“無知”だから作れた「競合のいない新市場」──ブルーオーシャン起業で躓かない方法を、EC物流スタートアップ・ロジレス西川に聞く

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インタビュイー
西川 真央

2010年よりP&Gマーケティング本部にて勤務。2012年に独立し、EC事業などを行う会社を創業。その時に発生した課題を解決するべく、当初は自社ツールとしてLOGILESSの開発を始める。その後、事業化を進め、2017年に株式会社ロジレスを創業。「物流危機からECの未来を守り、進化させる」というミッションを掲げ、LOGISTICS INNOVATION STARTUPとしてEC物流の課題解決を目指す。二児の父であり、家庭では料理担当。2019年のIVS、Incubate Camp、B Dash Campにてピッチ登壇。

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「競合のいないブルーオーシャン」で事業を続けるスタートアップといえば、どのような企業が思い浮かぶだろうか。今回取り上げるロジレスも、その一つだと言える。

ただし、ブルーオーシャンを見つけさえすれば、簡単に事業をスケールさせられる、というわけではもちろんない。むしろ、競合が入りたくないくらいに難しい事業だということもあるのだ。そのことを教えてくれるのが、ロジレス代表取締役の西川真央氏だ。

競合がいないのにはたいていの場合、それなりの理由がある。ロジレスの事業におけるその詳細を、「PMFまでものすごく大変だった」と苦笑しながら振り返ってもらった。「スモールビジネス時代」の長く険しい経験から、起業をなんとか軌道に乗せるまでの軌跡、そしてロジレスが描く壮大な世界観に迫った。

  • PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
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旧領域を超越すれば、競合はいない

ロジレスの特異性を一言で表すなら、「領域超越プロダクト」だ。EC事業者の領域(受注)と、倉庫事業者の領域(出荷)、これらをまとめてマーケットにしている。『LOGILESS』という一つのプロダクトで、性格の全く異なる二つの領域を相手にしているのだ。

西川とにかく、業界の内情を知らなかった。自分たちがEC事業をやっている中で感じたペインからスタートして、ニーズは間違いなくあると信じ、走ってきましたが、想定をはるかに超える難しさがありました。PMFまでが本当に大変過ぎて……。だからド競合がいなかったし、今もなかなか入ってこないのか、と、今ではものすごく納得しています(笑)。

あなたはこう思っていたかもしれない。「物流の領域はレガシー業務が多く残っており、ビジネスチャンスを見出すスタートアップが増えている」と。取材陣もそんな印象を抱いてインタビューに臨んだが、ものの見事に打ち崩してくれた西川氏。

そもそも、ロジレスが出資を受けているVCの一つであるCoral Capitalは、Shippiosoucoといった物流スタートアップにも出資しているのである。

代表的な物流スタートアップ3社の違い

Shippio
主なサービス利用者:輸入事業者
輸出入における受け入れや貨物そのものの情報を可視化し、一元管理することで、貿易業者の負担を減らすサービス。主に輸入業者の不便を解消する
souco
主なサービス利用者:BtoB領域の倉庫事業者
倉庫や物流施設の空きスペースを持つ事業者と、スペースを使用して物品を保管したい事業者のマッチングを行うサービス。主に倉庫業者の非効率を解消する
ロジレス
主なサービス利用者:EC事業者と、BtoC領域の倉庫事業者
国内のtoC物販系EC事業者の商品配送や管理の業務を、倉庫業者まで巻き込んで効率化する、OMS(受注管理システム)とWMS(倉庫管理システム)の一体型システムを提供。主にEC事業者の不便を解消するが、倉庫業者の業務も効率化する

一見「物流」という同じ領域に見えても、それぞれが異なるプレイヤーを相手に異なるニーズに応える形で事業を展開しているのだ。

ロジレスはtoC物販系のEC事業者を主なターゲットにしている。しかし、見ている世界がECに閉じているわけではない。密接に関わる「倉庫事業者」の業務効率化にも、同時に対峙しているのである。

この提供範囲の特異さが、ロジレスの大きな特徴だ。

西川コロナ禍でECは伸びたと思っている人が多いでしょう。確かにそれは事実です。だから私たちの事業も、これからまだまだ伸びていく。何せ、同じSaaSという業態でなら、競合が存在しませんから。私たちだけが、この領域のこのペインを解消できるんです。

自信ありげに語る西川氏だが、このいわば「ブルーオーシャン」を見つけるまでには長い苦難の時代があった。さらに、「ブルーオーシャン」といっても、そこで泳ぎ続けるのには非常に大きな困難が伴ったという。それをじっくりと聞いてみた。

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掛け軸や仏像まで販売。失敗し続けた「スモールビジネス時代」

