エンジニア採用の失敗、あるある8選──創業期にしてハイクラスクリエイターを惹きつけるX Mileに、「開発組織が強くあり続けるための秘訣」を聞く

Sponsored
インタビュイー
小野 潤一郎

高崎経済大学卒業後、スズキ株式会社に入社。その後300億円のM&Aイグジットを実現した株式会社gloopsのコアメンバーとして主要なIPを含めた多数のプロジェクトをマネージメント。2013年より株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)に入社し、スマートフォンゲーム事業の立ち上げに貢献(1作目、2作目の国内向け事業をマネジメント)。東南アジア現地法人を経て、オートモーティブ事業部で新規事業(現タクシーアプリGoや自動運転)に従事。2017年よりスタートアップを数社設立し、それぞれ事業譲渡・経営譲渡を経験。その後、Logi TechスタートアップCBcloudにおいてPickGo事業責任者・プロダクト部門責任者として従事し、X Mileに参画。

蝦名 潤

青森出身。公立はこだて未来大学にてコンピュータサイエンスを専攻。在学時には仮想通貨やブロックチェーン技術を独学。卒業後、不動産Techベンチャーにエンジニア1期生として入社。コアメンバーとして、フロントサイド・バックエンド・インフラと境目なくWebサービス開発に従事。2022年、X Mileに1人目エンジニアとしてジョインし、開発基盤から組織構築までをテックリードとしてリード。

大谷 祐司

大学卒業後、数社でシステム開発を経験したのち、株式会社リクルートエージェント(現:株式会社リクルート)に入社。その後、株式会社サイバーエージェントでインターネット広告のシステム部門を立ち上げ、子会社の技術責任者に就任。株式会社インテリジェンス(現:パーソルキャリア株式会社)では技術責任者としてエンジニア組織の立ち上げを行う。エンジニア1名からスタートして、グループ全体で60名のエンジニア組織を構築。2018年から株式会社サーキュレーションにCTOとして参画。現在はホライズンテクノロジー株式会社を起業し、代表取締役CTOに就任。「未来の世代に"強い日本"を取り戻す」新規事業の創造をミッションに事業展開を続けている。

関連タグ

急成長中のベンチャーには、事業開発やセールスに強い組織が多い。必ずしも開発サイドにおいても魅力的な環境かどうかはわからない。むしろビジネスサイド優位の開発プロセスになっていることもままある。

これまでFastGrowで4記事に渡り密着を続けてきたX Mile。1記事目では、ノンデスクという事業領域のポテンシャルや新規事業開発の強さを、2記事目では、Day1から1000億円企業規模を作る前提の、作り込まれた組織オペレーションを経営層に語ってもらった。

3記事目からは現場メンバーに注目し、他社でのセールスやコンサルティングの実績を引っ提げてジョインしたマチュア人材の活躍について。4記事目では、新卒・第二新卒で新規事業責任者や事業推進に貢献する若手の活躍環境について明らかにした。

これまでの4記事からは、X Mileはビジネスサイド優位のスタートアップに見える。だが、実は開発サイドも今時点ですでに強い組織であることがわかってきた。最近ではCBcloudやDeNAで事業責任者、プロダクト責任者、自ら起業経験もある小野氏がジョイン。さらにサイバーエージェントやインテリジェンスでエンジニア組織の統括を担ってきた大谷氏が技術顧問に就任した。そしてそんな経験豊富な彼らをうならせる実績をこれまでに残してきたのが、若手の1人目エンジニア、蝦名氏だ。

連載5記事目となる今回は、エンジニア組織を率いる3名の鼎談を通して、ハイクラスクリエイターの採用シーンにおけるNGパターンにも触れつつ、「開発組織が強くあり続けるための秘訣」を解き明かす。

  • PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
SECTION
/

意外と知らないハイクラスエンジニアの定義とは?

