連載ノンエクイティベンチャー、攻めの成長戦略

ストックオプションの夢より、今月の給与──Rimo合同会社・相川氏が実践する「利益を残さず社員と事業に使い切る」経営論

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インタビュイー
相川 直視

早稲田大学の学生時代は検索/自然言語処理の研究に従事し、北京のMicrosoft Researchでのインターンを経験。2011年にGoogleに新卒入社し、検索システムの開発に従事。2012年にWantedlyの開発に参画しランキング、課金システム、インフラ基盤の開発をリード。2016年8月よりWantedly Peopleアプリの開発リーダー。2019年10月よりRimo合同会社創設。

事業を成長させ、市場から評価を得て、資金を集める。その資本をもとに、さらなる拡大と組織への還元を進めていく──。そうした成長サイクルは、長らくスタートアップや上場企業のスタンダードとして機能してきた。しかし、その構造は、純粋にプロダクトづくりへ向き合うためには、少し遠回りなのかもしれない。

そんな考えから、独自の経営を貫くスタートアップがある。Rimo合同会社だ。

決して既存のスタートアップのやり方を否定するわけではない。大きな市場を短期間で獲りにいくためには、エクイティファイナンスは合理的な選択だ。ただ、それが「唯一の正解」かどうかは別の話である。その「当たり前」の仕組みを健全に疑い、事業の成長と社員への還元を最短距離で実現するため、全く異なる思想で独自の経営を実践。一人当たり売上約4,000万円を生み出すAI議事録ツール『Rimo Voice』を展開し、売上・社員数ともに、ここ数年間、約2倍成長を続けている。

代表・相川直視氏は創業にあたり、敢えて「そもそも株主が存在しない」ことになる、合同会社という形態を選択した。外向きに利益を出し続ける証明を必要としない構造をつくることで、生み出した営業利益は、ほぼ全額そのまま、成長への再投資/社員の給与となるのだ。

Rimoが体現する「資本に縛られない、新しい営業利益の使い方」と、プロダクト至上主義の正体を解剖する。

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営業利益をそのまま社員の給与へ。株式会社の「当たり前」を疑う勇気──Rimo独自の分配思想の原点

株式会社という仕組み自体が、事業をつくり上げる上で、現場のメンバーにとって最適なのか?この問いに、本気で向き合ったことはあるだろうか?

そもそも疑うことすらほとんどないだろう。多くのビジネスパーソンが、株式会社からの雇用や発注だけで、一生を終えるのだから。

だが、今回登場するRimo代表・相川氏は、起業家の一人としてこの問いに本気で向き合った。

その根底にあるのは、資本主義経済へのアンチテーゼではなく、共に働く仲間への深いリスペクトである。

Rimoは、株主が存在しない合同会社という形態を選択した。株主がいなければ、外向きに利益や売上の実績や成長期待を証明するIRは不要。そもそも最終利益を多く出すという考え方も、重要ではなくなるかもしれない。

何せ相川氏は、「最終利益を出すということは、社員還元(*)や成長への投資を止めることと同義だ」とすら考えているからだ。

*……合同会社における法律上の「社員」は出資者を意味するが、本記事内における「社員」は一般的な呼称として、日々共に働く「従業員・メンバー」を指して表記

相川利益が残るということは、まだ使えるお金があるということ。その分、社員にも還元しないし、研究開発にも使わないし、広告費にも使わない。それって、経営判断として、どういうことになるのでしょう?

使わないでとっておく、それはつまり、事業で使うよりも、銀行に預けておいた方が得だと考えているとも取れますよね。営利事業をやっている経営者がそう考えるのは、ちょっと変じゃないですか?そうじゃなくて、お金を使ってさらに稼ごうと考えるのが経営者の仕事なのではないでしょうか。

この点で、上場企業の在り方には、ちょっと違和感を覚えるんです。一旦、単純化して話しますが、「最終利益がどんどん多くなることが、株価向上に効く」と言われています。でも、「事業を伸ばすためには、最終利益を残さず投資し続けるほうが良い」はず。つまり、「事業成長」と「株価成長」の評価の仕方に、正反対の考え方が存在している。

「良い会社」の基準が真逆!?
最終利益の捉え方
一般的な会社(株価向上を重視)
最終利益を「ため込む」
GOOD!
Rimo(事業成長を重視)
最終利益を「使い切る」
GOOD!!
▶︎
給与UP &
開発費へ
激しく投下!

