INTERVIEW

7兆円規模の未開拓“レガシー”マーケットを変革。
ゴールドマン・サックス→REAPRA発、リサイクル産業に現れた新星・リバースネット

印刷業界におけるラクスル株式会社、製造業界のキャディ株式会社…昨今、“レガシー”と呼ばれる産業のアップデートに挑戦するスタートアップが目立つ。

同様に、国内だけで7兆円のマーケットサイズを誇る、「リサイクル産業」の“負”を解消すべく奮起する企業がある──「リサイクルに関わる全ての人が活き活きと働き、自然と共生する社会を構築する」をミッションに掲げる、株式会社リバースネットだ。

同社は、京都大学を卒業後ゴールドマン・サックス、シンガポール系ベンチャービルダーのREAPRAを経た白土悠平氏が創業した。

いわばエリートコースを歩んできた白土氏だが、彼の強さは、「世の中のあらゆるものを徹底的に取り入れ、活用する」熱量と探求心だ。

420にわたる国内産業の全域的なリサーチ、『0→1フェーズ経営手法一般化』の構築によって起業の再現性に迫った彼のキャリアストーリーからは、一見、リサイクル産業は馴染みが薄い。

彼が取り組んだ経営手法の一般化から、リサイクル産業における業界の“負”、リバースネットの「発達指向型」組織カルチャーと今後の事業展望まで、この産業に現れた新星を紐解く。

  • PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
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インタビュイー

白土 悠平 (しらつち・ゆうへい)

株式会社リバースネット 代表取締役社長

白土 悠平

しらつち・ゆうへい

株式会社リバースネット 代表取締役社長

1991年生まれ。京都大学総合人間学部卒業後、ゴールドマン・サックス証券へ入社。2016年にREAPRA PTE. LTD.へ参画し、シンガポール本部にて東南アジア及び日本のスタートアップ支援に従事。2017年8月、株式会社リバースネットを創業。

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「常に大量のマルチタスクをこなしていた」ゴールドマン・サックスで身につけたビジネススキル

白土悠平氏のキャリアは、名門と名高いゴールドマン・サックスからスタートした。

幼少期より「社会的意義の大きなことに取り組む仕事がしたい」、「この世の中の構造を広く知りたい」という想いを秘めていた白土氏は、将来的に投資もしくは事業を通して、グローバルに社会へのインパクトを高めていくというキャリアプランを描き、修行期間としてゴールドマン・サックスを選ぶ。投資家や起業家に必須といえるファイナンス知識が身につき、グローバルな環境でビジネススキルを磨けると考えたからだ。

ゴールドマン・サックスでは、およそ2年半、大手日系企業を中心としたクライアントの資金調達をサポート。企業の財務戦略を踏まえた調達方法を提案し、債権や株式の発行からIPOまで支援し、ひとりのビジネスパーソンとしてのスキルを徹底的に磨き上げていった。

株式会社リバースネット 代表取締役CEO 白土悠平氏

白土業態もまったく異なるお客様向けのピッチを、1週間のうちにいくつも作り込まなければいけないこともしょっちゅうでした。

プロジェクトを同時進行させ、ゴールから逆算してタイムラインを組み、ToDoを細かく切って進めていく──新人であっても常に、大量のマルチタスクを、スピーディかつプロ意識を持って高精度に遂行することが求められる環境。高速でプロジェクトを回すマネジメントスキルが身につきましたね。

また、他部署のメンバーから弁護士や会計士まで、あらゆる役割の人びとを巻き込みながらプロジェクトを進めていたので、“借り物競走”が非常にうまくなりました。「自分ひとりでは何もできない」と学べたことは、起業した今でもとても役立っています。

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ゴールドマン・サックスを辞め、REAPRAにジョイン

ゴールドマン・サックスで仕事を重ねるなかで、白土氏は起業への興味を強めていく。ただ、この段階では具体的なイメージは持てていなかった。漠然と悩むなか、休暇を利用して東南アジアへのバックパック旅行に出かけた折、一人の男の存在を思い出した。

仕事を通じて知り合っていた、現・REAPRAグループCEOの諸藤周平氏だ。同氏は介護・医療分野においてプラットフォームビジネスを展開する株式会社エス・エム・エスの創業者で、創業から東証一部上場までを牽引した実績を持つ。REAPRA創業直後の当時、シンガポールに滞在していた諸藤氏に「起業に興味があるから勉強させてほしい」とアポイントを取り、会う機会を得た。