VCから多額の資金を調達し、プロダクト改善を高速で進めてスケールを目指すスタートアップ経営。今の西川氏はまさにそのど真ん中に身を置いていることになるのだが、以前の起業はそうではなかった。本人曰く「スモールビジネス時代」が長くあったのだという。

西川とにかくめちゃくちゃ失敗しまくってきました(笑)。新卒で入ったP&Gをたった2年でやめ、Tapitという会社を、今も一緒にやっている2人と一緒に創りました。なんとなく起業してみたかった、自分ならきっとできる、そう思っていたというのが一つ目の理由です。

もう一つの理由は、P&Gという大きな会社に身を置いてみると、将来に向けた道筋が思っていたよりもかなりはっきり見えてしまった、ということ。日本で2年ほど働いて、海外拠点を経験して、それから特定のブランドをマネジメントする。そうして、消費者向けのマーケティングを手広く担う中で経営層に近づいていく。なるほどと思うのと同時に、もっと違う道はないのか?と思うようになったんです。それで思い切って飛び出しました。

今思えば、もっといろいろ学んでからでも遅くなかったな、とも思います(笑)。

今のロジレスでも取締役を担う足立直之氏と田中稔之氏は、いずれも新卒で楽天に入社。20代で共に起業した3人の強みはバラバラだったため、マーケティング関係のコンサルティングや受託開発などいろいろな仕事を請け負いつつ、軸となる新規事業の立ち上げを試行錯誤してきた。

西川私は根がマーケターなので、さまざまな形の「物を売るビジネス」を、思い付きベースでチャレンジしてきました。

例えば、新聞広告を見ていると、「数十万円の図鑑セット」とかあるじゃないですか?安く仕入れて高く売るわけですが、同じようなことを美術品でもできるのではないかと思い至ったわけです。アナログに売っている会社さんと知り合ったので、ECでもきっと売れるだろうと踏んで、レベニューシェアの形で一緒に売ってみたんです。商品は掛け軸とか、仏像とか(笑)。

売れたと言えば売れたんですが、大きな利益を上げ続けるには至りませんでした。他にも、ただ単に「好きだったから思いついた」というレベルで、Tシャツをデザインして売ってみたり、気になったウェブサイトをそのままクリッピングして保存できるWebサービスを開発してみたりと、領域には拘らずにさまざまなアイデアを試してきました。

P&Gでは有名な洗剤や柔軟剤のマーケティングプロジェクトに関わり、ダイナミックな仕事を経験してきた西川氏。自嘲気味に「スモールビジネス」と言うが、苦しくはなかったのだろうか。

西川なんだか楽しい日々ではありました(笑)。それに、当時は資金調達なんてしようとは全く考えていなかったのですが、その理由には「スタートアップじゃないやり方でも成功できるはず」という反骨心のようなものもありました。

自分たちの力で小さく始めて、顧客に愛され、じわじわと評価されるようになればいいと思っていました。アメリカのプロダクト開発企業37signals(現Basecamp)による「小さなチーム、大きな仕事──働き方の新スタンダード」を読んで、思い切り影響を受けていたんです。

同書に綴られているのは、資金調達、上場、広告といった、事業を拡大するためのビジネス常識と言われる戦略の否定。できる範囲で、少数の顧客に対して価値を生み、事業を創っていった軌跡が紹介されている。

西川氏は世の中の多くのスタートアップとは異なる道を探り、粘り強さを身に着けていった。

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売れれば売れるほど、増大する単純作業

さまざまなチャレンジをする中で、新古本を扱うEC事業で感じたペインが、西川氏の心を動かした。

西川新古本ってご存じですか?書店に一度並んでから、売れないために出版社に返品されたもののことです。これらの本が安価に売られる二次流通のマーケットが存在するんです。新品ではあるのですが、定価の1割くらいで仕入れることができるので、売れれば利益を上げやすい。ただ、Amazonや楽天が進出してきて、私たちの事業は回らなくなってしまったのですが……。でもこの事業を通じて、今の事業につながるタネを見つけたんです。

マーケティングがうまくハマり、注文がたくさん来た時期がありました。売り上げを伸ばすことに主眼を置いた施策をたくさん打っていましたから、私は「よしよし、いい感じだ」と思うわけです。でもその何倍も、苦労が降りかかってきました。メンバーの1人、足立が、出荷業務に忙殺されるようになったんです。

EC事業者は、商品を揃え、品ぞろえを管理し、受注し、出荷する。初めは手元で在庫を抱え、手作業で配送準備を行うため、上述のような状況に陥る。そこで、多くの事業者は出荷や商品管理をアウトソースするようになる。彼らももちろんそうしたのだが、今度は別のペインが発生する。

