INTERVIEW
手嶋 浩己 木下 慶彦 花房 弘也
18-10-04-Thu

【手嶋浩己 #03】ユナイテッドで確立された、経営者と投資家の顔。ブーストさせたのはSkyland Ventures木下慶彦

TEXT BY TOMOMI TAMURA
PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
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手嶋浩己 XTech Ventures 創業秘話
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日本にインターネット業界が生まれて20年。
30代40代のITミドル層には多くのプロ人材が育った。
しかし、起業に至るミドル層は諸外国に比べても半分以下だという。
この状況を打破すべく生まれたVCが、XTech Venturesだ。
共同創業者は、2018年6月にユナイテッドの取締役を退任した手嶋浩己氏。
手嶋氏はどのようなキャリアを経て、VCを立ち上げるに至ったのか。
全4回の連載で紐解く。

第3回は、Skyland Venturesの木下慶彦氏と
ユナイテッドの子会社であるアラン・プロダクツの花房弘也氏との鼎談をお届けする。

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投資は2択。最初からYes/Noがはっきりしていた

手嶋さんは、アラン・プロダクツの花房さんとはユナイテッドで一緒でしたが、Skyland Venturesの木下さんとの出会いはいつでしょうか。

手嶋インタースパイアが合併してスパイアになり、さらに合併してユナイテッドになった2013年、僕は会社の片隅で「ユナイテッドをどうにかしないといけない」とがむしゃらに仕事をしていました。当時は赤字会社同士の合併で、業界の中でもプレゼンスが低く、勝手ながら自分が突破口を開かないといけないと考えていました。

そんなとき、ふとしたご縁で創業間もないメルカリに投資し、さらにそれが縁となって相談された、ワンダープラネットへの投資をしたところで、木下さんがアプローチしてきました。

僕はユナイテッドの経営が好転するならなんでもやると決めていただけで、ベンチャー投資をしたいと思っていたわけでも、投資の担当者でもなかったのですが、木下さんは「あなたは投資家ですよね」って連絡をしてきて。そこから有望な投資案件を木下さんが持ってきてくれるようになり、僕は「自分は投資家なのかもしれない」と、その気になっていきました(笑)。

木下当時から「これは有力企業」と思っていたメルカリやワンダープラネットに投資していたので突撃しました。投資はやるかやらないかの2択しかないはずなのですが、「他の人の意見を聞きたい」などの理由から投資を進めるかについて曖昧な回答をされるケースが多いんですね。

だけど手嶋さんは1社目を相談しに行ったときからYes/Noが明確で。結局その後、僕らの投資先でトランスリミットやクラスターなど3社にユナイテッドから投資してもらったのですが、こんなにクリアに意思決定ができる人はいないと思いました。

手嶋投資は悩んでも精度は上がらないし、情報が足りなくて判断できない不勉強な領域なら、やらないほうがいい。だから、投資するかしないかは、だいたいその場で決まります。ユナイテッドの役員会でも、自分がやるべきだと思った案件は、ある程度強く言い切ることを意識していました。そもそも、シード期の投資のような不確実な案件は、誰かが意思を持って行い失敗した時の説明責任なども背負わないと、決まらないですからね。

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起業して事業を作る人は、年齢に関係なくリスペクトする

花房さんはこの頃、手嶋さんの存在は知っていましたか?

花房木下さんがSNSで「手嶋さんがイケてる」と投稿していたのを見ていたので、手嶋さんってイケてる人なんだと思っていました(笑)。

手嶋木下さんさまさまですよ(笑)。この頃、花房さんと木下さんはEast Venturesの同じオフィスにいたんですよね。学生起業した花房さんは、木下さんに投資の相談をしたけれど断られたとか。

木下花房くんの投資を断ったのは最大の後悔ですよ。今は学生起業が一般化しているし成功確率も高くなっていますが、当時は学生起業の成功例がほとんどなかったんですね。しかも、彼も僕も粗くて右往左往していたから、話がかみあわなくて(笑)。

花房当時は正論を言っていたつもりだけど、今考えると粗いですよね。明確に覚えているのは資本金の話。貯金全額の40万円を資本金に起業すると話したら、木下さんに「100万円くらいは最低ないと投資できない」と言われました。

木下2018年はそうでもないですが、5年前くらいはまだ社長や創業メンバーで出せる資金が多い方が良いという風土はあったと思います。今は花房さんの件もあったので、社長が出す資本金は1万円で良いと言ってます。これは自分が若かったと言い訳したい(笑)。

その後しばらくして、花房さんはユナイテッドにM&Aの相談をしに行った。

手嶋そうですね。僕が花房さんと最初に会ったのは、2016年4月でした。

花房メディア事業は成長していたのですが、僕以外は学生インターンという“ザ・学生ベンチャー”だったので、経営ステージを変えたいと考えたんです。そこで頭の中をよぎったのが、経営力ある企業にM&Aをしてもらって、そのグループの中で自社を成長させていくという選択肢。そこで株主であったEast Venturesのフェロー大柴さんにつなげてもらって、手嶋さんに会いに行きました。