帰国後も、数ヶ月に一度のペースで定期的に電話での起業相談の場を持ってもらっていたが、1年あまり経った頃、諸藤氏から連絡が入った。

白土「日本の古い産業にはITを浸透させる余地が残っている。国内産業の開拓余地をしらみ潰しにリサーチし、経営手法を一般化していけば、再現性高く日本社会にイノベーションを量産できるはず。その手伝いをしてほしい」と言われたんです。起業の再現性を学ぶにはとても良い環境だと思い、ゴールドマン・サックスを辞め、REAPRAにジョインすることを決めました。

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日本の全産業をリサーチし、『0→1フェーズ経営手法一般化』を構築。投資先のハンズオンへ

白土氏がまず手がけたのは「日本に存在するあらゆる産業から、ポテンシャルの高い領域を見つけ出すこと」だ。REAPRAとしても事業シードを見つけ出したいタイミングであり、起業を見据える白土氏は、このプロジェクトに適任だった。

総務省が発表する「産業連関表」(あらゆる産業について、企業数やマーケットサイズなどの基本情報が網羅的に記載されている統計)を隅から隅までチェックし、全部で約420部門ある産業区分の中から、「10年で事業価値が数千億円になる可能性が高いが、その複雑性ゆえに、まだマーケットサイズが小さい産業」を洗い出した。

白土現場へのヒアリングなども含め徹底的にリサーチしたので、世の中にある産業やビジネス、抽象度を上げたときのそれらの相関・類似関係を、構造的に把握できるようになりました。このリサーチ経験によって、断片的な知識が一気に繋がっていき、圧倒的なスピードで頭の中に根が張られていきました。

白土氏の「構造化」は、産業の洗い出しだけでは終わらない。次に手がけたのは、『0→1フェーズ経営手法一般化』の構築だった。諸藤氏の豊富な経験から抽出したエッセンスをベースに、世の中に出ている理論書も大量に読み込み、その経営ノウハウを白土氏が構造化。その知見を100ページにわたるドキュメントに落とし込み、投資先企業に配布、導入のハンズオン支援を行なったのだ。

白土経営手法の一般化を通じて得た知見は、リバースネットの経営にも十二分に活かされています。もちろん知見自体は現在もREAPRAで更新されていて、常にβ版で完成や終わりのないものですが、再現性を高める経営ノウハウが、ある程度自分の中で固まってきていました。

リバースネット社内のメンバーにも、その経営ノウハウは十分に活用されているという。

白土弊社はワンプロダクトで一気に突き抜ける様なビジネスモデルではなく、早い段階から複数の事業を立ち上げ、相互シナジーを効かせていくため、それぞれのメンバーが起業家的に動く必要があります。ゼロイチでビジネスを立ち上げるときの起業家行動や、ビジネスプロセスが一旦出来上がってから圧倒的に生産性を上げていく手法等をパッケージ化し、メンバーに渡しているので、その部分で成長実感が高い社員もかなり多いですね。なるべく最短経路で事業構築能力を付けてもらえれば、起業家的なメンバーが複数育成され、継続的にイノベーションを起こしていく土台が出来てくると思います。

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国内7兆円の「リサイクル産業」に関わる、すべての人びとを幸せにしたい

REAPRAでの約1年間の修行期間を経たのち、白土氏はリバースネットを創業。地方出身で山に囲まれて育ったことから、もともと環境産業に関心があった。自身の志向性、社会的意義を勘案し、最もフィットしたのが自身のリサーチにより洗い出したうちの一つ「リサイクル産業」だったのだ。国内だけでも、市場規模は7兆円近くにのぼる。

白土山の麓で育ったので、昔から大自然に触れ合う機会が多くありました。実家に帰る度に思うのですが、本当に空気がきれいで。だからこそ、昔から森林や自然には愛着があったし、地球環境を保護していくようなテーマに取り組んでみたかった。

リサイクル産業の課題は、大きく分けて二つある。まず、ドライバーからリサイクル工場の作業員まで含めた、圧倒的な現場の人材不足。そしてもう一つは、リサイクル処理に従事するために必要な許認可が地方自治体ごとにしか出ないために、中小事業体が乱立し、産業全体の処理フローが最適化されない点だ。

白土公害が社会問題化した歴史を持ち、資源も限られている日本にとって、リサイクル産業はなくてはならないインフラです。それにも関わらず、一般的にはその存在や内実がほとんど認知されていません。だからこそ、「いかようにも効率化できる」ポイントがたくさんあります。

