【デリバリー大戦争】「5円の攻防」に賭けた出前館の逆襲──黒船襲来で大混戦のなかV字回復なるか!?

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インタビュイー
安岡 祥二
  • 株式会社出前館 取締役/経営企画本部 本部長 

ライブドア、投資銀行、戦略コンサルティングファームを経て、LINE(現・LINEヤフー)に入社。経営企画室の室長として、全社戦略の立案やヤフーとの経営統合など、経営の中枢に携わる。2025年1月より出前館に出向し5月に転籍。現在は経営企画本部の本部長として、全社戦略の策定や、成長戦略の推進に取り組む。

「デリバリーって、高いから使わないよね」──この声が、日本のフードデリバリー市場を縮小させている。

店で1,000円のラーメンがあれば、デリバリーでは約1,400円。送料を足せば1,700円。いつの間にか1.7倍に膨れ上がる。これが日本の現実だ。国内のデリバリーアプリの月間利用率はわずか数%。一方で米国は40%、韓国は66%。人口が半分の韓国に、市場規模で数倍の差をつけられている。

原因は明白だ。平均で約40%もの「マークアップ」である。プラットフォーム側が加盟店から徴収する手数料負担を、加盟店がデリバリー価格としてユーザーに転嫁する構造が、日本のデリバリーを「贅沢品」に押しとどめてきた。

この構造的課題に、出前館がメスを入れた。

2025年9月、「お店価格で出前館」トライアルを5都市(茨城県つくば市、静岡県浜松市、愛知県名古屋市、兵庫県神戸市、福岡県北九州市)・約250店舗でスタート。11月には東京の渋谷区・新宿区・港区で760店舗に拡大(12月からは約850店舗に拡大)、さらに12月からは千代田区・中央区・目黒区・世田谷区・豊島区で約790店舗が参加している。

その他、2025年3月には送料をダイナミックプライシングに移行。2025年10月からは、LYPプレミアム会員(LINEヤフーの有料会員サービス)2,400万人を対象に送料優待特典を提供している。

日本のデリバリー市場の構造改革に向け、出前館のビジネスモデル転換が進む。だが、ここからが本当の勝負だ。価格を下げれば利益が減る。1オーダーの損益が10円変われば、月の利益は数千万円単位で動く。この綱渡りを、どう乗り越えるのか。

その最前線に立つのが、元LINE(現:LINEヤフー)経営企画室長・安岡 祥二氏だ。「成功した後の環境に来ても面白くない」と語る男が見据える、V字回復への全貌に迫る。

  • PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
  • EDIT BY TAKUYA OHAMA
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平均マークアップ40%が阻む日本デリバリー市場の成長

2025年1月、出前館に着任した安岡 祥二氏は、ある光景に驚いた。

会議室では、10円、5円単位の数字が飛び交っている。送料を5円下げたらどうなるか。配達報酬を10円上げたら需給はどう動くか。元LINE経営企画室長として数々の大型案件を手がけてきた安岡氏にとっても、これほど「円単位」で議論する現場は初めてだった。

安岡外から見ているよりも、緻密に数字と向き合っている組織だという印象を受けました。客観的なデータを非常に重んじている。

コロナ禍の沈静化後に市場成長が一服する中で、コスト管理の徹底や1オーダーあたりの収益改善など、足元の数字を着実に改善することに注力してきた組織でもあります。一方で、次のフェーズでは、長期的なリターンを見据えた戦略的投資を含む大胆な意思決定が必要になると感じました。

その「大胆な決断」が、まさに今、求められている。日本のフードデリバリー市場は、構造的な課題を抱えているからだ。

現在の市場規模は8,000億円弱。一方、人口が半分の韓国は3兆円に迫り、米国は1,000億ドル(約15兆円)を超える。日本のデリバリー市場は潜在的に数兆円規模まで拡大する余地があるにもかかわらず、フードデリバリーアプリの月間利用率は数%に留まる。米国は40%、韓国は66%。なぜ、これほどの差が生まれたのか。

提供:株式会社出前館

安岡日本のデリバリーサービスを利用しにくくなっている構造的な要因があります。加盟店の皆さまはデリバリーで商品を販売する際に、私たちが加盟店さまからいただく加盟店手数料や容器代を捻出するために、イートイン価格に対して一定の上乗せをしてデリバリー価格を設定することが一般的です。これをマークアップと呼んでいます。

