「プロ人材」×「共創」で生み出すイノベーション──ファンズに学ぶ、革新的商品を生み出し続けるチームの秘訣
Sponsoredレイターフェーズを迎えると、往々にして専門性の高い優秀な人材は揃えられる一方で、「本音で意見をぶつけ合い、新たな価値を生み出す」組織づくりには苦戦するものだ。職種間の壁や専門領域の深さが増すほど、各々が自身の領域や美学を守りたがり、議論は“衝突”や、はたまた“遠慮”に流れ、十分なイノベーションを起こせないという話を聞いたことはないだろうか。
実際、多くのスタートアップが「プロ人材を集める→うまく連携させられず、事業の伸びが鈍化する」という壁にぶつかっている。では、どうすれば“専門家同士が遠慮なく踏み込める”組織をつくり、商品開発や新規事業を連続的に立ち上げられるのか。
そんな問いに対するヒントを、FinTech領域のスタートアップ・ファンズが示している。証券会社出身で営業を率いる坂本 直樹氏、監査法人出身で審査・商品設計に携わる杉原 真人氏、そして法律事務所で弁護士としてキャリアを積みながら“事業を推進する法務”を掲げる平山 照氏──。
それぞれ異なる専門性を持つ3人が、なぜ互いに躊躇なく踏み込み合い、競合他社に先んじた“業界初”の金融商品を次々と具現化できているのか。
取材を通じて浮かび上がったのは、ファンズが独自に培ってきた「忖度ゼロの組織文化」と、専門性を結集させる巧みな“商品開発ノウハウ”だった。本記事では3名の鼎談を通じ、スタートアップが非連続な商品開発を続けるための要諦を探る。読者には、自社で応用可能なチームビルディングや議論のあり方のヒントを、ぜひ持ち帰っていただきたい。
- TEXT BY SHUTO INOUE
- PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
- EDIT BY TAKUYA OHAMA
プロフェショナルの「沈黙」は、組織の成長を止める
スタートアップが組織を拡大すると、往々にして「専門性の壁」が立ちはだかる。各分野のプロフェッショナルを揃えたはずが、職能ごとに牽制や遠慮が生まれ、まるで”交わらない線”のごとく、議論が表面的になる。結果的に、チャンスを逃したり、事業の伸びが鈍化する──そんな状況を目の当たりにした経営者やリーダーは多いのではないだろうか。
ファンズは、各職能の“専門性の壁”をむしろ成長の原動力に変え、これまで業界で実現しづらかったような商品を次々と生み出し続けるスタートアップだ。営業・審査・法務という異なる専門家同士が“遠慮ゼロ”で踏み込むカルチャーこそ、その推進力になっている。では、そんな連携がなぜ当たり前のように機能するのか?
まずは、この独特な文化を形づくる中心メンバーたちの声を聞いてみたい。
坂本僕自身、これまで“専門性の壁”には何度もぶつかりました。例えばファンズに来る前までの環境では、「ここは営業の領域だから、審査側は口出ししない」みたいな不文律があって、議論すべき重要な論点ほど牽制し合ってしまうことが往々にしてありました。
結果、商品クオリティを下げる原因になることもよく見てきました。そんな経験から、「ファンズでは忖度は絶対にしない」と決めて入社したんです。営業であろうが法務であろうが、プロだからこそ口出ししてほしい。ファンズでは遠慮ゼロ・忖度ゼロで議論することに徹底してこだわっています。

杉原実際、私(審査担当)と営業の坂本さんが互いに容赦なく意見を出し合う光景を見て、他社の方は「そこまで突っ込むの……?」と驚くことが多いです(笑)。
でも、それこそがファンズの強みなんです。営業が「こんな商品を新たに作りたい」と熱弁すれば、審査側は「いや、◯◯な理由で厳しいですよ……」ではなく、「それなら、この指標を整えましょう」と実現に向けてスピーディに応対する。お互いを意識して“抑え合う”のではなく、“押し上げ合う”からこそ、プロダクトが爆速でブラッシュアップされるのだと思っています。