手嶋話を聞いてすごいと思ったのは、一度会社が潰れかけたのに復活させていたこと。自分だったらできないかもしれないと思いました。ただ、当時の事業規模ではM&Aを検討しても、ユナイテッドにも本人にもプラスにならないと判断し、「もう少し事業を大きくしたらまた相談に来て」と伝えました。すると、3ヶ月くらいでその時提示したラインまで本当に規模を大きくしてきたので、すぐに買収交渉に入りました。

花房手嶋さんに「現時点ではノーだけど、このくらいの規模になれば検討できる」と言われたので、可能性があるならと、最短で提示された規模まで大きくしました。当時の手嶋さんからは、僕ひいては起業家に対するリスペクトのような意思を感じました。言葉で何かを言われたのではなく、人としての空気感というんでしょうか。シンプルに僕と事業に向き合ってくれて。

木下それ、僕も思います。僕と10歳くらい歳が離れているのにフラットな姿勢で接してくれる、数少ない大人です。

手嶋僕はこれまで事業を立ち上げることに七転八倒していたし、起業経験もないから、起業して事業を作っている人というだけで、全員リスペクトしますよ。

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ユナイテッド卒業後は、自分と社会にとって意味あることを自由にやりたいようにやる

花房さんと手嶋さんが最初に会ってから半年後、アラン・プロダクツはユナイテッドの子会社になり、手嶋さんはアラン・プロダクツの取締役に就任されました。

花房手嶋さんは、いつも大事な局面はハンズオンで支援してくれました。メディア事業が危機的状況に直面したときも、その対応のために一緒に取引先にまで行ってくれて。週に1回の経営会議も参加して、僕たち若造に意見をしてくれてありがたかったです。

未熟な経営者は「やりたいこと」をやりがちですが、手嶋さんは客観性を持って「やるべきこと」を必ずやります。その「やるべきこと」をきちんと見極めて実行する考え方は、とても勉強になりました。

手嶋その後、花房さんは、ユナイテッドの執行役員にも就任したのですが、僕がユナイテッドを辞めることが決まった後、経営チームの役割で僕が担っていたことの3分の1くらいを無意識に引き継いでくれているなと感じています。

花房意識していますよ。手嶋さんの代わりとして。

ユナイテッドを辞めた理由は何だったのでしょうか?

手嶋決断した当時、投資していたメルカリのIPOが見えるなど、大きな利益がユナイテッドに入り、しばらくの間は経営的に良い状態に入ることが見えたからです。ふとある日に思いついて、3日くらいで決めました。このタイミングなら、自分の次を考えてもいいんじゃないかなと。

それに、このままユナイテッドに居続けたら社内での役割や過去の実績に執着しそうだし、老害のおじさんになっても困る(笑)。もちろん、ユナイテッドの業績が悪いままだったら役員として責任があるので、辞めていませんね。

ユナイテッドでは、自分でゼロから新規事業を作り、ベンチャー投資でネットワークを作り、M&Aも複数行い、PMIも順調に進み、花房さんのような有望で若い経営者もグループに入ってもらうきっかけを作れた。今後ユナイテッドが発展していくために、役割は十分果たせたのかなと思えました。だから、自分は退任してやりたいようにやろう、そして、辞めるからには中途半端な形ではなく、キッパリ辞めよう、と思いました。

花房いつだったか手嶋さんに「辞めないですよね」と聞いたことがあって、そのときは「辞めないよ」と言われたから、内々に伝達されたときは衝撃でした(笑)。でも同時に、手嶋さんが築いてきた資産を活用し、大きなチャレンジができるチャンスだと思いました。

木下僕も衝撃でしたが、こうやってVCを創業されたので、この関係性は続けられるなと思いました。特にこれからの社会は、「過去に仕事した人たちといかにつながり続けて、新しいコラボレーションを生み出すか」がカギになります。手嶋さんの誰に対してもフラットで、人とマメにつながり続けるスキルは僕も見習っていきたいです。

花房僕は他人との関係性を築いていくことが苦手なタイプなのですが、手嶋さんを見ていると「一度関わった人との縁を簡単には切らさない姿勢」は大切だなと感じます。

これから手嶋さんは新しい道を行くわけですが、何かテーマはあるんですか?

手嶋テーマは、自由にやりたいことをやる。そして大きな会社を背負っていない今、特定の会社や法人というよりは、広く社会に対して向き合って行きたいと思っています。もちろんXTech VenturesでのVC活動は集中してやりますが、やりたいことは何でも実行したいと考えています。これまでの仕事を通じて、自分がパラレルで複数の役割を同時並行する自信もつきましたし。

木下何でもできるんですか? 僕、ベンチャー投資以外だったら2018年から映画にハマったので、いつか映画を撮りたい。

手嶋そうそう、それくらいのことをやりたいんですよ。。だから、今後もさまざまな活動をする中で、2人とも何かしらで一緒に仕事をすることは出てくると思います。もちろん、あれこれ手を出すのではなく、自分が結果を出すべくコミットできる範囲内ですけどね。

木下いいですね。ぜひ映画を撮りましょう!(笑)

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[文]田村 朋美
[撮影]藤田 慎一郎

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