INTERVIEW
望月 佑紀 正田 圭
18-01-26-Fri
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約20億円でのリジョブ売却から3年。
上場ではなく売却を選んだ理由、次なる野望

TEXT BY REIKO MATSUMOTO
PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
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連載 TIGALA正田が迫る “エグジットした起業家の思考法”
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「投資銀行業界のGame Changer になる」ことをミッションに掲げるTIGALA代表の正田氏が、
企業売却を経験した起業家にその選択をした真相に迫る連載企画。

第五弾のお相手は、「世界を抜本的に変革する」をビジョンに掲げるXvolve CEOの望月佑紀氏。

2014年9月、求人サイト「リジョブ」を約20億円でじげんに売却した経験を持つ望月氏は、
なぜ売却という選択をしたのだろうか?

そして今、XvolveのCEOとして何を目指しているのだろうか?

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起業家が最短で次の夢を追える選択肢が“企業売却”

望月さんが起業したきっかけや、エグジットされたリジョブ社の事業に関して教えてください。

望月起業したのは大学3年生のときでした。本を読んだり、実際に活躍している起業家に会って話を聞いたりする中で、この道は面白そうだと思ったんです。

大学に通いながら創業し、まず光ファイバーの代理販売事業を始めました。そして1年ほど飛び込み営業などを泥臭く続け、1千万円くらいキャッシュを貯めてから、色々な事業を試していったんです。

その中でうまくいきそうだったため注力したのが売却したリジョブ社です。美容やヘルスケア領域に特化した求人メディアを運営していました。

XVOLVE GROUP CEO 望月 佑紀氏

売却を決めた理由はなんだったのでしょうか?

望月「FacebookやGoogleのような世界トップレベルの会社を創る」というビジョンを最速で達成するためです。

20代後半のとき「世界を目指すなら米国で事業を起こさねば」と思い立ち、日本で経営していたリジョブ社を他のメンバーに任せ、一人シリコンバレーに移り住みました。

現地で採用を行いサービス開発をしていましたが、しばらくしてリジョブの事業がおもわしくなくなりました。2013年10月、日本へ一時帰国してみると、月に2000万近くの思った以上の赤字と経営危機に陥っていることが判明したんです。

「これはアメリカで新規事業を立ち上げている場合ではない」と本格的に日本に戻り、立て直しを行いました。組織再編やビジネスモデルの変更など抜本的な改革を行い、数ヶ月後には月にプラス2000万円ほどの黒字に立て直せたのですが、「こういったことが続くようでは、本気で世界を獲るサービスの開発に集中できない」と思いました。

そこで「リジョブ社を上場させるか、売却するか、後継者を探すか」という3つの選択肢が出てきたんです。当時の規模としてもグループで150名以上、10億円近い売上があり、上場は十分に圏内でしたが、結果的には「売却」という選択肢を選びました。

正田3つの選択肢がある中で、売却を選んだのは何故ですか?

望月単純に、次のチャレンジに100%集中できると思ったからです。上場も後継者探しも、どんなに早くても2、3年はかかってしまいます。

その後も完全に経営から離れるのは難しい。売却であれば早ければ数ヶ月で決まり、その後は次の挑戦に100%集中できると思ったんです。

正田私はこれまでにいろんな会社のM&Aを支援してきましたが、やっぱり会社を売却したからと言って起業の世界から退く方ってそうそういませんよね。当初は「売却後は東南アジアで遊んで暮らす」って言っていた60代の経営者とかでも、2か月後くらいには「新しいビジネスを始めるから聞いてくれ!」と楽しそうに事業を立ち上げています。

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自分の中で筋を通したかった

じげん社を売却先に選んだのはどういう理由だったのでしょうか?

望月他にも高値を提示頂いた会社はありましたが、主に3つ理由があります。

まず1つは自分を含め中心メンバーのロックアップ期間が無い、もしくは短かったこと。自分はすぐにでも次の挑戦に移りたかったし、志を同じくするメンバーと行動を共にしたかった。

売却後、中心メンバーとは全員、「自分についてくるか、リジョブに残るか」という面談を行いました。そこで「一緒にやりたい」と言ってくれるメンバーを見捨てるようなことはしたくなかったし、自分の中で筋を通したかったんです。

2つ目の理由は「ここ(じげん社)に託したい」と思えたこと。バイアウト交渉というのはかなり過酷です。ですが、本気でぶつかり合うことで見えてくるものがある。

私の場合は、じげんという会社の経営陣の魅力や将来の有望性、また漠然とした底力のようなものを肌で感じました。

自分が心血を注いで築き上げた事業は子供のようなもの、大切な社員とともに託すのであれば、たとえ売却額が多少低くなっても自分が「くやしい」と思えるくらい魅力的な会社に託した方がいいと思ったんです。

