連載株式会社出前館

デリバリーを販路から「事業構造の変革手法」に──ペッパーフードサービス一瀬氏の「未来への経営」と、「デリバリーの日常化」を目指す出前館矢野氏の協働

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インタビュイー
一瀬 健作
  • 株式会社ペッパーフードサービス 代表取締役社長CEO 

1972年生まれ。静岡地盤でハンバーグ店を展開するさわやか株式会社を経て、1999年ペッパーフードサービス入社。ペッパーランチ運営部長やCFO、副社長などを歴任し、2022年8月から社長

矢野 哲
  • 株式会社出前館 代表取締役社長 

外資系証券会社の投資銀行業務に12年間従事後、2016年LINE株式会社に入社。日本初の日米同時上場のIPO責任者を務め、M&A、ベンチャー投資、IR等のコーポレートファイナンス業務に携わり、出前館への出資も担当。LINEとヤフーの事業統合のM&A責任者を務めた後、2021年出前館のCFOに就任し、管理体制・統制強化、ビジネスモデルの転換、資金調達などを実行する。2024年9月代表取締役(CEO)に就任。

「外食産業は労働集約的でレガシーな市場」「フードデリバリー市場はすでに成熟した」──。もしそう考えているならば、それは大きな誤認だ。コロナ禍を経て人々の生活様式が多様化し、新規出店に伴う不動産価格や建築資材の高騰、慢性的な人材不足が外食産業の重い足かせとなる中、日本のデリバリー利用率は未だ24%に留まっており、実に「約7割が未利用(2023年の民間調査より)」という広大な未開拓フロンティアが広がっているのが実態だ。

そんな中、「フードデリバリー」を単なる「一つの販売手段」ではなく、「事業構造の変革手法」と位置づけることで、新たな急成長を生み出している企業がある。

いきなり!ステーキ』などを展開する株式会社ペッパーフードサービス(以下、ペッパーフードサービス)だ。追加の設備投資は実質ゼロ。にもかかわらず、『お店と同じ価格』のテスト導入店舗で前年同期比で最大約400%の売上成長を記録し、深夜帯だけで夕食ピーク時と同額の売上を純増させる企業がある――。同社の取り組みにおいて、デリバリーは、もはや単なる販路拡大ではない。既存アセットの限界を突破し、Amazon.comがECインフラとなっているのと同じような『デリバリーの日常化』を実現するための、外食産業の事業構造変革そのものなのだ。

本記事では、同社代表取締役社長CEOの一瀬健作氏と、「地域の人々の幸せをつなぐライフインフラ」をビジョンに掲げる株式会社出前館(以下、出前館)代表取締役社長の矢野哲氏による特別対談をお届けする。

外食産業は、いかにして従来の成長戦略や既存アセットの限界を突破し、地道な仮説検証の末に新たな利益を生み出すのか。両者が築き上げようとしている、真の『三方良し』のエコシステムと、ヒリつくような事業開発の最前線に迫る。

  • PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
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デリバリーは単なる販路ではない。外食産業の事業構造の変革ロードマップ

国内外の不透明な情勢の影響で、店舗運営費用や人件費の高騰、さらには人手不足など、経営に影響を与える社会変化も多い外食産業。特に、「店舗を増やして商圏を広げる」という従来の成功方程式は、限界を迎えつつあるという指摘も少なくない。

しかし、ペッパーフードサービスはそんな中、フードデリバリーを「事業構造の変革手法」として徹底活用し、新たな成長への道を歩み始めている。

わかりやすいのが、新規客層の獲得だ。ある時期の実績で、フードデリバリーでの注文の80%が、店舗から1km以上離れた場所に住むユーザーからのものになった。一般的に外食事業では商圏が1km圏内とされており、イートインでは期待しにくい客層である。デリバリーによってその商圏が大きく広がったのだ。

また、イートインでは踏み込みにくい「深夜の営業」を、敢えてフードデリバリーでテスト的に実施したという。すると、ある時期では、深夜帯(21時~25時)の注文数が、一般的なディナータイム(17時~21時)と同程度にまで膨らんだ。