ファンズは、こうした「専門領域の越境」を徹底することで、多くの金融機関がリスク管理やコスト面で取り組みづらかった領域を切り拓いてきた。その象徴が、一定のリスクを容認した上でより予定利回りが高いファンドに対する投資機会を提供する『Funds Advanced』、マンション管理組合が抱える修繕積立金の不足という社会課題に踏み込んだ『Funds for マンション修繕積立金 応援パック』、そして海外の香港上場企業グループ向けにたった1円からの貸付投資を可能にした『K Cashファンド』だ。

取材内容等を基にFastGrowにて作成
いずれも、これまでの金融業界の常識ではリスク観点で実現困難とされてきたものばかりだ。しかし、ファンズでは営業・審査・法務の彼らを中心としたメンバーが一体となり、リスクとリターンを見極めながらその限界に挑むことで、事実、商品化に成功している。
平山「難しいことはわかってる。では、どうすれば実現できるか?」。ファンズにはこのカルチャーが根付いているからこそ、私も“攻めの法務”として力を存分に発揮できていると感じています。
一般的に、法律事務所で顧問先企業などから外部弁護士として相談を受ける立場では、「法的なリスクがある」「規制に抵触するおそれがある」など、想定されるリスクの有無を検討し、指摘する“ブレーキ役”としてのアドバイスが求められることが多いように思います。

平山ファンズでは、営業や事業開発などの事業部門から「ここをクリアできれば面白い商品が提供できる」「こういうスキームは実現できないか?」といったアイデアが次々と提示され、新たなビジネススキームを事業部門と一緒になって検討することが求められます。
最初は法務としてのポジションのとり方に悩むこともありましたが、“攻めの法務”・“事業を加速させるための武器としての法務”というファンズらしい発想へ次第にアジャストし、新規事業や商品開発に直接的に関与できることにやりがいを感じながら業務に取り組めています。
かくしてファンズでは、「忖度なしの議論」が日常風景になっている。たとえば営業の坂本氏が「この商品をどうしても実現したい」と提案すると、審査担当の杉原氏が即座に「このような条件でなければ審査を通すことは難しい」と財務・事業分析観点でのリスクを提示する。それに対し法務の平山氏は、「このようなスキームであればクリアできるかもしれません」と具体的な解決策を提示する──。まさに、プロフェッショナル同士の本音のぶつかり合いだ。
証券会社や監査法人、法律事務所といった、既存の厳密なルールに則り業務を遂行することで価値を発揮する環境に身を置いていた3人が、「こんなにアグレッシブに事業に参画できるのか」と驚くほど、組織全体が“新たな価値創出に向けて、忖度なく言い合える”雰囲気を歓迎している。
結果として、競合他社が手を出していない、いや、出せていない領域にも、スピーディかつ大胆にチャレンジすることができるのだ。
「金融の常識から自由になる」。
3人のプロ人材がファンズを選んだわけ
このように、各領域のプロフェッショナルたちが己の技をぶつけ合う環境は、傍から見ても魅力的に映るもの。しかし、前職は前職でそれぞれハイレベルな場に身を置いていたことは想像に容易い。それでもなお、彼らのようなプロフェッショナル人材を引き込む組織には、一体何があるのか。
ファンズで営業を担う坂本氏は、以前は証券会社の投資銀行部門に在籍し、IPO(新規株式公開)の支援も担当していた。そこで目の当たりにしたのが、IPO企業と証券会社との間にある企業価値に関するギャップだ。
坂本証券会社にいた頃、企業が想定していたバリュエーション(企業価値評価)と、上場時に証券会社が算出する評価額が大きく乖離するケースを何度も見てきました。
企業が想定していたバリュエーションの半分以下で上場する例も珍しくなく、「IPO企業と証券会社、また、資本市場との目線に大きなギャップがある。現状のままでは、日本国内において本当に良いサービスや業界を牽引する企業が生まれないのでは?」と強い疑問を抱くようになったんです。
その違和感から、坂本氏は「金融の常識を逸脱し、資本市場においても企業価値が十分に評価される形で、期待に応える金融サービスを作りたい」と考え始めた。そしてその先に行き着いたのが、ここ、ファンズである。ファンズには、証券会社では実現しきれなかった想いを形にできる土壌があると直感した。

