撤退ライン、組織設計、経営陣の想い……失敗事例から学ぶ、マルチプロダクト化の要諦【COUNTERWORKS三瓶×カミナシ諸岡】

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登壇者
三瓶 直樹
  • 株式会社COUNTERWORKS 代表取締役CEO 

1985年生まれ。福島県出身、家業が建設・不動産業を営んでいる。学生起業を経てサイバーエージェントグループにてWebマーケティング業に従事、2011年に株式会社フリークアウトの創業に1号社員として参加。セールスマネージャー、ビジネス開発マネージャー、社長室長、APAC子会社社長を経て2014年6月に東証マザーズ上場を経験、退職。2014年10月、COUNTERWORKS創業。

諸岡 裕人

1984年生まれ。2009年 慶応大学経済学部卒業後、リクルートスタッフィングで営業職を担当。2012年 家業であるワールドエンタプライズ株式会社に入社し、LCCのエアアジアジャパンやバニラエアの予約センターの立ち上げ、JALの羽田機内食工場の立ち上げなどに携わる。その中で感じた現場のペインを解決するため、2016年12月に株式会社カミナシ(旧社名:ユリシーズ株式会社)を創業し、ノンデスクワーカーの業務を効率化する現場DXプラットフォーム「カミナシ」を開発。

スタートアップ界隈のSNSやブログで昨今、「コンパウンドスタートアップ」や「マルチプロダクト」といった言葉が目立つ。もはや、目にしない日はないほどだ。

だが本来、それほど簡単な戦略や構想ではないはずだ。経営者が生半可な気持ちで意思決定できるようなものではない。どのスタートアップにおいても、多くの失敗を経ながら、なんとか一つの成功をつかみとろうと汗を流している。

FastGrowではそんな現場の意思決定や泥臭い試行錯誤を知るべく、対談セッションを企画した。今まさに、本格的なマルチプロダクト化へと格闘中のCOUNTERWORKSカミナシがゲストだ。

両代表が登壇して生々しい失敗談も織り交ぜながら知見が披露された、2024年2月のFastGrow Conferenceにおける、2日目のこのセッション。できるだけ具体的に記録したので、起業家・経営者・事業責任者のみなさまにはぜひ読み込んで、血肉としてほしい。

  • TEXT BY KAORI NAKAMURA
  • PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
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「家業」のある出自が共通点の二人、これから挑むマルチプロダクトへの挑戦の背景

──まずはご登壇のお二人から自己紹介をお願いします。

三瓶氏

三瓶実家が不動産とか建設とか、そういった事業を営んでいたのが、起業を自然と考えるようになった理由だと思います。でも私自身のキャリアでは、実はそういうバックグラウンドが全くなくて。

インターネットやデジタルを活用したマーケティングのお手伝い、そういったことをずっとやってきています。この会社をつくる直前に、フリークアウトという広告テクノロジーの会社の創業期に参画していろいろやらせていただきつつ、IPOを経て、次のチャレンジを考えるようになりました。

それで、ちょっと縁があった不動産という領域、ここにはどうやら大きな課題がありそうだなということで、COUNTERWORKSを創業したという経緯になっています。

諸岡私の実家も事業をやっていました。ブルーカラーと呼ばれるようないろんな現場業務を請け負うということをやっていました。航空会社の請負業務なので、機内食の食品工場とか、あとはホテルの客室清掃とか、貨物の積み下ろしとかですね。その現場に私も関わっていて、出てきた不便さとか、ペインを解決するために、カミナシという会社をつくりました。

この後も出てくるんですけど、私自身がどんな立場で今日ここに来ているかというと、マルチプロダクトを成功させた男みたいな話をするわけではありません。ちょうど今僕らも、社内で複数の事業を立ち上げようとしているんです。「マルチプロダクト化」という難しいテーマについて、現在すごく熱いというか。なので、その辺のリアルなところを伝えたいなと思っています。

諸岡氏

──次に、今回のテーマである「マルチプロダクト化」についての前提を確認する意味でも、それぞれの会社の事業紹介をお聞きできますか?

三瓶「意志ある人と、自由をつくる。」というビジョンのもと、社会インフラを生み出していくような企業を目指しています。そのために今掲げているミッションが、「すべての商業不動産をデジタル化し、商いの新たなインフラをつくる。」になります。

登壇時のスライド

三瓶ちなみに事業領域の「商業不動産」という言葉って、なかなか耳慣れない言葉ですよね?市場規模としては国内だけで10兆円にのぼるのですが、イメージは湧きにくいと思うので少し説明しますね。

実は、意外と身近に、そこらじゅうにあるんです。たとえば店舗やオフィス、物流施設、データセンター、倉庫などですね。ざっくり申し上げれば、BtoBでやり取りされる不動産のことを「商業不動産」と表現しています。

たぶん、今日会場にいらっしゃっている皆さんも、帰りがけにどこかで何か食べたり、買い物したり、あるいは平日にオフィスで働いたり、インターネットを通じて買い物したり、お仕事したりしますよね?その中に店舗やオフィスがあるはずですし、さらにその裏ではデータセンターや倉庫が動いていたりもします。

