【トレンド研究:BabyTech】
実は社会インパクトが極大?日本の未来を創るビジネスを徹底解説

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これから生まれてくる、新しい命。少子化が進んでいるとは言っても、日本全体では2021年も年間約81万人の出生数が報告されている。1日当たり、約2222人が生まれている計算だ。

この存在が、未来の経済や社会を担うことになる。だから、BabyTechと呼ばれる事業領域でのビジネスは、日本の未来をかたちづくる大きな存在になるわけだ。このことを意識できているビジネスパーソンは、どれだけいるだろうか?

子育て情報の発信だけでなく、子育てそのもののデジタル化や、保育園の業務効率化といったさまざまな事業が増えている。これらのビジネスが見据えているのは、“目先のラクさ”などではない。将来の社会成熟や経済成長なのだ。その実態を、事例と共に解説しよう。

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toC子育て支援の基盤が、大きなマーケットポテンシャルを形成──上場企業カラダノートの事例

やはりまずわかりやすいのは、情報発信を行うメディア型事業だろう。

カラダノートは、『ママびより』や『授乳ノート』など、保護者向けの情報発信や子育て支援のtoCサービスを広く展開してきた。2020年10月に東証マザーズ(現グロース)市場への上場を果たし、2017年から5期連続での売り上げ成長を実現している。

toCサービスで蓄積してきた基盤を活かし、toBサービスの展開も加速している。2022年1月には家族を応援する店舗・企業向けSaaS型プロダクト『かぞくパスポート』のβ版をリリースするなどしている。

ビジョンに掲げるのは「家族の健康を支え 笑顔を増やす」だ。つまり、創業当初に掲げていた子育ての支援だけではなく、その先に実現すべき“健康”、そして“豊かな生活”の実現を見据えているのだ。経営目標としても、事業の多角化とストック型収益化を進めることで、東証プライム市場上場基準をFY2027に目指すと明確にうたっている。

BabyTech関連事業になじみのない読者でも、この事例を見るだけで、事業の拡張性(マーケットポテンシャル)や、大きな社会的意義を新たに感じられるのではないだろうか。

同社代表取締役佐藤竜也氏のインタビューをFastGrowでも実施しているので、合わせて読んでみてほしい。

ただ、注目すべき上場企業が少ないのも事実。子育て×テクノロジーをメイン事業とする企業は、カラダノート以外にあまり見当たらない。

だがFastGrowのリサーチでは、大きな可能性を持つ未上場企業の存在も多く確認できた。次のセクションから紹介していこう。

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サービス激増の保育園・幼稚園支援、その先は?
──20年後の経済成長の礎に

BabyTechで特にホットな領域と言えるのが、保育園や幼稚園といった施設の業務効率化を実現するSaaS事業だろう。

業界シェアNo.1の『CoDMON』を展開するコドモンがその筆頭と言える。毎年2,000以上の施設が新規導入しているといい、バーティカルSaaSとして明らかにPMFしていると判断できそうだ。

このプロダクトは想像の通り、保育施設等の職員と利用者の連絡を中心に、日常業務をデジタル化している。業務が効率化されることにより、導入施設では従業員の負担が減り、利用者はいつでも気軽に施設と連携できるという安心感を得られるといった価値を提供している。

そんな同社が掲げている3つのビジョンのうち、「子どもの育ちへテクノロジーの観点から貢献」に、今回は迫りたい。

ビッグデータやAIなどのテクノロジーの力を活かし、病気の早期発見や、虐待の防止、育児への迷いや不安の解消など、子育てに関するさまざまな社会課題を解決しうるソリューションを創出します。また、子どもの個性特性・趣味嗜好に応じて、最適な学びを提案し、子どもの可能性をさらに伸ばす子育てを支援します。

株式会社コドモン会社概要から引用

後段の「子どもの個性特性・趣味嗜好に応じて、最適な学びを提案し、子どもの可能性をさらに伸ばす子育てを支援」という点が注目に値する。この記事の冒頭で述べたように、新たに生まれてくる命は、未来をかたちづくる存在だ。その一人ひとりの可能性をさらに伸ばすことができれば、現代の閉塞感を打破することができるかもしれない。