そして最大の壁であった「デリバリーは割高」という課題も、克服の兆しが見える。『お店価格で出前館』という一大施策によって、前年同月比400%もの売上成長を実現している。

今や、同社の年間売上高の1割ほどを稼ぐ、一つの主力事業へと変貌したフードデリバリー。今後1年で、200%の売上成長を目指している。

そんな同社の代表・一瀬氏の視座は、目先のシェア争いにはない。見据えるのは、フードデリバリーが「日常」として一般化する時代に、その主役として成長する企業であり続けることだ。そんな未来に向け、出前館とタッグを組んでの取り組みを進めてきた。

本記事では、ペッパーフードサービスと出前館の両社が、いかにして「デリバリーの日常化による、新たな挑戦と、社会変革」を進めていこうとしているのか、その全貌(ロードマップ)を解き明かしていく。サマリーとして以下のように整理した。

デリバリーによる “新たな成果・挑戦”
PHASE 01
イートインとは
異なる客層
1km圏外の新規客
80%
ほか、深夜客も
増加
PHASE 02
新たな
エンゲージメント
高評価レビューが
多数
悪天候時等の
注文獲得
PHASE 03
資産効率の
最大化
追加の固定費が
ほぼ無し
人件費・設備投資費を
抑えた新規事業
フードデリバリー時代の「牽引役」へ
ペッパーフードサービスの目標
全社売上のデリバリー比率
約1割
次年度成長目標
200%

取材内容等を基にFastGrowにて作成

では、ここから具体的に、時系列に沿ってその挑戦を追っていこう。

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設備投資「実質ゼロ」の衝撃。既存アセットを使い倒し、商圏と客層の壁を越える

一瀬フードデリバリーは、私たちにとって「設備投資は実質ゼロ」での新規事業ができるという、魅力的な挑戦だったんです。

従来の常識では、外食産業における事業拡大といえば「新規出店」。だが、東京・大阪をはじめとした都心部では不動産価格(物件家賃)の上昇が止まらない。また、建築資材や厨房等の設備機器を調達するコストにも値上げは波及している。

ペッパーフードサービスもまた、この重い課題に直面していた。数年前と比較し、現在では1店舗あたりにかかる設備投資費用が約1.5倍にまで膨れ上がっているという。インフレによる人件費の増加幅も決して小さくはない。

そうした中で、企業の非連続な成長と、外食産業としての「地域社会を豊かにする」という理念を両立させるためのフェーズにおいて、一瀬氏は限られた資金でどこに力を入れるべきかを徹底的に考え抜いてきた。

実店舗の集客には「席数」という物理的な上限があり、アイドルタイムに無理な集客施策を打つのは事実上不可能に近い。この見えない天井を突破する手段として一瀬氏が着目したのが、フードデリバリー事業だったのだ。

【旧来】新規出店(ハイリスク)
巨額の借入(内装・厨房・保証金)
毎月の重い家賃・新規スタッフ雇用
莫大な売上がないと赤字
【革新】デリバリー(低リスク)
初期投資(今の店を使う) ¥0
追加コスト(スキマで作る) ほぼ¥0
売れた分だけ、ほぼ純増

取材内容等を基にFastGrowにて作成

一瀬フードデリバリーを新規事業として始める!といっても、まずは既存店舗で営業時間内の配達から始めたわけですから、家賃や設備投資はほとんど増えません。追加で発生する人件費や水道光熱費も、既存オペレーションの範囲内で一定程度吸収できるケースがあります。場合によっては、むしろ店内が空いている時間帯の調理工数や、時間を持て余している人員のリソースを、そのまま活用できる。

これはつまり、追加の設備投資なしで、お店の席数を外へと拡張していることと同じなのです。

そうして仮説検証を進める中で、フードデリバリーだけに特化した店舗でも十分に採算がとれるであろうことがわかってきたので、さらに踏み込んだわけです。しかもそこでは、さまざまなテストマーケティングもしていける。

経営者として非常にワクワクする展開になっています。

出前館のデータによると最近では、デリバリー注文の80%が「店舗から半径1km以上離れた場所に住むユーザーから」になっているという。すぐに来店できるわけではない人たちが、新たな客となっているのだ。しかも、性別や年齢といった点でも、イートイン商圏とは異なる客層が獲得できているという。

