SaaSの“血流”を良くすれば、日本はもっと強くなる──KAEN代表・川田氏が語る、SaaS市場変革への勝算と、次世代への使命

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インタビュイー
川田 勇輝
  • 株式会社KAEN CEO 

1988年生まれの栃木県宇都宮出身。学生時代に創業期のメルカリ、BASEなどの社会インフラになるような企業と同じ空間で働く経験から、スタートアップの魅力を知る。新卒ではITベンチャーに入社し、ECコンサルや子会社で昭和型営業会社の立ち上げを経験。その後、2社でのゼロイチからシリーズBまでのスタートアップの創業経験。2019年12月に株式会社KAENを創業。

先に公開した解剖記事では、株式会社KAEN(以下、KAEN)が仕掛ける「SaaS流通革命」の戦略的な妙と、その事業『TAAAN』が持つ圧倒的なポテンシャルを構造的に解き明かした。ロジカルで、緻密で、そして市場の巨大な課題を的確に捉えた、非の打ち所がないビジネスモデル。読者の多くは、知的な興奮と共に、その慧眼に唸ったことだろう。

しかし、物事には必ず、それを動かす「人」の想いが存在する。どんなに優れた戦略も、その根底に熱を帯びた“情熱の核”がなければ、巨大なムーブメントにはなり得ない。

あの緻密な戦略を描いた張本人、KAENの創業者、川田勇輝氏とは、一体何者なのか。なぜ彼は今、一見わかりにくい「流通」という意外な事業領域にフォーカスし、地味で、泥臭く、しかし日本経済の根幹を成す課題に、自らの人生を賭けているのか。

その答えは、彼が歩んできた、決して平坦ではない道のりの中に隠されている。エリート街道とは無縁の場所で味わった数多の挫折。営業の現場で目の当たりにした、社会の不条理な矛盾。そして、志半ばで倒れていく挑戦者たちの姿。

エリートになれなかったコンプレックスが、僕のすべての原動力です──。

本稿では、彼の言葉に耳を澄ませ、その魂の深淵にまで迫りたい。KAENという炎は、いかにして灯されたのか。そして、その炎が照らし出す、日本の未来とは──。

  • PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
  • EDIT BY TAKASHI OKUBO
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なぜ、これほど心を燃やすのか──挫折の先に見つけた、人生を賭ける理由

川田勇輝氏の物語は、決して華やかな成功譚から始まるわけではない。むしろ、その逆だ。2年間の浪人生活、大学留年、そして100社近い就職活動での不採用。「エリートになれなかった」と語る過去は、彼のアイデンティティの核心に深く刻まれている。

川田若い頃は、良い大学を出て、良い会社に入ることが幸せのすべてだと信じ込んでいました。でも、自分はそのレールに乗ることができなかった。その強烈なコンプレックスが、常に自分を突き動かしてきた原動力なんです。

挫折を何度も経験してきましたが、めげることなく挑戦をし続けたことで、今の仕事や生活には、幸せや感謝を強く感じています。

大手企業への就職活動にことごとく失敗し、自信を失いかけていた彼が、キャリアの転機を掴んだ場所。それが、私たちスローガンが運営する、成長意欲の高い学生のための就活プラットフォーム『Goodfind』だった。

川田当時の僕は、いわゆる「良い会社」の基準がわからなくなっていました。そんな時、『Goodfind』を通じて、ベンチャーやスタートアップという選択肢に出会ったんです。当時はまだ創業フェーズだったメルカリさんやBASEさんの存在を知り、中の人たちの挑戦を見て、大きな衝撃を受けました。

そこにいたのは、学歴や経歴ではなく、事業への圧倒的な熱量で未来を語る人たちでした。「自分の手で、世の中を変えられるんだ」という強烈な熱気に当てられて、これだ、と。

大学3年の頃からスタートアップでインターンを始め、その後に新卒ではベンチャー企業のエスキュービズムに入社することを決めました。

そうしてベンチャー企業でのキャリアをスタート。とにかく忙しい現場が続いたが、すべてに対して大きなやりがいを感じ、多くのことを経験・吸収する日々を楽しんだ。

だがその後、強い葛藤を覚える時期が始まる。業界内でどんどん増えていくITサービスの中には、導入効果を正確に伝えることなく売りさばいていく存在が少なからずいるという実態を知ったのだ。この「営業力さえあれば、顧客側はその内容をよくわかっていなくても売れてしまう」という、ビジネスの不都合な真実。そして「自分もその一人になってしまっているのではないか」という罪悪感を覚え始めた。

