連載スタートアップを知りたいならここを見よ!FastGrow注目スタートアップ特集──FastGrow Pitchレポート

インキュベイトファンド厳選!
クリーン電力の地産地消、製造業のスキル管理クラウドのスタートアップが登場──FastGrow Pitchレポート

登壇者
寿松木 充
  • インキュベイトファンド株式会社 

新卒でキヤノン株式会社にエンジニアとして入社。 株式会社リクルートキャリアでの経営企画職を経て、スローガン株式会社にてスタートアップ特化のエージェント事業の立ち上げに参画。 セールスマネージャ、営業企画、マーケティング、アライアンスといった広範な業務に従事。 2021年1月よりインキュベイトファンド株式会社へ入社し、タレントネットワークの構築・採用支援を通じた投資先のバリューアップを担当。 千葉大学大学院 情報科学専攻 修了。

西和田 浩平
  • アスエネ株式会社 代表取締役CEO 

慶應義塾大学卒業、総合商社の三井物産にて日本・欧州・中南米の再生可能エネルギーの新規事業開発・投資・M&Aを担当。ブラジル海外赴任中に分散型電源企業出向、ブラジル分散型太陽光小売ベンチャー出資、メキシコ太陽光入札受注、日本太陽光発電ファンド化などを経験。2019年アスエネ株式会社を創業。

「イノベーターの成長を支援し、未来社会を共創する」をミッションに掲げるFastGrowが、「この会社、将来大きなイノベーション興しそうだ!」と注目するスタートアップをお呼びして、毎週木曜朝7時にオンライン開催する「FastGrow Pitch」。

登壇するスタートアップが目指すビジョンや事業内容、創業ストーリー、どんな仲間を探しているのかなどをピッチ形式で語るイベントだ。

今回は、創業期のスタートアップに特化して投資を行うVC・インキュベイトファンドとのコラボレーション企画として、インキュベイトファンドの投資先のみが集まる限定回を開催した。

本記事では、ピッチの模様をダイジェスト形式でお届けする。登壇したのは、式会社、株式会社Skillnoteの2社(登壇順)だ。インキュベイトファンドの寿松木充氏も登壇し、クロストークセッションも開催した。

  • TEXT BY OHATA TOMOKO
  • EDIT BY HARUKA MUKAI
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インキュベイトファンド
資本と人材の両面から事業成長に伴走する

インキュベイトファンドは、創業期のスタートアップに特化し、投資・支援を行う独立系VCだ。現在は、特にDX、パブリックセクターイノベーション、ディープテックの3領域に注力し、投資を行っている。

資本と人材の両面からスタートアップの成長を支援すべく、コミュニティやイベント、HR支援なども実施。資金調達を目指すシード・アーリーステージ起業家向けの合同経営合宿『INCUBATE CAMP』や、半日がかりで事業相談の1on1を実施する『CIRCUIT MEETING』など、複数のコミュニティの場を提供している。他にも、大学生・大学院生を対象とした、VCに関する講義イベントも実施。

日本のスタートアップエコシステムをさらに盛り上げようと、多様な取り組みを展開している。

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アスエネ株式会社
ブロックチェーンで再生エネルギーの「地産地消」を可能にする

アスエネ株式会社

最初に登壇したのは、クリーン電力小売サービス『アスエネ』を運営するアスエネ代表取締役CEOの西和田浩平氏。三井物産にて11年間、再生可能エネルギーの新規事業開発や投資、M&Aに携わった後、2019年にアスエネを創業した。

同社は「次世代によりよい世界を」をミッションに掲げ、CO2ゼロの再生可能エネルギー100%の電力供給に力を入れている。その背景には、日本の菅政権が新たに掲げた2050年に向けたカーボンニュートラルの実現や世界的な気候変動への取り組みなど、大きな潮流があるという。

西和田ESGやSDGsの潮流がある中で、電力業界では、企業が使用電力を100%再エネで賄うことを目指す国際的なイニシアチブ「RE100」が行われています。

主な企業として外資だとAppleやGoogle、Microsoftなど、日本でもSONYなどが主体的に取り組んでいます。特にAppleは自社の工場やオフィスだけでなく、サプライチェーンの企業に対しても再エネ100%のコミットを要請するグリーンサプライチェーンの取組を積極的に進めております。

従来は、主に大企業で求められていましたが、現在は中小企業含めて、取り組みが加速しています。

アスエネは、主に再生可能エネルギー発電所から相対で電気を調達し、既存の送配電網を利用して、法人のお客様に電力を供給する。

利用者は、CO2排出量ゼロの再生可能エネルギーを利用できるだけでなく、約10%のコスト削減も実現できるという。電力の使用量や料金、CO2削減量なども、PCやスマホから一括で管理できる。

