調達するVCの見極め方とは?起業前20代へのアドバイス

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石橋 孝太郎
  • 一般社団法人STUDY FOR TWO 代表理事 

1991 年生まれ、早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。2010 年 4月、途上国の子どもたちの教育支援を実施することを目的とした STUDY FOR TWO を立ち上げる。その後複数のベンチ ャー企業での事業立ち上げを経て、クルーズが主催する地方行政と一緒に地域課題の解決に臨むビジネスコンテスト「BIZCAMP」等各種イベントの企画運営および、同社の新卒採用業務を担当。2016年11月より若手起業家に特化した投資会社CROOZ VENTURES株式会社を立ち上げ、取締役に就任。リサーチ・発掘からデューデリジェンスまでこなし、設立から現在に至るまで20社ほどの投資実行を担当してきた。特にシードラウンド向けの投資活動においては、開始3ヶ月程度で投資額の2倍以上の含み益を生み出すに至っている。

木下 慶彦

ベンチャーキャピタリスト。U25のスタートアップへの投資をメインに行うシードファンドを運営するSkyland Venturesの代表パートナー。 “The Seed Maker.”というミッションを掲げ、テクノロジー産業に大きなインパクトを与える種(シード)を創るためのリスクマネーを提供するベンチャーキャピタル(VC)として、現在、日本国内を中心に40社超へ投資し、総額14億円を運用。1985年生まれ横浜出身、早稲田大学理工学部卒業。Skyland Venturesをスタートする以前は証券会社系VC、独立系VCに所属していた。

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そんなことを迷う20代も多いだろう。

そこで今回は、Under25(25歳以下の意。以下U25)の起業家にメインで投資している「Skyland Ventures」代表の木下氏、「クルーズベンチャーズ」取締役の石橋氏に話を聞いた。

  • TEXT BY REIKO MATSUMOTO
  • PHOTO BY TAKUMI YANO
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「ソフトバンク孫さん、メルカリ山田進太郎さんも学生時代から起業が近くのものだった」

木下今の世の中、若くしてスタートを切った人が成功しやすいという事実はあります。Facebook、マイクロソフト、Googleはどれも学生起業家が始めたものだし、孫さんが起業したのも学生時代。

メルカリの進太郎さん(山田進太郎氏)も、学生時代に楽天でバイトしていてそのあと自分で起業しています。僕自身も社会人を3年やってそのあとすぐ起業したので誰かの下で働いた期間は長くないんですけど、やっぱり若いうちから自分で舵を取れる人の方がポテンシャルが高いと思います。

石橋さんとクルーズ(ベンチャーズ)もそうですけど、若い人がしっかりVCをやるとなると、若い世代の起業家に投資しやすいわけですよ。一般的なベンチャーの投資担当は35~40歳くらいの人が多く、若い人にリーチするのは難しい。起業家と投資家が友だちかどうかはさておき、単純に同世代のほうが接する機会が多いですから。

木下35歳くらいで転職してVCになったとして、若い人中心にたくさん会いに行く人ってまずいないですよね。特に日本は金融機関系のベンチャーキャピタルが多い関係で、銀行で30歳くらいまで働いたあと子会社VCに出向というパターンが多いので、30代後半のキャピタリストが多い気がします。

でも、インターネットとかテクノロジーに下積みは関係ない。1年前にVRとかビットコインがこれだけくるって誰が思ってたかという話です。

経験のある経営者のほうが先に予期してたってなると、日本にはビットコイン系の企業がたくさん産まれていて今頃買収されまくってるはずですけど、現実はそうじゃないですから。

石橋うちも積極的に開拓してるのはU25で、投資先の65~70%はU25ですね。

クルーズベンチャーズは親会社であるクルーズの純投資としても投資活動をしているので、事業シナジーが見込めたり、クルーズの過去の経験をもとに支援できたりしそうなビジネスに取り組んでいる企業であれば、年齢が上の人であっても投資する場合もなくはありません。

