「本業は小売だけにあらず?」
営業利益の75%をフィンテックが担う丸井グループ、88年変わらぬ“お客さま第一主義“と変革のリアル
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小売業の担う役割は着実に変化してきた。
インターネットで何でも買える現代、小売は“売る”以外の価値をいかに生み出すかに知恵を絞り続けている。
店舗を展開しながら、潮流に合わせ柔軟にビジネスモデルを変革し続ける一方で、働き方改革に着手し、男性/女性育休取得率100%実現や残業時間の削減など、群を抜いた改革を進めている企業がある。株式会社丸井グループだ。
創業から88年を数える同社は、家具の月賦販売から始まり、現在まで小売・金融一体の独自のビジネスモデルを推進し、時代やお客さまニーズの変化に合わせて進化し続けてきた。現在では2018年度の営業利益のうち「フィンテック事業」は75%を占める。
変革の歴史の中で、情報システム・物流・空間プロデュース・ビルマネジメント・不動産賃貸・保険など様々な事業を広げてきた。さらに、小売と金融の一体化ビジネスで培ったノウハウを活かしながら変革を進める丸井グループが新たに立ち上げたのは証券事業。2018年に生まれたtsumiki証券株式会社である。
同社を率いるのは、丸井グループでキャリアを重ねてきた代表取締役CEOの寒竹明日美氏だ。「証券の知識はほぼゼロだった」と語るが、丸井グループは小売×金融という武器を携え、何を目指すのか。寒竹氏と共に同社を率いる代表取締役COOの仲木威雄氏も交え、話を伺った。
- TEXT BY KAZUYUKI KOYAMA
- PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
「変化と向き合い革新する力」こそ丸井グループのDNA。ビジネスモデルも変革し続ける
「丸井」と聞くと、駅前で見かける「OIOI」のマークを思い出す読者は多いはずだ。しかし、インターネットで何でも買える時代、変化する小売業界の中で、丸井グループも更なるビジネスモデル変革への道を模索し続けてきた。
寒竹これまで、丸井グループでは「小売の変化」に対し、様々な手を打ってきました。店舗に足を運んでもらうためにアニメストアをオープンしたり、アップルストアを誘致したり。最近ではBASE株式会社や株式会社FABRIC TOKYOといったスタートアップ企業との資本業務提携も実施。「EC化」や「モノからコト消費へ」の変化に対し、ずっと向き合い続けてきました。
「変化と向き合う姿勢は丸井グループのDNAだ」と寒竹氏は語る。かつては、ヤングファッションのイメージが強かった丸井グループだが、1931年の創業当時の商売は家具の割賦販売(売買代金の支払いを分割して支払うことを条件とした販売方式)だった。
1960年に日本初のクレジットカードを発行し、1966年には業界で初めて大型コンピュータを導入し成長。1980年代から若者をターゲットにしたファッションを中心とした小売業態への転換に成功する。同社は時代の趨勢に合わせ、ビジネスモデルを柔軟に変化させてきたのだ。
2016年度には従来のクレジットカード事業を「フィンテック事業」へと再編成。「支払う」「借りる」のみならず「貯める」、「増やす」、「応援する」、「貸す」、「備える」など、多様なお金の使い方を顧客に提案していく方針を発表した。実際、2018年度の営業利益のうち「フィンテック事業」は75%を占めており、小売と金融が一体となった独自のビジネスモデルで成長を遂げている。今や、駅前で見かける「OIOI」は丸井グループのほんの一部分でしかない。
寒竹事業面では、ここ数年でフィンテック事業の領域を積極的に拡大してきました。当社の発行する「エポスカード」は全国の商業施設と提携カードを発行したり、「コト消費」の潮流に合わせアニメコンテンツとコラボレーションしたエポスカードを展開したりと、利用者の拡大を進めてきました。小売と金融が一体となった独自のビジネスモデルだからこそできる成長戦略が、丸井グループにはあると感じています。