ということで実は、接点がない日なんてないというような形です。このように身近な産業なんですけれども、不動産という領域の中でも、BtoBの不動産でデジタルの活用が非常に遅れています。使っていらっしゃる事業者の方々のペインとか、あるいは提供している会社さんのペインとか、そういったところに大きな社会課題があるので、仕組み自体を変えていき、より良い産業を創っていきたいと考えています。

登壇時のスライド

三瓶現状、プロダクトを二つご提供しています。左側がマーケットプレイス型のサービスで「SHOPCOUNTER」です。ある場所を管理していたり持っていたりする企業様と、そういった場所を短期間でも使いたいという事業者様たちをつなぎ、オンライン上でスムーズに取引ができるようなものです。

そしてもう一つ、右側の「SHOPCOUNTER Enterprise」という製品が、いわゆるSaaS型でご提供しているプロダクトです。現状のターゲットとしては、中規模から大規模な不動産デベロッパー様とか、商業施設を運営しているような企業様、あるいは、大型スーパーや百貨店を運営しているような企業様です。ブランド店などをそうした施設へと継続的に誘致していく部分を支援するソフトウェアになります。

今後については、こうした現場にまだまだ多くのアナログな業務があるので、細かく支援をしていきたい。加えて、「短期間の場の利用(貸し借り)」だけでなく、中長期の貸し借りの支援にまでサービスを広げていく、そんな絵を描いています。

登壇時のスライド

三瓶他にも周辺領域には、内装を仕上げる企業様や、取引を金融的な側面で保証してくれる企業様など、さまざまな協力会社さんがいらっしゃいます。そういった方々も含めたエコシステムをどうつくっていくかという形で、今後製品を拡大していくような戦略を今持っています。

直近、2023年の10月にシリーズCでの資金調達が完了しました。事業会社様が投資をしてくださっている例が多いです。特に不動産事業のデベロッパー様とか、あるいは東芝テック様のようにお店のレジを扱っている企業様とかですね。このように、ハードウェアとかソフトウェアをつくり、非常に大きなシェアを持っていらっしゃる大手企業様たちと一緒に、このマーケットをより良いものにしていくぞ、という形で進めています。

諸岡2016年につくった会社なので、ちょうど7年経ちました。7年経ってやっと2つ目のプロダクトを今まさに出そうとしているところなので、ものをつくるって本当に時間ってかかるもんだな、ということを日々感じています。

僕らのミッションは「ノンデスクワーカーの才能を解き放つ」。最初のプロダクトは、現場で数多くの紙の帳票やマニュアルなどを、自分たちの手でノーコードで業務アプリにしてデジタル化できますよ、というものでした。現在、1万を超える現場で使っていただいています。

先ほど三瓶さんが「プロダクトは実は皆さんの身近にある」といったようなことをおっしゃっていましたが、カミナシも同じです。たとえば、すぐそこのセブンイレブンの店頭に並ぶおにぎりとかお弁当の製造元を見てもらうと、そのほとんどがカミナシの導入企業様なんですよね。製造過程の衛生管理にカミナシを使ってくださっています。他にも、ホテルやレストランなど、皆さんの身近なサービスの裏側でカミナシが結構使われているんです。

シリーズBラウンドの資金調達を発表したのは2023年の3月。その時に「なぜマルチプロダクトをやるのか」ということを自分たちの言葉で今一度しっかりとまとめて、対外的に発表しました。この内容については弊社のカルチャーデックに載っていますので、詳しくはそちらもご覧ください。

登壇時のスライド

諸岡オフィスワーカーの歴史って、DXを1歩先取りして先へ先へとどんどん進んでいますよね。それを踏まえ、その先の未来を見据えた結構骨太のストーリーをつくったんです。

マルチプロダクトをなぜやるのかというと、当然ビジネスとして売り上げが上がるからとか、時価総額はこれぐらいという目標があるならば必要だよね、という話もあるんですが、もっと大事なことがあると思います。それは、やはり私たちのお客様にはマルチプロダクトが不可欠だからやる必要がある。そういった使命感です。

登壇時のスライド

諸岡現在、社内で合計4つのプロダクトが動いていて、毎日戦っているような状況です。そこで起きた様々な出来事を皆さんに今日はシェアできたらな、と思っています。

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人と人との想いがマルチプロダクトを育てていく

──ではここから、アジェンダに沿って進めます。COUNTERWORKSの三瓶さんからお伺いします。マルチプロダクトを進めていく中で実際にあった失敗談や、失敗から学んだことを教えてください。

三瓶当社の設立が2014年の終わりぐらいで、2022年ぐらいまでは、創業当初から続けているマーケットプレイス事業をずっとやってきました。そんな中、2020年の春先からはコロナウイルスの影響で新規出店ができないということもあって、とても大変でした……。

ただ、そう遠くないタイミングで落ち着いて戻ってくるだろうと思っていたので、そのマーケットプレイスの事業でやるべきことはしっかりやりつつ、何か次のビジネスの新しい芽を出していきたいというようなことを当時のメンバーみんなで話していました。

