連載エースと呼ばれた20代の正体──若手のノウハウ大全

どうせ登るなら、高い方がいい──Asobica・遠藤氏のエースたる仕事術

登壇者
遠藤 卓

2015年株式会社リクルート入社。メディア広告の企画営業職を担当し、メディア活用と事業成長を支援。その後、株式会社博報堂に転職。ビジネスプロデューサーとして、大手飲料クライアントのTVCMからデジタル広告まで包括的なメディアプランニングを担当。クライアント企業のブランドデザイン及び、成長戦略に関わる。

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会社のなかでひときわ活躍している社員がいる。群を抜いて優秀な社員がいる。そんな“エース”と呼ばれる人間は、いかにしてエースになったのだろうか──。

20代エースの正体に迫る連載企画『突撃エース』の内容を元に、本記事ではそのエースたる所以を考察した。

第22回は、カスタマーサクセスプラットフォーム『coorum(コーラム)』を提供するAsobicaで、セールス部 部長 兼 アライアンス責任者を務める遠藤 卓氏。大手企業2社からベンチャーセールスへと転身した同氏。なぜ彼はどんな環境でも成果を出し続けられるのだろうか。その理由に迫った。

  • TEXT BY YUKO YAMADA
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「事業グロースに貢献したい」。
リクルート、博報堂を経てAsobicaへジョイン

“遊びのような熱狂で、世界を彩る”をミッションに掲げ、“カスタマーサクセス×SaaS”の領域でユニコーンを狙うAsobica。同社は2022年7月に総額27.2億円という大型の資金調達を実施し、この“カスタマーサクセス×SaaS”という領域において、今最も熱いスタートアップであると言えるだろう。このAsobica、直近FastGrowで独占取材をしたばかり。今回は、そんなAsobicaにて若きエースとして活躍する遠藤 卓氏に、インタビューを敢行。彼が同社でエースたる地位を確立する所以を紐解いていく。

遠藤氏がAsobicaにジョインしたのは2021年8月。28歳にして同社のセールス部の部長兼アライアンス責任者を務めながら、個人売上においてARR1.3億円を達成。入社してわずか1年たらずで同社にとって確かな爪痕を残した。そんな同氏の仕事術を紐解く前に、まずはこれまでどんなキャリアを歩んできたのかをみていきたい。

遠藤氏は2015年に新卒でリクルートに入社。セールスとして飲食店向けのメディア活用と事業成長の支援を担当。入社2年目では、全国の中でセールストップ11人に贈られる''ベストイレブン”を受賞している。

遠藤セールスの個人成績は顧客に向き合う姿勢を現した通知表のようなものだと思っています。顧客には必ず悩みや理想の姿がある。そこにプロダクトが当てはまれば、提案には価値が生まれ、信頼が得られます。誰よりも顧客と向き合い、課題解決をしようとした人は、結果的に販売実績に繋がっていきます。入社2年目は、自分や会社主語でプロダクトを売ろうとするのではなく、顧客の望みを叶えようとベクトルを外に向ける意識を心がけていました。

その後、2018年に広告代理店である博報堂に転職した遠藤氏。大手飲料メーカー大塚製薬のブランド『ポカリスエット』の専任として、メディアのプランニングからプロモーション施策の実行までを担い、当時のブランド別取引額において最高収益を達成した。

だが、もともと「30歳前後のタイミングで、事業グロースに向き合える仕事がしたい」と考えていた同氏は、大手企業2社を経て、Asobicaに入社。当時の様子を次のように振り返る。

遠藤大手企業と比べて、当初は「まだまだ社内環境の整備が必要なんだな」という印象を受けました。しかし、新卒当時から手触り感を持って事業をドライブし、事業成長にコミットできるビジネスパーソンでありたいと思っていたので、大手企業からベンチャー企業へ行くことに対してはまったく戸惑いはありませんでした。

次章から、Asobicaのエースとして活躍を続ける遠藤氏の仕事術をみていこう。

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2階層上にいる上司の業務資料から、思考を盗め

Asobicaに入社し1年目でARR1.3億円という個人売上を叩き出した遠藤氏。同氏の軸となる仕事への向き合い方、それは“自身の置かれたポジションの2つ先のレイヤー・視座で仕事に取り組むべし”である。なぜなら、人は自身の視座以上の仕事はできず、自分の器に見合わない役職にはつけないからだという。

遠藤新卒でリクルートに入社した当初から、今の自分の実力では背伸びをしてもまだ届かないレイヤーにいる上司を見て行動するように意識していました。

背伸びをしてでも、視座を上げて自身にストレッチをかける方が成長につながることはもはやいうまでもありませんよね。もちろん筋肉痛を伴うシーンもありますが、それにより得られる経験、原体験で身を持って学ぶことが成長の最短ルートでもありますし、組織全体の問題をより自分ゴト化できます。そう、視座が上がることで意識が広がり、見える景色が変わるんです。

たしかに、新人の立場と経営者の立場では、組織の課題感が異なるように、どの位置から物事を捉えるかによって見える景色は変わる。視座が上がれば、今の自分よりも上の立場から組織全体を捉えられるようになる。その結果、本来の自分の実力では到底辿り着けない領域に、最短ルートで辿り着けるというわけだ。遠藤氏は実際、どのように視座を高めていったのだろう。

遠藤具体的には大きく2つあります。1つは、自分の2つ先のレイヤーにいる上司と密に時間を作り、会話量を増やすこと。リクルート時代では、いい意味で‟上司の時間は奪うもの”だと教わっていたので、入社1年目から積極的にグループマネージャーに話しかけていました。もちろんTPOをわきまえる必要はありますが、たとえオンラインでもSlackや通話などを通じて積極的に自分の意思をぶつけにいくことはすぐにできるかと思います。