川田いわゆる光通信型の営業スタイル全開でやっていた前職の頃、自分たちの利益を追求するあまり、結果としてお客さんのためにならないものを売っていると感じることがありました。もちろん僕自身は真摯に向き合って営業をしており、その結果として事業も伸びていたのですが、胸を張って「社会にとって良いことをしている」とまで感じることはできていませんでした。

その後、日本美食(現TakeMe)の創業フェーズに参画した後、同じく創業フェーズだったWakrak(2025年3月にワールドスタッフィングに吸収合併)に参画。特にWakrakではANRIさんが運営するインキュベーション施設「Good morning building」に出入りすることも多く、同世代の起業家との交流がまた増えていきました。

ここで新たな葛藤を覚えるようになります。周りの起業家は皆、素晴らしいビジョンとプロダクトを持っているのに、営業力がないばかりに、その想いを社会に実装できずにいたんです。

「良いものは、売れない。しかし、良くないものは、売れてしまう」

若きスタートアップパーソン時代にさまざまなものを見聞きして実感した、このねじれた構造。これこそ、彼が人生を賭けて解決すべきだと確信した、日本の産業が抱える根深い病だった。この矛盾した現実を、KAENの事業で変えようとする中で、彼の元には象徴的な声が届くようになった。

あるパートナーからの「仕事に誇りが持てた」という言葉は、かつて自分が感じていた「社会の役に立っていない」という感覚を強く思い起こさせたのだ。

川田大阪のある販売パートナーさんは、女性たちが中心のチームなのですが、以前は心から良いと思えない美容機器を売ることに、心を痛めていたそうです。

それが『TAAAN』を通じて、本当に価値のあるSaaSを売れるようになり、「仕事に誇りと生きがいが持てた」と、わざわざ僕に感謝を伝えてくれました。その時、「ああ、僕らの事業は、ちゃんと人の人生をポジティブに変えられているんだな……」と。

素晴らしいプロダクトやサービスが、ただ「届け方」を知らないだけで埋もれていく。この巨大な機会損失を防ぎ、挑戦者の情熱に火を灯し、その炎が社会を照らすまで伴走すること。それこそが、自らが果たすべき使命だと悟った瞬間だった。

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一人、オフィスで泣いた日──『TAAAN』のグロース前夜のリアル

流通の「壁」(前回記事を参照)という巨大な課題を基に、川田氏は新たな挑戦の方向を定めた。しかし、その船出は、嵐の中の小舟そのものだった。プロダクトの方向性は定まらず、売上は一向に立たない。来る日も来る日も、エンジェル投資家から授かった貴重な資金が溶けていくのを、ただ見つめることしかできなかった。

川田創業当初は、フードデリバリー『Wolt』の日本への進出を全面的に請け負うなど、さまざまな事業を手探りでやっていました。『TAAAN』の原型となるアイデアはあったものの、それが本当に市場に受け入れられるのか、確信が持てずにいました。

当時はまだCTOともう一人の社員と、3人だけのチーム。毎晩遅くまで議論を重ねていましたが、なかなか答えは見つからず、時間だけが過ぎていく。融資やエンジェル投資もいただけたのですが、それから2年ほどの間、ほとんど売上は伸びませんでした。

売上が伸びないばかりではなく、創業者である自分自身が自信を持ったプロダクトを創れないという焦り。先行きの見えない不安が、チームを静かに蝕んでいく。そして2022年7月、ついに恐れていた事態が起きた。売上が立たないことへの焦りと将来への不安から、創業を共にしたCTOと社員が、同時に会社を去ることになったのだ。

川田二人を見送った後、誰もいなくなったがらんとしたオフィスで、一人、声を殺して泣きました。

ですがこのタイミングで、導入いただいていたあるエンタープライズ企業さんが、本格的な活用を始めてくれたんです。

すべてを失ったからこそ、守るものがなくなり、課題の最も本質的な部分に集中できた。「なぜSaaSは届かないのか?」という問いを、「なぜ創り手と届け手は出会えないのか?」という、より解像度の高い問いに置き換えたのだ。これまで常識だと思っていた直販モデルへのこだわりを捨て、ゼロベースでその問いと向き合った瞬間、視界が開けた。

川田活用いただけるようになると、相乗効果でプラットフォームとしての価値がどんどん高まっていく、そんな様子が目に見えるようになりました。

素晴らしいSaaSという「プロダクト」はある。そして、それを届けるための腕利きの「販売のプロ」も、特にコロナ禍でその存在感を増し始めていた。しかし、両者が出会う場所がなかった。ならば、僕がそのマーケットプレイスを創るしかない。この見立ては間違っていなかったんだ、と感じることができた瞬間でした。

