連載ベンチャー人事報

IF、元マッキンゼー幹部をGPに。10Xに1人目のデザイナージョインなど──21年2〜3月の注目人事情報

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ベンチャー・スタートアップの成長に影響する変数はさまざまあれど、最も重要なものは果たして何か。

それを「人」に見るのがFastGrowだ。月刊で「ベンチャー界隈の注目すべき人事情報」として、転職や異動、その他人事施策を取り上げていく。企業のスケールを推進するのは、起業家や事業家だけではない。対象は幅広く扱う。

第5回目となる今回、取り上げたのは、松本勇気氏、日比谷すみれ氏、ポール・マクナーニ氏、山田翔氏、酒井亮輔氏、岡本杏莉氏、仁平理斗氏、橋本雄太氏、林田拓郎氏の計9名。

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LayerX、代表CTOに松本勇気氏が就任。福島氏と共同代表に

ブロックチェーン事業や請求書読み取りソフトなどを手掛けるLayerX。1月には経理業務を効率化する請求書AIクラウド『LayerX INVOICE』を公開したことでも話題となった。そんな中、スタートアップ界隈に衝撃が走るニュースが3月1日に発表された。元DMM.com CTOの松本勇気氏がLayerXの代表取締役CTOに就任することが発表されたのだ。これにより、LayerX代表取締役については福島良典氏と松本勇気氏の共同代表体制で、経営をリードしていくことになる。

松本氏は東京大学在学中に福島氏が立ち上げたGunosyに入社。CTOとして技術組織全体の統括を行い、また、LayerXの前身となるブロックチェーン研究開発チームの立ち上げにも参画した。その後はDMM.comのCTOに就任し、テックカンパニー化をミッションに改革を推進してきた。直近では自身が改革を行う中で体系化した、「ソフトウェア経営」のノウハウをまとめフレームワークを積極的に発信するなど、業界屈指のCTOとして知られている。

なぜ今LayerXにジョインすることを決めたのか?その理由を松本氏は「自身のテーマとLayerXの見ている世界が重なったから」だと語っている。

これまで様々な活動を通じて自分の中で解像度が高まってきた領域があります。企業、金融、行政という3つの領域です。この領域においてソフトウェアを武器とできるよう支援していくことを、私のしばらくのテーマとしようと考えています。


これら3つの領域に取り組みたい、と考える中でLayerXは理想的なチームだと感じています。


その大きな理由の一つとして、今のLayerXが推進している3つの事業軸を通じて見える世界が、私自身と全く同じ方向を向いていると感じたことがあげられます。


現在のLayerXでは企業活動の効率化であるLayerX INVOICE、金融領域の三井物産デジタル・アセットマネジメント、行政領域のLayerX Labsと加賀市などの地方自治体連携という取り組みが進んでいます。いずれも、日本のソフトウェア活用を支えるという課題意識に繋がるものです。

松本氏のnoteより引用

今後は福島氏と前CTOの榎本氏がSaaS事業を、松本氏が三井物産デジタル・アセットマネジメントとLayerX Labsの2事業に重点をおいた経営を行っていく予定だという。

松本 勇気
東京大学→Gunosy→同社CTO就任→DMM.com CTO就任→LayerX CTO就任(2021年3月)
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10Xに1人目のデザイナーとして、日比谷氏がジョイン

開発不要でネットスーパーを立ち上げ可能な『Stailer』などを提供する10Xに、元ファンズの日比谷すみれ氏がデザイナーとしてジョインすることが発表された。日比谷氏はグッドパッチにてシニアUIデザイナー兼PMとして複数のプロダクト開発に携わった後、貸付投資のオンラインマーケット『Funds』を運営するファンズにて、プロダクトの立ち上げから運用改善まで経験してきた人物だ。

2020年10月頃までは転職を一切考えていなかったという日比谷氏。しかし、自身の30歳の誕生日をきっかけに今後のキャリアを改めて考えたときにプロダクトデザイナーとしてのキャリアと前職で行っていた業務内容に少し乖離があると感じ、そこから転職を考え始めたという。

数社に話を聞く中で「ユーザーの行動観察から出発することへの共感」「デザイナーとして貢献できる余地が大いにある」「自律的で強いチーム」が決め手となり、10Xへの入社を決めた。