西川倉庫業を担う事業者がいて、商品を預けて出荷や配送をお願いするのですが、今度は注文の管理や、配送一つひとつへの対応といった点でアウトソース先と齟齬が起きていきました。「調整」という余計な業務が増え、足立が結局また忙殺されるわけです。

これらの苦難を経て気付いたのが、EC事業領域と倉庫事業領域の分断だった。

西川実はECって、IT業界の中でも割と古い業態。ネットショッピング自体は、もう20年以上前からありますよね?だから、効率化のためのサービスが存在しています。業界内では「受注管理システム(Order Management System、略称OMS)」と呼ばれています。

一方の物流側も、実はデジタル化自体は領域特化で進んできているんです。そんなサービスが、「倉庫管理システム(Warehouse Management System、略称WMS)」です。

ただ、それぞれの領域だけに都合が良い形で発展が進んだため、その連携において“不便”が残り続けている。例えば、在庫管理のためにCSVをメールでやり取りしたり、「ラッピングや熨斗の手配」について別の作業が発生したり、といった具合です。こうした作業に終われていては、EC事業のスケールに集中できません。だから、これを取り除く事業をしようと思ったんです。

EC事業者側と、倉庫事業者側、相互に連関し合うことができれば、一気に効率化が進み、世の中のEC事業が非常に使いやすいものになります。

「事業とは、不を解消すること」だとよく言われる。西川氏はこの「不」を、自ら強く体感したのだ。

西川今、コロナ禍でECが急拡大していますよね。でもEC事業者の現場は、ものすごく大変なんです。なぜか?それは、売れれば売れるほど、単純作業による現場の疲弊が増えすぎてしまう、という構造になっているからです。

間違いなく解消すべきものだという意識を強くし、プロダクト開発に邁進することになる。

西川現在のプロダクトは、EC事業者側と倉庫業者側、いずれの単純作業も徹底して減らすことのできる仕組みを提供しています。受注から出荷、在庫管理まで一貫して、倉庫とも連携して行えるサービスは他にありません。

さらに『LOGILESS』を使えば複数拠点出荷を容易に行うことができます。例えば、九州地方のお客様に対して、関東ではなく西日本の倉庫から自動で出荷できるように設定することも可能で、近距離配送を実現できるためコスト面でも効率化を図ることができるんです。こういった複数拠点出荷の取り組みを多くのEC事業者が推進すれば、長距離輸送を減らすことができ、日本全体としての物流の効率化を実現することができると考えています。

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二つのスタートアップを同時にやるような難しさ

コロナショック下においてさらに拡大を続けるEC領域と、アナログながらなくなることはない物流領域、この二つの領域にまたがるテック事業を進めるロジレス。上述のように競合はいなかったのだが、その理由が分かるまでに西川氏も時間がかかったという。

西川初めは、なぜ誰もこの事業をやらないのか分かりませんでした。ペインがあるのは一目瞭然で、解消できれば事業者がものすごくラクになる。

ただ、実際にプロダクトを作って、事業者が使えるレベルのものにするまでが、ものすごく大変でした。EC事業者と倉庫事業者では、文化もニーズも何もかもが違う。双方の期待に、一つのプロダクトで応えられる機能を備えるため、実際現場に足を運んでのニーズヒアリングと開発で、約2年ほどかかりました。

旧来の領域を超えて課題を解消するプロダクトを作る、それはつまり、マーケットを新たに創造するということ。しかも、OMSとWMSという、IT化も進んだサービスが確立されて、別々の市場がすでに存在している。

西川この内情を知っていれば、普通は私たちみたいな事業なんて始めようと思わない、そう言われたこともあります(笑)。EC側からは「物流倉庫領域で解決すべき課題だ」という声が上がり、物流側からは「EC領域で解決すべき課題だ」という声が上がる。そういう構造だったから、誰もこの仕組みをつくろうという考えに至らなかったみたいなんです。

今でこそ「確かに」と思います。でも私たちは、そこまで知らなかった。逆に、だからこそチャレンジを始められたんです。内情を知っていたら、やらなかったでしょうね。

つまり、課題の存在は明らかだったものの、当事者意識をもって解決しようとする存在がいなかったというわけだ。これは同時に、プロダクト開発が非常に難しいということも意味する。

西川二つのマーケットがしっかり確立しているので、「別々の領域で二つのスタートアップを同時にやっている」というような感覚でした。ヒアリングと開発を並行して進めながら、「できました!」とプロダクトを持って行っても「できてない!」と言われる、そんな連続でした。「どこがどうできてないのか教えてください」とお願いをし続けていました。