“想い”を持ったお金を、世の中にたくさん回していきたい
フィンテック事業の新たな一手として、2018年2月にtsumiki証券が誕生した。同社が提供するサービスは、つみたてNISA対象の投資信託から選りすぐりの4本を選択し、定額積立をする「つみたて投資専門」のサービス。口座開設の手続きはスマホだけで完結し、開設手数料は無料。支払いにはエポスカードを利用する。毎月3,000円からつみたてられ、つみたて金額に応じて「エポスポイント」も貯まる。
寒竹投資信託に興味のなかった女性や若手社会人に届けたいですね。手間を感じさせないために、スマホで簡単に操作できる利便性や、親しみやすいデザインに気を配っています。つみたて投資を通じて「社会に貢献している感覚」や「想いに共感した企業へ投資することへの楽しさ」を感じてほしいと考えています。
tsumiki証券を率いるのは「丸井グループ一筋20年以上」の寒竹氏と、銀行・保険・運用と3つの業界を渡り歩いてきた「個人向け金融のプロフェッショナル」仲木氏だ。幅広い金融知識に加え、業界のルールやマナーを熟知している仲木氏が、COOとして寒竹氏をバックアップする。
寒竹氏は、「人を楽しませたい」という軸で就職活動を行い、丸井グループ(当時:丸井)に入社。店舗スタッフから財務まで、様々な業務を担当し、丸井グループのカルチャーを知り尽くしている。一方の仲木氏は、資産運用ビジネスに強い想いを持ち、三菱信託銀行や外資系金融機関を経た後、さわかみ投信にて副社長、ユニオン投信にて社長を務めるなど、金融業界でキャリアを積んできた。丸井グループへの入社の理由には、ビジョンへの共感と、丸井グループが積み重ねてきた“歴史”があると語る。
仲木私が目指しているのは、「想いを持ったお金」がたくさん活躍する世の中にしていくこと。自分の資産をただ貯めるのではなく、想いに共感した企業に託すことのワクワク感や楽しさを、多くの人に知ってほしいと思っています。「お金への不安を希望に変える」というtsumiki証券のミッションにも深く共感しましたね。
また、丸井グループはクレジットカード業界においては先駆的な存在であり、金融に関するノウハウや経験が豊富に存在することも、入社の決め手のひとつとなりました。エポスカードのおかげで、これまで金融機関がリーチできていなかった若い人にも想いを届けることができます。一般的に金融サービスは、多くのユーザーに浸透し、利用されるまでにとにかく時間がかかります。金融での“長い歴史”を持つ丸井グループなら、腰を据えてビジネスができると思いました。
“お客さま第一主義”はミッションではなく、丸井グループに染み渡る文化
仲木氏が丸井グループを選んだ理由には、お客さまとの向き合い方もある。
“お客さま第一主義”──この言葉は、小売のみならず、あらゆるビジネスにおいて標榜されるが、「金融業界において“お客さま第一主義”を貫いている企業は数えるほどしかない」と仲木氏は指摘する。
仲木金融業界では、多くの企業が“顧客第三主義”くらいになってしまっているのが事実。「お客さまのために」とは言うものの、稼ぐことが第一で、真の意味でお客さまのことを考えたサービスがあまり生まれてきませんでした。しかし、僕が丸井グループに入社して最初に印象的だったのは、“お客さま第一主義”の思考が当たり前の文化として根付いていること。
例えば、店舗で販売を経験しているので、tsumiki証券のメンバーにはコミュニケーションの研修がほぼ必要ありません。必要なのは、金融業界ならではの専門用語や知識の研修くらいです。これは金融機関ではありえません。この強みを活かせれば、金融商品がお客さまにとってどんなメリットがあるのかを誠実に提案でき、広めていけるのではないかと考えています。
寒竹丸井グループは、入社すると基本的には店舗へ配属されます。私も販売スタッフとしてキャリアをスタートしました。売場で実際に接客することで「どうすればお客さまのお役に立てるのか」を常に考えることを学びます。そうした経験によって、思考の中心に“お客さま“を据えられるのだと思います。