坂本 ファンズの商品を初めて見たとき、「今までの世の中にはない金融サービスだ……」と確信しました。大手金融機関では実現しがたい「個人向けの貸付型ファンド」という領域で、明確な社会的意義を感じました。
ファンズに感じた社会的意義
- 資産運用のハードルを下げ、金融リテラシーを高めること
- 企業の成長を促進する新しい資金循環を生み出すこと
- 社会課題解決に資する企業活動を後押しし、投資を通じて社会貢献の実感を広げること
- これまでにない金融商品や選択肢を社会に提示すること
坂本しかも、資本市場ではメインクライアントとはなりづらい”上場スタートアップ”を始めとする独自の顧客層に焦点を当てている。世の中には有望な上場スタートアップも多く、大きなポテンシャルがある一方で、上場後の支援は途端に手薄になります。デットもエクイティも選択肢が限られており、成長資金の確保は容易ではありません。こうして構造上成長投資が抑えられてしまうが故に、その後の成長が鈍化してしまう。
ファンズはこのような課題を抱える企業にとって、新たな資金調達手段を提供しています。僕が本当にやりたかったのは、まさにこういう金融サービスの提供なんだと感じました。
Fundsを初めて知る読者の中には、「個人向けの貸付型ファンド?」と感じる人もいるはずなので、補足を入れよう。この仕組みは、企業が必要とする資金を、ファンズが組成するファンドを通じて個人が“貸し出す”ソリューションだ。
これはユーザーである個人にとっては、株式のように値動きを追う必要はなく、事前に決められた利回りを得られるのが特徴。いわば、企業向けの“資金調達”と個人の“資産運用”をつなぐ、新しい金融のインフラなのである。
では次に、審査・商品設計を手がける杉原氏。彼は公認会計士の資格を活かして監査法人でキャリアを積んできた人物だ。しかし、企業の数字を“監査する”に終始する日常に疑問を覚え、「自分がプロダクトを作る側に回れないか」と模索していた。
杉原会計士として監査法人で働いていると、キャリアの多くは“企業を支援する”立場に限られます。ですが私はというと、“自分の力でプロダクトを生み出してみたい”と、会計士らしからぬ思いが徐々に芽生えてきてしまったんです(笑)。
そんな矢先に、ファンズが“金融業界にまだない新しい商品を作る”という旗をかかげていると知ったとき、迷わず「ここだ!」と思いました。自分の専門性を活かして、まったく新しい金融サービスを生み出していける。そんな可能性を感じてジョインすることを決めました。

杉原氏にとって、ファンズへのジョインは、これまで歩んできた会計士としてのキャリアの延長線上にはない、非連続な挑戦だ。それは、自らの専門性の枠を超えて「プロダクトをゼロから作り出す」という、全く新しい経験への踏み出しでもあった。
さらに、法律事務所でキャリアを歩んできた平山氏も、ファンズへの出向によって、Fintechスタートアップの企業内弁護士という新たな分野に挑戦することとなった。一般的には“紛争対応”や“リスク管理”を担うイメージの強い弁護士だが、平山氏は「法律を駆使して事業推進をサポートする」というファンズの法務の姿勢に共感し、積極的にスタートアップの世界へ飛び込んだという。