さらに、パブリックブロックチェーンを活用した独自のトラッキングシステムを用いて、再生可能エネルギーの「地産地消」にも貢献する。

西和田エネルギーは、その性質上、どこで発電され、どこに供給されたのかを追い、可視化するのが難しかった。

弊社はブロックチェーンを活用した独自のトレーサビリティシステムを使用することで、どの発電所からどこに電力が流れたかを30分ごとにトラッキングできます。その取引データにもとづいて、お客様と発電所をマッチングし、マイページでも表示しております。

また、単なる再生可能エネルギーの供給のみならず、共同プレスリリースの実施など企業PR・IR・HRの支援にも伴走しているという。

電力の小売会社を変更するにあたっては、「停電がおきたり、電気の質が変わるのではないか?」といった質問を受けることも多いのだと西和田氏は語る。しかし、その心配は不要だと強調する。

西和田そもそも電力は、発電事業者から送配電事業者、電力小売会社、顧客へと届けられます。需要と供給を管理し、安定的に供給をする役割を担っているのは、送配電事業者となります。

小売会社が東京電力などの大手電力会社からアスエネに変わっても、自由化されていない規制産業である送配電事業者は変わらないため、電力が不安定になることは一切ありません。

アスエネは、2021年5月時点で、契約数は数百社にのぼる。反響が大きかった事例として、二川工業製作所を紹介した。

西和田二川工業製作所では、兵庫県の自社保有の水上太陽光発電設備からの電力をトラッキングし、同じ兵庫県にある8箇所の工場に供給しています。取り組みは神戸新聞の一面を含む、10社以上のメディアに掲載され、反響も非常に大きかったと聞いております。

2021年4月に3億円のシリーズAの資金調達を終えたばかりの同社。「『次世代によりよい世界を』というミッションに共感いただき、チャレンジ精神や熱意をお持ちの方、経営にたずさわりたい方などを積極的に募集しています。セールス、カスタマーサクセス、エンジニア、デザイナーなどの他、長期インターンも募集中です」と語り、ピッチを締めくくった。

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株式会社Skillnote
製造業で働く人のモチベーションを高める、人材スキル管理クラウド

株式会社Skillnote

続いて登壇したのは『SKILL NOTE』を開発・運営するSkillnoteゼネラルマネージャーの高田 英明氏。

『SKILL NOTE』は、、製造業にフォーカスしたスキル/教育管理のクラウド型システムだ。従来より品質保証の国際規格(ISO9001等)に則り、Excelや紙によって運用されていた製造現場のスキル管理をクラウド化することで、スキル/教育管理業務を効率化。

加えて、本社主導で導入されたHRシステムには載らない現場のスキル/教育データを横串で可視化することで、計画的な技能承継や人材配置の実現を可能にするプロダクトだ。

また、「つくる人が、いきる世界へ」という同社のビジョンに則り、従業員一人ひとりの到達目標を示すキャリアアップシートなどを設定し、一人ひとりのレベルや到達度、目標を管理。モチベーション向上やキャリア支援への取り組みにも活かすことができる。

高田氏は、SKILL NOTEが「一般的なタレントマネジメントシステムと異なり、現場の業務効率化を出発点にしたサービスです」と強調する。

創業者である山川隆史氏がサービスの着想を得たのも現場での経験からだったという。山川氏は、信越化学工業株式会社に入社し、半導体材料の営業を担当した経歴を持つ。

高田山川は、日本の製造業で働く人々が、すごくクリエイティブでイノベーティブな仕事をしているのに、あまり生き生きとしていないことに疑問を感じていたそうです。

一方、彼が営業を担当していたIntelでは、世界中のどの工場を訪れても、生き生きと働いている。さらに、Intelの若手エンジニアが1ヶ月間の研修から返ってきた途端、見違えるような成長を遂げたのを目にしたそうです。

理由をたずねると『”Intel University”というシステマチックなプログラムを受けたおかげで自信がついた』という答えが返ってきたそうです。

それを聞き、山川氏は「成長の実感が仕事の楽しさ、生き生きと働くことにつながっているのでは」と考えたそうだ。日本の製造現場で働く人にも、成長実感を得られるようにするには何が必要になるのか。山川氏が目を向けたのは「業界特有の人材スキル管理の課題」だったと、高田氏は説明する。

高田製造業では、一つの製品不良で人が命を落とす危険性があります。そのため、品質保証を目的とした国際規格が定められているんですね。

規格に準拠するには、現場で作業をしている人が十分なスキルを持っているか、必要な研修を行っているかを管理することが求められます。

これは従業員数が多ければ多いほど大変です。大企業であれば数千人、数万人のスキルや教育状況を紙やエクセルで管理している。現場では、運用管理が煩雑になってミスが多発していたり、現場の実態との間に乖離が発生していたりします。

実際に、山川は「現場で働く人が持っているスキルがわからず、どのような教育を行えばよいかわからない」といった声も聞いていたそうです。そうした状況では、成長を実感できるような機会をつくるのも難しい。そこからスキルを管理するSKILL NOTEの構想を膨らませていったそうです。