その中で、ある課題を見つけました。マーケットプレイス事業の供給サイドは、下町の商店街の小さなビルをお持ちの方から、ショッピングセンターの運営をされている方まで多岐にわたるのですが、特にショッピングセンターや百貨店のような、商業施設を運営されている大企業のサプライヤーさんたちにおける成約率が低かったんです。

よく調べると、「場所を借りたいです」というお問い合わせをいただいてから「OKです」と返答するまでにめちゃくちゃ時間がかかっていたんです。下町の商店街の個人オーナーさんの所有物件とその時間を比べると、その差はおよそ3倍くらい。社内の業務フロー、稟議のフロー……。さまざまな兼ね合いが時間がかかってしまう原因でした。そんな事例が背景にあり、デジタルを前提とした業務の課題解決に向け2022年の1月に2つ目のプロダクトを開始しました。

もちろん、経営陣のチームで議論を重ねて進めたプロダクトで、他のチームの皆さんにも背景や、やりたいこと、ポテンシャルなどしっかり説明したつもりになっていたんですけど、次第にポロポロと「これはうまくいかないんじゃないかな」と言うような声がいろいろ聞こえてきて……。

既存の事業がある中で、新しいプロダクトとか、新しい事業を進めていくのって、その時はそんなに深く考えず絶対やった方がいいと思って始めていたんですが、振り返ってみると、もう少しスタートの切り方はいろんなやり方があったんじゃないかなというのは今、考えてしまいますね。

三瓶氏

──会場の皆さんから早速ご質問です。1つ目、マーケットプレイスでやる中でインフラのSaaSについて、これはやっぱり必要だなと思った、ここで事業化できる、など踏み込んだタイミングとか、そういったものがあれば教えてください。

三瓶まず、我々の場合は創業した瞬間から、マーケットプレイスの事業で「どんな場所が登録されているのか」「どんな人たちが借りているのか」あるいは「その貸し手と借り手がどんな条件で取引をしているのか」などのデータを蓄積してきているんです。これらをどう活用し、事業をもっと拡張していくか、という思想自体はもともとあったんです。ただ、具体的にその計画の中で、「このタイミングでこういう風に拡張しよう」とか、「このタイミングでこういう新しいプロダクトを出そう」というところまでの具体的な計画はないままでしたね。

既存の事業を進めていたんですけれども、いいか悪いかは別として、我々の場合はちょうどそのころ、コロナウイルスの感染拡大がきっかけで、新たにSaaSのプロダクトをやっていこうということに舵を切ることができたんです。

ですので、全然かっこいい展開ではなくて、「なんとなくこういう風に広げていけるよね」みたいな話はしつつも、始めたタイミングのきっかけは、たまたまっていう感じです(笑)。あまり参考にならないかもしれませんが。

──もしその時点に戻れるとしたら、やっぱりつくり込んでスタートしていたのでしょうか。

三瓶個人的には、そんなにつくり込んでから始めない方がいいかなとは思っています。それって結局お客様とか業界に対しての解像度だと思うんですね。その部分について、めちゃくちゃ詳しい人であれば、ある程度つくり込んで、その分野に詳しいチームであればやっていける可能性って十分にあるんじゃないかないでしょうか。

我々の場合は、不動産業界の経験者があまり多くない状態で事業を推進してきているという背景もあって、最後までつくり込むというよりは、必要最低限の要件を満たすようなものをベースに、お客様と一緒につくっていく、というような感覚で結構取り組んでいます。ほかにも株主様、あるいはその他の事業会社様にも細かく相談やヒアリングをしながらつくってきています。

──では諸岡さんからも、失敗談や学びをまず最初にお聞きできますか?

諸岡一番大事なのは、「その新規プロダクトを是が非でもでもやりたい人間が会社内にいるかどうか」だということをこの数年間で学びました。マルチプロダクトをやるタイミングというのは、そういう人間が社内で現れた時なのかもしれませんね。

なぜそう思うに至ったか、エピソードが2つあります。

まず1つ目。僕らは最初、現場の紙の帳票をデジタル化するというところから入って、2021年ぐらいから製造業の現場の上流工程のSaaSっていうのをつくり始めたんです。ベータ版まで出して、お客さんもそれを気に入ってくれていたんですけど、結果的にそれは閉じることになりました。

まず僕が始めて、ベータ版をつくって、そのあとCOOの河内にバトンタッチしたんですよ。でも、僕も河内も製造現場の工程をSaaSでどうにかしようという想いではなく、ビジネス的にやった方が良いという考えのもと進めていたので、最初のプロダクトほど熱量が強く出せなかったんです。

そして2つ目。その1年後ぐらいでしょうか。またマルチプロダクト化の話が浮上して、前回と同様に製造業向けに新たなアイデアを考えることになったんです。僕はそのテーマについて、3ヶ月ぐらい探索をしたんですよ。でも、そこで出した僕の結論は、「この領域はやらない」ということでした。しかしその後、COOの河内が同じテーマで自ら探索してプロダクトを立ち上げることになって、現在も続いています。

