EVENTREPORT
正田 圭 猿川 雅之 木暮 圭佑 鳥居 佑輝 西川 ジョニー 雄介
18-09-05-Wed

「イグジット交渉時、起業家と投資家の利益は相反しやすい」
投資家が教える、成功するM&Aの秘訣【M&Aイベントレポート #1】

TEXT BY JUNYAMORI
7/22開催 売却経験者・投資家と考える、M&A成功の秘訣とそのトレンド
#1
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FastGrowは、7月22日に株式会社デジタルガレージにて
「売却経験者・投資家と考える、M&A成功の秘訣とそのトレンド」と題したイベントを開催した。

事例も増え、注目が集まるM&Aについて、
投資家と起業家の両サイドから迫ろうとするイベントには、138人が詰めかけた。

前半は「投資家も喜ぶM&A事例と、今後3年間のM&A市況」というテーマで、
投資家たちがトークを繰り広げた。

登壇したのは、General Partnerの木暮 圭佑氏、
DGインキュベーションの猿川 雅之氏、ユニバーサルバンクの鳥居 佑輝氏、
TIGALAの正田 圭氏の4名だ。

モデレーターは、FastGrow事業責任者 兼 編集長の西川ジョニー雄介が務めた。

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スタートアップへの投資やM&Aの経験

ジョニーまず、みなさんのこれまでの自己紹介からお伺いしてもよろしいですか?

正田TIGALAの正田です。私は、15歳で起業した会社を19歳で売却し、以降いくつかの会社を立ち上げては売却してきました。現在は、M&Aを支援する事業を展開しています。M&Aのトレンドには大きく2つあって、一つは15年ほど前から増えてきている事業承継のM&A。もう一つは、若手起業家たちのM&Aも活発になってきています。事業承継よりも、若手起業家のM&Aのほうが難易度は高いので、そのアドバイザリーの会社を経営しています。

木暮TLMの木暮です。私は2015年に1号ファンドを立ち上げ、今年2号ファンドを立ち上げました。現在は総額10億ほどのファンドで、20代の若い起業家への投資をしています。今日は、前職イーストベンチャーズ時代の話も含めて、お話できればと思います。

猿川DGインキュベーションの猿川です。親会社であるデジタルガレージは、20年ほど前からベンチャーに投資をしてきた会社で、投資子会社子会社のDGインキュベーションを通じて投資をしているので、ファンドではないのですが規模的には直近で150億円近い未公開企業の株式を保有してます。内訳としては約6割が北米の会社で、日本国内への投資が2〜3割。あとは東南アジアやヨーロッパ、中東。昨年、一番多かったのはインドへの出資が多かったですね。

鳥居ユニバーサルバンクの鳥居です。2015年に創業して、現在2つの事業部を運営しています。一つは未公開株式事業部、もう一つはスタートアップスタジオ事業部です。未公開株式市場部では、株式投資家のクラウドファンディングのプラットフォームやセキュリティトークンの市場取引所などを開発しています。

スタートアップスタジオ事業部では、3社の会社の株主として支援させてもらったり、事業の買収、事業の立ち上げ、事業の売却などをしています。買収して育てた事業が「Pedia News」という事業です。こちらの事業はTIGALAに売却させていただきました。前職はイーストベンチャーズの3人目のメンバーとして数十億のファンドの組成、約100社への投資などに携わりました。今日は、これまでの経験をシェアできればと思います。

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投資家と起業家の接点はどう生まれるのか

ジョニースタートアップへの投資を行ってきたゲストのみなさんは、どうやって出資先の起業家と出会われてるんですか?

