起業家・CFO必見、「ブリッジファイナンス」がスタートアップに必須となる理由──資金調達を有利に進め、非連続成長を実現するためのファクタリング活用法

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インタビュイー
田中 美雪
  • Dual Life Partners株式会社 取締役 

大学で会計ファイナンスを学んだ後、銀行で法人営業を担当。 2016年にDual Life Partnersに参画し、2020年に取締役に就任。現代のライフスタイルの多様化に即した、個人の選択を支援するサービスを提供している。

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スタートアップがスタートアップたる所以とは、一体何だろう?未だ世の中にないプロダクトを生み出す創造性、変動する市場ニーズを的確に捉えるスピード感、新規ビジネスを何としても立ち上げるという力強さ──。枚挙に暇がない。これらを具現化するために、創業間もない段階では特に、実績作りや人材への投資に四苦八苦するスタートアップがほとんどではないだろうか。

しかし、言わずもがな事業活動には資金が必要だ。さまざまな手段がある中で、銀行融資は審査に時間がかかるし、そもそも借りられるかどうかわからない。エンジェル投資家やVC/CVCなどからのエクイティ調達も同様に、スケジュールを読みにくい場面がある。事業環境がめまぐるしく変化する中、クイックに新たな投資判断を進めたいのに、手元のキャッシュが……などという状態には陥りたくないと誰もが思うだろう。しかし、残念ながら割とよくある話である。そこで使いこなしたいのが、ブリッジファイナンス(橋渡しとしての短期・小規模な資金調達)。特にその手段として利用が増えている「ファクタリング」について、今回、解剖したい。

ファクタリングを知らないという経営者やファイナンス担当者はいないだろう。だが、多くの未上場スタートアップにとって、まだそれほど身近な調達手段ではないはず。だからこそ今、詳しく紹介したい。

活用事例についてはゲストに紹介してもらおう。最短30分で数百~数千万円という額を調達できる可能性があるサービス『PAYTODAY』。これを運営するDual Life Partnersにて、取締役を務める田中氏を招いた。

  • TEXT BY AYA SAITO
  • PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
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初期のスタートアップ資金調達。
エクイティ・デットファイナンスだけでは不十分!?

創業以来ずっと右肩上がりの企業は、ほとんどと言っていいほど無い。「対応が追いつかず、新規の受注を一時ストップした」「資金がショートしかけたが、首の皮一枚繋がった」。事業も組織も成長してきた著名なスタートアップたちも、不安定な期間を乗り越えながら、PMF(プロダクト・マーケット・フィット)や大型資金調達、新規株式上場(IPO)といったマイルストーンに至っている。

冒頭で触れたように、スタートアップにとっては、クイックな投資判断による仮説検証こそ生命線だ。そのため、機動的な資金調達を進められるかどうかが、避けて通れないイシューと言えよう。金融機関による融資や、VC・エンジェル投資家の投資を受けるパターンはよく知られている。数百万~億円単位まで、まとまった資金を手に入れることができるのはよく聞く話だ。

しかし、これらはすぐに手に入るものではなく、活動開始から実際の入金までに数ヶ月を要する。そもそも金融機関からの融資では、審査が通らないことも多い。

加えて、アメリカに端を発する市況悪化の影響が日本にも押し寄せている昨今、VCや個人投資家の動きも以前ほど活発ではない。創業間もないシード〜アーリー期のスタートアップが、「望むタイミングで資金を得られない」と感じるケースはすでに少なくなく、さらに増えていく可能性すらある。

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海外では当たり前!
成長期のブリッジファイナンスに適しているのが「ファクタリング」

事業を加速させたいのに、足元の資金が足りない──。そんな歯がゆさを解消する1つのソリューションとして注目したいのが、「ファクタリング」だ。海外ではすでにメジャーな手段として利用されている資金調達手法である。「日本の、特にスタートアップ界では認知度が低い」と指摘するのは、ファクタリングサービスを手掛けるDual Life Partners取締役の田中氏だ。