やっぱり、誰がその市場を見るのかによって、未来の見え方は全然変わるので、「誰がやるのか」っていうのが特に大事だと思いますね。

僕を含めたみんな、きっと大企業とかでもSaaSの2発目が当たらない理由って、そこかもしれません。結局その2発目で何しようってなった時に「合理的に考えれば、これをやった方が伸びそうだよね、じゃあ優秀でそこそこ熱量の出る人材をアサインにしよう」と考えがちです。でも、そこでスケールダウンしてしまう。熱意とか、「死んでもやるぞ」っていう思いを、当時の僕は過小評価していたなってのはすごい思いました。

諸岡氏

──三瓶さん、大きく頷かれていますね。

三瓶僕らも実は2つ目のプロダクトに着手する前に、いくつかチャレンジしている事業っていうのがあったんです。当時はもちろん「やれる」と思っていくつかトライしていたんですが、絶対これでやっていくんだと信じきれていたかと言われると、そこまででもなかったと。やっぱり、ちゃんと腰を据えてやらないとダメなんだなと、話を聞いていて改めて聞いて思いました。

2つ目のプロダクトは、取締役の1人が毎週お客様のオフィスに丸一日お邪魔してがっつり話を聞かせてもらうほどの入れ込みでやっています。「これは絶対に可能性がある」と思って進めているので、必然的にそうなっています。

──組織面についてもここで少しお聞きしたいです。たとえば、すごい熱量で「新規事業をやりたい」という想いを抱くメンバーがいたとしても、既存事業の継続に影響が出る可能性を考えると、最適なアサインがどうあるべきなのか、非常に難しい論点だと思います。どのように進めているのでしょうか?

諸岡弊社が結果的に今どういう布陣になっているかと言うと、これまで着手してきた3つのプロダクトは全部、取締役の僕とCOO、そして執行役員1人が全部個人でテーマを持って、立ち上げを担っています。これが、推進力という意味ですごくいいなと思っています。

事業立ち上げの0→1フェーズが終わって、1→10とか10→100とかを目指すフェーズになってきた時の話として、「立ち上げ当初は熱意を持ってあんなに輝いていた人が、いつの間にかくすぶっている……」というのがあると思います。

たとえば、エンジニアで例えるとします。0→1フェーズでは、信じられないほど開発の手が早くて、企画を話し合った1週間後にはプロトタイプを持ってきて「これで行きましょう!」とすごいスピード感を見せてくれる人がいます。

けれど、セキュリティや全体最適よりもスピードを最優先にした分、後になって必要な追加開発ができなくなってしまうことがあります。熱意やスピード感が空回りしてしまうタイミングもあるんです。このことをしっかり考えることが大事なのだと思います。

三瓶当社も今のお話と近いですね。プロダクトの立ち上げ期とか、少し立ち上がって拡大していくタイミングなどで、それぞれメンバーの選抜をするようにしています。

過去にトライしていた新規事業で、そこそこ売り上げは立つものの、その先の展望が見えていい事業があったんです。そこに、「一定の結果を出してはいたけれど、まだまだ本領発揮にまで至っていないメンバー」を加えました。すると、最初こそ困難にぶち当たるんですけど、半年とか1年ぐらいすると、その活躍ぶりがエース級になったんです。

社外からの採用もやっていますが、メンバーの配置の整理が功を奏するというケースを何回か見てきているので、このパターンも探り続けたいですね。

──組織についてはまたこの後も触れていくのでここで一旦止めさせていただいて……諸岡さんにお聞きし切れていなかった、先ほどのくだりの「失敗の2つ目」についても教えてください。

諸岡さっき三瓶さんもちょっと触れていたかもしれないですけど、事業を進めていく中でやっぱり経営陣の間ですら目線とか想いが重ならなくなることってあるんですよね。シード期には通じ合っていたのですが、フェーズが進んでからいざ新しいことをやろうとすると、CxOの3人の考えや感覚が合っていないと感じることが増えてくるんです。「こんなことをやろうと思っている」と伝えた時に、口では賛成しているのに、お互い実はどこか納得できない部分がありそうな感じになったりするんです(笑)。

だからこそ、タイミングを見てしっかり目線合わせをすることが大事なのだろうと感じました。うまくいった経験として2つのエピソードがあります。

1つ目は、2022年9月にサンフランシスコに役員3人で合宿に行った時のこと。SaaStr Annualという、SaaSの世界的最大級のカンファレンスに参加しました。するとそこにいる誰もが「Go Multi Product, Early!(早くマルチプロダクト化しようぜ!)」って叫び続けていて。もう、ワンプロダクトとか言っている人なんて1人もいなかったんですよ。

特に良かったのは、ある会社のCEOがマルチプロダクト化の意思決定をした時の心境について語っていた内容です。まだPMFもできているかどうかわからない、ARR1億~2億円のタイミングで、エンジニアも7人しかいないのに、既存事業に2人だけ残して、5人を新規プロダクトに張ったと言っていました。その頃を思い返して、「口の中でガラスを噛むような感覚でやっていました」と……(苦笑)。具体的に想像することすらできない例えなんですけど、相当苦しかっただろうということはわかりますよね。「それぐらいの気持ちでやらなきゃいけないんだ」と感じていう話を聞いて。僕ら3人は「これはもう、既存のプロダクトがどうとか、開発スケジュールがどうとか言っている場合じゃなくて、まずやらなきゃいけないんだ」と意思が揃った瞬間になって、思わず顔を見合わせました。