今後は同社が提供している『Stailer』内の新規開発を行いつつ、デザイナーの採用を強化し、デザイン組織・基盤の強化を行っていくと力強く語っている

日比谷 すみれ
グッドパッチ→ファンズ→10X(2021年2月)
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インキュベイトファンド、代表パートナーに
元マッキンゼー・シニアパートナー参画

創業期の投資・育成に特化した独立系ベンチャーキャピタル、インキュベイトファンドが米マッキンゼー・アンド・カンパニーでシニアパートナーを務めたポール・マクナーニ氏が代表パートナー(以下、GP)として参画すると発表した。ポール氏は3月1日付で就任しており、インキュベイトファンドが代表パートナーを外部から招くのは創業以来初めて。

ポール氏は新卒でリクルートに入り、デジタル事業の立ち上げやネット系企業のベンチャー投資を主幹。2002年にマッキンゼーに移り、2007年にはパートナー、2014年にシニアパートナーに昇格。直近ではアジア太平洋地域の消費財小売りグループのトップとしてM&Aやデジタル戦略の立案などを担ってきた。

マッキンゼーでシニアパートナーまで務めたポール氏が次なる挑戦の舞台としてインキュベイトファンドを選んだのはなぜだったのだろうか?ポール氏は「日本のスタートアップエコシステムに可能性を感じたこと」「ベンチャーキャピタリストの存在の大きさを実感したこと」がベンチャーキャピタリストとしてのキャリアを考え始めたきっかけだと語る。

リクルート在籍時にベンチャー投資に携わり、マネックスやディー・エヌ・エーがメガベンチャーへと成長していく変遷を見ていくうちに、スタートアップこそが日本の産業を前身させる可能性を秘めていると感じたという。

ポール氏とインキュベイトファンド代表の赤浦徹氏は以前から交流があった。ポール氏がリクルート在籍時に、メディオポート(ゴルフのオンライン予約サービス)の立ち上げに携わった際、当時ジャフコにいた現インキュベイトファンド代表パートナーの赤浦氏と一緒に仕事し、それ以降親交を深めてきたという。50歳の節目を迎えるのを機に生き方をどうするか考えていたタイミングで、赤浦氏からオファー受け、1カ月ほど考えて転身を決めた。

今後は日本発で、世界を変えるインパクトを生み出す企業を支援していきたいと語っている。マッキンゼーのシニアパートナーからベンチャーキャピタリストへの転身は、世界でもほとんど例がない。ポール氏の転身がVCで働く人たちのバックグラウンドの多様化の流れを加速する起爆剤となっていくのか、期待が高まる。

ポール・マクナーニ
京大→リクルート→マッキンゼー→同社パートナー→同社シニアパートナー→インキュベイトファンド代表パートナー(2021年3月)
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アドウェイズ、岡村氏に変わり、山田氏が新社長へ

昨年末に東証一部に市場変更したことでも話題となったアドウェイズが社長交代を発表。創業者であり、これまで代表を務めてきた岡村陽久氏に代わり、山田翔氏が7月付で新代表に就任する予定だ。岡村氏は会長としてこれまで通り株主とのコミュニケーションや全社の管理に携わっていくという。

山田氏は2007年に新卒でアドウェイズに入社。2013年からはUNICORNの代表取締役社長に就任し、全自動マーケティングプラットフォーム『UNICORN』を主力プロダクトへと成長させた人物だ。

今回の人事の理由について岡村氏は、同社の経営理念である「人儲け」、そしてスローガンである「なにこれ すげー こんなのはじめて」をこれからも形にし続けるためには自身よりも山田氏のほうが適任だと感じたためだと語った。アドウェイズをこれから更に成長させていくためには今回の人事がベストであるという決断だ。

山田 翔
アドウェイズ→同社 新規事業開発室室長→同社 子会社社長→同社 取締役→代表取締役(2021年7月)
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元マネーフォワードの酒井氏が、TENTIALCFOに就任

スポーツウェルネスD2Cを展開するTENTIAL(テンシャル)。大手スポーツメーカーをオンラインからリプレイスすることを掲げ、メディアに始まり、D2Cへと着実に事業を拡大させてきた。そんなテンシャルに元マネーフォワードの酒井亮輔氏がCFOとして参画することが発表された。

酒井氏は新卒で経営共創基盤(IGPI)に入社。成長戦略・事業計画策定やFintech企業の与信モデル作成などを担った。2016年にはマネーフォワードにジョインし、経営企画にて主に資金調達やM&A業務を担当した後、分析組織の部長、マーケティング部門長などデータ経営の実装・実行を推進してきた。