ITが浸透した現代において、ほぼ全ての企業にとってエンジニアはビジネスの要と言っても過言ではない。どれだけ素晴らしい構想を描いたとしても、潤沢な資金やビジネス上の優位性があったとしても、実際にサービスを作り出すエンジニアがいなければ、全ては絵に描いた餅に過ぎないからだ。

それでは、技術や開発がわかるエンジニアであればなんでも良いのか、と問われると決してそんなことはない。

例えば、「プログラミング言語」を使い、コンピューターに対する指示文を記述する一般的なエンジニアという仕事は、将来的には「ChatGPT」をはじめとする自然言語系の生成AIに取って代わられるのではないかという意見もある。

そんな時代において、これからも求められ続けるエンジニアとは一体。今回はスタートアップシーンにおいて求められるハイクラスエンジニアの特徴について理解を深めたい。

まずは、サイバーエージェントやインテリジェンスでエンジニア組織の統括を担い、のちにサーキュレーションのCTOに就任、現在はX Mileの技術顧問でもある大谷氏に、スタートアップが喉から手が欲しい、ハイクラスエンジニアとはどんな存在なのか?を聞いてみた。

大谷正直、技術力が高いエンジニアはたくさんいらっしゃると思います。一方、ビジネスの優先度を考えた上で最適な技術を選べるエンジニアって実はそんなに多くないと考えています。

諦めなければならないところ、捨てなければならないところに一旦目をつぶった上で、将来的に負債を残さないようにしつつ、プロダクトの成長に貢献できるようなエンジニア。そんなエンジニアが、創業初期のスタートアップでは「ハイクラスエンジニア」として定義され、求められているのではと思います。

技術力の高さのみならず、“ビジネス視点”を備えたエンジニア。その素養は、一体どんな経験を経て培われるものなのだろうか。大谷氏は続ける。

大谷何かをゼロイチで作り上げた経験のあるエンジニアと言えるでしょう。「この技術を使いたいからやってみよう」ではなく、明日生きるか死ぬかわからない中でプロダクトを育てるために「何を捨てるか」という優先順位付けができるエンジニアだと思います。

ディー・エヌ・エー(DeNA)、2度の起業、CBcloudのプロダクト責任者を経てX Mileにジョインした事業家・小野氏も大谷氏に同意を示しながらも別の視点から昨今スタートアップシーンで求められているハイクラスエンジニアのその動向を述べる。

小野少し抽象的な表現になりますが、「抜きんでる存在」。より具体的に言うと、事業を作っていく際に指名したくなるエンジニアが現在も、そして今後も市場価値の高い、いわゆるハイクラスエンジニアだと思います。

もちろんこれは、プロダクトドメインに限らず事業企画、事業開発、ひいては経営者にも求められる素養だとは思いますが、次にもう一度別のサービスを作るときに指名したくなるような人かという観点が大事になってきます。

そう語る小野氏も、2回の起業経験を持つ事業家でありながら、DeNAでの事業開発・プロダクトマネジャー、レイタースタートアップでのプロダクト責任者など、プロダクト領域を強みにした経営人材として稀有なキャリアの側面を持つ。そんな小野氏が、これまで「抜きん出る存在」であり続けるために心得ていたこととはなんだろうか。

小野あらゆる物事に感度を高く持つというのは重要だと思います。その感度というのは、何も技術的な最新トレンドをチェックしておくという話だけではありません。

例えば、街を歩いてるときに、「なぜこういう広告デザインなのか」、「なぜタクシー広告にはこのクリエイティブがなのか」と言った具合に、自分の職種を超えた物事の背景を理解する感度を養っていくことが重要です。

先ほど、大谷さんが「“ビジネス視点”を備えたエンジニア」と仰いましたが、まさにその通りで、あらゆる事象の背景に潜む「なぜこうなったのか」まで考えられると、おのずと総論的に物事をみれるようになります。それがひいてはエンジニアという職種を超え、ビジネス視点を養うエンジニアとしての土壌になると考えています。

どうしてもハイクラスエンジニアと聞くとその技術力のみにスポットが当たりがちではあるが、大谷氏、小野氏ともに「技術力の高さは前提とした上で、ビジネス的視点を備えたエンジニア」が何よりも求められていると語る。