平山弁護士になり立ての頃は、外部の顧問弁護士としてスポットで相談を受ける場合、クライアントのビジネスに目を向けずに、目の前の論点に対して法的に正しい答えを出せば、それで役目を果たしたと満足していました。ですが、その後、M&A案件への関与や上場企業法務部への出向などを経て、クライアントのビジネスを理解することの重要性を学ぶとともに、リスクを指摘するだけが弁護士の役割ではないと感じるようになりました。
そんな時にファンズに出会い、法務が営業や審査等の他部門と一体になって事業を推進できる環境に魅力を感じ、迷わず飛び込みました。
ファンズでは、「法的リスクを洗い出す」だけではなく、「どうすれば法的課題をクリアし、事業を前に進めることができるか」を検討するスタンスが当たり前に求められる。そのような“法務のロールモデル”に、平山氏は大きな魅力を感じたのだ。
証券会社から「社会的意義のある金融サービス」の提供へ。また、監査法人から「既存業界にはないプロダクトづくり」の追求へ。そして、法律事務所から「攻めの法務による事業推進」の実現へ──。3人とも、単なる“専門家の延長”ではない形で自らの能力を広げたいと考え、ファンズを選んだ。
そして、ファンズも彼らのプロフェッショナルな能力をそのまま活用するのではなく、更なる進化を前提とした機会提供を行っていることがわかる。徐々に、ファンズに優秀な専門家人材が集う理由が見え始めてきたのではないだろうか。
リスクと利回りを“その場で調整”できるチームが、投資家ユーザーの信頼を築いた
では、ファンズが掲げる“既存の金融業界にはない価値創出”に向けて、彼らはどんな取り組みをしてきたのか。冒頭に列挙した、ファンズが実際に手掛けた画期的なプロダクトを例に、専門家同士の“遠慮なき連携”がどのように繰り広げられているのかを見ていこう。
まず前提として、ファンズがローンチ以来提供してきた個人向けの貸付型ファンドは、上場企業への貸付を中心とした“リスクを抑えた安定運用”を強みとしていた。だが、そのファンドに出資する投資家ユーザーの中には、「もう少し利回りを求めたい」という声も日増しに高まっていた。
そこで誕生したのが『Funds Advanced』だ。投資経験や金融資産などの一定基準を満たし、金融商品のリスク特性を高度に理解できると判断されたユーザーだけに限定して提供される、特別なファンド商品である。
従来のFundsの特長である「はじめて資産運用をする人でも手軽に投資を体験してもらえるよう、上場企業を中心とした、リスクを抑えたファンド商品を提供する」といったブランド思想を大きく損なわずに、リスク許容度の高い投資家向けに利回りの上振れを狙う。いわば、「これまでの商品の延長線にありながらも、一歩踏み込んだ」貸付型ファンドと位置づけられる。
坂本正直、安易にリスクを上げてしまえば利回りが出るのはわかります。しかし、私たちファンズの理念として、「投資家と借り手企業の双方に納得してもらえるラインを見極める」ことは譲れませんでした。
そこで法務部や審査部と議論を重ねた結果、見えてきた新しいファンドの形が、この『Funds Advanced』なんです。
海外では、セカンダリーマーケット*を始めとした、個人投資家が中程度のリスクを含む金融商品に比較的容易にアクセスできる仕組みが整っている。一方、日本では投資家保護の観点や法制度の制約から、こうしたマーケットが十分に育っておらず、“ミドルリスク・ミドルリターン”に対する潜在的なニーズこそあれど、適切に受け皿となる制度や基準が限られていたのだ。
*一度発行された株式や債券などの金融商品が、投資家同士の間で売買される市場のこと。流動性が高く、投資家が保有資産を自由に売買できるため、幅広いリスク商品の流通が活発に行われている。
『Funds Advanced』では、既存の商品よりも返済順位を低く設定したり、金利を高めに設計したりといった、“リスクを少し上乗せする”工夫がなされている。そのぶん、投資家であるユーザーには従来より高めの利回りを提示できるというわけだ。
杉原リスクをとるならそれ相応の利回りが必要です。でも、リスクが跳ね上がるとユーザーは納得しにくい。そこで、どの程度の返済順位や保証内容、企業の財務指標を設定すれば、彼らにとって許容範囲になるかをゼロベースで作り直したんです。
難しい挑戦でしたが、『Funds Advanced』では、ファンズがこれまで積み重ねてきた審査の経験値を存分に活かすことができたと思いますね。

