提案することで、「1,000万円出しても2,000万円しか儲からないけど、5,000万円出せば1億円儲かるのか」と思考が広がります。お題通りではなく、相手にとって純粋に良いと思えるものを提案する。そこまで含めて「『No』は言わない」ということです。

他にも長浜流の営業ノウハウは数多ある。

「会食の場で仕事の話は絶対にしない。リレーション構築のための話をしつつ、その会社の課題感をそれとなく探っておき、最後に『このあたりが課題だと思うので、1週間後にご提案だけ行かせてください』とアポイントを取り付ける。お酒の力を借りて商談するのはフェアじゃない」

「コンペは営業の場ではなく、受注を確認する場。当日、担当者が自社の提案を全く知らない状態から提案して勝てるわけがないので、事前に何度も連絡してソリューションを説明し、要望と乖離がある点はすり合わせておく。そのためにも事前の人としての関係性づくりが大事」

これらは取材で聞けたその極意の一端に過ぎない。

長浜3社の起業を経験して学んだのは、自分が一番得意な領域に取り組むのが、最もスピーディーに事業を成功へと導けるということ。自分が得意な領域を事業の軸としつつ、苦手な部分は他のメンバーに補完してもらうのが、成功への近道です。

そして、グループ内起業の場合は、グループの中でカバーされていない領域だとより望ましいでしょう。そうすれば起業する人も親会社もwin-winの関係になれるので。クルーズにはまだ営業特化の組織がなかったので、そういった意味でもYESは上手く収まっていると思います。

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独立、共同創業、グループ内起業…「最適」な起業スタイルとはなにか?

あらゆる起業スタイルを検討したうえで、あえて「グループ内起業」を選んだ長浜氏。考え抜いた末の選択のうえで、3回も創業を経験した同氏だからこそ、「起業に興味があるが、どういった起業スタイルを取るべきか分からない」と悩むビジネスパーソンの気持ちが、手に取るように分かるはずだ。最後に、そんな読者に向けたメッセージを訊いた。

長浜起業の方法には、たくさんの選択肢があります。僕自身も、先ほどお話ししたように、投資家にはじまり、共同創業を持ちかけてくれた人まで、さまざまな人に会いました。もし「どのような形式で起業しようか」を迷っている方がいたら、私にもアドバイスできることがあると思うので、ぜひ一度お話しできると嬉しいです。

また、YES自体も、創業間もないスタートアップです。今年中に100名採用する計画なのですが、今ジョインしてくれれば創業メンバーになれます。学生も社会人も、ビジネスの場では関係ありません。営業というフィールドを科学し、極めることに興味がある方がいれば、是非お会いしましょう。

インタビュイー

長浜 怜 (ながはま・れい)

YES株式会社 代表取締役

長浜 怜

ながはま・れい

YES株式会社 代表取締役

1981年生まれ。2004年株式会社サイバーエージェントへ新卒として入社。ネット広告営業統括を経て、2010年に株式会社App2goを設立し、代表取締役に就任。ネイティブアドや動画広告アドネットワークの開発、販売を行う。2016年より株式会社AbemaTVの広告部門を統括。2018年にクルーズグループに参画すると同時に、CROOZ SHOPZONE株式会社の代表を経験後、現在はYES株式会社の代表を務める。

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執筆

小池 真幸

編集者・ライター(モメンタム・ホース所属)。東京大学(教育思想)→某AIスタートアップ(マーケティング・事業開発)→現職。関心領域は、ビジネス・テクノロジーから人文知まで。

写真

藤田 慎一郎

デスクチェック

1986年生まれ、東京都武蔵野市出身。日本大学芸術学部文芸学科卒。 「ライフハッカー[日本版]」副編集長、「北欧、暮らしの道具店」を経て、2016年よりフリーランスに転向。 ライター/エディターとして、執筆、編集、企画、メディア運営、モデレーター、音声配信など活動中。

こちらの記事は2019年02月04日に公開しており、記載されている情報が異なる場合がございます。