AI時代にグローバルで日本の勝ち筋を見出し、新興国で社会インフラの構築と産業の創造へ【movus technologies酒井氏】
Sponsored2026年5月に、シリーズBラウンドとして総額42.6億円の資金調達を発表したmovus technologies株式会社(ムーブステクノロジーズ。以下、movus)。FastGrowでは2023年に、共同創業者の酒井丈虎氏・北口理人氏の独占インタビューを実施。その後も順調な事業成長・組織拡大を続けている。
今回は酒井氏から、より詳しい創業背景、そして最新状況と今後の展望を語ってもらった。
目次
- 【セクション1】 中学生の頃の将来の夢は内閣総理大臣→起業を志すに至った理由
- 【セクション2】 戦う舞台を東南アジア・インドネシアに選んだ背景
- 【セクション3】 movusが解決する、モビリティインフラ構築に向けた最重要課題
- 【セクション4】 新興国で見出した海外における日本人の勝ち筋
- 【セクション5】 2050年に日本を超え世界4位の経済大国になるインドネシアのダイナミズム
- 【セクション6】 先進国⇔新興国、乗り越えるべき壁
- 【セクション7】 時価総額2兆円超えの東南アジア最大プラットフォーム・Grabの日本企業唯一のパートナーに
- 【セクション8】 新興国の社会インフラ、産業の創出を目指す
- 【セクション9】 日本のプレゼンスの向上と外貨獲得による日本への貢献
中学の頃の将来の夢は内閣総理大臣→起業を目指すに至った経緯
なぜ起業をするに至ったのでしょうか?
酒井起業というのは、選択肢の1つであり、元々世の中に対して良い影響を与えていきたいというのが根底にあります。
小学生の頃はよく伝記を読んでいました。エジソンとか、ライト兄弟とかナイチンゲールとか。それで、本を読む習慣と、偉人というか、周りにいい影響を与えられる人になりたいみたいな感覚が刷り込まれていったのかもしれません。
その延長で徐々に、「内閣総理大臣になって日本をより良くしたい」と思うようになりました。政治家になることを意識し始めた具体的なきっかけは、僕の通っていた中学校が熊本県の「税金を勉強する指定校」に選出されたことです。税金のおかげで多くの人が救われている一方で、社会システムからあぶれてしまっている人も多くいることに気付きました。プロジェクトの最後にはテレビの取材が入って、自分たちの考えを発表する機会があったのですが、そのときにアナウンサーの方から「君みたいな子が政治家になってくれれば、きっと世の中が良くなるね」と言っていただいて、政治家、特に内閣総理大臣になれば、大きな影響力を持って日本社会をより良くしていけるのかもしれないと感じたんです。
そして、直接的に起業を意識するようになったきっかけはスローガン株式会社の代表(当時)の伊藤豊さんとの対話です。伊藤さんに「内閣総理大臣になりたいんですけど、どうしたらいいと思いますか?」と話をしたら、「逆にどんな人に総理大臣になってほしい?」って聞かれて、「孫正義さんとか柳井正さんとか三木谷浩史さんとかだったら明確に社会が変わると思います」と答えました。すると、「その人たちって起業家だよね」って言われて、ハッとしたんです。
総理大臣じゃなくても、ゼロから社会に価値を生み出していく人材になることができれば、社会を変えることはできるんだ、と。
政治家になりたいと思ってたのは、手段の目的化だったのかもしれない。この気付きは大きなターニングポイントになりました。
酒井氏(※インドネシアの民族衣装/正装であるバティックを着用)
坂の上の雲のみを見つめてかけあがり日本を出てインドネシアで起業
なぜ数ある選択肢の中で、あえてインドネシアで事業をやろうと思ったのですか?
