M&Aでは「リソースを惜しみなく提供」──GMV1,678億円のオズビジョンに仲間入りした起業家・渡邉氏。9カ月で営利2倍、経営者としても成長を感じた物語
SponsoredスタートアップのEXIT戦略において、大きな潮目の変化が起きている。IPOのハードルが高まり、M&Aが有力な選択肢として日本でも定着してきた。
しかし、現実は決して甘くない。買収の多くは、往々にして親会社のロジックを押し付ける結果にも陥りがちだ。起業家が本来持っていた野心は削がれ、経営の自由度も奪われ、期待したシナジーが生まれずに終わるケースを今も耳にする。
同時に、事業環境も過酷さを増している。Googleの度重なるアルゴリズム変動やSNS広告のCPA高騰などにより、多くのWebメディアやD2C事業が「プラットフォーム依存の限界」に直面。成長の天井にぶつかり、次なる非連続な成長の糸口を見出せずにいる経営者は多いはずだ。
そんな厳しい環境下で、極めて異彩を放つ企業がある。買収した金融比較メディアを、わずか9カ月で売上・営業利益ともに2倍へと急成長させた、株式会社オズビジョン(以下、オズビジョン)だ。
年間流通総額(GMV)1,678億円(2025年3月末時点)、会員数600万人(2026年3月末時点)。そんな同社のM&A戦略には、投資家・起業家を唸らせる極めてロジカルな「必勝の構造」がある。「毎年数十万人が自然増加する数百万人の実購買データ」が、買収した事業のマーケ・セールス先としてフル活用できるのだ。しかも、潤沢な財務基盤があるため、新規施策への投資にも踏み込みやすい。
加えて、買収された起業家の心を惹きつける、熱を帯びた「カルチャー」の存在も大きい。起業家としてグループインし、入社1年足らずで買収した企業の執行役員となって躍動する渡邉氏は「ここの全アセットを使い倒してやろうと意気込んでいたら、それが当たり前に求められるカルチャーだった」と語る。
鈴木氏単独インタビューで事業全体を俯瞰した前回記事に続き、今回はM&Aの新たな理想形の全貌を解剖していく。
- PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
SEO依存メディアを救済する。限界突破を可能にする「潤沢な財務基盤」と「会員資産」
WebメディアやD2C事業を営む経営者にとって、現在の市場環境は過酷そのものだ。GoogleやFacebook、Xなどのアルゴリズム変動に振り回されながら、SNSをはじめとしたデジタル広告の顧客獲得単価が高騰する煽りを受け続ける。
プラットフォームに依存した集客は限界を迎え、多くの事業が成長の限界に頭を悩ませている。
金融系メディア事業を立ち上げ、自力で事業を成長させてきた起業家の渡邉氏も、成長の過程でリアルな葛藤を抱えていた。単独での成長の限界を感じ、顧客のポテンシャルを解放するための次なる一手を模索する中で、M&Aという選択肢が浮上する。
渡邉自分たちだけで経営する時には、やりたくてもやれなかったようなことが、実は結構ありました。リスクが大きくて手を出しにくいものや、資金面の不安から投資をしにくいものなど……。
でも、オズビジョンに出会い、内情を聞くにつれて、想像していた多くのことができそうだとはっきりイメージできるようになっていったんです。これが、M&Aを決めた最大の理由です。
綺麗事ではない、圧倒的な「財務基盤」と「成長への渇望」。渡邉氏の野心を強烈に刺激した買い手こそがオズビジョンだった。
鈴木『ハピタス』をはじめとした我々のプロダクト群は財務基盤が盤石(*)で、手元にはしっかりと現金がありますし、まだまだ利益を稼いでいける。外部からの資金調達をしなくても、事業を回しながら新たな投資ができるような状態です。
そのうえ、これらのプロダクトを通して盤石な会員基盤というアセットもあり、こちらもまだまだ成長途上です。
*……事業モデル上、オズビジョンの手元からキャッシュが減るのは、ユーザーやパートナー等のステークホルダーの中で一番最後になる構造があり、いわゆるキャッシュ・ポジティブな循環がある。鈴木氏単独インタビューにて詳述しているため参照いただきたい
オズビジョンが持つ最大の武器は、財務基盤だけではない。広告に依存せずとも、友達紹介によって毎年40万~50万人が、広告に頼らず口コミ中心でオーガニックに増え続ける会員資産だ。2026年3月時点で600万人の規模となっている。
検索エンジンに依存せず増え続ける実購買データ。これが、買収先事業の成長の天井を確実に突破させるキーとなるのだ。
鈴木M&Aにおける最大の武器が、この会員資産だと考えています。
