投資先にすることが多いアドバイスや指摘で、普遍的に意味がある(投げかけるだけでも価値が出やすい)と思われる発言や投げかけがあれば教えてください。いわゆるキークエスチョン的なものです。
特に頻繁に伝えていることが3つあるのですが、一番言っているのは「マーケット自体を伸ばすために何ができるか?」という問いです。事業の成長は良くも悪くもマーケットの成長率に依存するので、マーケット環境に左右されることなく、自分たちでマーケット自体を伸ばす方法はないのかというのを常に問いかけています。例えば、クラウドキッチンはフードデリバリーが拡大していかないとそもそも成り立たない市場ですが、クラウドキッチン事業者としてフードデリバリーを広げるにはどうすればいいか、というようなことです。
2つ目は、「投資家の言うことを聞くな。ユーザーの声を聞け」です。特にC向けサービスに関しては、とにかくユーザーに向き合うことが大切です。もちろん事例や数字面は投資家の方が詳しいケースが多いので、必要な情報はもらいつつも、本質的にはユーザーを信じるようにと、よく伝えています。
最後はプロダクトでも組織でもなく起業家自身の話なのですが、「お前は成長しているのか?」ということです。前提として、事業の成長と個人の成長は別物だと思っています。事業が成長することは当然大事ですが、1人の経営者として成長し続けない限り再現性がなくなってしまいます。またスタートアップは細々した作業が多く発生するので、どうしても仕事した気になりがちです。なので意識的に個人の成長機会を取りにいかないといけないので、そこは僕も意識的に伝えていますね。
木暮 圭佑氏の回答
皆さんに質問です。私は20名強の会社を経営しております。経営して5年目で、ここ3年は毎年2名ほど退職者が出ているのですが、未だに退職というものに慣れないです。従業員の退職は必ずしもネガティブなイベントではないと頭では理解しているものの、寂しいし、自分の力不足も感じますし、動揺もします。これにどう向き合うのが正解か分からず困っています。ご意見を聞かせてくださいませ。
退職に限らず、ネガティブなことに対しては3つソリューションがあると思っています。
- 同じくらいのステージの同期を持つこと
- それを経験した先輩を持つこと
- しっかりと休むこと
退職者だけでなく、経営をしていたら様々なネガティブイベントがあると思います。プロダクトが伸びない時期もあれば、ファイナンスがうまくいかないときもあります。そのような時、その壁を超えるために建設的なアドバイスをしてくれる先輩経験者と、ともに支え合い乗り越えていく同期の仲間がいることは大きな支えになるはずです。
また、当たり前のことですが「休むこと」も重要だと思います。リラックスできる時間をつくる、運動をする、趣味を楽しむ、というのは精神面での安定を保つためにすごく大事ですし、怠ってはいけないと感じています。
木暮 圭佑氏の回答
シード期の資金調達において、IPO時のバリュエーションをどのラインで想定するかという点でご質問です。
IPO時のバリュエーション1,000億円というのはスタートアップ起業家の夢ですが、最近のエクイティでの資金調達は、IPO時のバリュエーションで100億円を目指せるようなコンサバな計画が誠実さがあって好まれる潮目になっているとお聞きしました。シード段階の事業計画や資本政策を相談している方が結構地に足着いているという印象ですが、シード投資の現場では実際どうなのでしょうか?
VCは結果が出るまで時間がかかるのでPDCAサイクルが長すぎて学習が効きにくく、また結果が出ても自分の何のおかげで結果が出たのかわからない部分もあると思うのですが、どのように学習して成長を確認していますか?