「店舗に一人では入りづらい」と感じていた女性層など、これまで取りこぼしていた新たな層の開拓にも成功し始めているのである。

矢野労働力不足やコスト高に悩まない飲食店は、今やありません。デリバリーの活用は、小さな追加投資で既存店舗を有効活用する手段でもあるんです。

外食産業における経営戦略として、ペッパーフードサービス様の取り組みは非常に先進的であり、時代を象徴する新たな挑戦だと感じています。

ブランドや店舗網といった既存アセットの強みを冷静に捉え直し、投資が事実上ゼロともいえるフードデリバリー新事業で商圏を押し広げる。これが、ペッパーフードサービスの新規戦略の起点であり、今後の成長シナリオを占う上で見逃せないテーマになっているのだ。

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ディナータイムと深夜で、同等のニーズが?テストマーケで掴んだ新たな成長路線

既存の設備と人員を活用し、物理的な「距離と客層」の制約を突破した同社が次に挑んだのが、実店舗の「時間」という限界だ。

一瀬2025年11月に初めて、『いきなり!ステーキ』の宅配専門の「いきなり!ステーキ宅配専門笹塚店」を立ち上げました。客席のない、いわゆる「ゴーストキッチン」という業態です。

従来であれば「広くて目立つ場所」に立地すべきというのがこの業界の常識です。しかし、この考えは一切不要になります。

一般的に、外食産業における夕食のピークタイムは19時~20時ごろとされている。しかし、実店舗の営業時間に縛られず、スタッフが対応できる時間帯だけアプリ上で営業状態になっていればよいという利便性を持つのが、この宅配専門店だ。実際に、「いきなり!ステーキ宅配専門笹塚店」においてはデリバリーのラストオーダーを深夜25時まで延長するテストマーケティングを断行。その結果、常識を覆すデータが出てきたのだ。

一瀬私たちのお店のラストオーダーは、23時がほとんどです。それを東京・宅配専門笹塚店でテストとして、深夜25時までラストオーダー時刻を後ろへ延ばしてみました。

すると、しっかり深夜帯にも注文が来るのです。そのお店の夜の売上構成が、夕方以降の17時~21時までと、21時~25時とで、見事に約50%ずつに分かれました。

夜遅い時間帯に美味しいものを食べたいと考えて、ステーキを注文してくださる、そんな方がこんなに多くいるんだということを発見できた。驚きましたし、うれしかったですね。深夜1時のギリギリまでオーダーが入ってくるんです。

「仕事から帰ってきて美味しいものを食べたいが、もう外食に出たり自炊したりする気力はない」。そうした現代人特有の深いペインを捉え、新たなマーケットがあることを実証したのだ。

プラットフォームを提供する出前館の矢野氏も、この物理的・時間的な制約を打破することこそが、デリバリーの本質的な価値の一つだと語る。

矢野雨だからお店に行けないとか、お店まで遠いから行けないとか、あるいは小さい子を見ているから落ち着いて食べられないとか。ご家庭によって、さまざまな事情があります。それでも「たまにはステーキを食べたい」といった欲求は生じるもの。

そんな時に「そうだ、デリバリーがある!」と、深夜でも思い浮かべば、食べることができる。そんな価値を、私たちは生み出そうとしているんです。

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デリバリー普及最大の壁「価格」を壊す。三方良しのエコシステムを成立させる緻密なロジック

空間と時間の壁を越え、最後に立ちはだかるのが、デリバリー普及の最大の壁である「価格」というキャズムだ。配達コストが上乗せされる構造上、店頭価格よりもデリバリー価格が割高になるのは業界の常識であり、これが冒頭でも示した「約7割の消費者がデリバリーを利用しない」ことの要因だと言えよう。また別の調査では、デリバリー利用経験者のうち81%が「実店舗よりも価格が高い」という不満を抱えていることも明確に示された(いずれも以下の出前館IR資料を参照)。