イートインでは1,000円の商品に対して、デリバリーの場合はそこに平均40%、場合によっては80%ものマークアップが乗ってしまう。さらに、ユーザーの皆さまには送料やサービス料として数百円の負担が加わって、最終的に1,500〜1,800円程度になることが多いです。物価高で食品価格が高騰している中、この価格差は利用のハードルを必然的に高くしています。これがデリバリーの日常化を阻む大きな要因です。

提供:株式会社出前館

一方、韓国ではマークアップが極めて小さく、米国でもその水準は日本に比べて限定的だ。その理由は、市場の成り立ちや変遷にある。

安岡韓国は元々、プラットフォーム側が、加盟店の売上の何%をいただくという従量制ではなく、月額固定で加盟店にサービスを提供していたようです。

従量制ではなかったため、加盟店は価格を上乗せする必要がなく、そこからマーケットがスタートしたことで、「デリバリー価格とイートイン価格は同じ」という認識がユーザーの中で形成されたのだと思います。

韓国でもコロナ禍を契機に市場は大きく拡大しましたが、その前段階でそのようなユーザー認識が形成されていたことが1つの要因になっているようですね。

米国も同様だ。数年間で並居る競合を凌駕し最大手となったDoorDashは、加盟店向けポータルに「マークアップをこれだけ上げるとオーダーがこれぐらい減る」というシミュレーターまで用意している。

また、同社はユーザーに愛されている加盟店を“Most Loved”として選出し、アプリ内の露出や表示も高める仕組みを行っているが、デリバリー価格とイートイン価格が近似していることが選出基準の1つとなっている。つまり、積極的にマークアップの解消を推進しているのだ。

日本はコロナ禍の中でデリバリー市場が大きく拡大。ユーザーにとって他の選択肢がない中、やむを得ず彼らに経済的負担を強いる形で市場が拡大したのだ。しかし、コロナ禍が沈静化し、外食や中食といった他の選択肢がユーザーの元に戻ると、割高なデリバリーは「贅沢品」と化した。

だが、直近では変化が生じている。

2024年10月には米国DoorDash傘下のWoltが広島県呉市で一部店舗での店頭価格デリバリーの実証実験を開始、その後、2025年4月の札幌を皮切りに展開エリアを拡大し始めた。また、2025年に日本市場に参入した韓国Coupang傘下のロケットナウは、配達料無料・サービス料無料に加えて、一部店舗での「店舗と同価格」を謳い、首都圏を中心に積極的なサービス拡大を進めている。

安岡競合各社それぞれが国内デリバリー市場のポテンシャルを開放し、市場を拡大し、その中でシェアを拡大すべく様々な取組みを行っています。私たちもマーケットを拡大していくために、いち事業者としてコミットしていかなければなりません。

むしろ、地元日本企業であり、市場No.2である私たちこそが、より果敢に市場拡大に挑戦し、No.1のポジションを奪還していく必要があります。

そこから出前館は攻勢に出た。2025年9月、「お店価格で出前館」トライアルを5都市・250店舗でスタート。11月に渋谷区・新宿区・港区で約760店舗、12月には千代田区・中央区・目黒区・世田谷区・豊島区にエリアを広げ、東京8区では合計約1,640店舗へと拡大した。これは、同エリアで店頭価格を展開する競合と比較しても圧倒的な規模だ。

それに先立つ2025年3月からは、送料水準の見直しも進めた。従来は一律420円(注文金額によっては310円)の固定制だったが、需給状況に応じて価格が変動するダイナミックプライシングに移行。注文が少ない時間帯は送料を下げ、需給が逼迫する時間帯は上げることで、配達員の稼働を最適化しながらユーザーの利便性を高める仕組みだ。さらに、2025年10月からは、LYPプレミアム会員2,400万人に送料優待特典の提供を開始した。

提供:株式会社出前館

安岡過度なマークアップを引き下げることと、送料など追加でかかる負担を軽減すること。日本のデリバリー市場の構造改革に向け、この二軸で施策を進めています。

提供:株式会社出前館

デリバリーを、一部の限られた消費者が利用する「高い贅沢品」から、誰もが「毎日使える存在」へ。こうして出前館のビジネスモデル転換が進んでいる。

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「お店価格」トライアルで注文数倍増、オーダー純増を実現

「お店価格で出前館」トライアルの結果は良好だった。

参加店舗ではもともと平均40%近くのマークアップが乗っていた。それを店頭価格に下げたところ、オーダー数は大幅に増加。しかも、参加しなかった店舗のオーダーの減少は限定的で、エリア全体でオーダーが純増している。