最後の理由は単純な「面白さ」です。これはなんとも表現できないのですが、じげんの平尾社長とはたまたま大学時代からの知り合いでした。

今後もお互いさらに事業を発展させ、日本や世界を代表する経営者になって、いつかまたお酒片手に思い出話でもできたらいいなと(笑)。

正田「経営者自身を信用できるかどうか」は、企業売却を何度も携わってきた者としても本当に重要なポイントだと思います。

TIGALA株式会社 CEO 正田 圭氏

正田「今ではじげん社内でもリジョブは成長し続けているようですし、信用できる旧来の友人に会社を託せて、かつ企業も成長し続けているというのは、イグジットした経営者としては嬉しいですよね。

売却するとなって社内の反応はどうでしたか?

望月IR発表の当日に新宿の本社に社員を集め、私とじげんの平尾社長から直接発表しました。騒然としましたね。じげん社は上場企業、こういった話はインサイダー情報にもなるのでIR発表までは公開できません。

それがいきなり「この会社は売却されました」と聞かされるのだから無理もありません。彼らがまず気になるのは当然、雇用のこと。

そこは私から「雇用は守られるので心配ない」と伝えました。じげん社ともそういう契約でしたので。

売却する立場の経営者にとって、残される社員と顧客はもっとも心配することの一つだと思います。3年経ち振り返ってみて、これについての一番の答えは「事業を伸ばしてくれる会社に売却する」という点に尽きるのではと思います。

それが結果的には社員、顧客、株主など一人でも多くの人間の幸せに繋がっていくのではないかと。

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米国では当たり前の“シリアルアントレプレナー”(連続起業家)という生き方

設立5年で20億円は小さくない売却額ですが、キャッシュインして何か変わりましたか?

望月生活という面では特に何も変わってないですね。家はいまだ賃貸アパートだし、移動はほぼ自転車、飛行機も毎回エコノミークラスです(笑)。

そもそもバイアウトした目的が「EXIT(終了)」ではなく「NEXT(次へ)」。さらなるチャレンジですからね。

日本では売却してそのまま引退というイメージも強いですが、シリコンバレーではバイアウトした起業家がその資金をもとに「シリアルアントレプレナー(連続起業家)」として、次々と事業を立ち上げるのはまったく珍しくない。

Twitterのジャック・ドーシー氏やTeslaのイーロン・マスク氏などがまさにこの例です。

正田私はいつもRPGゲームのクロノトリガーに例えて「強くてニューゲーム」と呼んでいますが、起業家自身も2度目、3度目の起業となれば、それまでの経営経験やスキルを持った状態でまた0から始められる。

メルカリの山田さんもそうだし、CASHの光本さんもそうだと思うんです。

起業自体の回数を重ねることで、昔とは全く異なる、世界を狙えるような大きなビジョンも見据えられるだろうし、成功確度も上がっていきますよね。

望月自分も目標はあくまで「世界的な企業をつくる」こと。そのために売却資金はオールインするくらいの気持ちでやっています。

キャッシュインして良かったことは、立ち上げの段階で「自己資金でやりたいことにどんどんチャレンジできる」という点に尽きますね。

スピーディに意思決定や行動ができるので、事業を回すサイクルが圧倒的に早い。

ただ、今では世界中で使えるようになったUberやAirbnbも、これまでの調達額は合計で1000億円を超えています、本気で世界を獲ろうと思ったら20億じゃまだまだ足りない。

私も場合によっては、外部からのさらなる資金調達も視野に入れて展開していく予定です。

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会社を売却する前提では世界的大企業は創れない

シリコンバレーに在住し事業を創っていたとのことですが、日本に戻ってきて、イグジットにまつわる環境の変化を感じることはありましたか?

望月良くも悪くも、イグジットありきで起業する人が増えたなと感じますね。最近では学生起業家と話していても、「この会社は売却する計画です」と話している人もいます。

シリコンバレーでは当たり前の会話なため、起業のエコシステムが日本でも成熟してきた兆しであり、喜ばしいことである反面、「売却前提」で経営していて世界的企業を作った人には会ったことがありませんよね。

正田創業から2ヶ月にして70億円で会社を売った(CASHの)光本さんの例は記憶に新しいですが、たしかにそもそも売却前提で経営していると、世界的大企業には成長させられないかもしれません。

会社が成長してくる過程で、必ず経営効率が悪くなってくる瞬間が訪れます。そのようなときに、ビジネスモデルを変えたり、0から新規事業を創ったりしなければ会社として大きな飛躍は望めせんが、「もう1回創業期のような体験をしないとならないなら、バリエーションも高い今の段階で売ってしまおうか」と思ってしまうでしょうね。

体験したからこそわかる、米国・シリコンバレーと日本のベンチャーエコシステムの違いはなんでしょうか?