それでは、そんなハイクラスエンジニアはどんな環境を求めているのか、また視点を変えるとハイクラスエンジニアが嫌がる環境とはどんなものなのか?せっかくなので聞いてみたい。ぜひ読者も「自分たちの組織に当てはまっていないか」注目してみてほしい。

SECTION
/

こんな環境はNG。
ハイクラスクリエイターが嫌う環境とは

熾烈化するハイクラスエンジニアの獲得競争。わかりやすい部分で言えば、給与や待遇で差別化を計るアプローチもある一方、よりハイクラスなエンジニアはそれ以外の部分も注視する傾向が高い。

まずは、前提として「エンジニア(より広義にクリエイターも含める)が嫌う環境あるある」とは一体どんなものなのか、聞いていきたい。それぞれ3名から「経営者」「開発組織」「開発現場」という視点からエンジニアが嫌う環境の特徴、計8つを挙げてくれた。

小野まず、「経営者」の観点でいうと経営者がプロダクトや技術に対して興味がない場合が挙げられます。外からではなかなか見分けることは難しいかもしれませんが、実態として、経営メンバーの中でもCTOの立場が弱く、CEOやCOOの意思決定が優先される傾向がある場合は、気をつけたほうがいいかもしれません。それだけ、社内における開発サイドのプレゼンスが低いということですからね。

また、創業時は受託事業を並行でやるスタートアップも多いと思います。それが「会社の資産になる受託」であれば、問題ないですが「事業の本筋からズレてしまう受託」であれば要注意です。そのままズルズルと受託を続けてしまい、蓋を開ければ一向に自社プロダクトの開発に踏み切れないなんてこともあります。

採用広報文脈では自社プロダクトの開発環境を全面的にアピールしながら、実は受託も一部やっているみたいな場合は少しだけ気にしても良いかもしれません。

大谷「開発組織」という側面でいうと、クリエイターにとって開発フローが整理されていないことはストレスかもしれません。

例えば、スクラムなどのフレームワークを活用できておらず開発フローが整備されていなかったり、そもそもどんな意図でチームを分けているのかよくわからない。もしくはそのチーム分けが適切に機能していない場合などですね。

また、小野さんが言った通り、ビジネスサイドと開発サイドで意思疎通が うまくいっていない開発組織は嫌煙されるでしょう。

X Mileの1人目エンジニアとして入社した蝦名氏は、これまでX Mileの「開発現場」を牽引し、また同社の採用にも携わってきた。そんな蝦名氏の目に映る、エンジニア採用のNGパターンとは。

蝦名もちろんお二人が先に挙げた通り、エンジニア採用のNGパターンは実に多岐に渡ります。「開発現場」という観点だと、「エンジニアとしてのナレッジが得られない」のは大きなマイナスポイントでしょう。シニア/ミドルのクラスの経験豊富なエンジニアがいない、または頼れる技術顧問がいなければ、自身のスキルアップに繋がりませんからね。

また、採用に関わる中でも、よくエンジニアの方々が気にされるのが、「開発開発の技術に対する感度」です。モダンな技術(フレームワーク、インフラ等)を扱っていない、もしくはそもそもモダンな技術を受け入れる文化がない、ことは好ましくないでしょう。

一方で、目新しいかといって、意味もなく新しい技術ばかり使う、またそれをアピールする開発組織も意外と嫌煙されます。つまり、特定の技術を「なぜ採用しているのか」といった、その企業の思想や哲学が伝わっていない場合などは注意が必要です。積極的にブログやnoteで発信したいですね。

最後に、これはプラスマイナスどちらに働くケースもありその企業の魅せ方次第なのですが、技術的負債とか技術課題の有無が挙げられます。技術課題がある方が燃えるタイプのエンジニアもいるので、「今後、技術的負債を返済する予定だ」と正直に伝えることが大事でしょう。

「エンジニアが嫌う環境あるある」。ドキッとした読者も多いのではないだろうか。また、ことハイクラスクリエイターについてはどうなのか。続きは小野氏のnoteをぜひご参照いただきたい。

