「思考・分析→即検証」がカギ。高速PDCAの正体──ライブセッションのような価値提供、SaaS提供の理想像を探る【InsightX角氏・香取氏】

角現在のInsightXが事業領域としている「BtoC-EC領域」では、「感性・気分」と「ブランドの世界観」が重要になります。そこでの販売手法について、何か画一的な正解を押し付けるようなサービスでは、各ブランドの強みを削いでしまうことにもなりかねません。

角私たちのプロダクトには、「これを導入すれば、明日からすぐにこの管理画面でさまざまな設定ができます」という固定された機能はありません。あるのは、極めて柔軟で汎用的なコア・プラットフォームとしてのコードだけです。

導入が決まった後、DS（*1）主導で新規導入プロジェクトを立ち上げ、まずは当社のFDE（Forward Deployed Engineer *2）と組んで各企業のEC内のデータを事細かに確認し、分析していきます。

香取どのような商品が売れ続けているのか、どのようなお客様がよく訪れているのか、くらいは当たり前。ECでは、もっと多岐にわたる分析が、本来は可能です。

たとえば、購入可能性が高いはずのお客様がどのように離脱しているのか。カートに商品を入れた後に離脱しても戻ってくるお客様にはどのような特徴があるのか。どのような組み合わせで商品がおすすめされた際に購入率が高まるのか。どのような属性のお客様の購入率を高めることで、EC全体の売上増加が継続していきやすいのか。さまざまな分岐を考え、複数のデータを突き合わせることで、導入が決まったタイミングでの分析だけでも、非常に多くの示唆が得られます。

角その上で、クライアント企業のサイト構造やブランドの世界観や課題感に合わせたプロダクトの活用方針・実装の優先順位を組み、進め方について自信を持って提案します。

この時点で、「これほど細かな精度での分析を、こんなにスピーディーにいただけるとは思っていなかった」「過去に類を見ない情報量の施策提案だった」といったお声をいただくこともあります。そうして、EC改善の議論をリードし、確実に成果を生み出していくのが、我々DSの仕事です。

香取一般的なSaaSが「既製品のスーツ」だとしたら、私たちは「フルオーダーメイドのスーツ」に近い。けれど、ゼロから自分たちだけで生地を織るわけじゃない。良質な素材と型紙（コア機能）があり、かつ、多くの部分を生成AIで効率的に進められるよう全体を整理した上で、それらをどのように有機的に組み合わせていくべきかをクライアントと徹底的に議論して進めていきます。

このフローを、DSとFDEのタッグで丁寧に進めることで、どのような課題に対しても、圧倒的なスピードで、各クライアント企業向けの最適解を仕立て上げられるんです。

クライアントが「やりたい」と願ったこと、あるいは私たちDSが「こうすべきだ」と思ったことについて、「システム上の制約でできない」とは言いたくない。その想いをFDEが中心となって技術で受け止め、プラットフォームの活用によってスピーディーに形にしていくことこそが、私たちの価値なんです。

角受託開発の「自由度」と、パッケージSaaSの「スピードと汎用性」。通常はトレードオフとなるこの二つを、プラットフォーム型という発想によってうまく両立させることができています。この構造を実現できたことだけでも、他社にない大きな優位性であり、私たちの最大の武器です。

角クライアントの世界観やビジネスモデルという「器」に合わせ、DSとFDEの舵取りによってシステムの方の姿を変える。この柔軟性があるからこそ、大手企業の複雑な要求を「理想の形」へと昇華させ、実装できるのです。

角香取こそがこの役割に最もフィットする人物だという確信があり、リファラルで何度も誘っていたんです。数字に強く、コンサルタントとしての論理的思考力を持ちながら、何より人間として信頼できる。

でも最初は断られました。「友達と働くのは嫌だ」って（笑）。

香取はい、はっきり断りました。友人としての関係性が消えてしまうと、仕事の話で刺激を与えあうことができなくなるんじゃないかという不安があって。

それに、当時の私は転職なんて全く考えていませんでした。前職でのプロジェクトも佳境でそれなりに充実もしていましたから。

でも、角は諦めなかった。「なぜ今、香取が必要なのか」「二人でなら何ができるのか」。会うたびに、InsightXの可能性と、そこで私が担うべき役割について語り続けたんです。

香取最後は、「この仲間たちと、この難題に挑んでみたい」という純粋なワクワク感が勝ったんです。彼の話を聞くたびに、ここで挑戦したいという想いが、自分の中で次第に大きくなっていくのを感じました。

今では、彼が諦めずに誘ってくれたことに心から感謝しています。お互いの強みも弱みも理解しているからこそ、余計な腹の探り合いをせず、背中を預けられる。これ以上の「相棒」はいません。

角香取が来てくれて、組織の強度が劇的に上がりました。私が広げた風呂敷を、彼が緻密に畳んでくれる。私にとっても、彼以上のパートナーはいないと確信しています。彼となら、どんな高い山でも登れる。そう思えるんです。

角蓋を開けてみると、「雰囲気」を優先したモデルBの方が、クリック率でも購入率でも高くなる場合が明らかに多かったんです。“類似性”について、人間の意識的な感覚だけでは捉えきれないのだと驚きました。

角人間が「これとこれが似ている」と感じる尺度は、実は非常に複雑です。「赤いセーター」を見ている人が、必ずしも「赤色」に固執しているわけではありません。そのブランドが醸し出す「上品な世界観」や「リラックスしたシルエット」などに惹かれていることもあるため、色違いや、あるいは全く別のカテゴリーの商品であっても、その「雰囲気」さえ合致していれば「これこそが欲しかったものだ」と感じる可能性があるんです。