ファクタリングとは、利用者がファクタリング会社に債権を譲渡し、ファクタリング会社は売掛金の一部を手数料として受け取る代わりに、残りを現金化し利用者に渡す仕組みだ。

たとえば、ソフトウェアを提供するA社が、顧客であるB社に対して、500万円のプロダクトを売ったとする。A社がファクタリングを利用すると、A社からB社への売掛債権(請求書)をファクタリング会社が買い取り、A社はB社から代金が入金されるのを待たずに現金化することができるのだ。

ただし、手数料が発生するため、A社がファクタリング会社から受け取ることができるのは500万円よりも少なくなる点は留意しておきたい。契約形態は2社間と3社間の場合とがあり、2社間であればA社とファクタリング会社の間のみで契約が成立するため、売掛先(B社)に通知がいくことはない。3社間であればファクタリング会社がB社に照会を行うが、その分手数料率が低くなることが多い。次の資金調達までの繋ぎに、一時的に足元の資金が必要という場合にはとても有効な手段だ。

ここで、改めて広く知られている資金調達方法とも比較しておきたい(図1)。エクイティファイナンスは返済義務や利息がない点がメリットだ。しかし、出資元に対して事業の詳細な説明が必要になるなど手続きが多く、投資家から経営への関与を求められることもある。創業時や、事業展開の節目に大型の資金調達をする際には適しているといえよう。

デットファイナンスは金融機関や政策金融金庫など、調達先を広く検討できる。利息の支払いは経費として計上できるため、節税メリットもある。一方で、返済義務があることや、審査に数ヶ月ほど時間がかかるケースもあるだけでなく、そもそも創業期は審査が通らず利用できないこともしばしば。取引実績を積んだレイター期、IPO近くのフェーズには比較的使いやすい手法だ。

図1:エクイティファイナンス、デッドファイナンス、ファクタリングの比較

田中ファクタリングは、日本ではここ2~3年で普及してきたように感じています。それまでは法人向けの債権の売買が法律に抵触する恐れがあったのですが、2020年の民法(債券法)改正により規制が緩和されたことが背景にあります。

業種としては、売掛債権が発生しやすい製造業や建設業を中心に広がり始めました。ここ最近はWeb業界にも浸透しつつあります。

金融機関も自社開発や提携といった形で、自らファクタリングを取り扱うようになっています。ただし、大手のクライアントに絞っていたり、売掛先(請求先)が大手企業であったりする場合に限っているケースが多いですね。そういう意味で、金融機関以外の事業者の方が提供できるお客様の幅が広いんです。

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数千万円の資金調達を即日完了。
エクイティやデットでの調達の合間に事業を加速させることも可能

ここまでで、ファクタリングの仕組みや他の資金調達との違いはお分かりいただけただろうか。

とはいえ、経営パーソンならまだまだ疑問は尽きないのではないだろうか。「多くの手数料を取られるんじゃないの?」「まとまった金額を現金化するのは難しいのでは?」。そんな読者の疑問に先回りするかのように、田中氏は説明を続ける。ポイントは2点ある。

1つ目は、手数料率の上限。後の請求が法外な金額となる懸念がないような設計になっているサービスを活用することが重要だ。。悪質性の高い事業者の場合、たとえば「1%~」と上限を定めていないケースがある。金融庁も高利貸しをする悪質業者に対し注意喚起をしている。そんな中、『PAYTODAY』も最大9.5%という上限を定めている。

田中ファクタリングが怪しいというイメージがついてしまう理由として、悪質な事業者と混同されてしまうことが挙げられると思います。

特に、ファクタリングを装って、個人向けに法外な利率で給与を期日前に現金化する「給与ファクタリング」が問題になった時期もありました。給与の場合、債権の取引ではないので、そもそも全く異なる考え方で進められるものなんです。