取材内容等を基にFastGrowにて作成

相川私の考えでは、事業がうまくいけばいくほど、さらにお金を使いたくなる。最終利益を残すことが損になっていくはず。広告宣伝費を使いたいし、採用もしたいし、給与も上げたい。そう考えると、利益が増えていくというのは、ちょっと変だとも言えるのではないかなと。

もちろん、日々の株価変動など気にせず、自分たちの考えをつらぬく企業もいる。たとえば有名な例では、Amazonは年間売上高が8,000億ドルにまで大きくなった2014年まで、営業利益をほとんど残さず、積極投資のスタンスを貫いていた。世界中を探してみれば、そうした株式会社も上場/未上場問わず、存在はするだろう。

それでも、株価への影響がわかりやすく出るのが利益であり、日本のスタートアップ界隈ではこの傾向がさらに強化されている現状がある。こうした考え方から距離をとったスタンスを維持するのは、簡単なことではないだろう。

そんな中、Rimoでは、営業利益は確保しつつ、最終利益は極限までゼロに近づけ、成長のための開発費に回す。そして、共に泥水をすするメンバーへの適正な給与として、最大限かつ直接的に渡し続ける。これが、相川氏の目指している企業像なのだ。

相川もう一つ、違和感を覚えることがあります。アトラクトやモチベーション向上に使われるストックオプションとは、その上限枠が全体の10%にとどまります。ユニコーンになった企業で0.1%分を持っていれば、それでやっと1億円というレベルの収入になるわけです。

ここまでの利益を得る人は、ほんの一握り。場合によっては、持っていた権利が失効になってしまう。

このような期待値ならば、日系大手企業や外資企業の退職金のほうが、割が良いという考え方にもなる。そういう話だと相川氏は考えているのである。

相川にもかかわらず、ストックオプションに夢があると語り、それで採用活動を進めていこうというお話も少なくない。確かに、頑張った分だけ企業価値向上につながり、それが自分の収入になるというのが美しく見える部分もあるとは思いますが、私としてはどうしても違和感が残るんですよね。

なので私たちはもっとシンプルに、毎月の基本給や退職金を、利益からしっかり増やしていくという考え方をとっています。

Rimoが実践する「最短距離」の利益サイクル
前提となる経営OS
株主がいない(合同会社)
= 外へのアピール不要
稼いだ「営業利益」
利益は山分け!全額を投下
社員の給与UP &
プロダクトへの再投資
十分な投資を続けることで
良いプロダクトが生まれる可能性を最大化
(そして、ふたたび営業利益を生むサイクルへ)

取材内容等を基にFastGrowにて作成

いわば、資本を集めるための「株主のための利益」という遠回りをやめ、最短距離で仲間に報いる。

相川会社の中で努力してる人たちにこそ、利益が還元されるべき。そう考えて、人事制度や組織構造を整えてきました。

利益はためるのではなく、できる限りは山分けしようということです。その中で話しているのは「一緒に頑張り続けよう」ということ。この考え方は、株式会社でも当然目指すところですよね。

でも私は、「一緒に頑張り続けよう」と本気で言うのなら、ストックオプションで長期コミットへの縛りをつくるよりも、合同会社で毎年の利益から給与還元をするほうが、わかりやすいと思います。

これこそが、事業成長と社員還元を最短距離で結ぶ、営業利益のあるべき使い方というわけだ。

提供:Rimo合同会社

当然ながらRimoでは、スタートアップの定石である「調達した資金(人から預かったお金)を原資に、赤字を掘りながら期待値で優秀な人材を高給で雇う」という戦略は一切使えない。

これは、「いつか儲かればいい」という時間軸の猶予が、創業した瞬間から一切ないともとれる。今日という日を生き残り、明日メンバーに正当な給与を払う、そのためには、すぐにユニットエコノミクス(顧客1人当たりの採算性)を合わせたり、広告のROI(投資対効果)を1円単位で合わせていったり……といった点でこだわり抜いていく必要がある。