安岡平均約40%のマークアップに対して、オーダー単価はそこまでは下がりません。価格が下がった分、ユーザーの皆さまがもう一品追加したり、トッピングをつけたりするためです。オーダー数が数倍に伸びた加盟店さま、新規ユーザーが数倍に伸びた加盟店さまも多数いらっしゃいました。

参加いただいた加盟店さまにとっても出前館にとっても、そしてもちろんユーザーの皆さまにとっても、ポジティブな結果が得られました。オーダー数が増加したことで、配達員の皆さまにもより多く稼働いただく機会をご提供することができています。

より利用しやすい価格になればユーザーの支持も得られる。当たり前の事実を、数字で証明してみせた。

だが、読者はこう思うかもしれない。「価格を下げたら、利益はどうなるのか」と。まさにそこが、出前館の挑戦の核心だ。

安岡出前館の主な収益は加盟店さまからいただく加盟店手数料とユーザーの皆さまからいただく送料です。一方、主なコスト(ここでは変動費の意)としては、配達員の皆さまにお支払いする配達報酬や、クーポンなどの販促費がある。この差し引きで1オーダーあたりの限界利益(≒粗利)が決まります。

私たちは月に数百万件ものオーダーをいただいていますので、1オーダーあたりの損益が10円変わると、それだけで数千万円の限界利益が変動します。

月に数百万オーダー。1件あたり10円の差が、数千万円の利益を左右する。これが出前館の「ユニットエコノミクス」、つまり1オーダーあたりの収益構造だ。

取材等を基にFastGrowで作成

しかも、収益とコストのバランスは常に揺れ動く。

安岡晴天の日と荒天の日ではコンディションが異なります。

荒天になると配達員の皆さまの稼働が難しくなり、需給が悪化します。そのような中でも稼働いただける配達員の皆さまには、より高い配達報酬をご提示する必要があります。そうすると、ユーザーの皆さまにご負担いただく送料も上げざるを得なくなる。

真夏の40度を超える状況では、稼働いただける配達員の皆さまの人数自体が減るだけでなく、稼働効率も下がります。配達員の皆さまもそのような過酷な環境の中では、休息を取りながらでなければ稼働できないからです。

雨の日、猛暑の日には注文は増えるが配達員は減る。需給が逼迫する中で、どこまで送料を抑えられるか。どれだけの報酬を提示すれば配達員が稼働してくれるか──。

安岡出前館では、そのチューニングを機械学習も含めて日々調整しています。高すぎても低すぎてもいけません。配達報酬を上げすぎても送料が高くなればユーザーの皆さまはオーダーしにくくなる。一方で、配達報酬が適切な水準を下回っていれば、今度は需給が崩れ、ユーザーの皆さまからいただいたオーダーをお受けすることができなくなります。

これを私たちは「未マッチ」と呼んでいますが、未マッチはユーザーの皆さまにとってがっかりな体験になってしまいます。かといって、配達報酬を上げて送料を下げれば、出前館として必要な利益を確保することができない。そのバランスを取らなければなりません。ここが私たちの挑戦の難しい点であり、面白い点でもあります。

AIや機械学習を駆使して需給を予測し、報酬と送料をリアルタイムで調整する。だが、最終的な判断を下すのは人間だ。どの変数をどれだけ動かせば、ユーザー・加盟店・配達員・出前館の全員が納得できる均衡点に達するのか。

5円、10円の攻防が、日々繰り広げられている。ユーザー・加盟店・配達員・出前館、4者全員が利益を得られる「四方よし」の均衡点を探り続けているのだ。

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「最短」はもちろん、「約束時間」を重視する配達モデル

価格と利益のバランスを追求する中で、出前館が絶対に譲らないものがある。配達品質だ。

安岡私たちが重視しているのは、ユーザーの皆さまからオーダーをいただいたにもかかわらず、配達ができないという事態を極小化することです。現実的にゼロにはできませんが、現在、100件の注文に対して、当社都合で配達できなかったケースは平均で0.3%。1,000件あたり3件という水準です(2025年10月現在)。