2つ目は、結構実践しやすい話なんですが、撤退基準をちゃんと決めることですね。もちろん、最速で正式ローンチまで走りたいものですが、株主からの意見もあり、3つくらいの関門を設けるようなイメージで、撤退基準はちゃんと決めるようにしています。まず「そもそもプロダクトとして解くべきお客様のプロブレムがあるのか」「そのためのソリューションがつくれるのか」そして「実際に売れるのか」という3つをちゃんと定めて、約1年弱で乗り越えました。仕上げとして最後は、営業資料だけを見せるかたちで契約がとれるのかという難問にもチャレンジしましたね。

正直、シード期と比べるとめちゃくちゃ重たくて、「こんなにスピードが出ないのか」とか「スタートアップっぽくないな」とかいろんな思いが湧き上がったんですけど、一方でその過程を経ることによって全社として納得度がすごく高まったので、やってよかったですね。

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資金調達まで左右する?
さまざまな「見極め」のライン

──ちょうど今、関連するご質問を会場からいただいたので、ぜひ答えたいです。新規事業の撤退ラインはどのタイミングで決めていましたか?その具体的な内容を差し支えない範囲でお伺いしたい、とのことです。

諸岡先ほどの話を具体化する感じになりますね。まず一番初めのところは結構緩いですよ。解くべきお客様の課題がちゃんとあるのかっていうことを説明して、経営陣が納得するものがあればOKという進め方でした。

2つ目がTAMとかSOMとかが大きな規模になるような課題があるかということを確かめようとしたんです。でも僕は、SOMなんて究極的にはわかんないじゃん、って思ってしまって(笑)。ソリューションをつくれそう、市場で買ってもらえそう、じゃあいくらぐらいの相場があるの?という話ですね。やっぱり資金調達や上場に向けても、ARR100億円を目指すなら、少なくともSOMで1,000億円はないと厳しい。それに、見据える市場がより大きくなることはほとんどありえなくて、どんどん小さく見えてくるものなんです。ファーストプロダクトの時もそうでした。だから、最初にまずしっかり大きく見通しておくことが重要です。

そして最後の3つ目の関門が一番厳しかった。まだプロダクトが実際にない状態で、数カ月の間に5社の契約書を取ってこようというものです。でも、そこまでなんとかやり遂げました。

三瓶僕らは2つ目のプロダクトの時までは、撤退基準は全然なかったですね。「これを信じて、やるだけ」みたいな感じで、たまたまうまく進んでる状況だったとも言えますね。でも今、進めている新しいプロジェクトでは、諸岡さんがおっしゃっていたような基準みたいなものはあります。

具体的にお話しすると、まず成立要件として、「お客様からお金を払っていただく」というポイントをクリアすることが最低ライン。そして、初期段階の投資額は3,000万円と定めました。1年間の探索の中で、受注が取れなかったらどうするとか、あるいは、想定しているプライスで販売した時の売り上げが伸びたら追加で投資しようとか、そういったあらゆるラインを決めています。

今後少し変わることがあるかもしれませんが、プロダクトを進める基準をつくって、チームで足並みを揃えながら進めていかないといけないねという話をしています。

──ではここで、改めて整理するようなイメージで、会場からのこの質問にお答えしたいです。一極集中でプロダクトをつくるのではなく、マルチプロダクトをつくるメリット、デメリットを教えていただきたいです、というご質問をいただきました。マルチプロダクトをつくった、その背景なども合わせてお答えいただけますでしょうか。

三瓶まずメリットから話しますね。大前提として我々の会社は、バーティカルに特定の産業の中で様々な事業を展開しているという会社です。バリューチェーンの中で、どの部分に産業の非効率があるのかというような観点でプロダクトをつくっていて、その中で築いた顧客基盤に常にアップセル、クロスセルできる状況なんです。ですので、セールスとかマーケティングのコストが、めちゃめちゃ安いんです。

良いプロダクトの企画を持って、ちゃんとつくって提供できるデリバリーの体制をつくれれば、非常にリーズナブルに次のプロダクトを買っていただける。その上で、あらゆるプロダクトをいくつか使っていただくともっと簡単になるとか、もっと効率よくできるようになるとか、そんなかたちで価値を拡大していこうとしています。なので、事業の効率はやればやるほど良くなるし、お客様の観点で言えば買えば買うほどもっと楽になる。こういった状態を目指せるのが、大きなメリットなのかなという風に思っています。

デメリットは、単純にめちゃくちゃ大変ということですね(笑)。

そもそもプロダクトをつくるっていうこと自体がめちゃくちゃ難しいことなんです。ペインが特定されていたとしても、その解決方法でいいのかとか、それを実現するためのプロダクトの品質がどうであるとか……1つのプロダクトをやるだけでもいくつもの難点があるので、これを複数やっていくということは、それだけ多くの優秀なメンバーが必要になってきますし、採用活動も当然大変になってきます。

実現したいこととか、実現できた先に提供できる世界とか、そのメリットみたいなものは非常に大きいんですけど、実現のハードルが非常に高いと感じます。なんとしてもやりきろうという覚悟を持って臨まなければならないというのが、デメリットとでも言いましょうか。中途半端にやると、大変なことになりそうだな、という感覚ですかね。

──1つ目のプロダクトを現実にさせることも大変だと思うんですけど、2つ目に挑んでいく特有の難しさやデメリットはありますか?