ノンエクイティにおける「利益」とは、単なる余り物ではなく、会社の心臓を動かし続けるための「生命維持そのもの」なのだ。

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短期的な「売れやすさ」より、AIの本質的な汎用性を──ベンチマークは相対性理論

資金調達やIR活動は、事業成長において「遠回り」である──。スタートアップの取材でこのような話を聞く機会は、まずない。それを現実のものとするRimo。相川氏はまた別の角度から、この考えについて語り続ける。

相川エクイティファイナンスをそもそも考えていなかった理由はほかにもあります。私のプロダクト開発思想は、PEファンドやVCファンドの投資家さんたちから理解しにくいものだと感じているんです。

金融業界やコンサルティングファームの出身者が、投資家には比較的多い印象があります。こうした方々には、「事業領域とする市場・業界のことを深く知れば知るほど、事業がうまくいく」と考える傾向があるように思います。

たとえば、私たちは音声文字起こしのプロダクト構想で立ち上がった会社です。その事業戦略に対して、ファンドの投資家の皆さんは「商談の効率化に特化するのが良いのでは?」だとか「建設業界で使われやすいように特化するのはどうか?」といったアドバイスをしてくれます。

たしかに、ユースケースや創出価値がわかりやすくなり、売れやすくなりそうだとは思います。ですが、私たちはその「売れやすさ」を目指して事業を行っているわけではないんです。

相川氏が一つのベンチマークとしているのが、「相対性理論」だ。なぜなら、この物理法則が宇宙のどこでも等しく機能するように、「特定の業界や職種でしか通用しないニッチな解決策(n=1の課題解決)」ではなく、「あらゆるビジネスで普遍的に使える客観的なシステム(大きなNの課題解決)」こそが、技術活用として最も美しいと信じているからだ。目先の課題解決にとどまらず、すべての仕事の根底にある真理を解き明かすことを目指しているわけだ。

相川私たちのAI議事録ツール『Rimo Voice』は、ターゲットとする業界や企業規模を、基本的には限定せずに開発しています。おすすめの利用シーンも「商談」「建設現場」「医療介護現場」「研究」「取材」など、幅広くしています。

創業した2019年には、まだChatGPTもありませんでしたから、ほとんど理解されませんでしたね。ですが最近では汎用型の生成AIツールが一般化し、ニッチなサービスをどんどん飲み込んでいっていますよね。

AIの真価は、あらゆる業界を飲み込む「汎用性」にある。相川氏が、技術の進化速度を論文レベルで理解しながら開発を進めるエンジニア経営者だからこそ、その本質を見抜くかのように、ChatGPT登場前の時代から、この開発思想を貫くことができた。

提供:Rimo合同会社

そして、「純粋なプロダクト至上主義」を貫くための強固な防衛壁として機能しているのが、敢えて選んだ「合同会社」という形態だと、改めてつながっていく。

相川最近もたまに、投資家さんから突然連絡が来て「出資させてもらえないか」と話をいただくことも出てきています。ありがたいですね。でも、合同会社なので、このままでは受けること自体が不可能(*)で……。

個人的には、おいしい話かもしれないと感じることもありましたが、すべてが流れていっているというのが実情です。

とはいえ、本当に対応しようと思うと、合同会社を株式会社に転換しなければならない。その際、これが単純に、数週間とかかかってしまうものでもあるので、面倒ですよね。その中で冷静に考える時間ができて、「違うな、やめておこう」と思うようになっています(笑)。

それに、株主総会だとか、決算報告をはじめとしたIR活動だとか、そういう仕事も生じますよね。月の半分くらいは、経営者としてそちらに意識が向くようになるとも聞きました。

私はエンジニア経営者として、プロダクトに集中する時間を最大化したい。投資について考えたり説明したりするのなら、1行でも多くコードを書いた方が、良い事業になるはずです。

*……厳密には、何かしらのかたちでファンドを組成するなどしての出資を受けることは可能。ここは、一般的なVCからのエクイティ調達の枠組みでは不可能という意味合い

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巨大資本とどう向き合うのか。一人当たり売上4,000万円と「多様な組織」が描く、意外な生存戦略