ここまでで、昨今のスタートアップシーンにおけるハイクラスクリエイターの定義と、彼らが求める環境が理解できた。

ここまでの話を聞いて、「それじゃ、X Mileはどうなんだ?」と感じる方も多いだろう。創業4期目のスタートアップがどれだけ、上記の要件をしっかりとクリアしているか、等身大の姿は気になるところ。

答えを先に言ってしまうようだが、起業経験があり敏腕クリエイターとしての顔も持つ小野氏、名だたる成長企業のエンジニア組織の立ち上げや責任者を歴任してきた大谷氏ともにX Mileの開発環境に驚き、参画を決めている。

ここからは、X Mileの1人目エンジニアとして入社した蝦名氏とともに、なぜX Mileがハイクラスクリエイターを惹きつけるのか、その所以に迫っていきたい。

SECTION
/

毎週、新機能や改善のリリース。
創業期から“ビジネス視点のあるエンジニア”がいることの効用

急成長中のスタートアップといえば、コンサルティングファーム、事業開発、セールスなどのバックグラウンドを活かし、ある意味でビジネスサイドで強みを持つ経営者が活躍するシーンが目立つ。

確かに「売上が先、組織整備は後」というスタンスが求められる創業期においては有効であることは否めない。一方、長期目線で大きな組織をつくりあげるためには、なるべく早期より組織の土台を整備することが求められる。

特に今回のテーマである開発組織においては、着実に開発を進められる環境やカルチャーは重要と言える。どんなに高い給与をもらっても、開発環境がアンマッチでは十分なパフォーマンスを発揮できないからだ。

そんな中、X Mileでは、連載2記事目で紹介したように、経営陣の野呂氏、渡邉氏を中心に、スケールを前提にした組織化が進む。それは開発組織も例外ではない。 まずは、X Mileの開発組織の特徴を紐解くべく、1人目エンジニアとして同社の開発組織の変遷を知る蝦名氏に、その組織の特徴を聞いた。蝦名氏曰く「開発組織においても、経営陣の姿勢や思想が色濃く現れている」という。

蝦名まずCEOの野呂さんは行動量がおかしいくらいに多いので(笑)。それに引っ張られてメンバーの行動量も増えていっている感覚があります。経営陣とメンバーの年齢層が近いことがいい影響を与えていると思っていて。

“ほとんど同世代”の野呂さんがやっているのを見たら、できないなんて言っていられないし、「勝手に限界値を決めて行動しなくなる」という悪いスパイラルには入らないと思います。

そして、COOの渡邉さんが、それを仕組みとして整理し組織に還元している。この二人のバランス感覚の良さは、X Mileの開発組織のカルチャーにも現れていますね。

新規事業を野呂氏が開拓し、手離れできると判断したら、現場に裁量が下りていく。それを、熱量と責任感を持ったメンバーがどんどん巻き取り、軌道に乗せていく。経営者の姿勢が、この良い連鎖を生んでいる。そしてこの連鎖を“仕組み”として整理しているのがCOOの渡邉氏というわけだ。

そう語る蝦名氏自身も、まだ20代半ばでありながら、X Mileの開発組織をリードする重要人物。経験豊富な小野氏と、大谷氏も蝦名氏の活躍に驚きを隠せないという。

大谷技術力がありながらも、決して技術に閉じず、どうしたらいいサービスが作れるのか、どうしたらチームとして気持ちよく働いていけるのかをしっかり考えながら取り組んでくれています。インフラにも詳しいし、アプリケーションにも詳しい。そして採用にもしっかりコミットしている。正直初めてお話したときは、もっと上の年齢・年次だと思っていました。

小野プロダクト基盤って、組織や事業の戦略を決めかねないくらい重要な部門ですよね。そこをまさかこの年齢で担っていて、さらにはビジネスサイドがどう動きやすいかまで考えて自分の立ち振る舞いを意識できているのには驚きました。

まさに先ほどの話に上がった“ビジネス視点を持つエンジニア”です。

また、これは「本質的な課題から、逆算して考えよう」「仕事における信頼を積み上げよう」「最高の人材を採用、育成し、活躍を支援しよう」など、10個あるX Mileのバリューを本当に体現している人だなと思っています。