猿川投資先経営者の紹介が多いですね。前職のジャフコでは人数も多かったので、メールを送ったり、電話したりということもできましたが、現職では人手も足りないので。

あとは、ベンチャーキャピタルの方々から紹介いただくこともあります。「Open Network Lab」というアクセラレータープログラムを運営していて、起業家がピッチをするデモデイの時には約70社近いVCの方々にご参加いただいています。その辺のネットワークからご紹介いただくこともありますね。

鳥居私も人からの紹介が多いですね。あとは、Twitterで「これは面白いな」という人を見つけたら会うようにしています。すぐに出資するわけではないのですが、事前に会っておいて、その人が起業のタイミングで最初の出資をさせていただいたりしています。

木暮私も誰かの紹介で会って投資に至るケースがほとんどです。投資家側からプッシュしたほうがいいとは思ってはいるのですが、「スルーされたらどうしよう」とか考えてしまって(笑)。連絡をいただけたらできるだけ会うようにしています。ただ、全員にお会いするわけではありません。

最近は、事前に資料を見せていただいてチャットでディスカッションを行ってから会うようにしています。紹介いただいた際はほぼ確実に会うのですが、既存投資先と事業が競合の場合には会わないようにしていますね。

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投資先が売却できたときの心境

ジョニー続いて、出資先がM&Aできたときの投資家としての心境をお伺いできたらと思います。

鳥居それはもう超嬉しいですよ。M&Aにもいろんなケースがありますが、共にたどり着くまでをご一緒できたという実感がありますね。

ジョニーご自身が「Pedia News」を売却されたときの心境はいかがでした?

鳥居それも嬉しかったですね。自社のリソースでは長く成長させるのが難しいのではと考えたタイミングだった。リソースもあり、経験も多いTIGALAさんが続けてくれることで「Pedia News」の価値がより大きくなるなと思えたんですよね。

木暮個人として、ファンドとしての気持ちは別ですね。個人としては、起業家に寄り添って戦っていくというスタンスです。M&Aによって起業家にキャッシュが入り、次の挑戦ができる可能性もできますし、個人としては良い挑戦だったと応援したい気持ちもある。

ただ、ファンドはリターンを最大化しないといけません。M&Aによってはファンドが損をする可能性もある。そうなると、一概にM&Aが全部良かったすごくよかったとは言いにくいですね。ファンドとしては成功ではなかった、と思う可能性はある。

正田私の場合は、投資した案件の売却より、自分で買収した案件の売却が多いですね。その中でも、事業救済的な売却はないので、嬉しいことしかありません。M&Aが成立すると、月々のキャッシュフローよりも桁の違う金額が口座に入ってきて、その金額が入ってくるとアドレナリンが出ます。

ディールが終わるまではちゃんと契約が締結するかどうかが気になり、情緒不安定になるんですよね。ディールが決まってからも義務の履行期間があって、そこでトラブルが起こらないかヒヤヒヤしている。それが終わって、一息ついたらアドレナリンがでますね。

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ロックアップはつける?つけない?

ジョニーM&Aの際、ロックアップはみなさんどうされているのでしょうか。

木暮M&Aが完了すると、ファンドとしてはもうその会社との関係がなくなってしまう。なので、本質的には起業家が決めることかなと思いますね。

正田私は最初から売ることを前提に作っているので、アーンアウトやロックアップはつけません。

猿川投資家と起業家で立場が違いますよね。起業家はロックアップは避けたいと思う一方で、投資家は売値が上がるのであれば、もちろんリターンを最大化させるために「そっちのほうが嬉しい」と考える。会社を売却した瞬間にさよなら、という熱量の人もいいとは思うんですが、そういう人の会社だと買われにくいかもしれませんね。

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M&Aでは社内の期待値コントロールも必要

会場からの質問者1日本国内でもM&Aを前提とした起業も増えている印象があります。M&Aを前提とした起業では従業員の士気が下がってしまうということを聞いたのですが、どうなのでしょうか。

木暮大手の事業会社から給料下げて、初めてベンチャーに入社した人がM&A後に辞めるのは止められないですね。期待値コントロールは常にしたほうがいいですが、「目指すのはIPOです」と言い続けたほうが人は来ます。IPOを目指していたけど、難しくなってM&Aとなったときに人が辞めるのは避けられないなぁと。