三瓶2つ目のプロダクトとなると、当然その初期段階のチームというのは、本当に開発のメンバーも含めてなるべくミニマムで始まるわけです。初期の初期は、全体の社員数からすると、非常に小さいポーションのメンバーでやっているので、そんなに大きな影響はないんですけれども、少し拡大していくとなると、既存の組織の中で別なことをしているメンバーの割合が増えていく。これをどうマネジメントしていくか、というのは、非常に難しい部分だったなと思いますね。

特に我々の場合、マーケットプレイスのビジネスって基本的にトランザクションを増やしていくっていうビジネスで、SaaSのビジネスとはちょっと性質が違うんです。それぞれに求められるケイパビリティも違います。複数の事業モデル、あるいは複数のプロダクトを1つの会社の中でどのように育てていくべきなのか、ここは引き続き試行錯誤していくのだと思います。

ちなみに、新規事業について以前は出島のような小さな組織を外側につくるイメージで進めていたのですが、2023年の10月からは事業部制にチャレンジしています。

SaaSのプロダクトを扱う事業部、マーケットプレイスの事業部という形で事業部を分け始めました。エンジニアやデザイナーは別の機能部としては存在していて、そこだけマトリクス組織みたいな感じですね。この手法でこれからどうなるか、というところです。

──諸岡さんからも一極集中ではなく、マルチプロダクトをなぜやるのかというところをぜひ教えてください。

諸岡先ほど三瓶さんがおっしゃったように、マルチプロダクトをなぜやるのかと言ったら、シンプルに「お客様への提供価値を最大化していこうよ」という話でしかないと思います。

これは皆さんに当てはまるかどうかちょっとわからないですが、僕らとしては、マルチプロダクトであることが、ビジョンを実現するうえでも重要であるし、あとは勝つためにも必要だっていうストーリーがあるんですよね。

オフィスワーカー向けって、今アメリカだとおそらくエンタープライズ向けで300ぐらいのプロダクトが存在して使われているんですよね。あまりにも多すぎて非効率だから、オールインワンに回帰するみたいなことが始まっている。じゃあ、その先のノンデスクワーカーの現場がどうかというと、同じようにはなかなかいきません。

僕らのお客様になるような現場って、そもそも人の入れ替えがめちゃくちゃ激しいんですよ。非正規雇用の方たちがほとんどで、1年単位でどんどん人が変わっていく。そうすると、たくさんのUIを持つような、複雑なUXのアプリケーションをいくつも使うのはしんどいじゃないですか。たとえば僕らのお客様でアプリを4つ使っているある企業では、年間3,000人ぐらいが入れ替わるらしいんです。そうすると、登録と削除が追いつかなくなって、「いるはずの人がいない」「いないはずの人がいる」みたいなことがプロダクト上で頻発することになります。

だから、現場のDXを進めるためには、ものすごい早い段階でオールインワンとか1つのサービスでマルチプロダクトを全部提供することが必要なんです。さらに言えば、お客様がそれら1個1個を別々で買っていくと、どんどん高額になって敬遠されるので、なるべく安価で提供していかなければ広がりません。逆に言えば、全てが1つに集約されていればみんなハッピーですし、デスクレスだからこそマルチプロダクトが効きやすいんです。

でも、難しさは確かにあります。株主のALL STAR SAAS FUNDやCoral Capitalの方々と話をしたときのことです。そこで出たのが、「マルチプロダクト化はとてもいいけれど、新規事業がすごく伸びていますって言ったとしたら、逆に既存事業が売れなくなっているんじゃないか、と見られる可能性はある」という話になりました。伝え方なのかもしれませんが、その話もあって、僕たちは買っていただくお客様が同じであれば、わざわざ“新規事業”と言うのはやめよう、という結論に至ったんです。

それに、社内でも、新規事業・既存事業という言葉を使いすぎると、分断的なイメージを持ってしまう可能性があるんですよね。

──今の流れてお聞きしたいのが、「マルチプロダクトの方が資金調達をしやすいのか?」というお話です。両社ともに2023年、資金調達をされていますが、やはり細かなテクニックで資金を調達しやすくなるとか、有利になる、みたいな話は実際にあるんですね。

諸岡以前、投資家に、夢やロマンではなく、事業規模がどれぐらいだったら、評価してくれるのかと率直に聞いてみたんですよ。そしたら「ARR1億円を超えていれば、実績ベースで本当にちゃんと伸びるんだな」と感じるとのことでした。トラクションも大事ですが、ARR1億円を超えてからの成長率をきちんと示せることで、ファンタジーではなく実態として評価しやすくなるみたいですね。