配達不能率平均0.3%。平均すると1,000件中997件は、しっかりとユーザーに届け切る。この数字を維持するために、日々チューニングが行われている。

そしてもう一つ、出前館がこだわるのは「時間」だ。ただし、これは配達の最短時間だけではない。

安岡もう一つ重視しているのが、提示したお届け予定時間に対して“遅れずに”お届けすることです。

オーダーをいただいてから平均約30分でお届けしていますが、30分と提示したのに1時間半かかる、あるいは逆に15分で届くといったことがあると、ユーザーの皆さまの予定が狂ってしまいます。現在、提示したお届け予定時間に対して10分以上遅延する割合は3%を切るように調整しています。

「最短で届ける」のはもちろん、「約束した時間に届ける」。そのために必要なのは、正確な予測だ。

安岡重要なのは、お届け予定時間をいかに正確に予測するかです。注文からお店での準備完了まで、配達員の方がお店に到着するまで、お店でのピックアップからお届けまで。時間帯によっては道路の混雑状況も異なります。複数の要素をモデルで予測し、実際の数値との乖離を最小化する努力をしています。

複数の変数をAIモデルで予測し、誤差を最小化する。日々モデルをアップデートしながら、予測精度を上げ続けている。

こうした品質管理は、他社と何が違うのか。

安岡他社との比較に関係なく、私たちはこうした品質に真摯に向き合っています。

出前館の品質へのこだわりは、単なるオペレーションの話ではない。同社が目指すのは「四方よし」だからだ。ユーザー、加盟店、配達員、そして出前館。4者全員が利益を得られる構造を作る。

安岡この会社で成し遂げたいのは、ユーザーの皆さまの生活がより便利で豊かになること、加盟店の皆さまにとって新しいファンが増えて日々の売上向上に繋がること、配達員の皆さまに自由な働き方と稼働機会を提供できることです。そういった、関わる全員に喜んでいただけるサービスを作りたいと考えています。

とはいえ、この四方よしの実現は容易ではなさそうに思える。ユーザーのために価格を下げれば、加盟店や配達員の取り分が減る。配達員の報酬を上げれば、送料が上がってユーザー離れを招く。4者の利益は、常にトレードオフの関係にあるが──。

安岡当然ながら、出前館がきちんと利益を確保できなければ、サービスは継続できません。とはいえ、出前館だけが利益をあげられれば良いというわけでもありません。四方よしの状態を作れないと誰かが損をしている状況になり、結局サービスは長続きしていかないのです。

だからこそ、出前館は精緻な設計を行っている。

取材等を基にFastGrowで作成

ユーザーには、価格を下げ、配達品質を上げる。「お店価格で出前館」のトライアルでは注文数が倍増し、新規ユーザーも数倍に伸びた。価格が下がっても、もう一品追加したりトッピングをつけたりするため、オーダー単価はマークアップほどは落ちない。

加盟店には、価格を下げても売上・粗利の総額が増える設計を提供する。マークアップを外すことで注文数が倍増すれば、1件当たりの売上や粗利が下がっても売上や粗利の総額は増える。新規ファンの獲得にも繋がる。

そして配達員には、需給に応じた適正報酬を提示する。雨の日や猛暑日は高い報酬を上げ、稼働に対する適正な報酬を支払う。一方で、コンディションが良い日は報酬を抑え、より利用しやすい送料をユーザーに提示する。

この複雑なパズルを解くことが、出前館の経営企画の仕事なのだ。

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決算の裏側。「黒字化は通過点」のV字回復戦略

四方よしの実現に向けて走り続ける出前館。とはいえ、足元の財務状況が気になる読者もいるだろう。

2025年8月期の営業損失は49億円。前年の60億円から11億円改善したものの、依然として厳しい状況である。売上高も504億円から440億円へと減少した。GMV(流通取引総額)も1,905億円から1,672億円に縮小している。(出前館:2025年8月期通期決算説明会資料 より)

だが、安岡氏はこの数字を冷静に受け止めている。

安岡調子がいいとは申しませんが、ここ2年間コスト削減や最適化に注力してきました。売上やオーダー数を伸ばす取り組みをしていなかったわけではありませんが、効率化や最適化に重点を置いてきた結果、残念ながら売上を伸ばせていない状況です。

表面上の数字は厳しい。だが、その裏側では、収益構造が大きく変わっていた。

安岡数年前と異なるのは、1件の配達オーダーから確実に限界利益が出るようになっていることです。限界利益を積み上げれば利益が出るように、固定費も大幅に圧縮してきました。数十%以上の圧縮です。数年前は見えていなかった黒字化への道筋が、今は見えるところまで来ています。