ファクタリングという言葉が、変に独り歩きしてしまっているように感じていますね。

2つ目は、比較的まとまった金額の現金化も実際には可能だという点だ。『PAYTODAY』も、買取額に上限は特に設定しておらず、5000万~1億円を超える取引にも対応しているという。審査に必要な書類は4点を送るのみ、と申し込みの手軽さは担保しつつ、ビジネスモデルや収支のバランスをスタッフが電話でヒアリング。そうして、ファクタリング事業者の中では比較的現金化できる額が大きくなるよう工夫している。手軽さと丁寧さのバランスを見て利用することが、重要になりそうだ。

田中弊社は1,000万円以上の現金化を希望されるお客様の場合でも、ご対応が可能です。中には、自動の審査だけで簡単に現金化できる事業者さんもありますが、うちは電話でのヒアリングを必須にすることで、比較的大きい金額まで対応できるようにしています。

なぜなら、そもそも利益率の低すぎる企業の場合は、ファクタリングを使ってしまったがために、逼迫した自転車操業に陥るケースもあるからなんです。そうならないために、特に創業間もない企業様の場合は、ビジネスモデルや商流を電話で確認するようにしています。

そのため、創業間もない企業様のエクイティやデット、あるいは助成金などを組み合わせた資金調達までのつなぎとなるブリッジファイナンスとして、ご利用いただくことが多いですね。

2社間ファクタリングの模式図(提供:PAYTODAY)

前章でも述べた通り、スピーディに現金化できる反面、数千万~数億円単位のまとまった資金調達には向いていない。あくまで資金繰りを補完する形で使うのがベストだということだ。

では実際に、どのようなスタートアップが利用しているのだろうか?「設立してから4~5年以内ぐらいの企業様が多い」と田中氏は続ける。

田中とても印象的な事例があります。バイオ開発のスタートアップ様がご相談にいらしたことがありました。事業の特性上、大きな先行投資が必要で、足元の運転資金が足りなくなりそうな状態だったんです。

その企業では補助金や金融機関からの融資が数ヶ月先に入る可能性があったものの、定かではなく、且つどうしても進めたい投資があったのだ。相談の末、半年ほどファクタリングで資金を繋ぐことにした。

その結果、補助金や銀行、VCからの資金調達も無事に実現した。会社を畳むどころか、理想的な事業成長のための投資をすることができたわけだ。

田中ファクタリングを上手く使って資金を繋ぎ、無事に「卒業」されましたね。繋ぎとして使ってもらえたことで、その後の成長に結びついたと感じています。

取材の中で田中氏は、繰り返し「卒業」と口にする。あくまで補助的に使ってほしいという意図だ。

田中低い金利、たとえば1%で未来永劫に取引を続けるスタンスではないですね。巨額のファクタリングは手数料も比例してかかってしまうので、あくまで成長過程の繋ぎに使ってもらうのがコツです。

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ファクタリングを使いこなし、急成長を志向せよ!

ファクタリングは日本でも今後、さらにメジャーな資金調達方法として普及していきそうだ。その中でもDual Life Partnersは、ファクタリングサービスの域を超えて、企業に寄り添い"伴走者”として資金の悩みにアプローチしていく。

田中大企業・中小企業からの利用も、もちろん大歓迎なのですが、スタートアップの資金調達の相談窓口としても頼られる存在になっていきたいですね。今後、VCとの連携を強化していく方針なので、ご案内できるソリューションが増えると思います。

「Dual Life Partnersに相談すれば資金調達の手段が広がる」、という存在になりたい。将来的には金融機関とも連携していきたいですね。

本稿でもエクイティ、デット、ファクタリングという3つの資金調達手段を比較したが、フェーズや目的によっても適切な手段が変わってくる。ベストな調達方法を知り実践していけば、スタートアップの企業活動は更に活発になるに違いない。

田中銀行融資と違って、ファクタリングで支援できない企業様は少ないです。将来上場したいという企業様、成長意欲の高い企業様にこそ、うまく活用する余地があるはずなので、ぜひ検討してほしいですね。

あの手この手で事業を成長させたいと考えているFastGrow読者諸君がほとんどだろう。効果的な資金調達を実践することで、さらにアクセルを踏むことができるに違いない。

こちらの記事は2023年08月25日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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執筆

齊藤 彩

写真

藤田 慎一郎

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