テンシャルではCFOを担い、顧客に価値を届け続けることで1兆円企業を作りたいと決意を顕にしている。以前FastGrowではテンシャル代表の中西氏に取材させていただいた。その際に中西氏が語っていた、「2021年は事業拡大に向けてアクセルを踏み込む」という言葉が組織面からも実現されたかたちだ。今後のさらなる成長に注目したい。

酒井 亮輔
慶応大→経営共創基盤→マネーフォワード→TENTIAL CFO(2021年3月)
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アンドパッド、執行役員 法務部長兼アライアンス部長に
元メルカリの岡本杏莉氏が就任

現場の効率化から経営改善まで一元管理できるシェアNo.1の施工管理アプリ『ANDPAD』を提供するアンドパッド。「幸せを築く人を、幸せに。」を掲げた「建設DX」の同社サービスは契約社数2500社突破、利用社数60,000社、継続利用率99%という破竹の勢いを見せる。同社は2月、元メルカリの岡本杏莉氏が執行役員 法務部長兼アライアンス部長として就任すると発表。

岡本氏は慶応義塾大学を卒業後、西村あさひ法律事務所に入所し、国内・クロスボーダーのM&A案件・コーポレートを担当。その後、Stanford Law School(LL.M)に留学した際にシリコンバレーでスタートアップを率いる起業家と出会い、交流する中でスタートアップへ興味を持つようになったという。その後はメルカリに社員番号79番で入社。日本及び米国の法務を担当し、2018年6月の上場(Global IPO)におけるプロジェクトマネジメントなどを担当した。

岡本氏がアンドパッドへのジョインを決めた理由は大きく2つだという。「日本発グローバルスタートアップ創出の支援をしたい」「アンドパッドのミッションへの共感」の2つだ。前職のメルカリで事業・組織の急激な成長を経験し、世界で注目されるスタートアップが日本から生まれてほしいという想いを強く感じたという。また、建設業界という、家や職場など毎日暮らす生活空間を創り上げている、実は誰にとっても欠かせない身近な業界の業界課題を解決したいというミッションへの共感も参画の決め手となった。

アンドパッドは2021年末に向けて600人規模まで組織をスケールさせる予定だという。今回の岡本氏のジョインにより、事業の拡大をリーガル面から支え、より一層安心してサービスを利用してもらえるようにしていく。

岡本 杏莉
慶応大→西村あさひ法律事務所→Stanford Law Schoolに留学→メルカリ→法律事務所ZeLo→ヤプリ社外監査役(2020年4月)→AnyMind Group社外監査役(2020年5月)→アンドパッド執行役員 法務部長兼アライアンス部長(2021年2月)
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スローガン、仁平理斗氏が取締役 執行役員COOに就任

FastGrowを運営するスローガンが創業から16年目にして初のCOO職を設置し、3月1日付で新卒採用支援事業の事業責任者としてスローガンの成長を牽引してきた仁平理斗が就任することが発表された。

仁平氏とスローガンの出会いは学生時代に遡る。就活でテレビ局の報道記者の内定をいただいていた仁平氏は卒業までの時間を使い、取材の練習をしようとGoodfindのOB・OGガイドブック(現・Goodfind Magazine)の取材インターンに応募。ここでスローガン代表の伊藤と出会うこととなった。

インターンとして働く中でベンチャーやスタートアップの魅力に惹かれたため、就活をやり直し、新卒でディー・エヌ・エー(DeNA)に入社。DeNAとNTTドコモの合弁会社でのUGC事業立ち上げや、DeNA Seoulでの韓国事業立ち上げを経て、ゲーム事業部にて複数のゲームタイトルのプロデュースを担った。

DeNA入社後もスローガン代表の伊藤氏から毎年誘いを受けていたという仁平氏。DeNAにおける自身の役割が一区切りついたタイミングで自分のキャリアを改めて考え、スローガンのミッションへの共感を強く感じスローガンへの復帰を決意した。(当時を回顧するインタビューはこちら

今後はCOOとして、いかにして事業の価値を上げサステナブルに成長していくのか、再現性を持って新たな事業を育てていくのか、社会やステークホルダーに貢献し続けていくのか、などのテーマに試行錯誤しながらしっかりと向き合っていきたいと抱負を語っている。

仁平 理斗
早稲田大学→スローガン(インターン)→ディー・エヌ・エー→スローガン→同社取締役 執行役員COO(2021年3月)
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KEIKYUアクセラレータープログラムを立ち上げた橋本雄太氏が三菱地所に参画