だけど、会社が設立17期目で経営陣も長く勤めている上、多岐にわたる事業領域で1回も赤字を出していないし借り入れもない。さらに、そこで培った経営ノウハウと資金力がある、ということになると、U25に投資するのが一番強みを活かせるんです。

社会人経験なくして学生で起業している人は、会社勤めで得られる知識や経験が不足していることもあるから、親会社がいるクルーズベンチャーズなら、私達がクルーズの現場の人たちを引っ張ってきてサポートすることによって、彼らの成功確率をあげることもできるかもしれない。

それに、僕自身26歳だから、普段から(年齢が近い)大学生とコミュニケーションをとっていることが多いしそのほうが気楽なんです。

木下石橋さんってもう26なの? 若い若いと思ってたけど、「遅れてきた若手」って感じですね(笑)

石橋僕、大学を4回留年してるんです。根本的に同じような毎日を繰り返すのが嫌な性格で授業とかほとんど行かなくて、休学も面倒だから手続きしてなくて…という感じ。

学生時代には就活もしていたのでDeNAやリクルートに内定いただいたこともあるんですけど、それもまた留年して辞退しての繰り返し…って感じで(苦笑)。

最終的に、留年中の学費を稼ぐために個人事業として行っていたWantedlyの運用代行事業で、2社目にクライアントとしてお仕事をさせて頂いていたクルーズの採用業務で成果を出したことで、「うち専属で仕事しましょうよ」って話をいただいたのが去年(2016年)の4月。その縁があっていまここで働いています。

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クルーズベンチャーズ設立は採用戦略の徹底さから

石橋クルーズに関わることになってからは、まず人事領域担当することになったので、当時のクルーズの主軸事業であったゲーム領域の採用競合分析を行いました。

そのとき、若手社会人・学生向けの採用市場でコロプラ社のブランド認知があがって優秀な若手人材を惹きつけている一因が、同社が若手に特化したVCであるコロプラネクストを持っていることにあるんじゃないかということに気付いて、VCについて改めて調べてみたんです。

その結果、これはおもしろいしうちでもやりたい、と。クルーズ全体にとっても採用広報に限らず事業投資の観点でメリットが大きいし、すぐに役員陣に提案しました。

木下僕は石橋さんと違って大学生のときからVCに興味を持っていたんですけど、なんでVCいいなと思ったかというと、「社長と働ける」からだったんですよね。

木下だからそういう観点で仕事を選ぶ人、たとえば人材の会社に行ったり記者になったりしてる人もいると思いますけど、そういう視点を持ってる人なら、興味なくてもやってみたらVCって意外とおもしろいな、と感じる人は多いと思うんですよ。

石橋確かに僕自身も、VCがやりたいからっていうより、こういう仕事ができるならおもしろそう!この仕事であれば自分をより高く成長させられるっていう感じでしたね。

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VCになりたければまず10人のキャピタリストに会え!

木下VCになりたい学生や社会人からたまに「どうやったらVCになれるんですか?」って聞かれるるんですけど、「これまで何人のVCに会いました?」て返すと大概誰にも会ってないんですよ。

この時代ってTwitterとかFacebookでぱっとコミュニケーションできるから、会いたい人にすぐ会いに行くことができるし、そのフットワークが重要じゃないですか。なのに誰にも会ってない。

木下10人のVCに会ったら「この人でこのくらいのファンド規模や実績があるんだ」「この人でこのくらいの社員数がいるんだ」とわかるし、全員にどうやってVCになったか訊けば、「VCになる方法」の参考になる話が得られるはずなのに。

僕自身大学時代から、DeNAの創業期に投資したことで有名な村口さん(日本テクノロジーベンチャーパートナーズ代表)に会ってたし、VCのインタビュー記事はおもしろくて全て読んでいました。

その後、新卒で入ったベンチャーキャピタルの同期や若手などを見ると誰もそんなことしてなかったから、みんなやる気ないなと思いましたね。

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会社を作るだけでVCから出資してもらえる!?