仲木どの部署の会議でも「それ、お客さまからは意見を聞いたの?」と問われるのは丸井グループならでは。逆に、現場の声を聞き、お客さまのニーズを捉えた企画であれば、年齢や役職に関係なく議論の俎上に載せられます。
実際に若手社員が中心となったプロジェクトから生まれた事業も2019年5月に発表された。
寒竹最近では、丸井グループの新卒1~3年目の若手社員が中心となって企画・検討を進めた、就活スーツとバッグのレンタルシェアサービス「COCONi」の実証実験がスタートしました。tsumiki証券のホームページも、金融知識に詳しくない若手社員が中心となり、誰にとってもわかりやすい表現を提案してくれています。
新規事業への参加は手挙げ制。社長直轄体制とグループアセットの活用によりスピード感ある立ち上げを実現
創業88年を迎える“歴史ある大企業”と聞くと、「スピード感がない」「下積み経験が長い」といったイメージを抱く読者も多いのではないだろうか。
筆者がストレートにその疑問を投げかけると、寒竹氏は丸井グループに存在してきた「積極性を肯定するスタンス」が、ここ数年でより強まっていると返した。
寒竹丸井グループには、自ら手を挙げた人から参加するメンバーを選ぶ文化があって、年齢や経験に関係なく、挑戦できる企業風土があります。tsumiki証券をはじめとした新規事業は「社長直轄体制」で、とにかく意思決定を早くするのが基本になっています。tsumiki証券も、準備室から事業化までわずか9カ月ほどでした。経営理念や判断基準がぶれないのは創業家が経営を行うメリットでもあるかもしれませんね。
また、歴史と規模を持ち合わせた丸井グループだからこそ実現できる「スピードの早さ」も存在すると、仲木氏は付け加える。
仲木他の企業がフィンテック事業に取り組もうとすると、カード会社やシステム会社を選定し、具体的に動き出すまでのコミュニケーションコストが大きい。しかし、丸井グループは自社でクレジットカードを発行し、システム会社をグループ会社として抱えているので、アイデアが通れば、すぐに実現へと動き出せます。
寒竹「丸井グループのミッション」「時流」「お客さまの声」の3つがすべて満たされていれば、すぐに動き出せる風土、リソースが丸井グループにはあります。また、tsumiki証券は、総合証券とは違い「つみたて投資のみ」を扱うビジネスモデルにしているので、一見近寄り難いと考えられがちな“投資”という商品を、「わかりやすくシンプルに」お伝えできるよう考えられているのも大きな特徴ですね。
日本人の“貯金”思考を変える、若手人材との壮大なミッションのはじまり
サービス開始から約10ヶ月、tsumiki証券は「10年後の預かり資産残高1兆円」を目標に掲げる。
ただ、その定量的な目標だけにはとらわれず、「証券会社はお客さまの幸せのための“手段”でしかない」というスタンスは変わらない。
仲木本来、若者向けの資産形成は儲からないんですよ。儲けるだけなら、お金がある人をターゲットにした方が手数料が高額になるため利益を上げやすいのですが、我々は儲けることだけを目的としていません。「全ては社会からの預かりものである」。丸井グループにはそういう考え方があります。ですから、証券会社の事業も、社会からの“預かりもの”であるお金の価値を最大化し、より良い企業に託すことだと思っています。
私は金融業界を渡り歩くなかで、共感した企業に“想いを持った”お金を託すことの楽しさを感じてきました。tsumiki証券は世の中にある多くの金融機関のように「お金を増やそう」を目的にしていないのです。「良い会社に投資しようという運用会社をパートナーにすることで、より良い会社に投資することができ、最終的に社会課題の解決につなげていこう」というマインドで投資商品を選んでいます。
投資したお客さまも、自分のお金が社会できちんと活かされている実感が持てれば、投資へのハードルも下がっていくと思います。投資信託自体がシェアリングエコノミーでもあります。tsumiki証券を通じて、投資の楽しさや可能性に気づいてくれる人を増やしていきたいと思っています。
