DEEPCORE厳選!AI・機械学習に特化したスタートアップ3社が登場──FastGrow Pitchレポート
「イノベーターの成長を支援し、未来社会を共創する」をミッションに掲げるFastGrowが、「この会社、将来大きなイノベーションを興しそうだ!」と注目するスタートアップをお呼びして、毎週木曜朝7時にオンライン開催する「FastGrow Pitch」。
登壇するスタートアップが目指すビジョンや事業内容、創業ストーリー、どんな仲間を探しているのかなどをピッチ形式で語るイベントだ。
本記事では、ピッチの模様をダイジェスト形式でお届けする。登壇したのは、株式会社SUPWAT、DataLabs株式会社、株式会社ChillStackの3社(登壇順)だ。
- TEXT BY OHATA TOMOKO
- EDIT BY RYOTARO WASHIO
DEEPCORE
技術開発と産業課題への応用を支援する。AI特化型VC
DEEPCOREは、シード及びアーリーステージのAI領域のスタートアップに特化し、投資するベンチャーキャピタルだ。なかでもディープラーニングやその周辺領域の技術をビジネスに応用する企業への投資に注力している。
また、AIテクノロジードリブンなコミュニティの拠点『KERNEL HONGO』及びオンラインで、技術者・研究者を産業界や研究機関とつなげ、世界で戦う起業家を輩出することを目的としたコミュニティを運営。コミュニティのメンバーは、作業スペースやAIコンピューティング・プラットフォームを利用したり、輪読会・勉強会などイベントや、企業・研究機関との共同実証実験に参加できたりと、互いに切磋琢磨できる環境となっている。
ディープラーニングなどの技術のビジネスへの応用や社会実装をサポートする存在として、期待されている。
SUPWAT
製造業の技術開発を効率化するプラットフォーム
最初に登壇したのは、製造業向け機械学習ツール『WALL』を開発・運営している、SUPWAT代表取締役CEOの横山卓矢氏。
始めに、横山氏は「日本の製造業における課題」について共有した。
横山主要国の研究開発費への投資額を比較すると、アメリカや中国は年々増加している一方で、日本は横ばい傾向です。また、OECD加盟国の労働生産性を見ると、主要国と比較して日本は低水準にあります。
さらに、研究開発の現場では実験と解析に関する業務が大半を占めており、新たな技術開発や今後に向けた研究の構想を練る時間がほとんど取れていません。我々は製造業の研究開発領域を対象とし、実験と解析業務の効率化をサポートするメカニカル・インファマティクスを手掛けています。
メカニカル・インフォマティクスは、インフォマティクスをベースにしたアルゴリズム・機械学習モデルを同社が独自に開発。この技術を導入することで、技術開発プロセスが大幅に短縮されると説明する。
横山これまでの機械製造領域における技術開発は、技術者の勘や経験を元に機械を設計し、シミュレーションを繰り返すしかありませんでした。そのため、望ましい結果を得るためには、かなりの時間を要していました。
メカニカル・インフォマティクスを導入すれば、そういった状況を変えられます。機械学習モデルにより、過去のデータから最適な設計パラメーターを事前に予測。ピンポイントで実験・試作できるため、開発プロセスを短縮できるんです。
メカニカル・インフォマティクスを活用したプロダクトとして、同社が展開しているのが『WALL』だ。製造業の業務プロセスの標準化を実現するプロダクトによって、約55%以上もの工数削減が期待できるという。
また、2021年8月には国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、NEDO)が公募した研究開発型スタートアップ支援事業において、SUPWATの提案が採択された。
横山NEDOは水素社会の実現に向けて、燃料電池の普及を推進しています。水素燃料電池車は、水素を貯めるための高圧水素容器が必要であり、その開発プロセスを最適化することが課題になっています。我々はメカニカル・インフォマティクスを活用し、その課題解決をサポートしています。
「優秀な人材を募集し、よりユーザーに寄り添ったプロダクトを展開していきたいです」と語り、ピッチを締めくくった。
採用情報
DataLabs
点群データから三次元モデルを自動生成し、シミュレーション機能も搭載する、SaaSプラットフォーム
続いて登壇したのは、DataLabs代表取締役の田尻大介氏。同社が現在ターゲットとしているのは、建設業界だ。三次元データの取得からバーチャル空間の構築、各種環境のシミュレーションまでを一気通貫でサポートするプラットフォームを提供している。
田尻氏は建設業界の課題について、こう語った。
田尻国土交通省は2023年度からすべての国発注の公共工事を皮切りに、設計から施工、維持管理等の全てのサイクルに、三次元モデルを導入することを各社に求めています。しかし、現状では三次元モデルの作成・納品に向けたソフトウェアすら導入できていない企業が多い。なぜなら、導入しなければならないソフトウェアが非常に高額であり、ソフトウェアを扱う専門人手も足りていないからです。
場合によっては、今後は案件に対応できなくなり、会社の存続が危ぶまれるかもしれません。我々は、そういった企業に対してSaaS型のサービスにより初期投資を抑え、誰でも初見で使えるUI/UXを意識したプラットフォームを提供し、ICTの活用で建設業界における生産性向上に貢献したいと考えています。