出典:株式会社出前館『2026年8月期 第1四半期 決算説明会資料

『お店価格で出前館』という大型施策は、こうした常識を打ち破る一大施策として始まった。ユーザーの利用障壁を劇的に下げる狙いである。

だが、出前館からのこの提案を社内で聞いた一瀬氏は、当初、はっきりと疑義を唱えたという。

一瀬社内のメンバーからは「これは売れる!広がる!」という声もあれば、「採算が合わなくなる、やるべきではない」という声もあり、意見が分かれていました。

そこでまず、私は問いかけました。「もし、この施策をやって、フードデリバリーという市場自体がほとんど広がらなかったらどうする?」と。

そうなってしまうと、今と同じ数のパイを取り合う安売り競争になるだけ。私たちのステーキが、より多くの方々に届くようになるわけではない。利益率が削られるだけで、売上が大きく伸びる見通しが立たないかもしれない。でも、逆に、大きく伸びるチャンスなのだとしたら、目先の採算イメージだけで手を引くべきではない。

これは、私たちが今、リスクを取ってでも挑戦すべきことなのか?しっかり考えた上で取り組むべきことだと感じました。

一過性の盛り上がりでは意味がない。日本においてまだ大衆化したとは言えないフードデリバリーを、一気に広げていくための大きな取り組みだ──と、初めからはっきり捉えていた一瀬氏。だからこそ、すでに『いきなり!ステーキ』のファンになってくれている層のほかにも広く魅力が伝わる取り組みにしなければならない……と、長期的な目線での戦略検討をいち早く始めていたのだ。

一瀬氏が共感する、出前館の描く「三方良し」の図(出典:株式会社出前館・採用ページ

一瀬私たちの売上が増えるだけの施策では、意味がないんです。ステーキを安く食べられるという点でお客様がうれしいのは当然のこととして叶えつつ、同時に、デリバリーの実務を担う配達クルーを含めた出前館さんのプラットフォーム、そして弊社の従業員、このすべてがメリットを享受する仕組みになっていることが不可欠です。

「三方良し」の考え方で、すべてのステークホルダーにとって価値が生まれるように設計する。そうすれば、結果として、短期的な盛り上がりにとどまらず、フードデリバリーの利用者層が広がり、市場自体が大きくなる。その中で我々はブランドや利益を増やしていく取り組みにさらに精を出していく。そういうサイクルを生み出そうとしなければなりません。

そう考えていたところ、出前館さんもまさに同じ思想をお持ちだったので、「これならいける」と感じました。

矢野ユーザーの本音は、当然「同じ味を、同じ価格で食べたい」です。加盟店(飲食店)の皆様もこのことは十分に理解しています。ですが、現場起点ではどうしても「人員・工数や、容器代のデリバリーにかかるコスト分は、上乗せされるべき」という思考になってしまいます。

そうではなく、一瀬社長がおっしゃるように「市場を拡大させる大きなムーブメント」として考えることで、リスクを取った投資としてご一緒できる可能性が生まれるんです。

旗振り役というとおこがましいですが、一瀬社長の共感をいただけたおかげで、ご提案から大きな取り組みを実現することができました。

もちろん、博打的な取り組みとして始まったわけではなく、事業運営として当然のリスクマネジメントもあっての話だ。そもそも出前館は最初のトライアルとして、2025年9月に名古屋市・神戸市などの5都市約250店舗で『お店価格で出前館』を実施(こちらのニュースリリースを参照)。その際のデータも基にした緻密なシミュレーションから、ペッパーフードサービスとして得られる将来の利益の試算を重ねたうえでの経営判断でもあった。

ペッパーフードサービスが参加したのは、2025年11月から東京都内3区(港区・新宿区・渋谷区)の多ジャンル約760店舗で一斉実施された『お店価格で出前館』という取り組みだ(こちらのニュースリリースを参照)。

『いきなり!ステーキ』としてもエリアを絞ったいくつかの店舗に限定したテストマーケティングとして始めたところ、その結果としての数字は凄まじいものだったと、一瀬氏は笑顔で振り返る。