寒竹tsumiki証券が目指しているのは「お金から自由になるサービス」。将来に向けて、お金への不安を感じる人が多いこの国において、ポジティブに活かされるお金を増やしていくことで、お客さまのお金に対する不安を解消していきたいと考えています。。tsumiki証券を通じて、未来への希望や想いを企業に託してくれる人が増えると嬉しいですね。
丸井グループは、2019年に長期的ビジョンを記した「VISION BOOK 2050」を発行。フィンテック事業の長期戦略の軸として、tsumiki証券は紹介された。今後、サービスを拡大させていくために、若手人材の活躍にも期待している。
寒竹氏が、tsumiki証券で求める人材の要素に挙げるのは「金融への興味関心より、お客さまを喜ばせるのが好きなこと」。
寒竹お客さまの多くが資産形成の「初心者」ということもあり、金融の専門家でない方が活躍できる会社なのではないでしょうか。tsumiki証券では、20代の「金融初心者」がいるからこそ、素朴な疑問から、初心者でもわかりやすUI設計やデザインが生まれています。むしろ、金融に苦手意識を持っている人の方が向いているのかもしれません。
仲木氏が挙げるのは「自分の意思を持って打席に立つ熱意」。5,000人以上の社員を抱える丸井グループでも埋もれない積極性を持った若手人材と「金融業界を変える」壮大なチャレンジに挑みたいと語る。
仲木僕が若手人材に求めることはシンプルです。自らアクションを起こし、機会を掴みに行ける人。金融への関心よりも、自ら試練に立ち向かいたいと思っている人こそ必要だと思っています。僕らのミッションは、「金融のイメージを変えること」。日本人の「貯金思考」を変革する壮大なチャレンジに、一緒に挑んでくれる若手と仕事がしたいと思っています。
創業から88年、ビジネスモデルの変革を繰り返す中で成長を続けてきた「歴史ある企業」には、“柔軟に変化する”というマインドセットが力強く息づいていた。昔ながらの小売業というイメージや、大企業だから「スピード感がない」「堅苦しい」といった印象は、インタビュー後にはなくなっていた。
同社は2021年3月期までの中期経営計画で、将来の企業価値向上につながる新規領域への300億円の投資、毎年10億円以上の人材への投資や、若手社員の中から毎年10名程度を選出し次世代リーダーとして継続的に育成する「次世代経営者育成プログラム」の実施等、更なる変化へ向け助走をはじめている。冒頭でも紹介した通り、丸井グループは小売と金融が一体となった事業を常に進化させ、新たな事業を生み出していく方針だ。「歴史ある企業のアセット」は、どこまで社会にイノベーションをもたらすのだろうか。
※営業利益の「小売事業」「フィンテック事業」の構成比は消去前の数値を使用しています。
【7/13開催】「本業は小売だけにあらず?」 小売×金融の独自ビジネスで成長する丸井グループの新規事業メンバーが語る「大企業で挑戦する魅力」と「本当のお客さま第一主義」とは?
【7/13イベントにご参加いただけない方】丸井グループの小売と金融一体の独自のビジネスモデルに興味を持った方は、ぜひインターンシップにお越しください。
こちらの記事は2019年06月21日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
編集者。大学卒業後、建築設計事務所、デザインコンサル会社の編集ディレクター / PMを経て、weavingを創業。デザイン領域の情報発信支援・メディア運営・コンサルティング・コンテンツ制作を通し、デザインとビジネスの距離を近づける編集に従事する。デザインビジネスマガジン「designing」編集長。inquire所属。
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藤田 慎一郎
1986年生まれ、東京都武蔵野市出身。日本大学芸術学部文芸学科卒。 「ライフハッカー[日本版]」副編集長、「北欧、暮らしの道具店」を経て、2016年よりフリーランスに転向。 ライター/エディターとして、執筆、編集、企画、メディア運営、モデレーター、音声配信など活動中。
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