もちろん、ビジネス視点を持つエンジニアは、蝦名氏だけではない。この比率の多さが、X Mileの特徴だと小野氏は続ける。

小野X Mileにきて驚いたことは、創業まもないスタートアップでありながら、ビジネスサイドと開発サイドの意思疎通がものすごくうまくいってるということです。

さらにX Mileの開発組織の特徴は、「なぜやるのか」という背景理解を大事にしているところだと小野氏は言う。背景に対して腹落ちしていれば、プロダクト開発の際にも、長期的な目線を持つことができ、どれだけ柔軟性をもたせるかなど、適度なさじ加減で開発を進めることができるからだ。

小野例えば、経営陣がイメージしていることを形にするだけのチームであれば、プロダクトをつくった後に応用が利かなくなっていく恐れがありませんか?そうなってしまうと、内製の意味がないし、メンバーの成長も見込めなくなっていきますよね。

今、プロダクトチームは毎週、新機能や改善のリリースをしているんですよ。これらは経営陣のイメージをしっかり飛躍させていくような内容のものばかりです。

また、私自身も最近、デザインのレギュレーションを再定義するプロジェクトを新たに進めています。従来想定で固めきらずにカジュアルに使いやすい開発環境を過去に作ってくれていたからこそ、最近ジョインしたメンバーでもどんどん挑戦を始められます。立ち上げ期から、蝦名さんを中心に、事業の背景理解が深かったから、つまり“ビジネス視点のあるエンジニア”がいてくれたからこそだなと日々感じています。

大谷そうですね、プロダクト基盤は、他のスタートアップに比べて本当にしっかりしています。 その他に印象的だったのが、誰と話しても、「上場したい」「イグジットしたい」という話は全く出ないことです。代わりに「世界を変えたい」「何か届けたい」「ノンデスクワーカーのためにインフラを作りたい」。そういう言葉をすごく聞くんです。そこに思いを持ってやっているところは私も好きなところですし、一緒にやっていて、自分も熱くなるポイントです。

SECTION
/

経験豊富なエンジニアでもX Mileという選択肢はギャンブルではなかった

入社後の驚きについて、小野氏・大谷氏の話はなかなか止まらない。だが気になるのは、そもそもなぜこの三人がX Mileへのジョインを決めたのか、という点だ。引く手あまたであっただろうことが容易に想像される中、どのような魅力を感じたのだろうか。

不動産ベンチャーのWebエンジニアだった蝦名氏は、野呂氏からスカウトメッセージをもらったことがきっかけで興味を持ち、1人目エンジニアとして入社した。(詳しくはWantedlyを参照)。「少ないリソースでどれだけ多くの課題を解決できるか、会社に価値提供できるか」ということを重視する姿勢は、今のX Mileのバリューの1つ「限られたリソースで、顧客価値を最大化しよう」に合致する。

蝦名意思決定の軸は「どれだけ困っているか」でした。他社もいくつか検討する中で、当時エンジニアが業務委託しかいなかったX Mileが、最もエンジニア採用に困っていると感じたんです。

最終的な決め手は「無限大の価値を組織に提供できる面白さ」です。市場をあまり絞らず、「ノンデスク」という大きな社会課題を解消していくプロダクトをつくっていけることに、ワクワクしました。

小野氏がX Mileに感じた魅力は3つ。1つ目は、産業全体に加えて、ノンデスクワーカーという「人そのもの」を資源だと考えているところ。

2つ目は権限移譲の姿勢だ。社長である野呂氏が、現時点で会社の収益の一番の柱である主幹事業を渡邉氏らに一任し、自身は新規事業創出にコミットしている姿勢。自身も過去に起業をし、トップの器を超えるチームづくりに腐心した経験を持つことから、それぞれの得意領域でグロースの仕組みをつくれている2人に感銘を受けたという。

3つ目は、事業モデルの作り方について。先行事例をしっかりと研究し、それをもとにして「いかに自分たちなりに歩むか」を考える緻密さに舌を巻いた。

とはいえ、小野氏は、先ほど紹介した通り、数々の事業を生み出し成長させてきた事業家人材である。転職に際しての選択肢は誰よりも多かったはず。実際にX Mileを選ぶことは当初「かなりのギャンブルのようにも思えた」と笑顔で振り返る。