酒井「なぜ海外か」「なぜインドネシアか」の二つの観点でお話ができればと思います。
海外という文脈は両親や家族からの影響で『不毛地帯』『竜馬がゆく』『坂の上の雲』などの歴史小説を小さい頃から読む中で、自分も将来海外でチャレンジしたいという想いを抱いて育ってきました。そして、大学時代にファーストリテイリングの柳井さんと大前研一さんの共著である『この国を出よ』を読み、改めて日本の状況から海外に出ていく必要性をさらに強く感じました。
インドネシアを選んだ理由は、新卒で入った会社でインドネシアに行かせてもらう機会をもらえて「ここでやりたい」と思ったためです。現地の課題を見聞きして肌で感じるとともに、経済成長から来る熱気に煽られたり、人の優しさやポジティブさが心に響いたりして、「海外で事業を興すなら、この国でこの人たちのために課題を解決したい」と思ったんです。
言わずもがな、生産年齢人口が引き続き伸びていくフェーズで、経済成長はまだまだ続くという予測があります。そんな新興国の中でも特に、「日本車の販売シェアが約79%(*1)と高水準」「日本語の学習者数が世界で2番目に多い(*2)」などのファクトが示す通り、日本のプレゼンス故、日本人/日本企業が事業が行いやすい土壌があると感じました。
*1……2025年のインドネシア自動車協会(GAIKINDO)のデータを参照
*2……国際交流基金の2024年度調査によれば約73万人、中国の約101万人に次いで2番目に多い
初めてインドネシア市場を見たとき、何を感じましたか?
酒井良くも悪くも課題だらけで、日本の当たり前が決して当たり前ではないと感じました。
2024年の実績でインドネシアの名目GDPは1.4兆ドルを超え(IMFのデータを参照)、これは1970-1980年代の日本と同水準になります。私の親世代の人がインドネシアに来た時には、「私が学生時代の日本、昭和の日本」を感じると口にしていました。
私たちが向き合っているモビリティ領域の産業構造の変遷も日本と一定同じ形になっています。日本でも以前は存在していたブローカーという存在が車両購入希望者と販売者を紐づける役割を担っている一方、インドネシアではテクノロジーの活用によりブローカーのエンパワーメントをできるようなサービスが生まれていたりと、日本の昭和と最先端技術のハイブリッドな社会が構築されています。
モビリティインフラ構築を阻む最重要課題とは
movusが向き合っているインドネシアの社会課題を一言で言うと何ですか?
酒井モビリティ領域における「公共交通機能不全の解消」です。ジャカルタは都市域の人口が世界最多の4,190万人(*3)にのぼり、日本の東京(3,340万人、インド・ダッカに次ぐ世界3位)を大きく上回ります。にも関わらず公共交通機関が未整備で、東京都心で50%(*4)ほどの公共交通機関の分担率が、ジャカルタでは22%(*5)にとどまっています。
さらに、インドネシア全体の車両の保有率は10%以下であり、残りのモビリティ需要は東南アジア版UberであるGrabやGojekのようなライドシェアアプリのプレーヤーが満たしていることが推定されます。特にGrabは時価総額2.2兆円ほど、月間利用者数は5,160万人(2026年1~3月の平均*6)を超える東南アジアNo.1の配車プラットフォームですが、 需要に対して供給(=ドライバー数)が不足しており、配車アプリの利用料を増加させることで需給のバランスを調整しているのです。
これは本質的な解決策ではなく、実態としてはモビリティ需要を満たせていないことを意味します。そこに対して、弊社が日本企業で唯一契約を締結している供給パートナーとして、供給側の解決つまりドライバー不足の解決を行っています。また、これまで「自動車を持つことができなかった方々」に対して、金融課題の解決を通じ、「日本車の提供」を行うことは、微力ながら日本のプレゼンスや経済にも貢献をしています。
*3……国連『World Urbanization Prospects 2025』を参照
*4……東京都の資料を参照
*5……国土交通省による現地ヒアリングを参照
*6……Grab『Q1 2026 Latest Quarterly Report』発表資料を参照
その課題はなぜ今まで解決されてこなかったのでしょうか?