国全体が人口減少に向かうなか、日本の”特異的”な法規制を背景に非効率なポイントがたくさん残存しているせいで、リサイクル産業全体が疲弊しつつある。そこに残された“負”を解決することで、より生産的にリサイクルが行われる世の中が訪れるはずですし、その営みは非常に意義のあることだと思っています。

こうした想いのもと、「リサイクルに関わる全ての人が活き活きと働き、自然と共生する社会を構築する」をミッションに掲げているんです。

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最初は、“あえて”開発投資が不要なマーケットから参入。来るべきファイナンスに備え、足腰の強い組織を作り込む

リバースネットは、ドライバー人材紹介サービス「はこジョブ」をはじめとした複数事業を展開している。リサイクル産業でビジネスに取り組む際、最も難しく、力量が試されるのが「業界構造の複雑さ」に立ち向かうことだ。

リサイクル産業と一口に言えど、廃棄物を運ぶ「収集運搬事業者」、工場で処理やリサイクルを手がける「中間処理事業者」、再生産されたものを買う「法人」、リサイクルできなかった廃棄物を埋め立てる「最終処分事業者」が存在する。

こうしたステークホルダーが、廃棄物の種類数十種に応じて別個に存在しており、対象となる処理の法律もそれぞれ違う。各領域に対してプロダクトやサービスを最適化していかなければいけないので、ビジネスの難易度も高まる。

白土氏が最初の事業領域として「ドライバー人材紹介」を選んだのは、大きく二つの理由からだ。

白土まず、これだけ複雑な産業を変革していこうとなると、できる限り幅広いお客さんと接点を持って情報収集し、商流ごとの違いも見ながら、次に攻めるべき領域を決めていく必要がある。

キャッシュフローをまわしながら、こうした情報収集を続けていくためには、幅広い商流のお客様と接点が持て、かつ慢性的な人材不足で収益化もしやすい「ドライバー人材紹介」の領域が最適だと考えました。

実は創業当初は他のプロダクトを5-6個想定しニーズヒアリングを行っていたんです。しかしながら実際に現場の処理会社にお伺いすると、どの会社も口を揃えて「ドライバ―が足りない、作業員が足りない」と仰っていました。これだけニーズが強ければお役立ちできそうですし、日本全国の処理会社と一気に接点が取れそうだなと思いました。

もう一つの理由が、ストイックに生産性の高いオペレーションを作る能力を組織に備えるために「まずは開発投資が不要なビジネスモデルに参入したかった」こと。REAPRAの影響も受け、白土氏は「事業経験が浅いうちに資金調達を行うと、短期的に収益を出す必要性がなくなるのである種の余裕が生まれる。

結果として生産性の高いオペレーションが構築されづらい“ゆるい”組織になってしまうことがある」と考えている。まずは背に腹を変えられない状況でオペレーションを磨き込み、高収益体質をつくる必要があるのだ。

白土生産性の高いビジネスモデルやオペレーションを作り込める組織にしてから、業界の負を解決するプロダクトを開発し、一気にファイナンスを活用して事業を加速させようと考えていました。今後はリサイクル産業特化型のSaaSやメディア事業の開発を仕込んでおり、一気にプロダクトを展開し、エリアも日本全国に拡張させていく方針です。

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徹底した「自己開示」と「自己内省」、そして「キャリアセッション」。リバースネットの“発達指向型”組織カルチャー

リバースネットは、組織面でも特徴がある。「メンバーの人格発達に重きを置いている」点だ。

採用時には、各人の根本的な欲求や価値観がフィットするか、本質的な成長動機や達成動機が強くあるかなど、深く精査を行う。入社後も、メンバーに対して過去からの欲求・価値観の自己整理とこれからの10年間のキャリアを計画する「キャリアセッション」を行っている。

メンバー全員が自身の人格、強みや弱みを俯瞰して理解する。そして、中長期でどのようなキャリアを形成すれば充実感が得られるかを共に計画し、現在に活かす。直近でどのような経験をして自身を伸ばしていくか、どのような知識を取り込むべきかを設計することで、自律的な成長を促す土台が築かれるのだ。

加えて、「メンバーの自己開示と自己内省の徹底」にも重点を置く。

合宿などで、白土氏自身も含め、全員が自分の生い立ちを1時間ずつ話す場を設けている。組織内で本来の自己をさらけ出せ、相互理解を深めやすい環境にしているのだ。

また、個々のメンバーの役割を可視化し、その役割に関する高い目標を掲げ、ゴールから逆算し十分な質と量の改善施策が打てているかも内省する。現在、役割に対する進捗と、内省点、ビハインドしている場合の改善施策を2週間ごとにSlackで宣言するという取組みも試験的に行っているという。