VCの皆さんは未来に投資していると思うのですが、どのように「これから伸びるマーケット」を見つけているのでしょうか?非現実的な未来予測の話ではなく、よく言われている「半歩先」のイメージです。事業をつくるにあたっては、この半歩先を見据えることが大事だと思っているので、参考にさせていただきたいです。
Twitterがおすすめです。これは決して冗談ではないのですが、半歩先のトレンドを見るのにはすごく良いツールだと思っています。例えば、うちでは不妊治療領域に取り組んでいる「MEDERI」という会社に投資しているのですが、ここの市場をリサーチする時に「妊活」というキーワードでTwitter検索をかけて見ていましたね。検索してみるとわかるのですが、実際のユーザーがリアルな不満を発信しています。この発信ボリュームと内容を見ると、ニーズの大きさと深さが見えてくるので、僕は定期的にチェックしています。
また、マーケットという括りで考えるのではなく、「対象となるユーザーを見続けること」が大事だと思っています。Twitter投稿をウォッチしているのも同じですが、マーケットはユーザーのニーズから生まれているので、まずはユーザー自体をしっかり観察することが重要です。
木暮 圭佑氏の回答
ぶっちゃけVCをやっている中で、自分も起業したい!と思うことはないのでしょうか?
どういった人物像(バッグラウンド・マインドセット・スキルセット等)の人がVCで働くのに向いているのでしょうか?
ここ10年でVCが増えたと実感しています。他のVCとどうやって差別化しているのでしょうか?(みなさんのVCの強み・弱みは何ですか?)
Twitterで「TAM」の議論を多く見ますが、結局事業立ち上げ時には何を考え、どのくらい先まで計算しておく必要があるのでしょうか?
マーケットサイズに関する数字の議論を起業家や投資家が細かくするのは、あまり意味がないと思っています。具体的な市場規模や成長率は、コンサルティングファームをはじめ大手の研究機関がレポートを出しているので、複数レポート目を通して参考にすれば良いです。
ただ、それらの数字は「そのスタートアップが存在していない世界」での予測数値。重要なのは、自分たちがつくるプロダクト・サービスで、どれだけその予測数値を伸ばすことができるかということだと思います。
僕の場合は、その時点のTAMで1,000億円あるかどうかを見ていますが、これは他の投資家の方からするとすごく小さいかもしれません。でも現時点で小さいのは問題ではなくて、大事にしているのはその後の成長率です。マーケット自体が成長するのかという点と、自分たちが存在していることでどれだけ底上げできるのかという点は、立ち上げ時から考えていると良いかなと思います。
木暮 圭佑氏の回答
マーケット選定において、「勝てる領域」と「好きな領域」のどちらを選択するべきでしょうか?市場自体の成長性や自身のキャリアバックグラウンドなどを考慮して、勝つことができそうな領域を狙うのがセオリーでしょうか。
投資家への相談はどのタイミングがベストなのでしょうか?
いくつかの業界に興味・仮説があるのですが、具体的なビジネスモデルまでは、まだあまりきちんとした納得できる仮説が立っていません。このような状況でも、投資家へ相談しても構わないのでしょうか。もちろん、事前のデスクトップリサーチ・最低限の想定ユーザー向けのインタビューは実施予定です。
ビジネスモデルを一緒に考えることも投資家の仕事の一つだと思っているので、いつでもウェルカムというのが回答になります。むしろ、事業内容よりも「どのようにアプローチするか」の方が大事かもしれません。直接繋いでくれる方がいればその形が一番会いやすいだろうと思いますし、DMや直メールだったとしても「惹き」を作ることは重要です。例えば、新しいマーケットや事業を常に考えることも僕らの仕事の一つなので、「〇〇の領域に関して〇〇という仮説を持っているのですが、ディスカッションさせていただけないか?」と言われると、その領域に興味があればお話したいなと思いますよね。
ちなみに僕の場合は、事業内容やご相談いただくタイミング以上に「成長率」を見ています。初回にディスカッションした結果、2回目までにどれだけアウトプットを引き上げているか。その起業家としてのラーニングの姿勢を見ていますし、その成長率が投資の決め手になった事例も多いです。
木暮 圭佑氏の回答
現在、登壇予定イベントはございません