酒井大きな理由は、バリューチェーンの長さと、事業構造の複雑さにあると考えています。
この領域では、セールス・マーケ・与信・メカニック・債権回収・カスタマーサービスなど、部門の多さも然ることながら、オフライン / リアルアセットのハンドリングがその難易度を引き上げます。
例えば、与信1つとっても、参照するデータの質と量が担保されていないケースが多いです。日本は比較的収入帯が高く、そのボラティリティが少ない上、支払いを続けるというモラルも高い。要は非常に与信がしやすいわけです。
一方でインドネシアだと、収入の高低の変化が大きく、就業の安定性などが、与信に与える影響が非常に大きいため、判断が難しいんです。
また、アフターサービス側でも新興国特有の問題が発生します。支払い期日へのコミットメントや車両の使い方はもちろんのこと、不正を起こすハードルが低いのも特徴です。この結果、過去に類似プレイヤーが参入はしていたのですが、車両盗難等の損失が大きく撤退を余儀なくされていました。
弊社はモビリティとFinTechが重なる領域で事業をやっているのですが、新興国のFinTechは可能性を秘めているものの、決済や少額与信が対象のBNPL(後払い決済)のような比較的変数の少ない、よりオンラインの側面が強い領域を中心に成長を遂げています。
難易度の高い新興国マーケットでmovusは何をどう再設計しているのでしょうか?
酒井長いバリューチェーンを敢えて丸抱えすることで、この事業領域が抱える数々の課題を紐解こうとしています。
督促管理や車両の動態管理など個別の領域に対してソフトウェアサービスを提供する会社も確かに存在します。しかし、人件費が安いインドネシアにおいて、その形で収益を確保するのは難しいです。敢えてリアル/オフラインに染み出す、敢えてアセットを持ちに行く、敢えて複雑性の高い事業で勝負をしにいく、それこそ新興国で事業を興す上での重要なポイントだと考えています。
こうすることで結果として一番大きな収益ポイント、一番大きなパイを取ることができるのです。
また、リアル/オフラインだからこそ事業の手触り感、顧客の喜びを直に感じることができるのもこの事業の魅力です。私たちは、Grabなどの配車ドライバー向けに車両提供やファイナンス事業を展開しているため、車両を納車する際には、顧客のご自宅まで届けに行くことがあります。すると近隣住民のお子さんがスマホを持ってきて「この町に新車がやってきた!」ということで、車と一緒に写真を撮影したり、それこそ近隣住民の人たちが10人ほど集まって一緒に写真を車と撮影するようなことがありました。
もちろん目指すのはより大きなビジョン、社会インフラの構築ですが、小さな幸せや喜びを積み重ねながら事業運営できるのもこの事業の魅力だと思っています。これは新興国だからという話ではなく、誰にとっても家や車を手に入れることは人生の中でも大きな出来事の1つ。私にとっても車は思い出の一部と言いますか、小さい頃に両親に車で色んなところに連れて行ってもらったのですが、旅行にどの車で行ったのかが思い出話になるくらい切っても切り離せない存在です。事業運営上での戦略的にも、そしてより深く顧客に入り込むためにもリアル/オフラインの複雑な領域に入り込んで事業を展開しています。顧客に深く入り込むことで長いお付き合いになり、その先のビジネス機会も得られますからね。
新興国で見出した海外における日本人の勝ち筋
なぜこの複雑性の高い産業に日本人・movusのチームが挑む意味があるのでしょうか?