特に、メンバーの多くが自分よりも一回り若い点については心配もあったようで、事前に入念に検討したのちのジョインとなった。

小野会社としてはまだまだチャレンジフェーズであるとはいえ、そこそこ人数もいますし、若い人たちが先陣を切って土地を耕しているので、それを壊すわけにいかない。そこでまず、経営陣がどんなスタイルで日頃の業務に臨んでいるのかを知る期間をつくりました。

一緒にご飯に行ったり、メンバーと経営者の間での会話の中で、普段の関係性を探っていったんです。そうすると会話の断片から、彼らが大事にしていることをいくつも知り、先ほどお伝えした三つの魅力を感じるようになりました。それで、正式に入ることを決めました。

技術顧問の大谷氏は、野呂氏との対話で壮大なビジョンに対する解像度の高さに驚嘆。また、競合へのリサーチ、分析量についても目を見張る。

大谷例えばサービスのUIやUXを考えるとき、「競合のこのサービスはこういうインターフェースだから、これを見て、○○に注意して考えていくのが良い」とか。そういった発言が自然に出てくるんですよね。そこまで競合のことを知った上で、プロダクト作りに取り組んでいる経営者にはあまり会ったことがなかったです。

野呂氏のビジネスモデルのリサーチや応用については、連載1記事目でも言及した通りだ。

さらに大谷氏は、野呂氏の「実行力」についても言及。物流業界の人材不足について憂うだけの人が多い一方で、X Mileは本気で課題解決に向かって動いている。今も採用の一次面接に参加することも少なくない野呂氏は、まさに口だけではない姿勢でビジョン実現へのアプローチを体現している。「こんな経営者がいるのは正直驚いた」というように、大谷氏の心を動かした。

大谷私は技術顧問として携わりますが、技術課題を解決するだけというつもりは全くありません。一緒にサービスを作り、一緒にノンデスクワーカーの市場に革命を起こしたい。それを実現するために、「私にできることならなんでもする」という姿勢で、チームメンバーの一員として同じ思いでやっていきたいと思っています。

SECTION
/

錚々たる実績を持つ技術顧問にも気後れなく質問。
いい意味で「遠慮がない」開発組織

X Mileの開発環境の魅力について、3名それぞれの立場から見ていきたい。 蝦名氏は、3名のうち最も若手ではあるが、X Mileについては一番解像度が高い。その現場目線ではX Mileの開発環境はどのように映っているのだろうか。

蝦名これまでは経営陣がいろいろ考えたことを、1日の中で限られた30分や1時間ほどで聞いて、あとは自分たちで想像しながらつくっていました。小野さんが入ってからはそのステップが細分化されて、僕の情報も頻繁にアップデートされるようになりました。

開発ばかりしていると、どうしても「今の機能をどうつくり込むか」に思考が偏ってしまいます。以前はCSベースで開発順位を決めていたので、今のお客様には満足してもらえるけれど、今後あまり広がりが見えなくなってしまうこともありました。

小野さんが入ってからは、ターゲットに合わせた機能開発の順位が明確化できて、機能の連続性を持たせつつ、機能間連携の整理もできてきた。順序良く開発が進められるようになっています。

オーナーシップを持って様々な会社で開発を進めてきた小野氏。まだX Mile歴は浅い分、他社との比較からX Mileの開発組織の強みを客観的に見極め、舌を巻く。

小野傍から見れば錚々たる会社で実績を積まれてきた大谷さんに対して、X Mileのメンバーはかなりフランクに質問しているし、チャットでも日頃からインタラクティブにやり取りがあります。

「変に気後れしたり遠慮したりしてしまうと、自分たちの提供価値を下げるかもしれない」ということを、メンバーが自然と感じているんじゃないかと思います。いい意味で遠慮をしない文化は魅力的ですね。