資金力があっても、会員基盤そのものを、明確なシナジーが見込める形で提供できる企業は他にそうありません。社外の経営者やM&A関係者から「羨ましい」とコメントをいただくこともあります。
我々も、起業家側も、明確なシナジーを描きやすくなっています。
さらなる事業成長の鍵となるシナジーという誘惑。多くの経営者・起業家が、欲してやまないものの一つだ。だが、実際にイメージ通りのシナジーを起こし、成果を得続ける場面は、そう多くない。なぜなら、M&Aとはまさに「言うは易く行うは難し」を象徴する、再現性の乏しい取り組みになっている例が非常に多いからだ。
それでもオズビジョンは、その事業構造や、蓄積してきたアセット、そして組織・カルチャーから、「ここでなら、起業家にとって理想のM&Aが実現できる」という状態をまさにつくり上げているところだ。
ここから、渡邉氏の実体験の言葉を借りながら、その実態を深く見ていく。
「EXITの新たな理想形」
プラットフォーム依存からの脱却も困難
起業家精神が摩耗し、成長が止まる
野心の継続と全社最適を両立する理想形
取材内容等を基にFastGrowにて作成
買収後9カ月で売上2倍。検索エンジンの先を行く「実購買データ」のインパクト
キャッシュの投下と、トラフィックのつなぎ込み。
この、理屈の上では完璧な戦略も、たとえば適切な資金投下ができなかったり、送客の質が低かったりすれば、利益・売上どころかコンバージョンレートの向上すら見込めず、シナジーなど幻に終わる。
しかし、オズビジョンのM&Aにおいてその懸念は無用だった。渡邉氏が牽引する金融系メディア事業は、買収から9カ月で月次の売上・利益を倍増させるという驚異的な飛躍を遂げている。その裏には、渡邉氏自身が買収前に見抜いていた「明確な勝算」があった。
渡邉会員資産とキャッシュは非常にわかりやすい。事業を連続的にも非連続的にも成長させるための打ち手を一気に増やせた感覚です。
事業の成長角度が上がっていく未来がはっきり見えるようになりました。
自力では踏めなかった成長のアクセル、それを全開にできた背景には、オズビジョンが持つ会員データの「質」がある。検索エンジン経由のユーザーと比べ、顧客の熱量の次元が違うと渡邉氏は語る。
渡邉 多くのメディアでユーザー層の中心となっているのは「検索エンジンからの流入層」です。そうした経路だと、基本的に「こういうサービスに興味関心がある」という、“購買の手前”のデータしか捉えられません。
しかし、私たちが活用できるのは“実際の購買”のデータ、具体的には「すでにお金を払って購入した記録というデータ」なんです。
- 「興味があるかも」という推測
- 次の一手の予測が外れやすい
- ◉ 「このサイトで購買/成約した」という確実な事実
- ↓
- ◉ ライフステージが具体的に浮かんで見える
- ↓
- ◉ コンバージョン率(CVR)が劇的向上
取材内容等を基にFastGrowにて作成
渡邉 私たちが提供する金融サービスに関連してイメージするなら、「そろそろ投資をしてみたいかもしれない人」に対して売り込むよりも「投資してうまくいった実体験を持つ人」に対して売り込んだほうが、絶対にコンバージョンレートは高いはず。
ほかにも、たとえばベビー用品を多く購入したユーザーがいれば、子育てを始めた世帯として将来不安を何かしら感じている可能性が高い。となると、その人は私たちが取り扱っている保険契約の潜在顧客として、購買可能性の高い層だと判断できます。
逆に、最近保険に加入したばかりのユーザーがいれば、家族構成の変化を推測してベビー用品や自動車といった商材を提案するとコンバージョンしやすいかもしれません。
あらゆるカテゴリーの「実購買データ」を持っていると、このように精度の高いシナジーを生み出しやすい。まさに、「検索エンジンの先をいくデータ」だと言えます。
検索窓に打ち込まれた「単語」ではなく、財布を開いてお金を支払った「事実」。成約や購入金額までトラッキング可能な実需データがあるからこそ、ただのトラフィックの融通で終わらない、非連続な事業成長につなげていけるというわけなのだ。
また、こうしたデータの取り扱いについては、個人情報保護の観点で注意が必要なのはもちろんのこと、多量ゆえのノイズや外れ値にも気を付けながら分析し、的確に行動へとつなげていくことが重要になる。
この点も全く心配は無用だ。『ハピタス』のこれまでの事業展開において、常に他企業との連携で売上・利益を伸ばしてきたという経緯がある。Amazonや楽天といったパートナーだけでなく、さまざまな機能実装において、OEM等の開発パートナーも存在してきた。そうした連携を通じて、他企業とともにデータドリブンで新たな成果を生み出す経験が豊富な現場なのだ。