酒井このビジネスが抱える複雑性にこそ、日本人/日本企業の勝ち筋があると考えています。
これは新興国に限った話ではないと思います。シリコンバレー発の企業がソフトウェア/デジタル領域で覇権を握ってきましたが、AIの台頭により更にその傾向は強くなるでしょう。ソフトウェア/デジタル領域のように、変数が少ないような事業参入難易度の低い事業領域はファイナンスゲームの毛色が強くなり、勝者総取り、大きな会社がどんどん強くなっていきます。
我々はそういう競争ではなく、日本人/日本企業がグローバルで勝ち得る領域を模索して、自分たちらしい勝負をし続けていこうとしています。エンタメや日本食領域などが鮮明にイメージしやすいと思いますが、その他に広義のハードの領域があると思います。ハードウェアそのものがこれまで日本の基幹産業であり続けたように、ハードを構築する過程=オペレーション領域も日本の強みだと思います。日本企業の運営テーマの中心がコスト削減であり続けたように、ラストワンマイルの改善のマインドセットとスキルは世界でも勝ち得るのではないでしょうか。
私たちはインドネシアで事業をやっていますが、日常の事業運営の中にこそ、現地企業に対しての強みがあると感じますし、インドネシアの多くの事業領域でその強みは活きてくると感じています。
他方、インドネシアの人たちの明るさやポジティブさには全く敵わないとも思います。「今年より来年が良くなる」と信じている割合が世界で一番多いのがインドネシア。反対に、日本は世界でワースト1位(*7)なのです(苦笑)。このポジティブマインドセットは見習いたいものです。上手く強みを融合できれば、より強固な事業/組織をつくれるのではないでしょうか。
*7……世界的な市場調査会社「Ipsos」の2024年12月発表の調査における、「I am optimistic that 2025 will be a better year for me than it was in 2024」という設問への回答結果
2050年に日本を超え世界4位の経済大国になるインドネシアのダイナミズム
日本での事業づくりと比べて、何が一番違うと感じますか?
酒井AIの活用により産業の再定義/再発明が起きてくる可能性はありますが、一般的に日本では、パイの取り合い/巨大産業におけるソフトウェアによる補強がメインのアプローチだと思います。ただ新興国では、パイの拡大/巨大産業のど真ん中を攻める戦いになります。悲観的な話がありつつも、日本は文句なしの経済大国。世界を代表する会社を中心に産業が創造されています。
一方で、この成熟した国家においてはどうしても、ニッチな市場を攻めざるを得ない。GDPの2025年予測では、日本がここ30年ほど上下しながら約4.44兆ドルとなっているのに対して、インドネシアは右肩上がりに成長を続け1.45兆ドルになっています(IMFのデータを参照)。これからどんどん産業がつくられていくフェーズですよね。
日本が同程度のGDPだった時代、ソフトバンクが1981年、ファーストリテイリングが1984年(柳井さんが社長就任&ユニクロ第1号店出店)、キーエンスが1974年と名だたる大企業がこの前後で誕生しています。そんな経済ステージのインドネシアで、国そのものを作っていくことやインフラや産業の創造に携われるのは非常にエキサイティングです。私がもともと海外で事業をやりたいと思うようになった、明治維新のようなダイナミズムに関与できます。
例えば、物流のような大型産業であっても、東南アジアでマーケットシェア34.4%で東南アジア売上高45億ドル(*8)を誇るJ&T Expressは、2015年設立という非常に若い企業です。成長著しく、課題が広くて深い産業のド真ん中にアプローチし、根こそぎその需要を取り込むことができれば、このように爆発的な成長を遂げることができるわけです。
また、ゲームを祖業とし、ECやデリバリー事業にも手を広げている、2009年創業のSeaグループ(シンガポール)も印象的です。全社売上高は229億ドル(36.4%成長)、3つの主要事業すべてが成長し続けています(*9)。
インドネシアで生活していると、これらの企業に加え、先ほども言及したGrabやGojek、またECサービスのTokopediaなど、スタートアップのサービスが生活の中心にあり、これらがない生活は想像できないくらいなくてはならないサービスです。だからこそ自分たちもこれくらい大きなインパクトを創出せねば、と、非常に良い刺激になります。
我々はまだまだ小さな存在です。しかし、そんな我々でも産業のド真ん中にアプローチすることが可能ですし、数年/十数年後には業界No.1企業、産業をリードする企業になることもできると思っています。
また、今このインドネシアのステージで事業を開始して、日本を超えてインドネシアが世界4位の経済大国になると言われている2050年(*10)まで、経済の成長を取り込みながら堅実に事業運営することができれば、次の時代におけるソフトバンクのような企業をつくることも、マーケットのポテンシャル的には十分可能なはずです。
