連載スタートアップ通信──5分で注目ニュースをまとめ読み

不況の波が、現実味?起業家・事業家たちの見立て──5分で今週の注目ニュースをまとめ読み

指数関数的な成長を志向するスタートアップ。当然、その流れは早い。各社からリリースされるニュースを追っていくだけでも一苦労だ。

そこで、忙しいベンチャー・スタートアップに関わる人のために、一週間のウォッチしておくべきニュースだけをまとめた記事を配信していく。題して、週刊スタートアップ通信──。

土日にまとめて読みたい話題を、毎週金曜日に更新中。

今週は国内外問わず、数多くのスタートアップに関するニュースが世間を賑わせた1週間となった。その中から5本のニュース・話題をピックアップ。

・経済産業省がまとめた、スタートアップのための69の支援策とは

・スタートアップの聖地、地方でも増やせ!札幌の事例

・本当にスタートアップ業界に不況はやってくる?起業家・事業家の見方は

・キャディとLayerXのローンチに、二の矢・三の矢戦略を学ぶ

について見ていく。

  • TEXT BY HIKARU HAMADA
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経済産業省がまとめた、スタートアップのための69の支援策とは

日本には、スタートアップ向けの支援策にどのようなものがあるのだろうか。

日々、いろいろなニュースを見る中で、スタートアップの支援策を追加したとの見出しをよくみるようになった。しかし、あまりにもその数が多すぎて簡単にリサーチできないのが現状だ。

経済産業省はついに、スタートアップ支援策をまとめた冊子「METI Startup Policies ~経済産業省スタートアップ支援策一覧~」を公開した。ここには、今まで経済産業省が生み出してきた69の支援策一覧を紹介。同時に、フェーズや目的ごとのカオスマップも公開した。

シードからアーリー向けの「新規開業支援資金」や知財アクセラレーションプログラム、ミドル以降でも、自社株式を対価とするM&Aや「日本スタートアップ大賞」など、どのようなサポートが国から受けられるのか、そしてそれらはどのようなものなのかわかりやすく編集されている。

どのような支援策があるのか、気になった方はぜひ見ていただきたい。

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スタートアップの聖地、地方でも増やせ!札幌の事例

シリコンバレーを筆頭に、世界各地にはスタートアップが多く拠点を構える場所が存在している。東京で言えば、ビットバレーと呼ばれた渋谷や、ここ数年の例だと「五反田バレー」がそれにあたるだろうか。また、「出世ビル」なるものも一部で噂になっている(気になる方はWebで検索してみると良いだろう)。

そんな「スタートアップの聖地」を札幌にも作ろうとの動きが起きているようだ。

北海道特化型シードベンチャーキャピタルのPOLAR SHORTCUT代表の大久保徳彦氏のnoteがそれを物語っている。

そもそもなぜこのような聖地が必要なのだろうか。大久保氏によれば「ぜひこういう(自分と同じレイヤーにいた人たちがレベルアップしていく)経験をしてもらいたい」という。大久保氏は過去、渋谷のビルで同じフェーズのIncrementsがエイチームに買収、EXITを見た経験がある。このような経験があるのとないとでは、解像度が大きく変わるという。

このような原体験をもとに、札幌の『平岸グランドビル』で聖地を作ろうとしているようだ。このビルは、なんとあのソフトバンクを飛躍に導いた企業・ハドソンの本社跡地。ここにスタートアップを集めて、「『今まで起業なんて考えたことがなかった人たち』が独立したり、スタートアップで働き始めたりすること。それを実現したい」という。

地方には、スタートアップが集まれる拠点が重要だ。そのなかで切磋琢磨し、成長する。そんなエコシステムの形成に今後も期待したい。

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本当にスタートアップ業界に不況はやってくる?
起業家・事業家の見方は

やはりもう、かなり不安だ。そんな声も多く聞かれるようになってきた感触がある。

先週に引き続き、スタートアップ業界では不穏な動きが続いている。アメリカ市場ではすでにレイオフが加速し、VCは投資先に注意喚起をした。

そこで今回は、スタートアップ業界にやってくると囁かれていることについて起業家や事業家のコメントを紹介していく。

Off Topicの宮武徹郎氏がTwitterで翻訳したテクノロジー起業家のElad Gil氏のTwitterによれば、次の3-18ヶ月で「バリュエーションが下がる・安定しない」「ダウンラウンドが増加」「レイオフが増加」などマイナス面を指摘。一方で、「良い会社が出てくる」とのスタートアップ業界にとって一番嬉しい見方もできるようだ。

過去、リーマンショックの2009年以降、UberやAirbnbなどが生き残った。良いサービスを作る会社はこの「不況」から出てくるとの見方のようだ。

SmartHR創業者の宮田昇始氏は自身のブログにて、この冬の時代に対して、「危機はチャンス」「コスト削減は長期目線で」「個人のキャリアへの影響」を指摘。今まで(晴れている時代)は不可能だった成長ができるチャンスでもあると繰り返した。

たしかに冬の時代は怖い。しかし、これはチャンスでもある。生き残れるビジネスを磨くタイミングが来たのかもしれない。

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キャディとLayerXのローンチに、二の矢・三の矢戦略を学ぶ

さて、そんなネガティブな雰囲気に抗うかのように、今週は著名スタートアップの新サービスローンチと大型調達のニュースが立て込んだ。

キャディは図面データ活用クラウド『CADDi DRAWER』を公開。図面データを自動で解析し、寸法、記号などの情報をデータとして蓄積。そこから過去の図面に簡単にアクセスできるようになるという。

キャディは今まで、製造業の受発注プラットフォームを展開。必要な時に加工部品を簡単に受発注できる仕組みで、製造業の多重下請け構造にメスを入れた。

今回の、第二のサービスは現サービスからの課題で生まれたという。まさに、ユーザーに寄り添い、ヒアリングを繰り返したことで生まれたサービスということができるだろう。

またバクラクでお馴染みとなったLayerXは、第3の事業としてPrivacyTechを正式公開。出力時のデータを保護する技術「差分プライバシー」や、もとデータから生成した擬似データ「合成データ」などプライバシーテックをコア技術に、組織を横断したプライバシー保護を実現するサービスを展開する。

LayerXは請求書の会計処理を自動化する『バクラク』シリーズと、三井物産と共同で取り組む実物資産のアセットマネジメント事業を展開。今回のプライバシーテックはこれら事業と連動性がないようにも見えるが、LayerX代表の福島良典氏は自身のnoteで「前述の偉大なる会社たちを研究していくと、1つの共通点が見えます。1つ目の事業が完全に成熟し切る前に、2つ目の事業を立ち上げている」とコメント。

1つの事業を成熟させるだけではなく、次から次へと事業を展開していくことで、会社自体が大きくなることを目指す。そのために、3つ目の事業を立ち上げたと説明している。こうした事業開発方針は、ラクスルやSmartHRにもみられるものだ。

そして、契約審査プラットフォームを展開するLegalForce。ソフトバンクビジョンファンド(SVF)をリード投資家に、Sequoia China、Goldman Sachsなどから総額137億円を調達したと発表した

同社は2,000社以上の有償顧客をすでに抱える。今回の資金調達で、アメリカ市場への展開を目指すという。今後、どのように日本産契約審査プロダクトをアメリカに根付かせるのか、気になるところだ。

今後のこの3社のフェーズ変化を見ていくと、さらなる学びが得られるだろう。

さて、今週のスタートアップニュースはいかがでしたでしょうか?今後も毎週更新していきますので、ぜひFastGrowをチェックしてみてください。

こちらの記事は2022年06月24日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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執筆

濱田 ひかる

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