望月まず米国、特にシリコンバレーはマーケット自体が非常に魅力的です。様々な人種や宗教がいりまじっており、世界標準のサービスをつくる上でのテストが圧倒的な効率で行えます。ユーザーも様々なサービスに触れて成熟しているので、例えばカフェで隣に座っている人にアイデアを話すだけで、とんでもなく質の高いフィードバックが返ってきたりします(笑)。

あとは、やっぱり経験豊富な起業家や投資家が集まっているので、スタートアップを成功させるまでの知見や技術が圧倒的に蓄積されていますね。伸びしろのあるマーケットでは即座に競合が立ち上がってくるから、成功するためには「資金力とスピード勝負」、という側面もあると感じました。

正田資金力がカギとなると、サービスを伸ばすより先に優秀なCFOをチームに入れることのほうが重要になるんですか?

望月どうでしょうか。個人的には「100人に愛されるプロダクトを作れ」ではないですが、シリコンバレーでも、まずは実績を作ることが先決だと思います。

売上でもユーザー数でもなんでもいい。お金の出し手も経験あるCFO人材も日本と比較して多いため、実績が生まれれば自ずと資金も人も集まってきます。いかにスピードを持ってリーンにプロダクトを成長させるかが最初の勝負です。

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諦めるのは、本当に好きじゃないからではないか?

望月さんが現在取り組んでいる、Xvolveの活動についても教えてください。

望月「世界中の人を繋げる」というのを一つのテーマに、様々なサービスを試しているところです。

2016年には「ライブ動画でいつでも誰かに話を聞いてもらえる」というコンセプトの「Beheard(ビーハード)」。2017年にはExpats(海外在住者)が、その国で簡単に家探しができるチャットアプリ「Goten(ゴテン)」、2018年にはパーソナルマッチング領域でさらに2つのサービスリリースを予定しています。

まだ何が成功するか分かりません。失敗の方が多く続くと思います。それでも、今迄もこれからも、目標は変わりません。世界中の人に愛されるサービスをつくるまで、今後も仲間たちとチャレンジを続けていきます。

今のサービスをやろうと思ったきっかけは何なのでしょうか?

望月一つは「世界中の人に使ってもらえる」可能性があること。そしてもう一つは「自分自身が情熱をもって取りくめる」ということです。

これら判断基準は、時間や経験の蓄積とともに磨かれています。一点目の「世界中の人に向けて」という意味では、自分自身が様々な国に移り住む中で「世界にはどんな人が住んでいるのか」ということを明確にイメージできるようになりました。

二点目の「自分の情熱」という点でいうと、過去10年以上、多くの事業に取り組んできた結果、「自身がどのように社会に貢献したいのか」という点が明確に見えるようになってきました。

望月特に二点目は、基本的にうまくいかない事の方が多い新規事業を成功させる上で、とても大事なのではと思っています。起業したばかりのころは思いついた事業は10個でも20個でもとにかく試して、うまくいかないものばかりだったんですが、振り返るとうまくいかない原因は、「自分が本当に好きじゃないから途中で諦めてしまっているからではないか?」と気付いたんです。

情熱があれば成功するまでいくらでもピボットできる。よく新サービスが「新規事業責任者」ではうまくいかない、社長が情熱を持ってやらなければいけない、と言われるのもこの辺が理由な気がします。

正田私も今のTIGALAの事業構想を本格的に動かし始める前には、過去に手がけていた事業でうまくいきそうだったものを再開しようかとか、買収した会社をさらに大きくしようかとか、ものすごく悩みました。

でも、「お金に困っている、もっとお金が欲しい」と思っているような状態だと、そういう思考を膨らませることって難しいと思うんですよね。ある程度個人としても潤沢なキャッシュがあれば、事業を買ってきて成長させてもいいし、はたまた不動産の家賃収入だけでのんびり暮らしてもいい。「何かをやらざるを得ない」という状態とは違う、「自分が本当にやりたいこと」に真摯に向き合って何をやるかを選択することができます。