こうして審査部門では、リスク評価を緻密に見直しながら、“ユーザーである投資家に魅力的と感じてもらえる商品”をどう実現するかを突き詰めていた。しかし、いくら理詰めで設計しても、現場で借り手となるクライアントと対峙する営業チームからは別の課題が浮上してくることがあったという。
杉原実際、営業チームから「こういう説明ではクライアントとなるCFOや財務の責任者にご納得いただけない」という声が多々あったんです。そこで私自身がクライアントとの面談に同席して、「この利回りにはこういった仕組みや根拠があるんです」と一つひとつ説明しました。
そうするとクライアントからは、「ここは納得できるけど、ここはもう少し譲歩して欲しい」という要望がその場で返ってくる。それをリアルタイムで審査基準に反映できるのは、“部署間のハードル”が低いファンズならではですよね。
通常、審査担当が営業の現場に同行し、ユーザーや顧客企業と直接対話するのは極めて稀なアプローチだ。
しかしファンズでは、「ユーザーに粗悪な商品を提供しない」「ユーザーが安心して資産形成できる環境を整える」といった、投資家保護に直結した明確なスタンスを、営業・審査・法務すべてのメンバーが共有している。だからこそ、部署間の垣根を意識せず、率直で建設的な議論を交わしながら商品を磨き上げることが可能になるのだ。
坂本今回の『Funds Advanced』のような商品を作るときはまさに顕著でしたが、ファンズでは“自分たちだけが儲かればいい”なんて発想には絶対にならないんです。
むしろ、審査や法務から「そこはユーザーにとってリスクが大きすぎませんか?」と意見が上がったら、「どうしたらユーザーにより良い設計が提供できそうでしょうか?」とすぐに建設的な議論が始まる。各専門家が遠慮なく指摘と助言をしてくれるからこそ、ユーザーにとって価値ある商品づくりに挑むことができるんです。
平山法務としても、“どうすれば実現できるか”を徹底して考えるのがファンズ流ですね。『Funds Advanced』の開発においては、一般的な“メザニンローン”*とは異なり、「他の債権者との関係では劣後関係は設けず、Funds内での返済順位のみを下げ、利回りをやや高める」という発想を取り入れました。“メザニンローン”の構造をファンズ独自にアレンジした形ですね。
*“中間”を意味し、企業が借りる資金の中で、銀行融資よりも返済順位が低く、株式ほどの不確実性はないという中間的な立ち位置にある。投資家にとっては、ミドルリスク・ミドルリターンのバランス型商品として注目されている。
もちろん、対象投資家の条件設定、投資家へのリスク説明の方法など、法務面で詰めなければならない項目は多かったですが、営業・審査と並走して「ここまでなら実現できる」と一つひとつ擦り合わせてプロダクトづくりに携わっていけることは、ファンズならではの特長だと思います。
こうして生まれた『Funds Advanced』は、ユーザーにとって“従来より一段高めの利回り”を狙える新たな選択肢になっただけでなく、企業側にとっても柔軟な資金調達を得る道を開いた。果ては、日本の個人投資家が株式や預金以外の運用手段を持ちにくかった構造を変える可能性すら秘めていると言っても過言ではない。まさしく、「今までの金融業界にはない価値創出」を成しているのが、ファンズなのだ。
こうしてファンズは、金融業界の常識にとらわれず、構造的に難しい市場にも果敢に踏み込んできた。だが彼らの視線は、さらに“金融の外”にまで向かっていた──。
社会課題を“金融商品”に変えるには、プロフェッショナルの連携が欠かせない
次なる挑戦の舞台にファンズが選んだのは、「マンション管理組合」だ。資産運用とは無縁に見えるこの領域にこそ、解決されていない社会課題と、ファンズに集う専門家の連携によってしか突破できない構造があった。
坂本『Funds Advanced』を作ったときもそうでしたが、私たちは“売れる商品”を作るだけでは満足できないんです。「社会課題に寄与する商品」を作りたい──この強い思いがファンズという組織の魅力の一つです。その意味で、マンション管理組合の修繕積立金問題は、まさに無視できない社会課題の一つでした。