石橋優秀な起業家を発掘するためにも、SNSの活用って必須ですよね。クルーズベンチャーズは立ち上げて半年だから世の中の認知度も低いので、Twitterで発信すると同時にこっちからも積極的にコンタクトを取ってめちゃくちゃ起業家候補の学生に会いに行っています。

木下うちはTwitterやってない人には投資しないってルールがあるくらいです。正確に言うと、「U25」「Twitterユーザー」「コードが書ける」の3つのうち2つ以上満たしていて欲しいという条件なんですけど、Twitterが一番簡単ですよね?

コード書けない人に書けって難しいし、26歳の人に25以下に戻れって無理だけど、Twitterは「今日からはじめます」って言ったらそれでOKなんですから。「アカウントはないけど(木下さんの)Twitter見てます」という人は投資候補としては正直怪しい。

ちなみに僕は、大学生にTwitterでフォローされたらほとんどの人に「一度会いましょう」ってメッセするようにしているんです。東大・早慶だったら半分以上は返事がきます。

学生で僕のこと知っていてフォローしてくるくらいだから、起業家としてはポテンシャルあるじゃないですか。全員会いたいと思ってメッセします。

https://twitter.com/kinoshitay

木下その次のステップは、実際会った学生に「会社作ったら投資するよ」って言ったらすぐ会社を作るかどうか。これでもだいたい落ちます。

「会社つくれば今すぐ投資する」と言ってもなかなか作ってこない。起業家になれない人は会社設立に足踏みしてしまう。

だから、日本でU25で会社作ってる人はそれだけで間違いなく起業家としての才能ありますよ。売却などのイグジットはしても、イケてる経営者ってそんな簡単に会社経営自体を辞めないですよね。

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調達するなら「意外性があり、暇なVC」

木下僕がもし起業家で調達するVCを選べるなら、意外性のある意思決定をする、リソースがある暇な人を選びますね。しっかりサポートしてもらうためにも、暇というか、自分に時間を使ってくれるっていうことは結構重要だと思っています。

それと、他の人の雰囲気を見るのではなく自分で判断できること。それは多くの人から見ると意外性がある投資をしているということです。VCに限らずどんな仕事でもそうかもしれないけど、たとえば誰かが1億円出すって言ったら、それに続いて2千万、3千万円出す人ってポロポロ出てくるんです。

でも、はじめに1億円出すことを単独で判断するためには、他の人が為しえないような意思決定が必要です。

石橋僕は相性の良さが大事だと思います。友だちでも、同じこと話して通じ合える人とそうでない人がいると思いますけど、起業家とVCの関係もそれと同じ。「うまく会話にならないな」という人と「気軽に相談しやすい」人だと全然違いますよね。

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注目のU25起業家は伊藤直樹氏、石川聡彦氏

石橋これまで数百人の起業家や起業家候補に会わせてもらいましたが、その中でも私のイチオシはOneBoxの伊藤直樹君。

彼は言葉を選ばずにいうとゴリラみたいな生命力がある人。コミュニケーション力の高さが半端なくて、どんな人のパーソナルスペースにもガッと入って人の信頼とか信用を勝ち得るくらい。

やっぱりそういう風に、人としても魅力的な人に投資したい。最悪うまくいかなかったとしても彼だったら仕方ないって思えるくらい尖った人の方が魅力的だし、好きなことを突き詰めている人、自分にはない魅力を持った人と一緒に仕事できることほど楽しいことはないですから。

OneBox株式会社

木下僕のイチオシは東大在学中に起業したアイデミーの石川さんですね。彼は僕と同じ高校で東大行って起業してるんですけど、この高校はレベルでいうと中の上くらい。大企業に入社しても100人全員は出世できなさそうな感じなんですよ。