M&Aは「共に事業拡大をつくりあげる」もの。背景にある、縦割りを許さない“全社最適”の組織構造
ただし、まだ疑問は残る。潤沢な財務基盤と600万人のデータ基盤。これらのアセットがあっても、M&A後の統合プロセス(PMI)が機能しなければシナジーは生まれない。
多くのM&Aが失敗に終わるとも言われる中、その理由としてよく指摘されるのは、親会社の管理手法やロジックを買収先に押し付ける結果に陥り、起業家本来の熱量やスピード感を殺してしまうことだ。
オズビジョンのアプローチはその真逆をいく。渡邉氏は、買収直後のリアルな統合プロセスをこう振り返る。
渡邉多くの場合、親会社の経営ロジックを基に、KPIの設計や財務戦略は変更を余儀なくされると思うんです。ですが、そうしたやりとりはまったくありませんでした。
私が管掌する戦略レイヤーに対して、鈴木を含めたオズビジョン経営層から何か介入があったことは、一度もありません。
私自身も、オズビジョンの従業員になったという感覚はありません。起業家のまま、仲間が増えたという感覚です。
鈴木そう、私たちは、親会社だとか、株主だとか、そういう言葉で表現する関係性というよりもむしろ、“仲間”なんです。
渡邉とは、M&Aが確定になる前から、もちろん何度も会って、いろいろな話をしました。事業のこと、つくりたい未来のこと、起こしたいシナジーのこと……。
ですが、買収額のことは一切話していません。そういう「目先のディールがどうなるか」よりも「仲間として目指す未来」のことを、今もいつも話しています。
渡邉だからこそ、M&Aが決まった後、いわゆるPMIの過程が始まるときも、非常にスムーズでした。
この二人の関係性だけでなく、チームの統合という部分でも、スムーズさが際立ったのだという。
渡邉会員基盤や財務基盤についてはこれまでに触れてきましたが、さらに言えば「オズビジョンの人的リソースの活用」という大きなテーマもあります。いくらマーケティングアセットやお金があっても、それをしっかり運用して成果を生み出すためには、人が不可欠です。
そこで、私の事業に、オズビジョンの既存事業からこれまでに数人ほど、異動してきてもらっています。このための社内調整はけっこう大変なんじゃないかと思っていたのですが、そんなことも全くなかったんです。
事実、この金融系メディア事業がわずか9カ月で売上を倍増させた背景には、組織の壁を越えたダイナミックな「人材の流動性」があった。
この事業の成長アクセルを踏むべきというタイミングで、買収した企業の他部署から優秀な人材が社内異動で次々と合流したのだ。
既存事業の責任者からは、「なぜ自分の部署のリソースを、新規の買収事業へ明け渡さなければならないのか」といった反発や不安も生じ得る。だがそれも、オズビジョンでは仕組みやカルチャーですでに乗り越えようとしているのだという。鈴木氏が、徹底した「全社最適の制度設計」について明かす。
鈴木うちではそれぞれの担当する事業・プロダクトの数字だけを重視するような「縦割り」の考えを、一切とりたくないと思っています。もし、自分たちよりも調子の良い成長事業があれば、そこに対して全社的にリソースを集中させるべき、皆がそう考えるカルチャーがすでに浸透しています。
これを、組織の制度設計の面でも、同時に担保するようにしています。CxOや役員の報酬は、自身の管掌事業ではなく最終的に「全社の利益」に連動することにしているんです。
そもそも役員の定義が「全社の利益を向上させること」です。毎週の経営会議でも、各事業の進捗だけでなく、全体最適の視点が常に重要になります。
「全社最適」の仕組み
人材を囲いこみ、親会社の管理が重くのしかかる
「全社利益」に連動
起業家を尊重するシームレスな組織
調子がよい成長事業へ、自然と人が集まる
取材内容等を基にFastGrowにて作成
「起業家を尊重する」という耳当たりの良い言葉だけではない。それを機能させるための、合理的な組織体制や評価制度がある。この強固な構造がカルチャーを下支えしているからこそ、買収対象になった起業家も、無駄な社内政治に消耗することなく、グループ全体の資産を使い倒し、最速で事業成長にフォーカスできるようだ。
こうした渡邉氏との事例における学びと、今後のさらなる拡大戦略を鑑み、オズビジョンはM&A方針を明確化し、2026年3月には社外向けにも公表。以下のような整理がなされた。
オズビジョンのM&A方針
- ◆複数事業の連携による非連続な成長
- ◆早期成果を実現する伴走型支援
- ◆専門リソースとデータの提供
- ◆文化の尊重と「人」を中心とした統合
- ◆中核を担う経営陣としての参画
取材内容等を基にFastGrowにて作成