同業他社も、同様の課題意識をもって事業に邁進している。累計導入件数13,000以上の『ルクミー』シリーズを運営するユニファ代表取締役の土岐泰之氏は、人口減少の問題解決に向け、IPOも当然のように見据えた急成長が実現できると力を込める。

我々は、子育て支援、更に言うと子供の教育の支援、ヘルスケア的な健康管理、またその先にある人口減少の問題解決に対して取り組んでいきたいと考えています……(中略)……NPOでやるわけではない。上場を目指す会社であり、かつ急成長を目指そうとしている会社です。

こちらの記事から引用

約500施設で導入が進む『Brain』を運営するMJは、コドモンと似たかたちで、将来の日本の経済成長に向けた基盤となる構想を描いている。

子育て領域にITプロダクトが浸透していくべき理由は、保護者への連絡を的確にできたり、職員の事務負担を軽減できたり、といった価値にとどまりません。将来の経済成長にまでつながる可能性があるんです。……(中略)……言い換えるなら、日本経済の活力の基盤となるデータベースなんです。プロダクトが使われていく中で蓄積されていくデータを、子育て環境の整備だけでなく、経済成長まで視野に入れた政策提言に活用していく構想を、私たちは描いています。

FastGrowのインタビュー記事から引用

ただし難しいのは、成果が現れるまでに、最低20年ほどはかかるということだ。なぜか?可能性を伸ばすソリューションが得られたとして、それを今生まれた命が享受し始めても、経済活動や社会活動に精を出せるようになるのは大人になってからだからだ。何とも当たり前の話をしているようだが、昨今注目を集めているリスキリングといった事業と比較すれば、やはり社会価値創出までのリードタイムは長い。

それでも、社会変革に向け、得られるべきデータやエビデンスが得られていない現状は、非常にもったいない。この3社をはじめとして、レッドオーシャン化している保育業務ICTサービスの事業領域。地道なプロダクト改善と拡販から、大きな花が咲くのは、50年後か、20年後か、それとも数年で何か変化が見えるだろうか。

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もう一つのレッドオーシャン、“玩具サブスク”に見るBabyTechの本質

toCサブスクリプションサービスがさまざまな業界で激増している波が、実はBabyTechにも押し寄せている。Webで調べてみると10以上のサービスがすぐに見つかり、どのように選べばいいのか、消費者としては非常に悩ましい状況だろう。

やはり、映像配信サブスクリプションサービスから着想を得たと、『トイサブ!』を運営するトラーナ代表取締役の志田典道氏はこの記事で明かしている。同社は2015年にサービスを開始し、メーカーや卸業者からの信頼をゼロから勝ち取りながら市場を創出していった結果、2019年に日本サブスクリプションビジネス大賞初代グランプリを受賞。2019年に1億円を調達2020年にも1億円を調達、そして2022年に3.7億円を調達している。

その志田氏はJP Startupsのインタビューで、「自分たちがやっていることは、ただのおもちゃの発送ではなく子どもの時間の過ごし方など、教育の根幹に関わること」「私たちの事業の本質は、玩具のサブスクではなくて、子どもの成長や発達を助ける選択肢を見つけるサービスだと思っています」と力強く語っている。これがBabyTechの本質と言えるだろう。

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BabyTechが、日本の未来を創る3つの理由

ここまで見てきた事業から学ぶことができるのは、以下の3点だろう。

・これまで蓄積できていない貴重なデータを、着実かつ大量に蓄積できる

・全年代の生活向上につながるHealthTechビジネスの基盤となる

・未来を担う子どもたちの大きな成長を実現する基盤となる

少子化が進むとは言っても、共働き家庭がどんどん増える中で、子育て関連支出には伸びしろが十分にあるはず。今後、BabyTechビジネスはまだまだ生まれていき、競争が激しくなることも予想される。

そうなればきっと、社会的意義とBizDev力の向上を同時に得られる稀有な業界になるともいえるだろう。これから新たにチャレンジする業界を探しているとしたら、ぜひ検討すべきだと、強く伝えたい。

こちらの記事は2022年08月31日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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