一方で、読者の中にはこのような疑問を持つ者もいるだろう。「汎用型AIといえば、AnthropicやOpenAIといった世界的な企業が鎬を削る市場だ。日本の合同会社で勝負になるのだろうか?」と。

銀行融資や営業キャッシュフローで生み出す投資のみで、この市場シェア獲得競争に真っ向から挑むことは難しいと、相川氏も同意する。そもそもエクイティファイナンスで数十億〜数百億円を調達できたとしても難しい戦いになるというのが、よくある考え方になるだろう。

しかし、相川氏は決して「巨大資本との戦いを諦めている」わけではない。

Rimoの戦略では、最初から巨大な敵と正面衝突するのではなく、まずは確実に価値を生める領域を見極め、目の前のニーズを満たす「本当に良いもの」をつくり続ける。その中で自分たちがしっかりと潤う規模で利益を出し、それをプロダクトと仲間に再投資していく。この地に足のついた成長サイクルを長く回し続けることで、企業としての強靭な体力をつけていき、いつしか世界とも戦える確かな武器も磨いていく──。それこそが、資本の論理に流されないしたたかな生存戦略というわけだ。

相川お金だけが大事だと言いたいわけではありませんが、やはり何よりもまずは「給与として還元されること」が、会社として、非常に重要だと思うんです。

たとえばMetaの社員は、年収数千万円からというのが当たり前になっている。だとすると、うちもそれだけの年収を払える状態になれれば、一緒に働きたいと感じる人を誰でも雇える可能性が出てくる。経営者として、まずはそこまで到達したいという考えを持っています。

売上高を最大化することだけが、企業にとって大切なわけじゃないと思うんです。売上はもちろん伸ばし続ける。ただ、私たちは、私たち自身が良いと考える事業を行い、その中で私たちの給与が理想通りに増え続ける、それを維持しながら成長していける方法を選ぼうとしているんです。

そのために、AIプロダクト開発の最前線にい続けることは不可欠だとも考えています。

そして、「長く戦い、成長し続ける」ための土台として、相川氏が重視しているのが組織の「多様性」である。

長期的なサステナビリティを考えたとき、メンバー個々人の経験に依存する「少数精鋭」の組織は、属人性が高く脆さを孕んでいる。だからこそ相川氏は、閉鎖的なエリート主義を連想させる「少数精鋭」という考え方を好まない。

実際、Rimoの組織の内情は非常にオープンだ。週3日勤務のメンバーを受け入れているほか、立ち上げ初期からビジネス経験の浅い新卒社員を採用し、現在ではインドをはじめとした外国籍のメンバーも多数在籍している。

このような多様なバックグラウンドを持つメンバーを受け入れながらも、AIと仕組み化の力によって、誰もが高いパフォーマンスを発揮できる環境をつくること。それこそが、組織が長く健全に成長し続けるための鍵になると考えているのだ。

そのために大事な戦略の一つが、最先端AIの進化速度に誰よりも早く追いつき続け、AIによる新たな労働力を自社に取り込んでいくことでもあるだろう(今後、この考え方自体もアップデートされる可能性はあるが)。

提供:Rimo合同会社

Rimoが挑んでいるのは、「組織を毎年2倍に拡大させながら、一人当たりの売上もさらに上げていく」という難題だ。

多様な人材を許容するしなやかさと、AIを駆使した高い生産性・収益性を両立させる。この「強く、長く成長できる組織」こそが、いずれ巨大資本と戦うための最大の武器となるのかもしれない。

また、相川氏は「AIによって、今の常識ではありえないほど高い生産性を持つ企業が現れ始める。そのうちの1社になっている状態を目指している」という野心も示す。そんな未来を見据え、具体的な差別化戦略も思い描き始めている。

相川AnthropicやOpenAI、Googleは、けっきょく、アメリカのビジネス慣習をベースとした開発をしていると感じます。

この慣習って、ちゃんと見ていくと、かなり違いますよね。例えば私たちのプロダクトが使われる「会議」に着目するだけでも、その在り方には大きな違いがある。

アメリカでは、会社内の会議は、意思決定の場なんです。一方、日本では、会議というのは合意形成の場になっている。私たちのプロダクトでは、「何が決まったか」ではなく「会議に誰が参加して、どのような議論で、誰が承認して、どう着地したのか」が重要になるという前提で、開発を進めています。