マンション管理組合が抱える修繕積立金の不足は、日本全体が直面する深刻な課題だ。大規模修繕を必要とする多くのマンションでは、昨今の人件費や資材費の高騰に伴う修繕費用の上昇などに伴い、修繕費は年々増加。一方で、初期の積立金を低く抑えてしまった結果、後に入居した住民が高額な負担を強いられるケースも多い。それでも必要な修繕費用を十分に賄えていないマンションが少なくないのが現状だ。

さらに、近年の物価上昇に伴い、積み立てた資金の実質価値が目減りするリスクも顕在化。国土交通省も対策を急ぐほどの喫緊の社会問題であり、住民個人の資産価値にも大きく影響するテーマだ。
ファンズは、管理組合が専門知識を持たずとも適切に資金を運用し、結果的に住民の資産価値を守れる仕組みを提供したいと考えた。短期的な収益には直結しにくいかもしれないが、“社会的意義が極めて大きいプロダクト”として、ファンズの成長を長期的に支える柱になると見据えている。
杉原 マンション管理組合の積立金は、企業のように財務諸表を読み解けば済む話ではありません。各組合ごとに置かれた状況が全然違いますし、“投資商品”としての適合性を判断するための基準作りも一筋縄ではいきませんでした。
営業と何度も協議を重ね、「ここまでなら管理組合にとって運用しやすい」「これなら借り手企業にもメリットを感じてもらえる」という落とし所を、試行錯誤して見つけたんです。
一方、営業チームが直面したのは、投資家にあたるマンション管理組合サイドへの“安心感”の提供という新たなハードルだった。管理組合側は営利企業ではなく、住民から預かった資金をどう運用するかという合意形成に極めて慎重だ。投資先の選定において、時には“格付け”のような分かりやすい指標を求められることもあり、営業面での調整は想像以上に難度が高い。

坂本営業していてネックになるのは、管理組合の方々が「格付けがあるわけでもないし、本当に大丈夫?」と疑問を抱きやすいことです。
理事会の合意形成もひと筋縄ではいかない。信用格付けのようなわかりやすい指標があればきっと理解も得やすいはずなのですが、Fundsの借り手企業の多くは上場スタートアップ。現実はそう単純ではありません。そこをどうクリアするかは、営業チームだけで悩むのではなく、審査や法務にも意見を求めつつ、常に議論していました。
平山マンション管理組合向けの商品開発は、法務の面でも相当なチャレンジでしたね。
修繕積立金の運用範囲や、住民の合意形成を踏まえた投資家保護の仕組みなど、一つひとつ丁寧にクリアすべき課題がありました。だからこそ、営業や審査と密に連携してラインを定め、最終的に“安心して導入できる商品”として設計することができたのだと思います。

坂本最終的には、どの管理組合でも、またその組合側に運用に関する高度な専門知識がなくても、「ファンズなら大丈夫」と思ってもらえる世界観をつくりたいんです。インフレが進んで、住民がコツコツ貯めた修繕費の価値が目減りしてしまうのは悲しいことです。
僕らは将来的にファンズがもっと大きくなっても、“社会的意義の高い商品づくり”が当たり前の企業でありたい。その第一歩が、このマンション管理組合向け商品であって欲しいと思っています。こういった“社会に求められる”商品こそがファンズの成長を支えてくれると信じています。
こうして誕生したマンション管理組合向け商品は、一見地味ながらも、ファンズが大切にする「投資家目線」と「社会課題へのコミット」を体現する象徴的な商品といえよう。“住民が積み立てた修繕費を守る”という強い意義にこだわり、各専門家が徹底的に意見を交わしたからこそ生み出すことができたのだ。
ここまで読むと、「確かにファンズは既存の金融機関では実現し難い新たな価値を生み出し続けている」「そしてそれは、各領域のプロフェッショナルたちが共通のミッションのもと、本気でユーザーのためにぶつかり合っているからなんだ」と確信を得てきているのではないだろうか。
しかし、そんなファンズに集う専門家たちが生み出す価値は、まだまだ、こんなものではなかった。「業種を超えたサービス?そんなの序の口だ」と言わんばかりに、その範囲は“国境”をも飛び越えていたのだ──。
未踏の海外ファンドも、専門家が即応できる組織だからこそ実現できた