限界利益とは、売上から変動費(配達報酬や販促費など)を引いた利益のこと。簡単に言えば、1オーダーごとに「いくら残るか」という数字だ。

改善の要因は複数ある。送料ダイナミックプライシングの導入によるプロダクト基盤の強化。AIや機械学習を活用した配達の効率化などを通じたユニットエコノミクスの改善。そして固定費の適正化だ。

ならば、なぜ今、攻めに転じるのか。黒字化を待ってからでも遅くないのでは。

安岡事業成長を止めて送料を上げる、報酬を下げることによって短期的に黒字化を実現したとしても、ステークホルダーの支持を得られないサービスはそのまま縮小していくだけです。新規参入組を含め、海外資本の競合各社が積極的な投資を断行している中で、私たちがコスト最適化と効率化だけを続けていては市場シェアも失います。

現在の財務内容は非常に厳しい状況です。しかし、1オーダーごとの限界利益をしっかりと確保しながらトップライン(オーダー数や売上高)を伸ばしていけば、積み上げた限界利益で固定費を回収し、ボトムライン(最終利益)を黒字化することが可能です。

黒字化は、ゴールではない。通過点だ。

出前館は2026年8月期、売上高489億円(前年比111%)、営業損失40億円を目標に掲げる。トップライン2桁成長と、ボトムライン9億円改善の両立。これが「再成長フェーズ」の意味だ。

提供:株式会社出前館

目指すのは、フードデリバリー市場のさらなる拡大と、市場におけるプレゼンス向上、そしてトップライン成長を通じた継続的な利益創出である。

安岡2020年のLINEグループ(現:LINEヤフーグループ)との資本業務提携により、相当な金額を成長投資資金として調達しています。手元資金には余力がありますので、それを活用しながら黒字化への道筋をつけていけると考えています。

財務基盤は整った。限界利益も出るようになった。LINEヤフーグループとのシナジーも活かせる。あとは、攻めるだけだ──。

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「転換点でストーリーを作る側に回りたい」。
元LINE経営企画トップの選択

守りから攻めへ。事業フェーズが変われば、求められる人材も変わる。コスト削減と財務規律の徹底から、成長投資と市場拡大へ。出前館がこの転換期に迎え入れたのが、この安岡 祥二氏だった。LINEヤフーで経営企画を率い、数々の大型案件を手がけてきた人物が、なぜ出前館を選んだのか。その選択の背景には、同氏独自のキャリア観がある。

2003年、ライブドアに入社。M&Aや投資を手がけた後、子会社売却、事業譲渡、会社清算、訴訟対応などに奔走した。2010年、ポータルサイト「ライブドア」を運営するライブドア社をネイバーに譲渡し、一区切りをつけた。

その後、投資銀行、コンサルティング会社でのそれぞれ数年間を経て、2017年にLINEへ。経営企画室長として全社戦略やヤフーとの経営統合に携わり、2023年10月のLINEヤフー誕生後も経営企画の責任者を担った。

そして2025年1月、出前館へ出向。5月には転籍した。なぜ、このタイミングで移ったのか。

安岡特定の事業を強くやりたいというタイプであれば、おそらくもっと以前に起業していたと思います。私はそうではなく、学生時代から「プロフェッショナルな仕事がしたい」という志向がありました。周囲に流されやすいタイプなので、社会人になるときは人と違う道を選ぼうと自分に言い聞かせ、ベンチャーに入りました。その後は、そのときどきのご縁で転職を重ねてきました。

「プロフェッショナルな仕事」。安岡氏が好む言葉だ。金融でもコンサルでも事業会社でも、付加価値に拘り成果を出す。その志向が、キャリアを貫いている。

安岡M&Aなどの金融畑が長かったので、もう少し事業に近いことをやりたいと考えたとき、いきなり事業会社に行くよりも、プロフェッショナルな視点で学びたいと思いコンサルティング会社に行きました。そこで事業の面白さに目覚め、お客様と一緒に戦略を変えたり実行したりすることが楽しくなり、古巣とも言えるLINEから声をかけていただいて事業会社に戻りました。

金融からコンサル、そして事業会社へ。「戦略を描く」から「実行する」へと、軸足が移っていった。

だが、LINEヤフーという巨大組織の中で、ある種のもどかしさを感じていたのも事実だ。

安岡LINEに入ったときもそうでしたが、事業は順調に伸びていきました。ただ、その原動力が自分だったかというと、自信を持って違うと言えます。もちろん伸びている会社にジョインするのも刺激的ですが、転換点にある会社にジョインして、自分がストーリーを作っていく立場になる方が面白いと感じました。そういった転換期の事業にダイレクトに関わりたいというのが、出前館に来た大きな理由です。