望月私も、リジョブ売却後に何をやるかはゆっくり時間をかけて考えました。世界を目指すと言いながらヨーロッパに行ったことがないなと思い、ヨーロッパにしばらく住んだ後、アフリカや中東をめぐって研究者や現住民と触れ合う旅に出たんです。

そうやってしばらく事業から離れているとやっぱり、フツフツと事業欲が沸いてきて(笑)。そのうち自分がどのような軸で社会に貢献したいのか、どんどん明確になってきました。

正田社会人になって資金に余裕がある状態でそんなことができるのって、会社を売ったタイミングくらいしかないですよね。

経営者でも行こうと思ったら行けるけど、旅行先にも電話はかかってくるし、メールチェックもしなきゃいけない。そういう意味で、本当に何もかも手放して自分と向き合える時間は、会社を売ったタイミングくらいじゃないかなと思います。

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海外進出前提なら採用力も上がる

お二人のように起業家としてキャッシュも経験値もあっても尚、創業時にぶつかる壁はあるんですか?

正田学生起業などと比較するとある程度お金があるが故に、ハングリーさを忘れてはいけないな、と思う時はあります。借り入れでも投資を受けたわけでもない、自分で稼いだお金だと、細かい使い方にまで気が回らなくなるときは正直ありますね。

望月私の場合はとにかく“人材”の問題でしょうか。「やりたいことはいくらでもある。だが、事業を任せられるような人材は常に不足している」。これはいつの時代の、どのフェーズの経営者も悩み続ける問題だと思います。ただ、Xvolveとして活動してわかったことが1つあって、「海外マーケットを獲る前提で事業を進めると採用に幅がでる」ということ。海外に暮らしていたり、外国籍だったりする人も採用対象になるためです。

実際に日本ではエンジニア不足が叫ばれていますが、海外に目を向ければ、たとえば東南アジアや東欧では優秀なエンジニアがたくさん職を求めていますし、Xvolveでもそのような優秀なエンジニアを採用できています。

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起業家とは「自分しかやりきれないことを実現させ社会にインパクトを与える人たち」

起業家としての苦労を何度も経験した今でも新たに事業を続けているお二人のモチベーションの源泉は何なのでしょうか?今後の目標も含めて教えてください。

望月私の場合は、経営やビジネス自体が大好きという訳ではなく、あくまでも世界を変える手段として、今は会社を経営しています。

今作っている事業を世界的な事業にした後は、そこで得た資金や影響力を駆使して世界中の研究者や有識者を集め、世の中のあらゆる課題を解決する組織を作りたいと思っています。

正田ベンチャーキャピタルやファンドに似た形態のイメージですか?

望月いえ、その“チーム”の在り方にこだわりはありません。会社かもしれないし、慈善団体でも良いかもしれない。

たとえばビル・ゲイツの財団(ビル&メリンダ・ゲイツ財団)のように圧倒的な資金力で、ビジネスだけでは解決できない世の中の課題を解決してもいい。

部分最適ではなく、全体として人類や社会を向上させること。これこそ私が人生をかけて成し遂げたいことなので、30代で仲間と共にその足がかりを作り、実際に活動を進めていく中で適切な形態を考えていけばいいと考えています。

正田私はTIGALAを通じて、投資銀行業界にイノベーションを起こして行きたいと思っていますが、せっかくイノベーションを起こすのであれば、私しかやろうと思わないような変わった金融商品やサービスを作ってみたいなという気持ちはたしかにありますね。

私自身が15歳で起業し、これまで複数社の売却や事業再生を経験してきたからこそ、自分が本当にやりたいことや、社会に対してやるべきことを考えられる時間を持つことが出来たと思っています。

今見つけたやりたいことが“投資銀行業界の変革”ですが、この話だって、実際に私が中学生で起業して困った経験や、M&Aのアドバイザーとしての実務経験がなければ絵に描いた餅になってしまって、社会からも応援されないと思うんですよ。若くして起業して、何度も事業経験を持っているからこそ、やりたいことも見つかったし、そのやりたいことへの説得力も増したと感じています。

だからこそ、若くして起業する人を増やしていく取り組みの1つとして、今年から“中学生起業家を無料で支援するプロジェクト”も開始します。

私自身も、私だからこそ感じる“投資銀行業界の負”の部分を、最新のテクノロジーも駆使し、TIGALAという組織を通じて変革していきます。

サクッと起業してサクッと売却する 就職でもなく自営業でもない新しい働き方|正田圭(著)

[文]松本 玲子
[撮影]藤田 慎一郎

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