現場のニーズを反映したプロダクトは順調に国内で成長を遂げている。今後は、海外展開も見込んでいる。

高田人材スキル管理の市場は、比較的最近生まれたため、大手はまだ参入していません。海外では、ドイツやオランダ、アメリカのフロリダなどで、近しいサービスが出始めているものの、いずれも導入規模数が100社程度と認識しています。

弊社はERP世界最大手のSAP社とパートナーシップを組んでおり、すでに海外からの引き合いが来ている等、海外へ向けた販路を確立できております。

加えて、日本は製造業の現場が強みの国です。日本の製造現場で圧倒的なプロダクトを作れば、世界でも勝負できるのではないかと考えています。

高田氏は「つくる人が、いきる世界へ」というビジョンのもと社会課題の貢献に挑戦しています。全方位で募集していますので、ぜひお声がけください」と参加者に呼びかけた。

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「社会にとって、顧客にとって、より良い」アイデアを、スピード感を持って実装

今回のピッチの後半では、インキュベイトファンドの寿松木充氏も交えて、Skillnoteの高田氏、アスエネの西和田氏が、両社の組織作りについてクロストークを行った。

初めに、寿松木氏が「大手とスタートアップでは、働くうえで、どのような違いがあるのか」という問いを投げかけた。

西和田大企業は、挑戦できる範囲は広いものの、新規事業に取り組むまでには検証、稟議プロセスなど一定の時間がかる。一方、スタートアップであれば投資家との合意さえ取れれば、スピード感をもっていち早く取りかかることができる。

私自身、大企業で働いていたときは勿論社会変革・貢献のことも考えていましたが、何か投資案件を実行する上でまずは社内をいかに説得できるか、中長期の戦略をどう描くか、という視点をもっていました。

一方、起業してからは「会社としてこういうアクションを取ったほうが、社会がよりよい形になるのではないか、お客さまにとってメリットがあるのではないか」などのアイデアを非常に速いスピード感をもってアクションに落としこめるようになりました。

アスエネのメンバーにも、大企業から転職して、オーナーシップをもって非常に活躍している人が多くいます。

高田私は2020年10月にSkillnoteに入社したばかりですが、やはりスピード感は異なると感じます。前職のコンサルでは、3ヶ月かけて1つの大きな論点を解いていましたが、現在は常に10個程度の論点があり、同時並行で考えていきます。

もちろん、一つのことを突き詰める作業には、面白さや楽しさがありますが、日々変化し、同時並行で論点を解くのが好きな方にはスタートアップが向いているように感じます。

現在、アスエネは創業メンバーが現場で手を動かしている創業フェーズ、Skillnoteは徐々に組織化を図るグロースフェーズにある。その違いも踏まえて「両社の採用の考え方」について、寿松木氏がたずねる。

西和田組織のカルチャーフィットや社内全体のミッション・バリューの浸透の重要性を痛感して、現在注力して取組を進めています。今は、明確な指針として約10個のバリューを定めています。採用では、ここに共感できるかを最も重要視して確認しています。

高田Skillnoteは、立ち上げ期とは異なり「この事業課題を解決すれば、成長できる」といったことが、ある程度見えていきている段階です。採用においては「この人はこの課題を解決できそうか」といった点を、より重視するようになってきたと感じます。

アスエネの西和田氏は、高田氏に「組織の人数が増えたことによる組織課題の変化」についてたずねた。

高田人数が少ないときは、自然と誰かから声が上がり、事業や組織の改善に向けた動きが始まることが多々ありました。ただ、現在は30人程度の組織になっており、仕組みを整える必要が出てきたと感じています。

例えば、Skillnoteでは「“すみつく会議”(Skillnoteの未来を作る会)」と題して部門横断のミーティングを開催したり、朝会での自己紹介コンテンツや雑談を行ったりと、新たな動きにつながるコミュニケーション機会を設定しています。

ピッチの最後、西和田氏は「将来的には、海外事業にもチャレンジしていくため、多様性のある主体的な組織をつくりたい」と、高田氏は「『つくる人がいきる世界へ』というビジョンに沿って、自分たち自身も生き生きと働けているか、成長・教育機会が十分あるか意識していきたい」と意気込みを共有した。

記念すべき第43回目となったこの日は、クリーン電力や製造業の人材スキル管理など、独自領域で事業を伸ばす企業が登壇した。

今後も毎週木曜朝7時の「FastGrow Pitch」では、注目スタートアップが登壇し、自ら事業や組織について語る機会をお届けしていく。ぜひチェックしてほしい。

こちらの記事は2021年06月18日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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執筆

大畑 朋子

1999年、神奈川県出身。2020年11月よりinquireに所属し、編集アシスタント業務を担当。株式会社INFINITY AGENTSにて、SNSマーケティングを行う。関心はビジネス、キャリアなど。

編集

向 晴香

inquire所属の編集者・ライター。関心領域はメディアビジネスとジャーナリズム。ソフトウェアの翻訳アルバイトを経て、テクノロジーやソーシャルビジネスに関するメディアに携わる。教育系ベンチャーでオウンドメディア施策を担当した後、独立。趣味はTBSラジオとハロプロ

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