連載スタートアップ通信──5分で注目ニュースをまとめ読み

クラウド契約の浸透、急加速待ったなし!──5分で今週の注目ニュースをまとめ読み

指数関数的な成長を志向するスタートアップ。

当然、その流れは早い。各社からリリースされるニュースを追っていくだけでも一苦労だ。

そこで、忙しいベンチャー・スタートアップに関わる人のために、一週間のウォッチしておくべきニュースだけをまとめた記事を配信しいていく。

題して、週刊スタートアップ通信──。

土日にまとめて読みたいニュースを、毎週金曜日に更新中。 今週は国内外問わず、数多くのスタートアップに関するニュースが世間を賑わせた1週間となった。その中から3本の話題をピックアップ。

「ブロックチェーンで、ハンコ文化を守る?」

「スタートアップ役員の政治家転身、増えるか」

「金属3DプリンターのM&A、今後の行く末は」

について見ていく。

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ブロックチェーンで、ハンコ文化を守る?

古き良き日本の「ハンコ文化」。これに一石を投じる発表があった。ハンコメーカーのシヤチハタはブロックチェーン技術を活用し、電子印鑑システム『NFT印鑑』を開発する。NFT印鑑実現により、従来の電子印鑑が抱えていた偽造リスクを解決できるという。

「電子契約」という領域を見れば、弁護士ドットコムの『クラウドサイン』が国内では2020年ごろから圧倒的な知名度を誇り拡大を続ける中で、freeeがM&Aにより参入を決めたのが2021年春。ベンチャー企業がしのぎを削ってきた業界だというイメージが強いだろう。そこに、日本のハンコ文化を長く支えてきた1925年創業の老舗メーカーも本格参戦し、新たな展開を迎えた。

シヤチハタと共同で開発を行うのは、ブロックチェーンやAIの開発を行うケンタウロスワークス。さらに、早稲田リーガルコモンズ法律事務所が法的な知見を提供する。

NFT印鑑とは、印影データをNFT化することで実現する固有性を持つ電子上の印鑑のことだ。NFTは以前の記事でも紹介したが、偽造不可な鑑定書と言いかえることができ、所有証明書付きのデジタルデータそのものを指したり、そのための技術を指したりして、最近は使われている。デジタルデータに唯一無二の価値を与え、デジタルアートやゲーム、漫画の限定版などといった、有形であれば価値がついたモノを、無形でも同様に価値のあるとして補償しようとし、新たなビジネスが世界中で生まれ始めているのはご存知の通りだ。

シヤチハタはこのNFTを活用した全く新しい電子印鑑の情報を、JCBIが提供するブロックチェーン技術を用いて自立分散させ、印鑑の信頼性をこれまで以上に担保していくのだという。

実はこのシヤチハタ。2020年に既に電子決済サービス『シヤチハタクラウド』を開始していた。世界中で話題を席捲するNFT技術の活用で、ブレイクスルーを起こせるか、期待が高まる。

「電子契約」自体の信頼性向上を目指した動きも、国内では加速している。前述の弁護士ドットコムやfreeeは、マネーフォワードなど計7社で、「クラウド型電子署名サービス協議会」を設立した。デジタル庁が支援するトラストサービスの法制度整備に対する意見提言とデジタル化の推進支援活動を推し進める。

トラストサービスとは、電子署名やタイムスタンプ、Webサイト認証など、無形のものに対する正当性認証のこと。「本人が送った」ということや、内容や時刻に改ざんがないことを証明するサービスだ。現状は民間企業各々がサービスを展開しているが、信頼性担保の観点から国が統一して規格などを定め、運用すべきとの意見がある。

ペーパーレス化の浸透により、クラウド上で契約書類や申請書類など重要な書類をやりとりするようになった今、「だれが」「いつ」「どのように」といった情報を改ざんさせない取り決めは、喫緊の課題だ。

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スタートアップ役員の政治家転身、増えるか

スタートアップ役員が次期衆議院議員として出馬表明をした。弁護士ドットコム創業者の元榮太一郎氏に続く、スタートアップ界からの政治家転身事例となるかもしれない。

今回、次期衆院選青森県2区で自民党から出馬すると表明したのは、マネーフォワード執行役員の神田潤一氏。日本銀行入行の後、日本の決済制度・インフラの高度化やフィンテックに関する調査・政策企画に従事した人物だ。一般社団法人Fintech協会常務理事も務めており、国内のフィンテック事情に精通する。2017年にマネーフォワードへ入社し、渉外担当の執行役員として同社の拡大に貢献してきた。

フィンテックスタートアップのナッジCEOの沖田貴史氏は、「Fintech振興の盟友、神田潤一さんが正式に出馬表明!」と投稿。

事業家が活躍する場は、ビジネス現場だけではなく、政治の場にもあることを証明する事例になるかもしれない。

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金属3Dプリンターで競合同士の大型M&A、行く末は

3Dプリンティング(AM)業界の再編が拡大している。自動車や航空宇宙機械、医療機器などといった部品を、3DCADデータだけで生成可能な金属3Dプリンターの主力メーカーDesktop Metal(米・マサチューセッツ州)が、競合のExOne(米・ペンシルベニア州)を5億7500ドル(約635億円)で買収した。

Desktop Metalが、同社の決算会見で発表。同社は2020年1月、Envision TEC(ドイツ)を買収していた。

TechCrunch Japanの記事によれば、Desktop MetalCEOのRic Fulop氏は「今回の買収により、両社の補完的な技術と市場開拓の努力が継続的な成長を可能にし、お客様により多くの選択肢を提供できるようになると確信しています。この交流は、積層造形2.0の導入を加速するという我々のビジョンを実現するための大きな一歩となります」と発言。ライバル同士が協力し、製造業分野での3Dプリンター浸透を目指す。

3Dプリンターの世界市場は年々拡大している。矢野経済研究所の調査は、2023年の3Dプリンター出荷台数を37万台と予測。2020年は36万4000台。微増ではあるが、今後も着々と出荷台数を伸ばす格好だ。欧米や中国を中心に、航空宇宙や自動車、金型など多分野で実用化・量産に向け動きが活発化する3Dプリンター事情。特に自動車分野では、軽量化や性能向上、燃費向上などを目的として、3Dプリンタでの製作需要が増えることが期待されている。

さて、今週のスタートアップニュースはいかがでしたでしょうか?今後も毎週更新していきますので、ぜひFastGrowをチェックしてみてください。

こちらの記事は2021年08月20日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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