INTERVIEW
鷹取 真一 清水 一浩
18-02-22-Thu

個人間送金は日本で浸透するのか?
無料送金アプリKyashが描く“価値交換”の未来

PHOTO BY TAKUMI YANO
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法規制の厳しさなどから日本では普及が遅れる個人間送金サービス。

そんな雰囲気を壊すべく、無料送金アプリの展開を進めるスタートアップ、Kyash。

彼らはどうやって人々のライフスタイルを変革するのか。

そして、個人間送金サービスの未来に、何を目指すのか。

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Square日本法人立ち上げ経験者もジョイン

2016年12月、シリーズAラウンドで約10億円調達。2017年4月に無料送金アプリ「Kyash 」をリリースした際には、ローンチイベントにてメガバンク3行を始めとした80名の金融機関及びメディア関係者を集めた。

2015年創業ながら潤沢な資金と多大な注目を集めた株式会社Kyash。彼らに向けられた期待の理由は何なのだろうか。

KyashはFintech領域の中でも個人間送金をターゲットにしている。主な想定利用シーンはランチや飲み会、旅行、プレゼントの共同購入や社内販売など。少額での金銭取引をキャッシュレスで行えるというものだ。

提供:株式会社Kyash|Kyash

具体的な利用方法はアプリをダウンロードし、クレジットカードを登録。アプリ上で送りたい相手と金額を選択すればその場で送金が完了する。一回あたり10万円までの送金が可能だ。

清水Kyashのビジネスモデルを聞いて、このやり方だったら大きく普及し、成功すると感じました。直感だったんですが。

そう語るのはKyashのビジネスモデルに惹かれ入社した一人でもある、同社戦略VP・清水一浩。新卒でマッキンゼーに入社後、Googleに転職。AdWordsのプロダクトマーケティングマネージャーを務めた。

その後、「中小企業向けの決済サービスに携わってみたいと思い」、米国決済系スタートアップSquareの日本法人立ち上げに従事。そして再度Googleに戻りAndroidやGoogle検索のプロダクトマーケティングマネージャーを務めたという、異色かつ重厚な経歴の持ち主だ。

Squareという法人向け決済サービスでは世界最大規模のサービスに携わった経験を持つ清水。個人間送金サービスであるKyashに可能性を感じたのにも彼なりの理由があった。

清水Squareでの経験で、決済サービスの難しさは理解していました。Squareはアメリカでは個人間送金サービスも運営していて、日本でも同じことがやりたいと思っていたんですよ。しかし日本ではそういったサービスを開始できない理由が色々あったんです。

中国やアメリカでは一般的に普及している個人間送金サービス。そんな彼らが日本での普及が遅れている理由が様々あり、中でも大きな障害となっているのが日本の法規制である。

2009年に資金決済法が成立し、銀行以外の事業者でも送金業務を展開できるようになった。だが、そういったサービスを運営するには「資金移動業」の免許取得が必要であり、資金移動業者と認定されるとユーザーに厳格な本人確認手続きを要求しなければいけない。その手間がサービス普及をの障害となることは明らかで、運営会社にとってもコストとなる。

しかしKyashは、ユーザーに負担をかける本人確認なしに利用を始める事ができる。何故なのだろうか?

清水Kyashはお金を扱う事業者であり、当然ながら法律や各種ガイドラインにしっかりと準拠しますが、それと同時に、ユーザーの利便性の高さも実現したい。そこで我々は、Suicaなどのプリペイドカードと同じ「前払式支払手段」の事業主として金融庁から認可を取得しています。この仕組みであれば、ユーザーは使いたいと思った時にアプリをダウンロードし、すぐに相手にお金を送ることが出来ます。

同サービス利用者は、クレジットカードを登録することで即時に相手に送金を行う事ができる。また登録者には、アプリ上でVISAクレジットカードを発行。受け取った残高は、このクレジットカードを通じて、VISA加盟店のネットショップでの支払いに使用可能だ。

さらに、清水は「Kyashは完全無料のサービスを可能にしている」ことを強調する。

清水Kyashで発行されたVISAカードを使って買い物をする時に、支払い先の店舗から手数料をもらうというビジネスモデルをとっています。そのためユーザーは、お金のやりとりに際して一切手数料を支払う必要がありません。