資金調達のプレスリリースの中で、みずほ銀行さんから「弊社が強くご支援してきたソフトバンク社が1980年代に設立され今や世界的企業に成長されておられるように、movus社が新興国におけるソフトバンク社のような会社になるご支援を進めていければと思っております」と言っていただき、非常に嬉しく思う一方、身の引き締まる思いです。ご期待に添えるように更なる成長を遂げていきます。2050年、インドネシアがどのような国になっているのか楽しみでなりませんし、その発展を支えたのがmovusでありたいです。
*8……J&T Express『FY2025 Results Presentation』を参照
*9……Sea『Fourth Quarter and Full Year 2025 Results』を参照
*10……ゴールドマンサックスによるレポート『Path to 2075(邦題:2075年への道筋)』において、「2050年には、当社の予想では世界の5大経済大国は中国、米国、インド、インドネシア、ドイツとなるとみられる(この間にインドネシアがブラジルとロシアを抜いて最大の新興国の一つとなる)」などとまとめられている
先進国⇔新興国、乗り越えるべき壁
実際にこの数年やってきて、一番難しかったことは何ですか?
酒井新興国における事業運営のラーニングとアンラーニング、そして強いカルチャーの構築です。
当たり前の話ですが、日本と新興国では生活インフラの成熟度が大きく異なりますし、国民性の違いもあります。これらは、事業運営スタンスに大きく影響を与えます。
例えばわかりやすいのが不正対応。日本だと極端に言うとローンやリースは「提供して終わり」に近い側面があります。大半の人が真面目に期日通りに支払いを行うので、事業運営上「与信」に重要度を置きます。しかし、インドネシアだと「提供後が本当のスタート」。国民性の違いによる支払い期日の考え方も大きく異なりますし、不正による利益の享受も比較的動機付けされやすいんです。
弊社では、IoTデバイスというハードと、管理(車両や支払い)のソフトウェアを活用し、対応オペレーションを強固なものにしています。ただ、概念設計だけではまず上手く行かず、不正対応するために利用するIoTデバイスのエリア別の通信環境の把握や、インドネシアにおいて顧客が実施し得る不正の理解など、現地に根付いたオペレーションをいかに構築・運用していくかが重要になります。
そのため、新興国で事業をやるには理想としては極力Day1から海外で事業を行い海外ベースでオペレーションを作り込むことが重要だと思います。日本は一定の金融マーケットがある故、日本である程度展開してから海外というのが一般的なセオリーかと思います。しかし、大きく前提が異なる新興国への海外展開は、0から会社/事業を行うようなものです。例えば新興国は人件費が安いため、ソフトウェアサービスの導入インセンティブが働かないため、BtoB領域でピュアなソフトウェア型サービスで成立させる難易度も高くなります。
また、強い組織をつくることも試行錯誤しながらやってきました。組織づくりに終わりはないので、プロダクト同様磨き続けるものではある前提ではありますが、そもそもの就業観やカルチャーへのアテンションが大きく異なります。日本のスタートアップで働く人であれば、一般的には MVV やカルチャーの重要性が容易に理解できると思います。しかし、インドネシアだとナレッジやセオリーが浸透しきれておらず、上場したメガベンチャーやユニコーン企業の経験者であっても、その辺へのアテンションが低いのです。
特に当社の事業領域では、当たり前のことを徹底的にエグゼキューションして積み上げていくことが重要になると考え、力を入れてきました。たった1人がマニュアルを守らないことで、車両のロスという大きな損失を招く可能性があるのです。そんな中、海外でありがちな「時間を守らない」ことは、会社のエグゼキューションカルチャーの水準を下げ、最終的に損失にすら繋がり兼ねません。特に朝の時間を守らないのは、一番変数が少ないことすらハンドルができないことを意味するのですが、「渋滞で遅れた」「雨が降ってて遅くなった」のようなことを言い訳にされます。都度指摘をすることで意識を是正してきました(もちろん、洪水のように物理的に出社が不可能なケースは別です)。
このような細かい話だけではなく、カルチャーの重要性を説くセッションを設けたり、評価制度を Values に紐づけたり、毎週の全社週次定例で Values に沿ったアクションを表彰したり…日本ではごく普通かもしれませんが、そのようなことを運用していくことで徐々に浸透してきている実感はあります。
時価総額2兆円超えの東南アジア最大プラットフォーム・Grabの日本企業唯一のパートナーに
逆に「これはいける」と手応えを感じた瞬間は?