伸びている会社で歯車の一つになるより、転換点にある会社でストーリーを作る側に回りたい。出前館は、まさにその転換点にあった。

また、同社の代表取締役・矢野 哲氏も、投資銀行を経てLINEのIPO責任者や投資・M&A責任者を務めた「財務のプロフェッショナル」。プロフェッショナリズムを重視するリーダーが揃う出前館に、安岡氏は惹かれた。

安岡もちろん、全てがうまくいくかはわかりません。成功すると確信し、信じてやっていますが、未来は誰にも分かりません。ただ、もし1年後2年後に成功した後に来ても面白くないと思います。日々、数字を見るのが楽しみだけど怖くもある、そんな想いで毎朝PCを開くような、いい意味でのプレッシャーやドキドキ感を持って毎日仕事をしています。このタイミングでジョインして、緊張感を持ちながらみんなで成功体験を作っていくというのは、なかなか他では味わえない経験だと思います。

日々、数字を見るのが楽しみだが怖いと感じる。だが、その緊張感こそが、安岡氏にとっての「面白さ」だ。

出前館には、外資系競合にはない強みもある。

安岡業界の競合は、基本的に外資で本社の意向や方針が強いところが多いと思います。一方、私たちは上場会社ですが、実態はまだまだ若いベンチャーです。数百人規模で、社長との距離も非常に近く、日々みんなで議論しながら進めています。ここに来ると、自ら意思決定に関与し、事業をダイレクトに動かすことができます。

自分たちで戦略を決め、実行し、結果を出す。元LINE経営企画トップが「面白い」と言い切る現場が、ここにある。

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「できない理由を探すな」。出前館の人材要件

「転換点にある会社でストーリーを作る」と安岡氏は語った。では、どのような人材がその仲間として求められているのか。

安岡出前館ではプロフェッショナリズムを大切にしています。人の期待に応えたい、期待を上回りたい、責任を与えられたらその責任を全うしたいという強い思いを持つ人でないと合わないと思います。できない理由を探すのではなく、どうすればできるかを考えられる人と仕事がしたい。そういうスピリットを持っている人が活躍できると考えています。

「できない理由を探すな」。この言葉が、出前館の現在地を象徴している。

市場環境は厳しい。海外資本の競合は強力で、新規参入も相次ぐ。できない理由なら、いくらでも並べられる。だが、出前館はそこで止まらなかった。マークアップという構造的な課題にメスを入れ、数円単位の改善を積み重ね、四方よしの均衡点を探り続けている。

現在、活躍しているのは20代30代が中心だ。

安岡元コンサルティング会社、大手メガベンチャー、投資銀行出身の人間などがいます。機械学習エンジニアと同じスキルを持つ必要はありませんが、彼らが言っていること、やろうとしていること、検証したことを理解できる必要があります。ビジネス側の人間にも技術への知見が求められますし、エンジニアにもビジネスセンスや優先順位の判断が求められる。両方が必要な環境です。

ビジネスとテクノロジー、両方を理解できる人材。それが、出前館で活躍する条件だ。

V字回復を狙う出前館。その挑戦は、まだ始まったばかり。

「成功した後に来ても面白くない」と安岡氏は言った。逆に言えば、今このタイミングでしか得られない経験がある。構造的な市場課題に正面から挑み、数円単位の改善を積み重ね、数千万円単位の利益を動かす。自分たちで戦略を決め、実行し、結果を出す。

厳しい市場環境、競合の参入。これらを「できない理由」と捉えるか、「今しかない機会」と捉えるか。出前館は後者を選んだ。

転換点にある会社で、自らストーリーを作る側に回る──事業成長のダイナミズムを肌で感じたい人にとって、これほど刺激的な環境はない。その機会は、今ここにある。

提供:株式会 出前館

こちらの記事は2025年12月23日に公開しており、
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藤田 慎一郎

編集

大浜 拓也

株式会社スモールクリエイター代表。2010年立教大学在学中にWeb制作、メディア事業にて起業し、キャリア・エンタメ系クライアントを中心に業務支援を行う。2017年からは併行して人材紹介会社の創業メンバーとしてIT企業の採用支援に従事。現在はIT・人材・エンタメをキーワードにクライアントWebメディアのプロデュースや制作運営を担っている。ロック好きでギター歴20年。

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