正田M&Aで売るかもしれない、というのは最初から話せばいいんじゃないですかね。隠さないほうが円満かなと思います。仮にそれで文句を言われたら「じゃあ君はリスクをとったの?」「起業のリスク追ってるのは僕なんだけど」って話なんで。

鳥居M&Aに関しては社内の期待値コントロールにつきると思います。起業家によってはサービスを伸ばすためにM&Aを選択するケースもある。「このサービスを伸ばすために会社をやっている」ということをちゃんと共有できれいれば、そこまで衝突しないかなと思います。

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M&Aの意思決定は素早く

ジョニー投資家から起業家に向けてM&Aを提案することはあったりするんでしょうか。

正田私が携わるM&Aは救済型ではなく、前向きなものが多いですね。業界が同じ企業がIPOするとその業界の価値が可視化されます。これまで上場企業がいなかった業界でIPOが出ると、その業界の人にはM&Aの検討を薦めたりしますね。

あとは、会社が成長して業界3位が射程に入ったタイミングだと売りやすいです。業界の1位が買ってくれるので。あとは「EBITDA」が5億円を突破したタイミングも会社は売却しやすくなります。

木暮次のラウンドのファンドレイジングをしているときに売却のオファーが来ることはありますね。ほとんどその話には乗らないんですけど。バリエーションと近い条件で来るオファーは検討はしてもいいなと思います。出資先にも、結果的にM&Aはしなかったのですが、打ち合わせをするなど検討したケースもあります。

鳥居木暮さんのケースのように、伸びている会社を安く買おうというオファーはたくさんくるんですよね。投資家としては、そこで「もうちょっと目線あげようよ」と言ってあげられるといいかなと。起業していると、社内のゴタゴタがあったり、次の資金調達でお金が集まるかどうかなど、色んなHard Thingsがあります。そのタイミングで甘いディールの相談がきたときに、目線をあげる役割を担えたらと。

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この先、M&Aが加速しそうな業界は?

ジョニー最後に、ここ数年でM&Aが増えていきそうな業界についてご意見はありますか?

猿川IT業界のM&Aはこの先数年で加速する思いますね。2013年〜2014年頃に、50~100億円規模のCVCが複数立ち上がり、投資をしています。ファンドは約10年のスパンで投資回収を考えます。すると、あと4〜5年で回収をしないといけません。

投資家の一番のリスクは株が売れないこと。未公開株の売買って、流動性が低くて難易度が高いんですよね。投資回収のタイミングで株がちゃんと売れるように、投資家主導のM&Aは押し寄せる可能性はあると思います。

正田今、M&Aが増えているのはマッチング系ですね。それより前だと買い取り系、さらに前だと介護ですね。業界のトレンドはあるのですが、今はマッチング系です。ボラティリティが高く、かつ伸びている業界は売りに出やすい。利益にこだわれていれば売却はしやすいので、業界・業種にこだわるより、利益にこだわったほうがいいかもしれません。

鳥居私が注目している業界は暗号通貨の市場ですね。既存の大企業にとって、まだ証明されていない市場に、一点突破で入ってくるプレイヤーたちが怖い。まだ市場が明確に存在していることが証明されていない状態では、大企業は投資できません。だからスタートアップが一点突破によって勝てる可能性がある。そうすると、大企業にとってはその急成長スタートアップを買うしか選択肢がなくなります。ただ、もちろん一点突破した先に市場がない可能性もあるので、どう人生賭けるかですね。

木暮自社で新規で立ち上げるよりも、詳しいチームごと買収するというニーズはあると思います。ヤフーは仮想通貨交換業者のビットアルゴ取引所東京に資本参加していますよね。取引所の資格をとるのは大変なので、資格を買うという狙いもある。

M&Aを狙うとなると、今から起業するか、すでに起業しているかで違うと思います。先ほどの仮想通貨などは先行者優位があった。そこは今から仕込むのは難しい市場です。これからM&Aを狙って起業するなら、今後先行者優位が作れる市場はどこかの見極めが必要かなと思います。

(起業家セッションへ)

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