一瀬まずトライアルとしての結果、前年同月比で300~400%の売上成長という、驚きの数字が出ました。

以前は割高だと感じて敬遠していた層が、「お店と同じ価格ならば」と、注文してくれた。そう分析しています。

その後、成果と共に施策は拡大。2026年4月1日時点で、『お店価格で出前館』の対象店舗はペッパーフードサービス運営店以外も含めると全国15,000店舗以上に増加。これらの店舗では、デリバリー注文数が『お店価格』への参加前後で平均約2.9倍に大きく増えているという(こちらのニュースリリースを参照)。

出典:株式会社ペッパーフードサービス『2026年12月期第1四半期 決算説明資料

そして、一瀬氏は「三方良し」を考える中で、自社の在り方に改めて立ち戻るきっかけも得たと語る。

一瀬この『お店価格で出前館』という施策は、そもそも『いきなり!ステーキ』の原点と同じ考え方になっていたということに、ある時、気づいたんです。

前年同月比で最大約400%という成長。一瀬氏はこの圧倒的な数字の中に、かつて『いきなり!ステーキ』銀座1号店をオープンした際の熱狂との強烈なシンクロを見出していた。

一瀬銀座で1号店をオープンした当時、一般的にステーキとは3,000~4,000円くらいはするものでしたが、敢えて約半額の価格で提供し、話題を呼びました。

当時のステーキ店の競合は、平均90分ほどで客席を回転させ、ビールやワインなどのアルコールを飲んでもらうことで利益を生み出すモデルがほとんどでした。それに対し、私たちは原価率70%をかけて、残りの30%の粗利で稼ぐモデルをつくったんです。

ビールやワインはほとんど売れなかったけれど、1時間の回転率が3回転。つまり20分で1人のお客様が帰るという圧倒的な回転率を生み出すことができました。

これは、「ワンコインでいっぱい売りますよ」という単純なボリュームビジネスとは異なります。ステーキをワンコインで出してしまうと、安すぎるか、小さすぎるか。そこで、ステーキ300グラム千数百円という、お客様が満足できるサイズで、回転率の確保によって利益がきちんと出る、絶妙なラインでの販売戦略で勝負したんです。

お客様の満足と、店舗の持続性を、しっかり両立しようとした。

当時の工夫と似た構造を、今、デリバリーという新規事業領域で、出前館さんとの取り組みで感じています。だから我々も本気で取り組みやすいというわけです。デリバリーには、私たちの想像を超える未来があると信じていますし、出前館さんとは、その未来をユーザーと共に切り拓くための、最も頼れるパートナーとして、今後も様々な挑戦をご一緒していきたいですね。

ただしもちろん、市場の流れには変化がつきものだ。「この施策をいつまで続けるのか」「変えるべき部分をいつ、どう、変えるのか」という点でも、一瀬氏はすでに次の一手を打ち始めている。

一瀬すでに次の勝負は始まっています。ただ単に商品をお店と同じ価格でお渡ししているだけではなく、「ここから、どう選ばれ続けるか」という視点がより重要になるフェーズです。

具体的には、「お店と同じ価格」ということ以外の価値を、私たち自身の手で多くつくっていかなければならない。

デリバリー専用の新メニューや、関連する新サービス。あるいはもっと前例のない何か。社内で募って検討を進めています。

いわば、値下げによるブーストを、商品力や熱量によってリピートへと転換していく。まさに企業の力が真に試されるフェーズへと進んでいるわけだ。

矢野『お店価格で出前館』は、新たな始まりなんです。加盟店の皆様がずっと抱いている、「ユーザーの皆様に『美味しい味を届けたい』という想い」を、デリバリーという手段で新たに実現する。この構想が、ようやく現場で回り始めたところ。

各店舗がさらにこれからしのぎを削り、さまざまな企業努力を見せていく。外食産業のさらなるアップデートが進んでいくところなのではないでしょうか。

既にその一助になれたかもしれないという点で非常にうれしく思いますが、我々プラットフォーマーにとっても、この広がり始めた市場を維持し、さらに広げていけるか、正念場でもあります。

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「デリバリーの日常化」は社会課題の解決策。両社が語る、未来への期待

ペッパーフードサービスの挑戦を、「空間」「時間」「価格」の3つの観点から整理してきた。しかし、この店舗側の泥臭い努力を最終的な「顧客体験」へと昇華させるためには、商品を確実に届けるラストワンマイルの質が不可欠となる。