そうしてなんとかプロダクトを作り込み、顧客をじわじわと増やし、PMFまで持ってきたんです。

「あらゆる境界が溶けていく」とも言われるこの時代。領域を超えて不便の解消を追求するロジレスの事業は、まさに時代の先端を行くものともいえる。だからこそ厳しいチャレンジになったわけだが、続けられた理由はシンプルなものだった。西川氏をはじめとした創業メンバー3人が、スタートアップ創業以前にさまざまな事業にチャレンジしてきたというのが背景にある。

西川スモールビジネスでやっていた頃は、「このビジネスモデル、なんとなく良さそう!」という意識で事業をいくつも始めて、「伸びなさそう」と思ったらすぐに撤退していました。

でも今は、自分たちが感じたペインを起点に、「俺達がやらなかったら誰がやるんだ!」という当事者意識を強く持てています。だから、多少の行き詰まりはあっても、粘り強く続けてこれたのだと思います。

「競合がいない」というのはもちろん、事業をスケールさせる上で大きなメリットの一つだろう。「良いビジネスモデルを思いついた!」というのもおそらく同様だ。ただ、「誰も手を付けたがらないくらい大変な市場」という側面が大きいこともあるのである。だから、ロジレスがPMFを達成した後も、真っ向から対立する競合が入ってこないままなのだろう。

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「EC効率化」が身近な課題になるワケと、日本全体の生産性向上

とはいえ、一般の読者にはなじみの薄い領域の話だ。この西川氏の挑戦に、どのような意味や意義を見出せるのだろうか。それは「日本全体における生産性向上」という大きな世界観の話だ。メンバーも物流やECをバックグラウンドに持つという共通点があるわけではなく、そうした志に共感してさまざまな領域から集まっている。

西川ECって、コロナ禍でさらに大きくなって、ますます「無くてはならないモノ」になっていっていますよね。物販系のEC全体の市場規模は2019年に10兆円を超えました。2018年から8%も伸びています

2020年はコロナ禍の影響で、さらに伸びることも予想される。まだまだ拡大していくことに、疑いの余地はないだろう。だからこそ、生産性の向上が待たれる。

西川生産年齢人口は減っていきます。EC事業に多くの人の手が必要となるままでは、すぐに維持できなくなってしまいます。だからこそ、抜本的に業務を改革できるプロダクトが必要なんです。現時点で、ここにチャレンジしているのは私たちだけです。

なるほど確かに、EC領域における業務効率化が重要なことは分かったが、では「日本全体における生産性向上」にも関わるとは、どういうことか?

西川日本で業務に費やされている時間のうち、反復型のルーティーンワークは56%もあり、その67%は技術的に自動化できるとの指摘があります。EC事業における業務の多くも、その中に含まれ、まさにロジレスがやっていることです。

実は日本のECって、人力での推進業務が多く残ったまま、規模だけが大きくなっていってしまったという負を抱えているんです。今、多くの人が、ECの便利さを当たり前のものと思っているでしょう。でもその裏に、非常に面倒な作業をしている人がまだまだ多くいます。

大手EC事業者を利用していれば、注文の翌日、場合によっては即日届くような、スピーディーな顧客体験がある。一方、中小事業者では商品到着までに数日を要することもある。どんなに良い商品でも、人手が足りないというだけで、到着まで1~2日遅れ、価値が下がってしまう。このことによる機会損失は小さくない。意外と身近な問題に思えてくるのではないだろうか。

西川私たちは、自動化されるべき業務を確実に自動化していくことで、日本全体における生産性向上を推し進めていくんです。その先に見ているのは、1人当たりGDPの向上です。

社会課題を解決できるビジネスとしてスケールできる、そんなポテンシャルがある事業になってきたと、身をもって実感できています。スモールビジネス時代も楽しくはあったのですが、「共感を生んで課題を解決する」というような視座は全く持ち合わせていませんでした。

今は、自分の成長を、会社の成長を通して感じられています。これはマネジャークラスやメンバークラスでもきっと同じこと。例えばセールスの場面では、EC事業者のニーズと倉庫事業者のニーズが真っ向からぶつかることもありますが、その難問を解決できるソリューションをみんなで見つけられれば、それは史上初のことになり、うちでしか得られないやりがいになります。

こうしたチャレンジをこれまでも繰り返すことでこのプロダクトを作り抜いてきました。今では他の企業ではできない課題解決に全力で取り組めるようになっています。

この事業を、日本の未来を形作るものとして大きくしていくつもりです。インパクトの大きな仕事をしたいと思う人には格好の環境だと思いますよ。

こちらの記事は2021年01月15日に公開しており、
記載されている情報が異なる場合がございます。

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藤田 慎一郎

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