そして、もう1つは、2つ先のレイヤーにいる上司が見ているファイルを可能な限り共有してもらうこと。そうすることで、今の自分ができることと、上司がやっていることの明確な差分に気づくことができる。単純に数字の管理の仕方がわかるだけでなく、何のためにそれを行っているのかという上司の思考を読み解くことができるようになります。

まるで“公開前のCMを見せてもらうような”、はたまた“ショートカットキーを習得するような”、そんなわくわくするような気持ちで上司の脳内をのぞいていました(笑)。

2つ先のレイヤーにいる上司が今、どのような課題に取り組んでいるのか。たとえ新入社員であっても、会社や事業部の課題を積極的に取りにいく。若手のうちからそういった姿勢を一貫してきたからこそ、環境が変わってもすぐに課題を自分ごと化できる。結果より多くのことを吸収できるため、成長速度が何倍にも早くなるのだ。

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アウトプットは、「5割の出来でだせ」

続いて遠藤氏は、「アウトプットは5割でも、スピードを重視すべし」という仕事術を挙げた。新卒2〜3年目のリクルート時代、遠藤氏はクオリティを重視するあまり、すぐにアウトプットを出せなかったという。

一般的に仕事の“質”と“スピード”はトレードオフの関係にあるものだろう。時間をかければかけるほど質を高められるが、その分、関わる相手からの期待値も上がっていく。そのため、ビジネスにおいてはこの期待値コントロールが大事だと言う。

遠藤最初から完璧なアウトプットを出すことはできません。ゆえに、アウトプットは5割でも、最低限のクオリティラインをクリアしているのであればスピード重視で出すようにしています。それによってクライアントや上長から適切なフィードバックを受け、すぐにチューニングすることができる。自分で長くボールを持ち過ぎず、素早くPDCAを回すことを意識しています。

特に、お客様へのメールや電話でのレスポンスこそスピード重視で即対応する。また、ルーティンワークのような事務作業も“その日のうちに絶対にやりきる”と決めて、タスクを後回しにすることはない。

一方で、”やらないことを明確にすることも大事”だと見解を述べた。

遠藤仕事に対して熱量高くプロ意識を持って取り組んでいる人は、「もっとこうした方がいいんじゃないか」とやるべきことが次から次へと目に留まるようになります。それ自体はすごくいいことですが、一方で、決められた時間軸の中ですべてをこなすことは難しい。だからこそ、“何をやらないか”を明確にすることも大事です。

特に、重要な意思決定を伴うものは、ある程度時間をかけてしっかりと組み立てた上でアウトプットをしていく必要があります。そのため、あえて“今日はやらないこと”を決めることも大事ですね。

また、時間術に関しては“期初に年間計画を立て、毎週進捗を自身でモニタリングし、PDCAを回す”ことを意識している。

遠藤期初に、1年後の自分がどうなっていたいのか理想の目標を立てます。すると、そこから半期、3ヶ月、1ヶ月、週次、日次とブレイクダウンさせながら細かいスケジュールを設計することができます。これを基に、毎週かかさず自身の進捗状況を見返すんです。この振り返りによって、自分が目標に向けてプラスに進捗しているのか、もしくはマイナスに後退しているのかが可視化できるんですね。僕は常に年間計画と照らし合わせながら、自身に進捗状況を問うようにしています。

読者の中には「そんなこと当たり前だ」と感じる人もいるだろう。しかし、本当に実行している人がどれくらいいるだろうか。単に“知っている”人と、それを“実行に移せる”人とでは、生み出す結果に天と地ほどの差が生まれる。結局は、実行力が伴っていることが重要なのだ。

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Asobicaの次は、「スープ屋さん」!?
掲げる夢は、止まらない

最後に、「視聴者に向けて伝えたいこと何か」という問いかけに対し、遠藤氏は次のように語った。

遠藤僕は、「どうせ登るなら高い山を目指す方がいい」と思っています。視座が高くなれば見える景色がより大きく広がり、そこでしか味わえない経験が積めるからです。

一般的に、仕事という字は、‟物事に仕える”と書きますよね。これが“私事”になってしまうと、自分に矢印が向いている状態となり、社会に意識が向きません。一方、“志事”にできれば、志高く、社会のためにインパクトが届けられる。僕自身も常に志を高く持ち続けていたいですね。

「志高く生きたい」と、そんな宣言ともとれる遠藤氏に対し、将来の想いを尋ねてみた。

遠藤これまでの経緯を踏まえると少し意外かもしれませんが、将来は“スープ屋さん”をやりたいと思っているんです。温かいスープ、冷たいスープなど、多くの人たちが喜んでくれるものを届けられる人になりたい。

もちろん、今はAsobicaの事業成長にコミットすることが優先です。自分の中で納得できるまで、責任感を持って事業に向き合いたいと思っています。

常に2つ先のレイヤーを見据え、視座高くキャリアを築いてきた遠藤氏。「将来の夢はスープ屋さん」という意表を突いた回答に驚かされたものの、同氏の中では明確にビジョンがあり、そこに向かってこれからも着実に歩んでいくだろう。「物事は、心に思い描いた通りにしかならない」と言う世の見解が正しいのであれば、夢や目標は大きい方がいいに決まっている。「どうせ登るなら、高い山を目指す方がいい」という同氏の言葉からは、遠藤氏自身の大きな覚悟が感じられた。

こちらの記事は2022年10月28日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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執筆

山田 優子

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