酒井Grabとの業務提携の契約を締結できたことは1つの大きなターニングポイントだと感じています。配車・フードデリバリー・食料品配達・決済・融資・保険・デジタル銀行と東南アジア8カ国・800都市以上で展開するスーパーアプリになっています。
少し話が逸れますが、インドネシアでは、同じくスーパーアプリであるGojekと激しく競争しており、街中を見渡すと、両社のコーポレートカラーである緑色のジャケットを着たドライバーで溢れています。そうした光景を見るたびに、インフラをスタートアップ企業が作っているという実感が湧き、非常にモチベーションがあがります。
事業提携までの話ですが、弊社的にも配車アプリ側との連携を行うことが成長戦略のド真ん中と認識してはいました。しかし、立ち上げてから3年だったということもあり、顧客数や影響力はまだまだの存在でした。そのため、基本的には弊社単独で集客を行ってきました。そして、この短期間で急成長を遂げることで遂に彼ら的にパートナーとして認めてもらえるような存在になったのです。
Grab側も、ドライバーが不足していることでモビリティの需要を満たせていないという課題があり、その背景には金融課題が存在しています。安定的にドライバー供給を実現できるパートナーの存在は必要不可欠。当たり前の話ですが、Grabのアプリ上でドライバーとして登録するには車両を持っている必要があります。
インドネシアでは、「ドライバーは自動車ローンに通らないもの」という一般的な認識が広がっています。それ故、弊社が個人事業主のライドシェアドライバーの方向けにもサービスを提供することができるという認知が広がれば、今後、ドライバーになりたいという潜在需要を、より強く掘り起こせます。ドライバーという職業はインドネシアのブルーワーカーの方々の5倍以上の収入を得ることができるため、現地では非常に魅力的な仕事です。にも関わらず、なりたくてもなれない方々が多く存在している。
弊社は単なる車両の提供ではなく、就業機会の創出を行っています。今回のGrabとの提携は通過点にすぎません。彼らが提供するスーパーアプリの各サービスと密に連携することで一緒にエコシステムの構築を目指します。
明治維新のように、社会インフラ、産業の創出を目指す
movusが実現したい社会を端的に表すとどのようなものなのでしょうか?