一人で涙を流した日から、ほんの少し後のことだった。この劇的な展開こそ、KAENが、そして『TAAAN』が、その存在を認められた瞬間だったのである。

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日本の“血流”を良くする──川田氏が見据える、挑戦者のための未来

確かな手応えを掴んだ川田氏。しかし、彼の視線は、すでに遥か先を見据えている。彼にとって『TAAAN』は、目的ではなく、あくまで壮大なビジョンを実現するための「最初の一歩」に過ぎない。そのビジョンとは、「新しい流通基盤を創る」ことで、停滞する日本経済の“血流”を良くし、この国をもう一度、成長軌道に乗せることだ。

川田「日本の血流を良くする」と言うと、すごく大きな話に聞こえますよね。でも僕の感覚は、もっとシンプルなんです。

これまで見てきた、「情熱はあるけど、どうやってお客さんを見つけていいかわからない起業家」のみなさん。本当に良いプロダクトを創っているのに、知られていないだけで潰れていく会社の数々。その光景が、とにかくもったいない。

悔しいんですよ。素晴らしいものが、それにふさわしい人の元へ届かない。この、どうしようもない機会損失を、社会から一つでもなくしたい。日本の産業発展を阻害する、とんでもなく大きな課題だと感じています。僕の原動力は、その一点に尽きるんです。

彼の言う「血流」とは、まさに挑戦者たちの情熱そのものだ。今はまだ、その多くが東京という心臓部だけに集中し、日本中の隅々にある、本当にそれを必要とする企業という“細胞”にまで届いていない。結果、地方や中小企業は栄養不足に陥り、日本経済という身体全体が、本来の力を発揮できずにいる。

川田僕らが「当たり前」だと思っているテクノロジーが、地方にとっては革命になる。そのたった一つのツールが、一つの会社の生産性を上げ、一人の社員の家族との時間を増やす。このインパクトを、僕は目の前で見てきました。

たとえば僕が見聞きした中でも特に印象的だったのが、2020年にある地方の建設会社さんが新たにGoogleカレンダーを導入した際のエピソードです。社員さんが営業先から直帰できるようになって、家族との時間が増え、まるで革命が起きたかのような効果があったのだというんです。

僕の感覚ではGoogleカレンダーは「使って当たり前」だったのですが、少し地方に目を向ければ、ITの活用はほとんど進んでいなかった。この時、「東京のスタートアップでプロダクト開発に取り組んでいても、社会はほとんど変わらないかもしれない」と思い知ったんです。

だから今、『TAAAN』を通じて、ITプロダクトという栄養を日本中に届けるための、太い血管を張り巡らせたいんです。東京に多く位置するIT・SaaSベンダーと、地方に根を張る新興代理店(販売パートナー)が出会うことで、これまでつながっていなかった点と点がどんどんつながっていき、日本中にイノベーションが広がっていくはずだと思うんです。

KAENが創ろうとしているのは、単なる「SaaSが売れる仕組み」ではない。それは、挑戦者たちが、その才能と情熱を正当に評価され、報われるための「社会インフラ」そのものである。

川田最近、何より嬉しいのは、『TAAAN』が単なる取引の場じゃなく、挑戦者たちが集うコミュニティのようになっていることなんです。

「こんなSaaSを待っていた」と喜ぶパートナーさんもいれば、「『TAAAN』のおかげで、自分たちが本当に価値を届けられる市場がわかった」と言ってくれるSaaSベンダーさんもいる。そんな声を聞くたびに、ああ、僕が創りたかったのは、この景色なんだな、と。

挑戦者が、次の挑戦者を呼ぶ。その熱狂のサイクルを、もっと大きく、もっと速く回していきたい。

彼が語る未来は、決して抽象的な経済論ではない。それは、彼自身が目にしてきた、無数の挑戦者たちの顔、声、そして悔し涙に基づいている。「エリートになれなかった」一人の青年が抱いた問題意識は、今や、この国で挑戦するすべての“仲間”のための、希望のインフラを創るという、壮大な物語へと昇華している。

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「未来を創る挑戦者たれ」KAENが約束する、血の通った成長環境

壮大なビジョンを掲げ、日本経済の再興に挑むKAEN。しかし、その物語の主役は、決して川田氏という一人の起業家だけではない。彼の隣には、同じ熱量で未来を見つめ、背中を預け合える「仲間」の存在がある。創業期に、たった一人になるという壮絶な経験をしたからこそ、川田氏の「人」に対する想いには、並々ならぬものがある。