三瓶我々のファイナンスの話なんですけれども、マルチプロダクトとか、コンパウンドスタートアップとか言われる前から、複数をやるということを言っていたんです。ところがそう言っていたが故に、言っていい時との差分が全然わからなかったんです(苦笑)。だから、質問にそのまま答えにくいというか……。

たとえば「xx年にxx個のプロダクト」というような話を前回ラウンドの時などに全然やっても良かったんです。でも、目指す姿としては「産業全体の効率を仕組みを変えて、いいものにしていく、ということをトライしていきたい」ということは言っていましたので、そういう意味では既存の投資家の皆さんもそういった認識で見ていただいていると思います。

一方で、今回の調達ラウンドで新規にご参画いただいた投資家さんたちに対してはこれから、もう少し具体性の高い「こういった領域のプロダクトをやっていきます」とか「こういったデータの連携を活かして、こういう展開をしていきます」とか、そういった話はしました。

このように振り返ると、「マルチプロダクトだから良い」という単純な話ではないのかもしれないとは感じますね。特にバーティカルのスタートアップって、TAMが小さいんじゃないか?とよく言われますよね。その中で、確からしい姿を示していくには、自分たちが事業を進めていく中で獲得したアセットを、こんな課題に対して、次はこういう風に使えます、という展開の示し方とか、話の仕方が重要になると感じます。

事業会社の株主が多いので、こうした話からご期待をいただいてご賛同いただけていますね。我々の事業に対する理解度はある程度高い投資家の皆さんに入っていただいていますので、そういう意味では具体的に獲得しているアセットとか、データの活用方法を活用した結果、つくれる未来をなるべく具体的に示していくことでご共感をいただけたんじゃないかなと思います。

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組織のビジョンにマッチする、人的リソースの確保。“属人化”は正義か悪か。

──このアジェンダでは組織設計やリソース配分、そして採用について、お聞きしていきたいと思います。まず組織設計について、先ほど三瓶さんからマルチプロダクトをしていく上で、どういう風に組織を設定しているか、そのリソースをどういう風に対応していくかといったお話が少しありましたが、ここで気を付けておいた方がいいことなどもしあればお聞かせください。

三瓶さっき、諸岡さんの話で出てきた部分に近いんですが、1つが立ち上がってから次、というかたちだと、全然進まないんです。「既存の事業も本当はもっとリソースを集中して投下すれば伸ばせるのでは?」というようなシーンもたくさんあるんですが、それでも経営陣含め重要なリソースを次の新たなプロジェクトに投下していこうとしています。

そのために必要なものは、メンバーの皆さんにより一層、事業の現場を担ってもらうこと。具体的なエピソードとして、これはダメなほうのあるあるですが「この人ならもう任せられるんじゃないかと思って、丸投げする」という失敗をしました。

あえて丸投げと言いましたが、もちろん「できるだろう」と思って渡しているんです。でもやはりそれはたぶん良くないんですよね。渡されたほうにも、その事業においてすごく解像度が高い部分と、そうでもない部分とがあるはず。本当はそういう状態にも関わらず、丸ごと渡されたことによって、今までは解像度が低かった部分も無理やりキャッチアップせざるを得なくなり、どこかふわふわした部分が生まれてしまう。その人の意思決定もふわふわしてしまい、チームのメンバーもふわふわしてしまう。実際に社内でそういったことがあって、実績がなかなか上がらないというようなことが起きましたね。

そこから私自身も学んで、新たにお任せする際には、この部分はこの解像度なら大丈夫、この部分はまだこのぐらいの解像度ならば一緒にディスカッションしながら決めようとか、そういう形でやり始めてから少しずつ良くなってきていると思っています。

──確かにあるあるだと思います。その実績を出している社員だと、一旦任せようとなってしまいそうですが、事業を任せる以上は、「できること」「できないこと」をより細かく見ることも重要になるわけですね。

三瓶本当にその人のせいではなく、丸投げしているマネジメントの責任だったと今振り返って思っているので、反省しています。

──諸岡さんはいかがですか。

諸岡プロダクトを立ち上げる時には3人くらいの小さなチームを組むようにしています。まず1人は、僕とかCOOの河内とか、執行役員の宮城などが中心となって営業資料をつくり、事業を牽引します。その後にデザイナーとエンジニアを1人ずつアサインする、あるいはPdMとデザイナーという場合もありますけど、そんなイメージです。

うまくいきそうだねとなると、エンジニアから増やしていきます。ただ、僕らの場合だと社内でエンジニアのリソースの取り合いになるんですよね。バランスをしっかりとる必要性が高まってくるので、配分はすべて原トリというCTOに決めてもらうようにしています。

やっていて大変だなと思ったのは、「人手が足りないから新たにエンジニアを採用し、はじめから新規事業にアサインする」とうまくいかないということ。カルチャー理解などの面から、うまくいかないと感じます。そうしてカルチャーフィットできていないうちに、退職に繋がってしまうことも正直、ありました。