香取人間は論理的であるようでいて、実は直感的で、非合理な生き物です。特に、個人的な買い物の場面では、それが顕著に現れます。その無意識の欲求を、AIはデータから正確に捉えていた。

このように、データを活用し、人間の思い込みをひっくり返す。お客様の目の色が「疑念」から「驚き」、そして「信頼」へと変わる。この瞬間の知的興奮は、一度味わうと病みつきになります（笑）。

アパレルECという領域で、クライアント企業の皆さんも、私たち自身も、自らの感覚を疑いながらさまざまな検証を進めることで、日々多くの気付きが得られています。今後、ほかの領域へと事業を拡大していくためにも非常に有用な知見が多く得られているとも感じ、やりがいを強く感じますね。

角私たちは、作成済みのダッシュボードを眺めるだけで進む仕事をしているわけではありません。「なぜこのユーザーは離脱したのか？」「この画像を見た後に何を買ったのか？」という問いを新たにさまざまな角度から考え、その一つひとつを確かめるため、新たに生データを掘りに行き続けるんです。そしてどのような実装を進めるべきか、プロトタイピングまで自ら進め、スピーディーに具体的な検証や提案まで進めます。

香取見ている指標の解像度についても「もっと細かく、複雑に」と考え続けています。「ユーザーが画面をどこまでスクロールしたのか」「ランキングの何位の商品までが視界に入った（インプレッション）か」といった細かなデータを、どのように組み合わせて分析していくのか。日々、新たな発見があります。

もちろん、特に重要になるプロトタイプは、FDEともすり合わせた上で提案に組み込みます。ここがうまくかみ合えば、提案に対するクライアントからのGOサインの後、ほんの数日スパンでもFDEによる実装までできることすらあります。

ここまで解像度を高めて施策を実行していけるEC担当者は、世の中にほとんどいません。それを我々が代わって探り、プロダクトとして提供することで、この領域に大きな成果を提供しようとしているんです。

香取実は大学で物理学を専攻しており、根っからの数字好きでした。ですが前職では、クライアント企業が運営するシステムから細かな数値を見ることができず、とてももどかしかった。「もっと手触り感を持って、数字で事実を掴みたい」とずっと思っていました。

だからこそ、自分でSQLを叩いて「真実」に触れられる今の環境が本当に面白い。最初は不安でしたが、社内の分析基盤が整っていることと、生成AIの支援があることで、学習コストは劇的に下がっています。

角コンサルタント時代、私は「絵を描く」ことは得意でしたが、それを実装し、結果が出るまで責任を持つことは難しかった。でもここでは、香取のように自分でデータを分析し、仮説を立て、数字で検証しながら、新たな仕組みをエンジニアと実装し、その結果を見てまた新たな仮説を考える。このサイクルを、スピーディーに進められます。

つまり、「分析」と「検証」の間にタイムラグがないんです。戦略や仮説に強みを持つコンサルタントが、分析基盤を使いこなし、すぐに検証を進められるという環境に身を置いたら、どうなるか。手前味噌ですが、それはもう「鬼に金棒」なんてレベルじゃありません。思考のスピードを止めることなく、検証が進んでいく。 この圧倒的な回転速度こそが、私たちの競争優位性の源泉なんです。

香取私たちは、クライアントとの打ち合わせに、「持ち帰ります」を基本的に禁句にするくらいの気持ちで望んでいます。

クライアントから「こういう機能はつくれないか？」と相談された時、その場でFDEがたとえば「技術的には可能です。実装には数日あれば足ります」のように即答する。あるいは、議論しながらその場でFDEがプロトタイプを組み上げ、「こういうイメージですか？」と画面を見せることさえある。

角ビジネス（DS）と技術（FDE）が、脳を同期させながら、リアルタイムで、それぞれのクライアントに合うようにシステムをつくり上げていくイメージをする。実装から逆算して、必要な情報をヒアリングでとにかく多く得る。これはもはや商談や提案というより、顧客を巻き込んだライブセッションに近い感覚です。

香取FDEのメンバーは、常に「クライアントの事業が、どのように伸びるのか」という文脈を深く理解し、直結する開発を進めてくれます。だから「クライアントの課題はここで、目指すゴールはこれだ」という目的の部分についてとにかく深く会話し、すり合わせることを最重要視しているんです。

真に技術力が必要な部分は任せつつ、そのほかの部分はみんなで喧々諤々と議論し、最適な方向性をチームで探ります。実際に進めるのは大変ですが、チーム内の信頼関係があるからこそ、大胆な提案・実装を続け、成果につなげていけるのだと感じています。

角私は前職時代、新規事業立案のプロジェクトでアプリ型サービスの立ち上げに携わることができたのですが、UIの考え方もわからないまま手書きで画面イメージを描き、ターゲットユーザーの方々に直接見せて回り、少しずつ形にしていったという経験があります。あの時に感じた「自分のつくったものが誰かの役に立つ手触り感」が、今の原点です。

コンサルタント時代は「絵を描く」ことのプロとして頑張ってきましたが、InsightXではそれを実装し、結果が出たらさらに次の結果を……というところまで、大きな責任を持って取り組む必要があります。自分の市場価値を高めたいと願うビジネスパーソンにとって、これほど密度が濃く、手触り感のある「実践の場」は他にないと思います。

香取角が言う通りです。毎日、“文化祭の前日”のような熱狂があるんです。優秀なエンジニアやセールスと、ワンチームで難題に挑み、自分たちの手で最適解をつくり上げていく。これほど刺激的な環境に飛び込めたことは、私の人生にとって大きな財産です。