川田一度、すべてを失ったからこそ、今いるメンバーがどれだけ尊い存在か、身に染みてわかります。僕にとって社員は、単なる従業員じゃない。同じ船に乗り、同じ未来を目指す、運命共同体です。だからこそ、彼らの人生にも本気でコミットしたい。一人ひとりがKAENという場所で、最高のキャリアを築き、人間として成長できる。そんな組織を創ることが、僕の経営者としての最大の責任だと思っています。

その想いは、KAENが掲げる4つのバリューにも色濃く反映されている。『Beyond Territory(領域を超える)』『"Hello World"(新しい解決策を発明する)』『Best Route?(最高の結果を狙う)』そして『Non Stop!(挑戦を止めない)』。これらは単なるお題目ではない。未来を創る挑戦者として、いかに行動すべきかを示す、実践的な行動指針だ。

そして、KAENが未来の仲間に約束するのは、単なる「成長機会」ではない。むしろ、それは一つの問いに近い。「あなたなら、このKAENというプラットフォームをどう進化させるか」。KAENが求めるのは、与えられた業務をこなす人材ではない。この流通革命の“OS”を、自らの手でアップデートしていく当事者である。

川田僕たちの事業は、まだ完成には程遠い。だからこそ、面白いんです。

そもそもKAENという社名には“想いの火”という意味を込めています。一緒に働くメンバーたち一人ひとりにとって、それぞれの“想いの火”を形にすることができるような、自己実現の場にならないといけないと考え、これまでやってきました(2020年公開のこのnoteも参照してほしい)。

だから未来の仲間には、どんどん事業の根幹に口を出してほしい。「この機能があれば、もっとパートナーは稼げる」「このデータを活用すれば、新しい事業が創れる」。そんな提案を、僕はいつでも待っています。KAENは、一人ひとりが本当に自分らしくありながら挑戦できる環境でありたいんです。

まだまだ小さい会社ですので、安定した環境ではないかもしれない。しかし、事業を創り、市場を創るという、最もエキサイティングな経験を約束します。それは、単なる機能開発や営業活動ではありません。SaaSベンダー、販売パートナー、そしてその先の顧客という、三者のインセンティブを設計し、新しい経済圏そのものをデザインする仕事です。

誰かに決められたレールの上を走るのではなく、自ら道を切り拓きたいと願う、野心あふれる挑戦者にとって、これほど市場価値を飛躍的に高める機会はないはずです。

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半年が経っても「まだ面白さに気付ける」という、懐の深い事業・組織

事業の合理性、そして創業者の情熱。ここまで二つの記事を通じて、KAENという企業の輪郭をさまざまな角度から描き出してきた。

川田酸いも甘いも経験した大人のメンバーが集まり、本気で働いているというのが、KAENの特徴です。今はまだ十数名ほどで、これから社員数を大きく増やしていくこともあまり考えておらず、比較的少ないメンバーで生産性高く、インパクトの大きな事業を創り続けていきます。

与えられた仕事をこなすだけの人生に、どこか物足りなさを感じてはいないだろうか。もっと大きな、後世に誇れるような仕事がしたいと、胸の内で情熱の炎を燻らせてはいないだろうか。安定したレールの上を歩くのではなく、自らの手で未来を切り拓く、そんな生き方に憧れを抱いてはいないだろうか。

もし、こうした問いに心が少しでも揺さぶられるのであれば、KAENはあなたのための場所かもしれない。

取締役の梅木主道氏(右)と

川田僕たちの挑戦は、まだ始まったばかり。『TAAAN』では想定以上にうまくいっている部分もありますが、目指す姿にはまだまだ到達しません。加えて、『パスクラ』や『Scout Base』といった新規プロダクトもPMFに向けてアクセルを踏み始めたフェーズです。

これから先、想像を絶するような困難が待ち受けているかもしれない。しかし、同じ志を持つ仲間が集まり、一緒に乗り越えていける強い組織になっていると思います。その一員になりたいと感じる人を、これから少しずつ集めていきたいと思っています。

ちなみに、『TAAAN』だけでも非常に面白い事業になっていて、半年ほど在籍しているメンバーからも「最近、改めてこの事業の面白さを思い知りました!」なんてコメントを聞きました(笑)。このように、興味関心を刺激しながら、事業をしっかり伸ばしていく、そんな稀有な環境のスタートアップでもあると思います。

KAENはこれから、日本のBtoB市場に眠る巨大なポテンシャルを解き放ち、イノベーションの新しい流通基盤を創り上げていく。日本経済を再加速させるという、壮大で、前例のないチャレンジに、あなたも携わってみたいと思っていただければ幸いだ。

こちらの記事は2025年07月28日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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藤田 慎一郎

編集

大久保 崇

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