かと言って、既存のプロダクトに入ってもらって、ちゃんと安定した基盤で入社のフィット感を見てから新規プロダクトへのアサインを考えようと思うと、すごく時間かかってしまうのが悩みどころです。

会場の皆さんで、もし、先にやっている方がいらっしゃったら、新規のプロダクトに新入社員を入れることの功罪を逆に教えてほしいです(笑)。

三瓶僕もめちゃめちゃ知りたいですね(笑)。

本当におっしゃる通り、新しい領域でかつ、バックグラウンドのない新しい方のアサインって僕らも失敗したことがあって、本当に難しいなと思います。一方で、良かったことといえばバーティカルなので他の事業をやっている方のいろんな知見をシェアできたりとか、そういったサポーティブな体制のつくり方っていうのは今、できてきているんじゃないかなと思っています。これしか正解がないというものではないかもしれませんが、少しずつ改善してきています。そこは学びですよね。

三瓶氏

──採用はどうですか?

諸岡採用はマルチプロダクトにしていたから良かったな、って感じることがやっぱり多いですね。

ファーストプロダクトの話とか情報とかって、とりあえずコーポレートサイトにはしっかり載せているので、社外からでも比較的わかるじゃないですか。その上で、面談や面接の場で「実は……新たにこんなプロダクト構想があって」みたいな感じで隠しながら話すと、「全然知りませんでした!そんな壮大なことを!」となって、話せるストーリーやネタがもう1~2本増え、アトラクトが進みます。人によって、刺さるプロダクトのストーリーが違うので、うまく出し分けることで、内定承諾率も上がっている気がします。

──面白いですね。まさに採用に関して、会場からもご質問をいただいています。新規事業で採用する際に気を付けていくことはありますか?もしくは欲しい人材はどんな人材でしょうか。たぶん採用にメリットとして打ち出せるってことあると思うんですけど、逆に選ぶ側としてどういう風なところに気をつけているかとかっていうのがもしあれば。あとは、こういう人がいるとやっぱり欲しいなと思うものがあればぜひ。

三瓶完全に新規事業をゼロの状態で新規メンバー1人っていうケースって、僕らは今まであんまり経験がないですね。中の人で最初はスタートしたケースが多いです。

なのですが、直近で1人だけ、新しい領域で本当に0の状態からご一緒させていただいている方がいらっしゃいます。その方はまず、明確な業務経験というバックグラウンドがある。新しく検討している領域についての知見や人脈があって、そこについての情熱があって、かつ、その方はビジネスのご経験も豊富なんです。

泥臭いことも厭わず、ゼロからプロダクトを立ち上げられるような、そういった人材の方だなとお話しててお見受けしたので、ぜひご一緒したいです、とスタートしたという感じですね。

──諸岡さんもお願いします。

諸岡何よりも重要なのは、ビジョンへの共感ですね。

新規プロダクトを立ち上げるときに、そのプロダクトで実現したい世界観とか、ステップストーリーみたいなことを話すんですけど、それに惹かれて、それがやりたいと入ってくれる人がやっぱり一番大事だなと思います。

スタートアップという、吹けば壊れちゃうような小さなチームでやっていく以上、ビジョンへの共感が弱いときつい。当然、バックグラウンドがあって、それに掛け算で共感もあるのがベストだと思いますし。なので、採用の段階ではその辺りを結構見ています。

諸岡氏

──最後にもう一つだけ質問を取り上げさせてください。属人化というものはよくないと考えていますが、お2人は属人化に対してどういう印象を持たれていますか?マルチプロダクトの立ち上げ期に属人的にグロースさせる期間から平準化のフェーズになった際に、組織として強くいくためには何が必要だと思いますか?というご質問です。

三瓶新規事業とか新規のプロダクト、というような観点で申し上げると、属人化しないでどうするんだろうなと思っているほどです。属人化した方がいいと言うか、属人化してしまうものかなと思っています。なぜなら、最初の段階でベストなプロダクトとかベストのオペレーションってあるはずないと思っているんですね。もしあるならば、それはたぶん、世の中にすでにあるプロダクトだということだと思っています。

競争環境の中で近いバリュープロポジションの製品とかはあったりするのかもしれませんが、やはり自社にとっては新しい領域だとすると、本当に手探りなことってたくさんあって、不確実なことがたくさんあるはずなんですよね。

そういう状態をいかに早く、いかにわかることに変えていくためには、何か平準化することよりも、どうしたら最も早く最も高いバリューに変換できるか、ということを突き詰めた方がいいんだろうなと思っています。それを簡単にする方法とか、たくさんやる方法とか、自動化する方法とか。順番としてはそれが正しいのかなという風に思って我々自身はやっています。

──まずは価値を突き抜けた後に、そこから仕組み化してどうしていくかという流れですね。諸岡さん、いかがですか。

諸岡もう激しく同意です。マルチプロダクトをやる場合、1個オペレーティブなところはつくり終わっているから、それが得意な人は社内にはたくさんいるので、そっちが全然楽な感覚しかないです。全ての情報、全ての権限一極集中しかないですね。

こちらの記事は2024年03月22日に公開しており、
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執筆

中村 かおり

写真

藤田 慎一郎

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