こう突き詰めていくと、アメリカ初の汎用プロダクトとは、意外と異なる出来になっていきます。世界のシェアは取れなくても、日本で十分な売上をつくり、大きくしていくことはできるはず。

「合同会社という形態で損することはないのか?」という疑問も生じるが、相川氏自身、そうしたことは感じないという。たとえば銀行からの融資実行のやり取りで不自由したことはなく、事業の実績があれば問題はないとのこと。また、営業において大企業との取引をしにくいのではないかと感じる読者もいるだろうが、多岐にわたる業界で大きな契約を実現できている。

一般的には、合同会社というだけで不安に思われるケースもゼロではない。それでも、事業の実績と誠実な対応が、形態への不安を上回ることをRimoは証明しつつある。

提供:Rimo合同会社

このように、事業成長は至って順調。こうした部分は、まさにスタートアップのような実態を持つと言える。

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「プロダクトのため、人を大切に」Rimoが示す生存戦略の最終形

株式市場の論理からは距離を取り、成長と仲間への還元(給与や退職金)に全投資することで、利益を極限までゼロに近づける。このユニークな経営体制を敷くRimoは、組織の「つくり方」においても既存のスタートアップの定石を健全に疑っている。

多くの
会社
Rimo
優先する
相手
株主
共に働く社員
還元の
仕組み
ストック オプション
基本給と 退職金UP
メリット
対象
一部の人の 一攫千金
全員で
山分け!

取材内容等を基にFastGrowにて作成

スタートアップ界隈には、しばしば「成長が全てを癒す」という言葉が存在する。事業さえ伸びていれば、組織がカオスでも、労働環境が過酷でも構わないという精神論だ。しかし、相川氏の根底には、そうしたワーカホリックな環境への強烈な違和感があった。

相川想像してもらいやすいと思うのですが、GoogleでもWantedlyでも、当時は本当に12時間以上働くのは当たり前みたいな雰囲気の時期もありました。

その中でどんどん年齢が上がっていくと、「このままじゃ結婚できない、子どもを産むのも難しい」という思いが膨らんでいきます。自分自身のライフステージが変わっていく中で、「もう少し自由な働き方で、でもよいプロダクトを生み出せる会社を、つくることができないだろうか」というところに興味が湧いてきました。

たとえばスタートアップとして上場というゴールに向けてトップライン(売上高)の成長ばかりを追えば、組織には歪みが生まれやすいとも言われる。

だがRimoはVCの外部資本を入れていないことから、急成長を強いられる構造的制約をそもそも持たない。

相川氏はこうした組織づくりの思想全体を、エンジニアリングにおける「美しい設計」になぞらえる。

相川僕はエンジニアとして、組織というものがどうすれば美しく設計されるのか、常に考えてきました。

ソフトウェアプロダクトのように、組織設計や役割分担、それが回り続ける制度や仕組みを、きっちり構築していこうとしているんです。その中で、給与をどうするか、その原資はどう稼ぐようにするか、といった話につながっていくイメージです。

その「美しい設計」への想いが、創業初期からの徹底したガバナンスとバックオフィスの構築からも見て取れる。

Rimoは従業員数が少ない段階から、情報セキュリティの国際規格であるISO27001や、クラウドセキュリティに特化したISO27017を取得している。また、独立資本経営であればどんぶり勘定にもなりがちな会計管理についても、開発原価や販管費の割合を極めて細かく区分けし、「利益をゼロに近づけるための精緻な投資」ができる状態を早期につくり上げてきたのだという。

そして最近は、人事制度の改革にも着手。後手を踏むことがないよう、適切なタイミングで適切な対応を進めることを意識している。

福利厚生に関しても、休暇制度の有給・無給の扱いに至るまで大手企業の水準に合わせ、「変なところで残念に思われない」設計を初期から組み込んできた。

Rimoのノンエクイティ経営から学びたい
3つのポイント
01 「利益」を今すぐ合わせる強度
「いつか黒字になればいい」という外部資金前提の甘えを捨て、創業期から徹底的に利益にこだわるサステナブルな商売を目指す
02 外部環境に左右されない「時間軸の自由」を
マーケットトレンドや投資家の言動に一喜一跡せず、自分の足で稼ぎ、長い時間軸で本当にやりたいプロダクト開発に投資し続ける
03 「組織を存続させる経営」を過小評価しない
100年以上続く未来をイメージし、社会と社員に還元し続けるための「美しい設計」を冷静に選択する