プロダクトって会社にとっての土台なので、そこをきちんと組みながら、私としての味付けをしていくことを今は考えています。

そんな大谷氏は、くどいようだが、サイバーエージェントやインテリジェンス、ミイダスなどでエンジニア組織の立ち上げや責任者を歴任してきた。この経験を惜しみなく提供している。

ただやはり、小野氏のジョインによって、将来への期待は大きく高まった面もあるのだという。

大谷小野さんが入る前もチャレンジし続けてはいたのですが、大きなストーリーとか、少し時間軸を伸ばした未来のプロダクト像はあまり鮮明ではなかったと思います。小野さんが入られてからは、そこに一本筋が通った感じがします。

なぜ今これを作るのか、それがどんな価値を生むのか、そういうことをしっかり考えるチームに変わりました。全く別のプロダクト組織になったなと感じます。

時間軸を伸ばした先のプロダクト像を考える。これについては、直近で取り組む開発課題がまさに該当する。X Mileでは現在、小野氏が先導し、マルチプロダクトのつなぎ込みに挑んでいる。

小野私たちはコンパウンドスタートアップとしてマルチプロダクト展開をしており、各事業については、単なる足し算ではなく、かけ算にして大きな数字にすることができると創業時の構想からも考えて、議論しておりました。プロダクトを連続性を持って、よりシームレスな状態に持っていくことが、顧客体験の向上ひいては会社全体の価値につながってくると考えました。

マルチプロダクトの統合は非常に難しいのですが、事業立上げ段階のうちに連動性を高めるための基礎工事に取り組むため、蝦名さんと大谷さんにも毎日悩んでもらいながら構想を進めています。

蝦名マルチプロダクトの統合は、いち開発者としてはこういう難題をこなすときが自分の技術力や市場価値を上げられる機会だと思っているので、美味しい案件だなと思いながら取り組んでいます。

SECTION
/

パターンも例外も考慮した上でいかに美しく、止まらないシステムを作れるか試されているのが面白い

冒頭で、大谷氏と小野氏が述べた通り、技術力が高いだけのエンジニアはたくさんいるだろう。しかし高い好奇心で先進的な技術をキャッチアップしたり追求していったりすること以外に、「ビジネスの優先度を踏まえて使うべき技術を選択できる」ようなハイクラスエンジニアとなると、まだまだその数は多くない。

そして、「ビジネスの優先度を踏まえて使うべき技術を選択できる」ためには、何より0→1の経験を積むことが大切になるともこれまで語られた通り。

それらを踏まえて、大谷氏は、X Mileにおける0→1の機会の多さを強調する。

大谷X Mileは開発組織もまだまだこれから作っていくフェーズで、事業展開もまだまだこれから。小野さんが着手する「マルチプロダクトをつなげて価値のかけ算を実現する」のもこれからであり、これも一つの0→1だと言えます。

今後いろいろな0→1をものすごいペースで経験し、一人ひとりがさらにたくましく成長していくのだろうと思います。

蝦名氏の言葉を借りれば、システム開発は「いろいろなプログラムをつなぎ“ピタゴラスイッチ”的な連鎖を起こしてゴールを目指すもの」。ゴールに近づいていくために、エンジニアはプログラムを作り、つなげていく。途中で切れた場合のリカバリー方法も踏まえて毎日試行錯誤し、ゴールまで止まらない仕組みを考える作業だ。

蝦名当社は野呂さんや小野さんがどんどんゴールを先に伸ばしていくので、基本的にゴールが目視できないという前提はありつつ……(笑)。

人数が多い会社だと、本当に部分的な領域だけ担保できれば業務として成り立つと思いますが、今のX Mileは全員が全部を認識する必要があり、かつ一人ひとり携わる範囲が大きいです。

パターンも例外も考慮し、その上でどう美しく作るか、みたいなことも日々試されます。自分は、こんなにエンジニアとして面白みのある場所はないと思います。

上場をゴールと考えていないX Mileは、組織もプロダクトも、カルチャーもテクノロジーも、ある意味で制約なく大きなチャレンジができる。自分の手でモノを作り、世の中を変えていきたいエンジニアには適した環境だと言える。