数あるデリバリープラットフォームの中で、なぜペッパーフードサービスは出前館を強力なパートナーとして選んだのか。一瀬氏は、自身が体験したエピソードを交え、その質の違いを語る。

一瀬私はペッパーフードサービス社内でも一番、ユーザーとしてフードデリバリーを使っているんじゃないかと思っています。それくらい、個人的にもフードデリバリーというサービスが好きなんです。

そんな一人のユーザーの目線からありがたいのが、配達クルーさんたちの丁寧さです。

矢野お客様から見れば、配達員の方とお店は一体なんです。『いきなり!ステーキ』をデリバリーで頼んで、配達に問題があったり、あるいは商品が崩れていたりなどしたら、クレームは店舗に届いてしまう。

だから、絶対に手を抜いてはいけない部分だと考え、取り組んでいます。

一瀬出前館さんは配達品質に対する安心感が高いと感じています。加えて、サービス上で現れるクオリティが明確に違うと感じています。この配達品質の高さこそが、私たちのブランド価値を守り、さらに高めてくれると信じています。だからこそ、デリバリーを経営戦略の主軸に据え、出前館さんと共に、ユーザーへの価値提供を追求し、未来を切り拓いていきたい、そう強く期待しています。

プラットフォームの質は、加盟店のブランド価値に直結する。この生々しい事業課題を共有できるパートナーシップが成り立っていることも、両者の関係を盤石なものにし、これからの発展を予感させる大きな要素と言えるかもしれない。

矢野日本では人口減少に伴い、働き手が少なくなっていく。その中で、飲食店を経営する立場では、デリバリーサービスがどれだけ一般化していくかが今後の戦略に大きく影響してくるのは間違いない。

その中で一瀬社長は、今後の一般化を見据え、テストマーケティングを含めさまざまな挑戦をし始めている。私が言うとポジショントークにはなりますが、まさに「先見の明」での経営だと感じ、私も一人の社長として大きな刺激を受けています。

事実、ペッパーフードサービスにおけるデリバリーは、もはや実店舗のおまけではない。 同社の中期経営計画に記された2025年度実績の全社売上約145億円のうち、すでにデリバリー事業が約1割を占める規模にまで拡大している。

一瀬今、売上高の9対1ぐらいの比率で、デリバリーが1割を超えてくる勢いで伸びています。この数字を、ここから1年で今の2倍くらいまでには成長させたいという意気で取り組んでいるんです。

私たちの会社では、いきなり!ステーキの部門とは別に、デリバリーを新規事業部として独立させています。もはや新規ではなく、確固たる主力事業です。

これからは新規出店に向けた物件開発の際にも、必ずそのエリアのデリバリー需要の調査を必須要件に組み込んでいきます。

全社的な経営戦略の根幹へとドラスティックに組み込まれたデリバリー事業。一瀬氏は、外食産業が果たすべき新たな役割を、かつて小売業界に起きたパラダイムシフトと重ね合わせている。

一瀬デリバリー業界の未来は、Amazonさんや楽天さんといった、自宅に通販で物を持ってきてくれる仕組みと同じように、大きく、かつ、今の想像を超えるかたちで発展していくと考えています。

その時、私たちがどれだけ素晴らしい価値をユーザーの皆様にお届けできるようになっているか。もっと先を読んで、全従業員で頑張らなければと思っているところです。

矢野我々プラットフォーマーにとっても、この広がり始めた市場を維持し、さらに広げていけるか、正念場でもあります 。加盟店様の「美味しい味を届けたい」という想いを、デリバリーという手段で新たに実現し、加盟店様が将来性を信じてくださるこの市場を、共に切り拓いていく。そのための頼れるパートナーとして、我々は一丸となって挑戦し、全従業員で頑張らなければならない。そう強く感じています。

外食産業は決して、変革の難しい市場ではない。泥臭い現場の検証から深夜需要や非同期の機動性といった一次情報を引き出し、新たな「食のインフラ」をつくり出し、社会課題の解決策へと昇華させる最前線が、ここにはある。

こちらの記事は2026年05月28日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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藤田 慎一郎

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