取材内容等を基にFastGrowにて作成

相川私たちは、素晴らしいプロダクトを生み出したい。そのためにやるべきことがいろいろあるので、仲間を増やし、長く一緒に働いてもらえるようにしていきたい。そのための仕組みづくりには妥協しないということなんです。その中で、ノンエクイティという選択をしています。

だから、冒頭でもお伝えした通り、基本的に利益はため込むことなく、できる限り山分けにしようという考え方なんです。これが、私たちなりの「一緒に頑張って、良いプロダクトをつくっていこう」というメッセージなんです。

Rimoのプロフェッショナルたち

CTO (技術選定、開発実行など)
山田 祥允 氏
【主な経歴・背景】
リクルートにて5年間、エンジニアとして開発・運用に従事
【参画の決め手】
副業の4年間で確信した「地に足をつけた事業開発」の環境。「大企業とは違う、自分が全体に影響を与え、より成長できる」と感じ参画
コーポレート全般 (人事・労務・経理など)
大谷 昌継 氏
【主な経歴・背景】
オイシックス(13年)、Wantedly(9年)の人事責任者を歴任
【参画の決め手】
「敢えて上場しない」方針に共感。エクイティファイナンスなしで前年比170%超成長、今後の引き続きのストレッチな成長に向けた組織の基盤をつくる
レベニューオペレーション・マーケ責任者
佐伯 直行 氏
【主な経歴・背景】
大手コンサル(IT) → 建築スタートアップ(在籍中に社員数が約7倍に急拡大)
【参画の決め手】
「キャリアのレバレッジの強さ」で検討。「はたらくを未来に」というテーマを具現化する存在になると確信
プロダクト開発チーム責任者 (PdM兼エンジニア)
保坂 駿 氏
【主な経歴・背景】
リクルートに、エンジニア・PdM・開発ディレクターとして8年在籍
【参画の決め手】
ライフステージの変化・育休を機にキャリアを再考。AI市場のヒリヒリする緊張感と成果を求め参画
個人プラン・海外プランのプロダクトマネージャー
吉澤 李菜子 氏
【主な経歴・背景】
新卒コンサル → VRベンチャーのCSとして3年間従事
【参画の決め手】
事業成長で人手が足りないとお誘い。相川氏にはいろいろ相談に乗ってもらっていたことから信頼があった
1人目のプロダクトデザイナー
西谷 歩 氏
【主な経歴・背景】
Wantedlyに新卒入社。UIデザインからUXコンセプト設計まで幅広く経験
【感じるやりがい】
より大きな裁量権。目先の「売れやすさ」ではなく、「AIを活用して10人分の成果を出す美しい設計」を模索
社長室(全方位の採用活動・広報・ガバナンス構築)
堀 菜月 氏
【主な経歴・背景】
2021年に新卒(3人目の社員)として、立ち上げ初期のRimoに参画
【感じるやりがい】
社内のオンボーディングや生成AIを活用した業務効率化、組織のフェーズに合わせた新しい仕組みづくりなどを推進

事業を成長させ、市場から評価を得て、資金を集める。その資本主義のサイクルを全否定するわけではない。しかし、本質的な価値創造に向き合い、共に歩む仲間に適正な報酬と持続可能な働き方を提供しようとするならば、株式会社という仕組みや、無理なJカーブ成長は「遠回り」になる。

資本の論理に縛られず、純粋なプロダクト至上主義を貫き、美しい組織設計の下で生み出した利益を仲間たちとダイレクトに山分けする。Rimoが実践する合同会社というオルタナティブな経営OSは、スタートアップ疲れした優秀層に提示する、極めて純度が高く合理的な生存戦略なのである。

こちらの記事は2026年06月01日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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