酒井私たちが目指しているのは、社会の中に存在する“機会の不均衡”を少しでも減らしていくことです。もともと私自身、「社会構造の歪み」や「取り残されてしまう人がいること」への問題意識が原点にありました。だからこそ、movusでは、リソースやアセットを最適に配置し、本当に必要としている人に届けていくことで、社会課題の解決に取り組みたいと考えています。
今は、モビリティ領域において機会の提供・浸透、就業機会の浸透、資金リソースの最適配置を事業として行っています。また、これを実現するには日本の事業運営ナレッジや開発技術というリソース・アセットを活用しています。
新興国において社会課題は非常に多く、かつその解決を行うリソースやアセットがないという実情があります。株主のジェネシア・ベンチャーズの投資先の日本人起業家では、田中卓さんのKAMEREO INTERNATIONALが食品物流領域、杉本瞭さんのThree Tigerさんが建設機械領域と、重厚長大な産業でエキサイティングなチャレンジをしています。
重厚長大だからこそ解決には時間がかかるのも事実です。長い時間軸で現地にベットし続け、一つでも多くの課題を解決していける会社を目指していきます。
また、アジアの人たちが自己実現や、本当に幸せな人生などを掴めるような社会になっている未来を目指して取り組んでいこうと思っています。今の生活や将来に不安を感じずに、笑顔で前を向いて生きられる社会を実現したいんです。
インドネシアでは今もまだ、会社の生産性向上の余地が大きく、その影響で国民一人ひとりの実入りが少ないんです。だから、僕らはまず自社をより生産性の高い会社にして、メンバーや顧客にしっかりと還元ができるようにしていきたい。余暇を楽しめるとか、ゆとりある生活を享受できるとか、雇用の創出を通じて豊かになるとか。
そして、それをデファクトスタンダードにしていくことによって、社会全体の生産性が上がっていくような、たくさんの会社が真似したいと思う仕組み自体を創っていきたいです。現時点での私たちは、社会全体から見ればまだ小さな存在です。ただ、それでも現状に驕ることなく、長期的な視点で愚直に事業を積み上げていきたいと思っています。
求ム、世界で戦う挑戦者
最後に、この記事を読んでいる人に伝えたいことは?
酒井今この転換期こそ、日本人が勝てる領域で海外でチャレンジするチャンスです。そういう人が増えることを祈っています。
恐らく5年後も10年後も、私は転換期だと言っているとは思いますが(笑)。
5~10年後には、海外展開の重要性がより強くなっているに違いありません。しかし気付いた時には時既に遅しという可能性がある。
先ほど、インドネシアでは日本車のシェアが長らく90%以上を誇っているとお伝えしましたが、中国EVメーカーのBYDがシェアを伸ばし、ある車種では年間の車種別販売台数トップ10にランクインするなど、ブランド認知を高めています。
韓国ブランドも好調です。スマホはSamsung、テレビはLGを見かける機会は多く、K-POPや韓国ドラマを楽しむ文化も根付いています。会社の現地出身メンバーと会話していても、日本のアイドルや俳優の名前は出てきませんが、韓国のアイドルや俳優の名前はどんどん出てきます。しかも、韓国は日本の人口の半分ですが、インドネシアにおける駐在員数は日本のそれよりも多いようです。
自国の人口規模から考えられるマーケットの規模や成長性に限界があることから、東南アジア含め海外への展開には積極的だという見方もできますが、それにしてもやはり海外展開には注力している姿勢がよく見えます。
アフリカや南米に比べると、東南アジアでは、日本のプレゼンスは高い。但し、このままいくと徐々に相対的に下がっていくことが予想されます。現地で一つでも多くの課題を解決し、日本のプレゼンスを高めながら外貨を稼ぎ、両国経済のWin-Winな関係を実現していく、そんな世界での戦いをご一緒してくれる挑戦者を募集しています。
弊社はまだまだ知名度のない企業です。そのため、まずはぜひ弊社のことを知ってほしいですし、直接お話をさせていただきたいです。
今後、各メンバーの記事やメンバー参加の座談会などを企画しているため、ぜひ継続的にウォッチいただけますと幸いです!
確かに日本にも依然として課題はあります。日本を思うからこそ、人口減少時代、円安時代において日本を出て外貨を稼ぐべく、世界で戦っていきましょう!この新時代、麦わらの一味のように東の海から世界を取りに行く航海中のmovusは新しい仲間(チャレンジャー)の乗船を心からお待ちしています!
こちらの記事は2026年05月15日に公開しており、
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