白土きわめて不安定な0→1段階だからこそ、組織が壊れないように強固な基盤を築くのが大切だと思っていています。

ベンチャーでよく聞く組織問題の多くに、お互いの理解不足から生じる信頼関係の崩壊、そしてそれによる離職、また経営層や社員の内省が弱いことで当人の成長が阻害され、組織の成長スピードが抑制されてしまうことがあります。自己開示や内省の徹底は、メンバー同士が互いへの理解を深めながら繋がりを強固にし、自律的な成長を促すための取り組みです。

もし一緒に働いていて「苦手だな」と感じる人がもしいたとしても、人となりを理解したり、「この人なりに内省して頑張っているんだな」と分かると応援したくなるものですよね。

以前、数名の弊社メンバーと面談して頂いた人材エージェントの方から「お若いのにすごく成熟された社員さんばかりですね」と驚きの言葉を頂いたことがあります。みんな共通して、良い意味で等身大というか、自身がどういう人間かよくわかっている。

だからこそ弱みや改善点を積極的に開示しながら、リバースネットのミッションや今後の戦略に照らし合わせて、自身の成長意欲を話していたようなんです。

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リサイクル先進国から、グローバル展開へ。今後の飛躍的成長を見据えたリバースネットが求める人材像とは

日本の歴史が物語る様に、公害問題は経済成長と共に発生するケースが多い。産業が発展するにあたり、排出される廃棄物の種類も変わっていくため、処理の技術・仕組みや制度形成が遅れることも一つの要因だ。経済成長が先行し、公害問題を早期に経験した日本だからこそ形成できた、世界に通用する技術・ノウハウもある。

白土日本のリサイクル技術は、アジア各国から技術移転の要請が来るなど、世界でも十分に活躍できるポテンシャルを秘めています。環境省は世界で活躍する「静脈メジャー」を生み出すべく支援体制を拡充していますし、我々も数年後にその一端を担いたい気持ちがある。日本でのプラットフォーム構築のノウハウを生かして、グローバルに提供価値を高めていきたいんです。

世界のリサイクル産業に価値を提供する企業になれるように、弊社は“非連続的な”成長を目指します。まずは日本のリサイクル産業の生産性を飛躍的に上げられるプラットフォームを構築すべく、プロダクト数や展開エリアを増大させていきます。そのためには複数事業を生産性高く展開する必要があるので、メンバーと共に盤石な組織体制を構築していかなければいけません。

弊社にはキャリアの早い段階から裁量やP/Lを持ち、経験学習サイクルを回せる機会がありますし、リバースネットとして体系知化している事業構築・経営管理ノウハウもあります。圧倒的成長環境で会社のあるべき姿を追求していける人と、リバースネットの全国展開、事業多角化の拡大フェーズを、熱量高く作っていきたいですね。

この世界のあらゆるものからヒントを得て、探求と構造化を繰り返し、研鑽し続ける白土氏。仲間とともに手がける新たな「リサイクル産業」は、どのようなものになるのか。インフラであり、社会的意義も高いこの領域、そしてリバースネットに少しでも関心を持った読者、特に「圧倒的成長環境」に興味のある読者は、本格拡大を控える彼らにぜひ会いに行ってみてはいかがだろうか。

インタビュイー

白土 悠平 (しらつち・ゆうへい)

株式会社リバースネット 代表取締役社長

白土 悠平

しらつち・ゆうへい

株式会社リバースネット 代表取締役社長

1991年生まれ。京都大学総合人間学部卒業後、ゴールドマン・サックス証券へ入社。2016年にREAPRA PTE. LTD.へ参画し、シンガポール本部にて東南アジア及び日本のスタートアップ支援に従事。2017年8月、株式会社リバースネットを創業。

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藤田 慎一郎

デスクチェック

1986年生まれ、東京都武蔵野市出身。日本大学芸術学部文芸学科卒。 「ライフハッカー[日本版]」副編集長、「北欧、暮らしの道具店」を経て、2016年よりフリーランスに転向。 ライター/エディターとして、執筆、編集、企画、メディア運営、モデレーター、音声配信など活動中。

こちらの記事は2019年04月24日に公開しており、記載されている情報が異なる場合がございます。