FastGrowでも以前取材させて頂いた、「モビリティを軸とした豊かなライフスタイルの創出」をビジョンに掲げ、スタートアップ顔負けの熱量でイノベーションを加速させるアクセラレーションプログラム「KEIKYU ACCELERATOR PROGRAM」。この立ち上げを担った橋本雄太氏が三菱地所に2021年2月から参画。引き続きオープンイノベーションによるビジネストランスフォーメーションと新産業創出にチャレンジしていく所存だ。

橋本氏は大学時代こそ安定思考だったものの、気づけば社会人11年目にして4社を経験。新聞、コンサル、鉄道、不動産と幅広い業界を経験してきた。一方で、新卒で入社した読売新聞の人事部でキャリアをスタートしたときから変わらず持っている想いがあるという。それは大企業の変革をしなければこの国の未来はなく、大企業から新しい価値を生み出していくためには「人と組織」を変えていかなければいけないという熱い想いだ。

この自身のミッションを実現するために、新天地として選んだのが不動産業界大手の三菱地所だ。同社では2018年11月、デジタルテクノロジーを活用することで新たな中核事業を創造する特命部隊として、「DX推進室」を立ち上げた。直近では、街中でテレワークをしたいビジネスパーソンと、いま空いているワークスペースを即時マッチングする新サービスが『NINJA SPACE』をリリース。出資しているスタートアップ企業とのつながりも活かして、『NINJA SPACE』を単なるワークスペースのマッチングに留まらない、より多機能なアプリへ拡張していくなど、100年以上の歴史を持つ老舗の大企業ながらオープイノベーションにも積極的な姿勢を見せる。

橋本氏は京急時代に引き続き、スマートシティやモビリティなどをテーマにオープンイノベーションによる新産業創出にチャレンジしていくと決意を語っている。

橋本 雄太
早稲田大学→読売新聞→PwC→京急電鉄→三菱地所(2021年2月)
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シタテル、林田拓郎氏が執行役員に就任

テクノロジーで“レガシー産業”の変革に挑むスタートアップが頭角を現しているなか、10兆円規模の“衣服”産業へと挑む企業がある。衣料生産プラットフォーム『sitateru』を中心に事業を展開する、シタテルだ。

2021年3月、シタテルの執行役員にアクセンチュアにて大企業向けのDX事業推進コンサルティングなどに従事した経験を持つ、林田拓郎氏が新たに就任することが発表された。

林田氏はNTTコミュニケーションズに入社後、組織再編後の業務設計やグローバルIP-VPNプリセールスを経験。その後はアクセンチュアに転職し、通信・メディア・ハイテク領域にて、BPR業務や新規事業立ち上げ、大手企業向けのDX事業推進コンサルティングに従事経験を持つ。

外資コンサルティング会社で奮闘していた林田氏がスタートアップであるシタテルにジョインしたきっけとは一体何だったのだろうか?。実は林田氏は前職時代に友人の紹介でシタテルの代表である河野氏と知り合い、シタテル創業時より親交を深めてきた。プライベートを含めて様々な意見交換を定期的にする中で、課題の多い衣服・ライフスタイル産業にもかかわらず、シタテルが創業当初に構想していた世界観を着実に実現させていくのを間近で見て、コンサルファーム時代から、「スタートアップに行くならシタテル」と決めていたという。

前々より「いつか一緒に仕事をしたいね」とシタテル代表の河野氏より言われていたが、ある日、急に緊張感の漂う雰囲気の中、真剣な表情をした河野氏に本気でオファーを頂いたと振り返る林田氏。河野氏からの熱烈なオファーに林田氏も心を決め、オファーを頂いたその日のうちに妻にも相談して、シタテルにジョインすることを決めた。

シタテルに入社後は事業開発部のマネージャーや新市場サービス部、外部パートナー戦略の統括などを歴任し、シタテルが衣服に留まらずライフスタイル全般に寄り添う、現状のベースを創り上げてきた。2021年3月より執行役員に就任した林田氏だが、今後は事業スケール及び高度化をミッションとし、シタテルのSaaSを中心としたビジネス拡大とパートナー連携を行っていく。

林田 拓郎
NTTコミュニケーションズ→アクセンチュア→シタテル→同社 執行役員(2021年3月)

こちらの記事は2021年03月08日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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