香港の上場企業に、日本の個人投資家が1円から貸付投資できる──。
「そんな仕組みが本当に成立するのか?」。おそらく今、十人が十人、そう感じたはずだ。
2024年6月に公開された『K Cashファンド#1』は、ファンズが従来から取り組んできた「日本の投資家がまだ触れられていない価値ある機会」を世界規模に広げるチャレンジだ。
香港証券取引所に上場(2023年)するK Cash Corporation Limited(以下、K Cash)を参加企業とするこのファンドは、ファンズの貸付型プラットフォームを活用しながら、日本国内の個人投資家に少額から香港の上場企業グループへの貸付投資を可能にする仕組みを生み出した。
海外の上場企業グループに、わずか1円から貸付という形で投資できる選択肢は、日本国内の投資市場ではほぼ前例がない。これを実現するため、ファンズは香港への現地調査を含め、営業・審査・法務のチームが未知の領域に踏み込んだという。
坂本数年前に香港の仲介会社とやり取りしたとき、「海外企業が日本からも資金を調達できないか」という話がありまして。
香港やシンガポールは日本と比較し金利が高いので、その金利差を活用できれば企業にもメリットがあります。また、日本の個人投資家からも「海外企業に投資したいがなかなか方法がない」というニーズが出ていました。じゃあ、それをファンズ流に形にしてみよう、と始まったのがK Cashファンドです。

とはいえ、海外案件は“右も左も分からない”状態からのスタートだった。国内企業へのファンドと同じ手続きが通用するわけでもなく、信用審査や法務面で想像以上の手間と時間がかかる。そこでファンズでは、営業・審査・法務がさらに密に連携し、“海外でも通用する基準”を見出していったのだ。
杉原正直、最初に香港の上場企業の話が出てきたときは、具体的にどう審査すればいいのか皆目見当がつかない状態でした。
国内案件と同じ基準では通用しないし、万一回収が滞ったときの仕組みも含め、検討すべき点が山積みで……。もう「これ、どう進める?」って手探りの議論から始まりましたね(笑)。

坂本ユーザーからすると、馴染みの少ない海外企業。極端なことを言えば、「ペーパーカンパニーじゃないのか?」という疑問からスタートするわけです。そのようなユーザーの視点も丁寧に払拭していく必要がありました。
だから直接香港に赴いて、K Cashのオフィスを実際に見たりもしました。社員がちゃんと働いているか、経営陣のビジョンは確かか、そういう現場感を掴むためには“自分の目で見る”のが一番早い。書類だけじゃ分からないリアルな企業像を把握できるのは、大きかったですね。

平山海外案件になると、日本の法律だけでなく香港の法制度、連帯保証の有効性、債権回収の実現可能性の検討なども慎重に行う必要があります。
そこで香港法務に精通した法律事務所と連携しながら、投資家保護の仕組みを詰めていきました。「国内と同じ発想は通用しない」という難しさもあって、営業・審査と連携する意義をより強く感じましたね。
K Cashファンドのプロジェクトを振り返ると、これまで語られてきた“ファンズらしさ”がさらに際立つ。
「投資家を守る」「社会的意義を見失わない」──この大原則のもと、杉原氏が「じゃあ信用評価をどう進める?」と投げかければ、坂本氏が「現地調査しましょう」と即断。そこに法務の平山氏が「ここをクリアすれば商品化できる」と視点を加える。
お互いの専門領域を越境し、まるで即興演奏のようにアイデアを出し合うやり取りが、海外案件の複雑さを乗り越えた最大の要因だったという。
坂本僕ひとりじゃ到底無理だったと思います。海外市場という新たな挑戦には、営業・審査・法務の連携はなおさら重要でした。国内と同じ発想では無理だし、何か新たな論点が発生すれば即座に相談して最適解を見つけるしかない。
このファンドを1年弱で形にできたのは、組織全体に“困ったら即連携する”カルチャーが根付いていたからこそだなと。今後は香港以外の海外市場にも挑戦してみたいですよね。
K Cashファンドは、日本の個人投資家にとって“海外上場企業グループへの貸付投資”という選択肢を、初めて低い敷居で提示した点で画期的と言える。企業側にとっても、日本市場からの新たな資金調達ルートを得られる意味は大きい。この海外案件の成功体験は、ファンズが今後さらにグローバル視点を取り込み、前例のない金融商品の幅を広げるための大きな一歩となったのだ。
忖度のない組織だけが、プロ人材の価値を最大化できる
ここまで見てきたように、“職能の壁”を巧みに取り払い、専門家同士が遠慮なく意見を交わせる環境こそが、ファンズという組織の成長ドライバーになっていることは明らかだろう。
その背景にあるのが、「投資家を守り、社会意義のある商品を提供する」という一貫した軸の存在。誰もがこの共通の目的を軸に、本音をぶつけ合い、前例のない商品開発に挑んできたのである。
坂本ファンズにいるからには「この商品は、本当に社会にとって意味があるか?」を問い続けたいです。
利回りだけを求めるなら、もっと手っ取り早い方法もあるでしょう。でもファンズはチーム全員が、社会的意義、すなわち社会課題を金融の力で解決できる領域が“まだまだある”と信じています。「この課題は、なぜ我々がやるべきなのか?」──、その問いを常に持ち続けることが、ファンズらしい商品開発の原動力になると思います。

