INTERVIEW
磯部 泰之 家入 一真
18-10-15-Mon

「スタートアップは破壊より連携を」セゾン・ベンチャーズ×CAMPFIREで創る、お金がなめらかに流通する世界

TEXT BY TOMOMI TAMURA
PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA

大手カード会社、クレディセゾン。
国内カード業界では初のCVCとなるセゾン・ベンチャーズが2015年に誕生した。
リテールファイナンスのノウハウや顧客基盤を生かし、
フィンテック領域やIoT領域、AI領域など幅広い領域のベンチャー企業に投資している。

その投資先の一社が、クラウドファンディングを運営するCAMPFIREだ。
両者はどのようなシナジーを生もうとしているのか。
セゾン・ベンチャーズの磯部泰之氏とCAMPFIREの家入一真氏に話を聞いた。

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ようやく浸透し始めた、新しい資金調達の手段

CAMPFIREはなぜセゾン・ベンチャーズから出資を受けたのか、これまでの歩みと、セゾン・ベンチャーズとの出会いについて教えてください。

家入CAMPFIREの創業は2011年。アメリカで「Kickstarter」という資金集めの新しいプラットフォームが誕生したことを知って、「日本では僕がやらないといけない」という使命感にかられて立ち上げました。

というのも、貧しい家で育った僕は、学校に通うために新聞配達をして奨学金をもらう新聞奨学生で、やりたいことがあっても資金がなくて実現できなかった過去があるんですね。クラウドファンディングは、そういった個人が小さく声をあげられる新しい資金調達の手段。

ただ創業からしばらくは、個人がお金を集めることに対して、批判の声はとても多かったです。特に、個人的なプロジェクトに関しては、自分のお金でやりなよ、と言われてしまう。クラウドファンディングは、手を挙げた人に共感した人や応援したい人が出資することで、その人も当事者になれる新しい消費の形です。それを地道に伝え続けたことで、ようやくここ2〜3年で状況は変わってきました。

家入これからクラウドファンディングは、支援の形や個人間の送金の仕組みなど、形を変えながら拡大していくと考えています。僕らも新たなサービスとして、友人や知人間で気軽に少額の資金を集める「polca」というフレンドファンディングを2017年に立ち上げました。これは、友人の誕生日パーティー費用や、おばあちゃんの入院費用を集めたりできるというもの。

アメリカでも個人間でファンディングするプラットフォームが伸び始めていますし、polcaも立ち上げ以来順調に成長しています。この他にも、既存のクラウドファンディングの仕組みで実現できていない、さまざまな個人による資金集めの仕組みを作りたいと考えたところで、セゾン・ベンチャーズさんとお話をする機会を得ました。

polca(ポルカ)- フレンドファンディングアプリ

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もともと注目していたクラウドファンディング

お二人が知り合ったのは、今回の出資のお話のときが初めてですか?

磯部僕は個人的に家入さんを知っていたのですが、お話ししたのはそのときが初めてでした。以前、新規事業を担当していたときに、クラウドファンディングに注目していたんです。日本にある20社以上の会社を直接訪問し、調べて回ったこともあります。その中でも、創業間もない頃からCAMPFIREさんは気になる存在だったんですね。

ただ、その後、家入さんは都知事選に出馬したり、SNSで炎上したり、ちょっと危険な人なのかなと思っていました(笑)。

家入炎上しましたからね(笑)。

磯部でも、初めて家入さんと話したとき、メディアを通して見ていた家入さんとは全く異なる印象を受けました。「金融業界を壊す!」みたいな発言をされそうなイメージもあったのですが、そんなことは全くなく、とつとつと、言葉を一つずつ選びながら丁寧に話す方でした。

ずっと注目していたけれど、僕らの会社では実現しにくかったクラウドファンディングを家入さんは形にしています。「個」の課題を解決するこの領域は、テクノロジーの進化によって今後新しい仕組みが次々と生まれるはず。だから、ぜひご一緒したいと思いました。

セゾン・ベンチャーズは、創業からの3年間で数十社に出資しており、共通しているのは、コンシューマーコマース、BtoBのスモールビジネス、セキュリティやAIなどテクノロジー関連の3つの領域。クラウドファンディングはCAMPFIREさんが初めてで、自分たちには無いユニークなアプローチが魅力でした。

家入僕は、クラウドファンディングによってお金がなめらかに流通する世界がつくれると信じています。そのためにも、歴史ある大きな既存業界と新しいテクノロジーやサービス、プロダクトを接続したいと思っていました。

最近スタートアップ界隈では「既存業界の破壊」や「ディスラプト」といったキーワードが流行っていますが、僕は普段あまり使わないようにしています。いつ自分たちが「破壊される側」に回るかわからないし、新しいサービスを世の中に普及させていくときには、いま人々が活用しているものと連携していったほうが最終的に大きなムーブメントを起こせると思っていますから。

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金融大手×クラウドファンディングで新しい社会を

CAMPFIREはさまざまな企業と提携されています。セゾン・ベンチャーズとはどのようなシナジーを生みたいとお考えでしょうか。

磯部今、クレディセゾンのいろんな部署の人が家入さんに相談して新しい事業を模索しています。なかでも、セゾンカード・UCカードの永久不滅ポイントは、クラウドファンディングとの親和性が高いので、新たな仕組みを考えているところです。

家入セゾンカード・UCカードは、ポイント交換による寄付でIPS細胞研究所の支援や被災地支援などをすでにやられていますからね。システム連携は双方にとって重いプロジェクトになりますし、セゾンカード・UCカードのユーザーさんにとっても、いきなりクラウドファンディングと言われても戸惑うはずです。だけど、地方創生や社会貢献などの寄付型クラウドファンディングはたくさん扱っているので、それをポイント交換と連携できないかを模索しているところです。

また、polcaはクレジットカードを使って支援するサービスですが、クレジットカードを持てない中高生も使えるようにしたいので、そういった部分を別の形で解決する連携もしていきたいですね。

磯部そうですね。日常的なお金のやりとりは身近すぎて見過ごしがちなのですが、不便な点はたくさんあるはずです。金融関連の大企業では手が回りきらないような、そういった小さな課題もCAMPFIREさんは掘り下げて考えているので、新しい仕組みが生まれやすい。

これから、お金の価値観はもっと変わっていくはずですから、そこで何ができるのかを考えて、長期的に連携していきたいと思っています。CAMPFIREさんは、小さな「個」にスポットライトを当てている素敵なフィンテック企業です。一緒に取り組むことで喜ぶ「小さな個人」を増やしたいと思っています。

家入クラウドファンディングですべての課題が解決するとは思っていないですし、掲載したプロジェクトの全てで資金を集められるわけでもありません。だけど、クラウドファンディングがカバーするあらゆる領域にできることがあれば、一つひとつ向き合っていきたいですね。

磯部セゾン・ベンチャーズはファンドではありませんから、短期的な投資リターンを求めているわけでも、出資先に対して「何年までに上場」といったイグジットを求めているわけでもありません。だから、クレディセゾンが解決しきれていない、ベンチャーだからこそ解決しやすいユニークな事業や経営哲学を持つ企業への出資を常に検討しています。

家入さんも、マーケットサイズなどではなく、CAMPFIRE社を通じて成し遂げたいご自身の夢やビジョンを、私達にたくさん語ってくれました。その点こそが、セゾン・ベンチャーズが出資を決めた理由でした。これからもCAMPFIREさんにはとても期待しているので、クレディセゾンの金融ノウハウや顧客基盤などを生かして、ぜひたくさんのシナジーを生み出していきましょう。

[文]田村 朋美
[撮影]藤田 慎一郎

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