市場を変え、壮大なビジョンを実現するには、当然ながら優秀な人材が必要になるため、X Mileは採用基準も高くしている。それだけ1人の採用に対して価値を感じ、組織として向き合っているのだ。

小野氏は「入る側も大変だと思うけど、我々側もかなり大変。そこはお互い乗り越えた上で、一緒にこの船を作っていける人に巡り会いたい」とその想いを語る。

SECTION
/

10人いたら10人の思考をしっかり引き出せる組織作りを

今後の方向性として、蝦名氏は業務管理・プラットフォームの精度を高めることに注力。今ドライバーの人力で行われている作業は非常に工数が多く細かいものが多い。これをシステムに落とし込み、それぞれをつなぎ込むことでシームレスに手続きを完了できるようにすることが目先のゴールだ。

蝦名物流は、生活に直結しているものの、具体の仕事の内容が見えずイメージしづらい方も多いと思います。

しかし、例えば個人の生活における体験でも、免許更新に行くだけでも、ものすごく面倒な工程がたくさんあるじゃないですか。これと似たような手続きが物流の裏側のいろんなところで起きています。

今ドライバーの方々が人力で消化している箇所を、X Mileのプラットフォームによりシームレスにしていきたいです。

プロダクト組織を統括する小野氏は、タレントのポテンシャルを活かす組織作りに意気込む。

小野「令和を代表するメガベンチャーを創る」。一見どこにでもありそうな言葉だと思う方もいるかもしれませんが、我々はそこに対して実に真面目に取り組んでいこうと思っています。

なぜか。やはり我々が向き合っているノンデスクワーカーの方々は世の中の労働者の8割を占めるほどの巨大産業。そこに対してインパクトをもたらすのですから、当然大きな絵図を描かなければなりません。

私自身も、そしてCEOである野呂さんでも、1人で考えて何か実行するだけじゃ影響力としては全然小さい。まさに、石ころみたいなレベルです。だからこそ、それを起こせるだけの力をチームとして作っていく必要があります。

「10人いたら10人の思考をしっかり引き出せる組織作りを」

それが私の目標です。

エンジニア、プロダクトマネージャー、デザイナーなど職種によって守備範囲を限定せず、事業開発、営業、カスタマーサクセスなどのビジネスサイドを含めて、それぞれが「なぜそのように動いているのか」という背景理解を常に意識できる文化をつくることが、小野氏、そしてX Mileが目指すカルチャーだ。

大谷氏にも今後の意気込みを聞くと、ベンチャー企業の経営経験のある大谷氏らしく、フェーズの変化を踏まえた長期目線で語ってくれた。

大谷私は一貫して、自分が力を発揮できることであれば何でもやろうと思っています。サービスが大きくなれば、パフォーマンスや可用性などのシステム的な課題が、組織が大きくなれば、評価制度、組織間の摩擦など、組織的な課題が生まれてきます。

それらに対して私は領域を閉じずに、一緒に課題に向き合って解決に向けたお手伝いをしていければと思っています。

X Mileの成長に対して社内メンバーと同じレベルで熱量を持って携わっていることが伝わってくる。

この大谷氏を技術顧問に、プロダクト部門のトップに小野氏、そして1人目エンジニアとして、誰よりも解像度高くプロダクトを見ている蝦名氏を置くX Mileの開発組織は、平均年齢としては若いものの、大人で成熟した雰囲気すら纏いつつある。

一方で、日々の意思決定や開発はものすごいスピードで進んでいく。先ほど直近の取り組みとして紹介した2つのプロダクトのつなぎ込みに関して、蝦名氏は「今でよかった。これが数年後だったら、大きくなりすぎて尻込みしていたかもしれない」と話した。

組織に飛び込むタイミングについても同じことが言える。組織・事業ともに急成長しているものの、大きくなりすぎていない今のX Mile。プロダクトの進化を経験しながら成長し、市場価値を上げていきたい人にとって、絶好のタイミングだろう。

こちらの記事は2023年05月30日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

記事を共有する
記事をいいねする

写真

藤田 慎一郎

おすすめの関連記事

会員登録/ログインすると
以下の機能を利用することが可能です。

新規会員登録/ログイン