同社が提供しているプラットフォームの機能は大きく2つ。「自動で点群データから三次元モデルが構築できる機能」「様々な環境のシミュレーション機能」だ。様々な機材を用いて、「点群データ(コンピューターで再現される、三次元データのこと)の取得」にもオンデマンドで対応している。
田尻屋内外で地表や土木構造物を計測し、我々のプラットフォームにアップロードいただくと、点群データから三次元モデルが自動作成されます。これらの作業はクラウド上で実行できるため、専用のパソコンを購入したり、高度な専門知識を有する人材を確保したりする必要はありません。
また、パラメトリックモデリングを施すことで生成される3Dモデルの寸法精度を100%にすることができ、独自アルゴリズムで水平位置も±5㎜程度の精度を達成することもできています。
さらに、三次元モデルを活用し、様々な物理現象をシミュレーションすることもできる。
田尻シミュレーション機能を活用することで、専門知識を持たないクライアントに対して施工後の影響などを可視化しながら説明できるようになります。例えば、メーカ様の営業の方が自社製品の技術説明に空調シミュレーションを客先で行う営業ツールにしたり、損保会社様がこれまで見えなかった災害リスクを見える化し、リスクコンサルをしたり、保険金等を最適化するなどのユースケースを作って行っております。
今後は、これまでシミュレーションを活用してこなかった企業に向けて展開し、商談の受注率を上げる等、定量的な成果創出に貢献したいと考えています。
2022年2月に1.3億円の資金調達を終えたばかりの同社。「研究開発の加速に向けて、採用を強化しています。副業、インターンなども募集しているので、ぜひお声がけください」と参加者に呼びかけた。
採用情報
ChillStack
AIでセキュリティ技術を進化させる
最後に登壇したのは、不正検知プラットフォーム「Stena」 を開発している、ChillStack代表取締役の伊東道明氏。
伊東氏は、大学時代に「AI×セキュリティ領域」の研究開発に従事。そこで得た知見を活かし、大学院在学中にChillStackを創業した。
伊東既存のサイバーセキュリティ技術を、AIによって進化させています。さらに、AI自身をサイバー攻撃から守る技術の研究開発にも注力。技術力は世界でもトップレベルにあると自負しており、この強みを活かして、社会の安心を支える基盤を構築していきたいと考えています。
「Stena」は、時系列かつ多次元データに強い不正検知モデルを蓄積し、不正検知基盤を構築。同社はこのプラットフォームをベースに、業界や職種ごとの課題を解決するプロダクトを展開している。
その一つが、オンラインゲームの不正ユーザーを検知する『Stena Game』だ。
伊東ゲーム会社にとって「不正ユーザーを監視するためのコストをいかに削減するか」は、大きな課題の一つ。しかしながら、既存の不正対策ソフトは導入時にモジュールの組み込みが必要だったり、さまざまなプラットフォームに対応するためのカスタマイズが必要で、簡単に導入できるわけではありません。
『Stena Game』は、AIによって不正行為を行うユーザーを自動で発見します。弊社のサーバーに蓄積されたログから、チートをしているか、不正をしているかを判断する仕組みになっているので、導入のために人手を割く必要もありません。
1年間で約4万6,000件以上の不正ユーザーを検知した導入企業もあるそうだ。また、不正監視の運用工数を大幅に削減できたといった声も挙がっているという。
伊東氏は「Stena」を活用したもう一つのサービスとして、経費申請の規定違反や使いすぎを検知する『Stena Expense』も紹介した。
伊東上長や経理部門の方が手作業で経費申請の内容を確認するのがこれまでのやり方でした。しかし、人の手による作業では不正を防ぎ切ることはできませんし、かなりの工数がかかってしまっている。『Stena Expense』はこの業務を自動化することで効率良く、正確に不正を検知します。その効果は、業務の効率化だけではありません。不正を徹底的に排除することで、ガバナンス強化にもつながるんです。
実際に導入された従業員1万名規模の会社では、不正の疑いがある申請を約2,000万件以上も検知。領収書の電子化に伴って『Stena Expense』を導入している企業が増えています。
今後はこれまでに培った技術とデータを活かし、様々な業界を対象とするサービスを展開していくという。「エンジニアを中心に、カスタマーサクセスやセールスなどを募集しています。ご興味ある方はぜひお話しましょう」と語り、ピッチを締めくくった。
採用情報
今後も毎週木曜朝7時の「FastGrow Pitch」では、注目スタートアップが登壇し、自ら事業や組織について語る機会をお届けしていく。ぜひチェックしてほしい。
こちらの記事は2022年05月12日に公開しており、
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執筆
大畑 朋子
1999年、神奈川県出身。2020年11月よりinquireに所属し、編集アシスタント業務を担当。株式会社INFINITY AGENTSにて、SNSマーケティングを行う。関心はビジネス、キャリアなど。
編集
鷲尾 諒太郎
1990年生、富山県出身。早稲田大学文化構想学部卒。新卒で株式会社リクルートジョブズに入社し、新卒採用などを担当。株式会社Loco Partnersを経て、フリーランスとして独立。複数の企業の採用支援などを行いながら、ライター・編集者としても活動。興味範囲は音楽や映画などのカルチャーや思想・哲学など。趣味ははしご酒と銭湯巡り。
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