「複数事業の連携による非連続な成長」や「伴走型支援」、「リソースとデータの提供」などについては、本稿のこれまでの内容でも触れてきた。そして最後に次章で、「文化の尊重」や「経営陣としての参画」の面にも具体的に触れていく。
【起業家の覚醒】「来たものは全部食べる」。経営の資質を潰さず、非連続な成長を仕掛ける舞台
データと財務基盤という圧倒的な構造的優位性に加え、フラットなカルチャーを持つオズビジョン。そこで躍動する渡邉氏。
その躍動の度合いも印象的だ。M&Aでの入社から1年と経たずに、買収した企業の執行役員にも就任。現在は従来の事業にとどまらず、全社視点での新規事業立ち上げや、自身が買収された規模を遥かに超える大型M&A案件の推進責任者まで務めているのだという。
一人の起業家がこれほどのスピードで全社の中核へと躍進できた裏には、両者の間に通底する「仲間」としての強烈な信頼関係がある。
渡邉せっかくジョインするからには、言葉を選ばずに言えば「オズビジョンの全アセットを使い倒してやろう」と思っていたんです。
自分ひとりで経営していた時にはできなかった新規事業や、グループの全資産を使ったダイナミックな経営。そこからどんな事業を生み出せるのか。そういうチャレンジをしてみたいと思っていたんです。
鈴木M&Aでグループに入ってくれた経営者は、私にとって部下でもなければ、もちろん友達でもありません。同じプラットフォームの中で、共通の資産を使い倒して、一社単独では決して辿り着けなかった非連続な事業成長を一緒に目指していくという意味で、「仲間」なんです。
だからこそ、私がやるべきことは、彼ら起業家が元々持っている資質を「いかに潰さないか」だと思っています。
多くのM&A事例で、買収された経営者はどこかでモチベーションを失っていくと聞きます。そうならないよう、少しでも興味がありそうな新規事業やM&Aの機会をどんどんパスし、彼らが無駄な社内政治に縛られずフルスイングできる環境を整えることを強く意識しています。
渡邉はい、私もありがたく、「来たもの全部食べよう」ぐらいの気持ちでやっています。
鈴木でも、もっともっとたくさん渡してるつもりですよ?(笑)
渡邉それはそうですね、まだまだいけます!(笑)
このようにチャンスが増えていくのが今は本当に楽しいですね。新たなM&Aも、まったく新しい別の新規事業も、あるいはAIを活用した新規プロジェクトも、鈴木をはじめとした全メンバーからヒントをもらって、面白いと思ったら自分の時間を取りに行く。
そして、私自身の時間も有限なので、パンパンになったらほかのメンバーに仕事をパスしていく。そんな流れをつくっていくことで、私だけでなくほかのメンバーもみな、視座の高い業務にチャレンジでき、人がどんどん育っていく。そんな連鎖反応を生み出していきたい。
渡邉氏がM&Aを通じて手に入れたのは、事業の成長チャンスだけではない。自力では辿り着けなかった、事業面・組織面で多岐にわたる、スケールの大きな勝負だ。
渡邉特に今、刺激を受けているのが、経営の視座という部分。これまで自身での経営においては、いわゆるKPIマネジメントに特化したかたちでの経営をしてきました。これが、オズビジョンに入って大きく変わってきています。
鈴木が常に「プロダクト思考の強さ」を強調する影響で、中長期的な思考を自然としていけるようになってきました。
KPIに終始するのではなく、そもそもプロダクトをどう良くしていくのか、そしてUXをどう磨き込んでいくのか。こうした点に主軸を置いたコミュニケーションが、今のオズビジョンは非常に多いんです。
プラットフォームの顔色をうかがう日々
KPIからプロダクトへ、中長期的な磨き込みに没頭できる
新規事業や次のM&Aをリードし、自らの手で「第2の創業」を仕掛ける
取材内容等を基にFastGrowにて作成
渡邉この規模の会社で、トップ自らがこれほど強いプロダクト思考を持っているのは稀なケースなのではないかと感じます。
こうした環境でこそ、現状の延長線上での成長ではなく、業界ナンバーワンやグローバルを目指しに行くぞという気概につながる。他の会社ではなかなか味わえない、本当にエキサイティングな環境だと思います。
年間GMV1,678億円を誇る強固なプラットフォーム基盤。そこに外部資本を活用した過去最大の攻めの戦略と、約100名規模のベンチャーならではの機動力が掛け合わさる。オズビジョンは今、野心溢れる起業家や優秀な事業責任者が「次のステージ」として選ぶべき、日本で最も熱を帯びた舞台となっている。
こちらの記事は2026年03月31日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。