僕はSkyland Venturesのバリューに「絶望を感じろ」って掲げているんですけど、うちの高校にいると本質的には普通のやつしかいない。トップ校でも無いから周りに対して本当は絶望を感じると思うんです。なのに、多くの人はそのまま大企業に行き埋もれていく。石川さんはそこから東大行って起業してるっていいな、って。

彼とは起業直後から話はしていたんですけど、今回「人工知能分野は良いね」という話をしていたら彼も乗ってくれたので、今は出資先になっています。

Aidemy 「アイデミー」 - 人工知能エンジニアを育てるオンラインゼミ

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日本のスタートアップ界隈の課題は“トレンドにのる起業家の数”

木下「これから起業するならどの事業領域が良いか?」という質問もよくされるんですけど、僕は最近、「ブロックチェーンでやろう」「機械学習でいこう」と言っています。波がきている領域でやろう、と。これは実際すごく重要なことです。

たとえば僕が大学卒業したのは2009年で、そのころはみんな家庭教師とかイベント運営とかの事業ばかりやろうとしていましたけど、今の若い人はアプリとかでも突き抜けそうなテーマでやってるし、kurashiruとかグノシーも学生起業じゃないですか。そういうふうに時代に合わせて3年とか5年で成功を手にできる人はすごい。

ロングスパンでプロジェクトを進めることがだめってわけじゃないけど、初めての起業で15年とかかかるものをやるのはダメ。起業家として大成するためにも、早めに成功体験を積んで欲しい。目の前に3年コースと10年コースがあるなら、3年コース選ばないと行けない。なかなかこれが難しいのですが。

そういう社会の波、いわゆるトレンドにのる起業家が日本は圧倒的にまだ不足していますよ。ブロックチェーンでも機械学習でも、50社とか100社がチャレンジしている中国その他に対して、日本で若手起業家にフォーカスしたらその領域に取り組んでいる企業って5社もないかもって思っちゃう。

そうなると、その中から成功する企業がでてくる確率は下がる。日本と海外では、起業家の絶対量が違うんです。

石橋確かに日本には起業家は少ないですよね。今よりVCも起業家も少なかった時代に成功した人がいて、徐々にそれを分厚くしていく連鎖を起こさないといけないのに、お金は増えたけど起業家が増えてないから正のスパイラルが成り立っていない。

単純に起業家の数が増えると、確率論で次のメルカリみたいな会社を作る人も出てくるし、世界に出ていく人も増えていくはずです。

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クルーズベンチャーズは資金だけでなく、クルーズの事業創造ノウハウ全てを提供したい

石橋もちろん、クルーズベンチャーズもそのための一翼となれると思ってます。親会社が多方面に事業展開しているから精通している領域も幅広いし、(同社代表取締役の)小渕さんとか(取締役の)稲垣さんなんかは長いキャリアがある分、人として、起業家として大成するかどうか見極める嗅覚は非常にすぐれているので、より才能のある起業家に投資できると自負しています。

それに、クルーズは同じ失敗を二度と繰り返さないよう、過去の失敗をまとめた600枚以上のパワポを社内に保管していて、事業戦略で迷ったときは全員でこれを見直すようにしているというのも大きいですね。

ちなみに、(同社)SHOPLIST事業責任者の張本さんも、20代前半で新規事業を任せられ、途中失敗も繰り返しながら結果SHOPLISTで大成功してるんです。

そうした若手活躍の実績があるからこそ、クルーズやクルーズベンチャーズには、若くてやる気がある人にどんどん任せていこうという態勢が整っています。

実は、僕自身もVCやりながら自分が次にやりたいことを模索して、近い将来起業できたらと考えているんです。しかも、僕が起業家として成長できたらVCやるにしても今よりもっと深い、実践的なところまで事業の話ができてVCとして戦い続けていくためにも一石二鳥だと思うので、お互い切磋琢磨できるような起業家に出会えたらうれしいですね。

こちらの記事は2017年08月30日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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執筆

松本 玲子

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