杉原私は、営業・審査・法務がそれぞれ専門性を発揮しながら、自由にオーバーラップして議論できる組織文化を大切にしてきたからこそ、ここまでのファンズがあると思っています。
今後、海外の案件や新たな専門領域へと挑んでいくなかで、このカルチャーをさらにアップデートし続けなければいけない。いずれ、“国内外をつなぐ”唯一無二の金融プラットフォームになるには、今からが本当の勝負どころですね。

平山ファンズでは、法務が“事業の推進役”にもなることができ、営業や審査と同じテーブルで、新しい商品づくりに深く関わることで、法務の役割もどんどん広がっていきます。あまり議論されていない法的な論点について法務で検討した結果がプロダクトに反映されるといったことがあると、事業成長への貢献を実感することができます。ファンズの法務は今後も、法律を駆使して事業推進を強力にサポートする役割を担い、Fintech法務のモデルケースになれるものと信じています。

それぞれの立場が従来の枠に縛られずに連携し合う姿は、成長フェーズに差し掛かったスタートアップが理想とする“専門家同士のチームアップ”を体現しているように思える。職能の壁を超え、本音を言い合えるからこそ、常識を覆す新商品が次々と市場に投入されるのだ。
“多様な人材を集める”こと自体は、もはやスタートアップにとって珍しくない。だが、“異なる専門性を有するプロフェッショナル同士が衝突を恐れず、本質に踏み込む議論を続ける”文化を醸成するのは容易ではない。ファンズはその難題をクリアし、世にない価値を生み出し続けるロールモデルとなりうるのではないだろうか。
『Funds Advanced』やマンション管理組合向け商品、そしてK Cashファンド―どの事例をとっても、専門家同士が忖度なく向き合う姿勢がイノベーションの源泉だ。結局、“優秀な人材を揃える”ことよりも、“優秀な人材が志を同じくし、だからこそ遠慮なく踏み込める”組織こそが、長期的に新たな市場を切り拓く。ファンズの挑戦は、まさにその真髄を示していると言えるだろう。
ファンズ株式会社 第二種金融商品取引業
関東財務局長(金商)第3103号
加入協会:一般社団法人第二種金融商品取引業協会
手数料・リスクについて https://funds.jp/terms/commission-risk-matters
こちらの記事は2025年05月16日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
執筆
井上 柊斗
写真
藤田 慎一郎
編集
大浜 拓也
株式会社スモールクリエイター代表。2010年立教大学在学中にWeb制作、メディア事業にて起業し、キャリア・エンタメ系クライアントを中心に業務支援を行う。2017年からは併行して人材紹介会社の創業メンバーとしてIT企業の採用支援に従事。現在はIT・人材・エンタメをキーワードにクライアントWebメディアのプロデュースや制作運営を担っている。ロック好きでギター歴20年。
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