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金融業界の実情を理解し尽くしたCEO

登録に手間がなく、完全無料のサービスを実現しているKyash。創業者である鷹取真一はなぜこのサービスを創るに至ったのか。

鷹取は新卒で三井住友銀行に入行。法人営業部で働いたのち、経営企画部に配属され、米国やアジアで拠点設立を主導。まさに銀行のエリート街道を歩んでいた人物であった。

その街道を歩みつつも、彼は名前のごとく“鷹”のように高い俯瞰的視点から、自身が属する業界を見ていた。

鷹取銀行は以前ものすごくありがたがられる存在でした。預けているだけで毎年金利が10%くらいついた時代もあったんですから。しかしいつの間にか煙たがられる存在になっていました。その理由の一つが消費者の期待に応えられる新しい仕組みが作れていないこと。それでどうやったら新しく、より便利な仕組みに変えることができるのかを探るべく、現在の大手金融機関を取り巻くシステムを根幹となる部分まで辿っていったんです。すると、10年かかってもその巨大なシステムを変える事は難しいということが分かった。だからこそ、外から新しいものを生み出さなければ難しいと考えるに至りました。

銀行に籍を置きながらそんな課題感を持った鷹取は、事業創造力を身につけるため、リテール向けの外資系戦略コンサルティングファームに転職する。シリコンバレー及び東京でマーケットエントリー、PMI、デューデリジェンス、オムニチャネル戦略立案等のプロジェクトに従事した。

そして2015年。鷹取は満を持してKyashを創業したのであった。

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大手金融機関とも連携。価値交換のインフラを世の中に

鷹取は銀行に5年勤務し、経営企画部という中枢に近いところで上層部の意思決定を見てきた。だからこそ、新しい金融サービスを世に送り出す難しさ、そこに立ちはだかる既存の金融業界の壁の厚さなどは、どんな起業家よりも理解している。

それでもKyashという新しい個人間送金サービスを立ち上げたいという、底の計り知れないエネルギーはどこから生まれたのだろうか。

鷹取私は銀行の中で企画を含めて意思決定を見てきて、銀行が目指したい本来の役割や特有の事情を理解しています。だからこそ、彼らの事業を脅かす敵ではなく、産業の発展のために働く仲間として我々を受け入れてくれると感じています。新しい金融サービスを普及させることで、社会に大きく貢献するのは自分の使命。そう思ってKyashを経営してきました。

彼の使命感は強い。創業当時は図書館に籠り、決済サービスに関わる法律を学んだ。その知識の深さには、同社メンバーからの信頼も厚い。そんな鷹取のできると信じる力、そこに付随する圧倒的な思考と行動量から、清水は彼を「冷静な狂気」と表現する。

鷹取僕が知っている起業家の中でも冷静さの中に秘めたエネルギー量が群を抜いている。これまで多くのCEOと一緒に仕事をしてきましたが、僕が知っている中では誰よりも“今はないものを生み出す”ことへの情熱がものすごい。

たしかに、優しい笑顔で、「さすがコンサル出身」といわんばかりにわかりやすい話を繰り出す鷹取の内側には、ものすごいポジティブな、「自分が創りたい未来を引き寄せられる」エネルギーを感じる。

現在Kyashは出来上がったプロダクトをユーザーに広めていく初期段階。開発陣は全て内製でサービスを作っているため、ユーザーからのフィードバックを元にすぐさまUI/UXを改善できる。それが彼らの強みで、「利便性を追及していくことは普及への戦略でもある」と鷹取は言う。

鷹取中国とかアメリカでもそうですけど、アリペイとかWechatとかものすごく便利なんです。「個人送金」という行為のためキャッシュレス文化は、使いやすいサービスが普及した結果に過ぎない。だから僕らも、とにかく使いやすいサービスを提供しなければいけないと思っています。そうしてKyashが普及した結果として、キャッシュレスや個人間送金という文化が日本に根付くはずです。

海外に比べると圧倒的に金銭の電子取引が遅れている日本。だが鷹取は、思ったよりも多くの人がその現状に課題観を持っていると教えてくれた。

鷹取Kyashを始めてからですが、僕が思っていたよりも遥かにお金の動きを変えたいとか、暮らしにおけるお金の使い方がもっと便利になればいいのに、と思っている人が多くて驚いています。肌感ですが、そういった課題感が日本に表面化してきているので、これからキャッシュレス文化が急速に浸透していく気もしています。

そんな鷹取は最後に、「Kyashは個人間送金サービスだけを実現したい会社ではない」と強調した。

鷹取価値交換を通じて世界を豊かに。それがKyashのミッションです。意思(想い)と通貨(お金)を結び、通貨を意思のままに動かせる仕組みを世界に浸透させたいと思っています。

寄付などの応援や感謝の気持ちも届ける「価値交換のインフラ」として、個人のライフスタイルそのものを豊かにするのがKyashの目指す世界だ。 想像にたやすく、昇るべき山は高く険しい。しかし、鷹取という男なら、その山すら涼しい顔のまま超えてしまうかもしれない。

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