実は最強パートナー?起業家がいま、マイクロソフトに殺到するワケ──テックジャイアントが押し進める、力強過ぎるスタートアップ支援に迫る

インタビュイー
戸谷 仁美
  • 日本マイクロソフト株式会社 スタートアップチームリーダー 

スタートアップチームのチームリード。新卒で日本マイクロソフトに入社した後に一旦、外資系証券会社に転職。約2年後、日本マイクロソフトに再入社。証券業界向けの営業を約1年半従事し、2019年3月にスタートアップチームへ異動。現在はスタートアップチームのチームリードとしメンバー4人とスタートアップの技術、事業サポートを行う。

南澤 拓法
  • 日本マイクロソフト株式会社 スタートアップチーム 

スタートアップチームメンバー。長野高専専攻科卒業後、2018年に日本マイクロソフト株式会社に入社。Microsoft Azureの技術営業職として、大手法人のお客様向けに、アプリのモダナイゼーションやDevOpsの導入を推進する活動に従事。現在はコーポレートソリューション事業本部に所属し、スタートアップのビジネス・技術支援を行っている。

藤田 万柚子
  • 日本マイクロソフト株式会社 スタートアップチーム 

スタートアップチームメンバー。2020年に新卒として日本マイクロソフトへ入社し、パートナー事業の Azure Go-To-Market 戦略を担当。その後、Microsoft for Startups Founders Hub のプログラム国内展開と共に、特にアーリースタートアップ企業へのサポートを行う。

海老島 幹人
  • 日本マイクロソフト株式会社 Azureビジネス本部マーケットデベロップメント部プロダクトマーケティングマネージャー 

2020年に日本マイクロソフトに入社し、マーケティングオペレーションを担当した後Azureビジネス本部マーケットデベロップメント部プロダクトマーケティングマネージャーとしてスタートアップ領域、デベロッパーにAzureを訴求する戦略立案を担当をしている。

関連タグ

スタートアップ向けにSaaSを安く提供したり、ベンチャーキャピタル(VC)がHRやメディアの事業を始めたりと、スタートアップを支援する動きが日本でも目立つようになってきた。その背景には、新興企業による事業創造に対する期待の広まりがある。日本経済の成長を新たに担う存在を、誰もが欲しているのだ。ベンチャー投資が増えている要因の一つでもあると言えるだろう。

そんな「スタートアップ支援プレイヤー」たちの中で、実は大きな影響力を及ぼし始めている存在がある。世界最大級のテックカンパニーとして知られるマイクロソフトだ。

導入企業は大企業だけ、と思う読者も多いかもしれないが、そんなことはない。Sansan、freeeといった名立たる上場ベンチャーや、多くの新進気鋭といった非上場スタートアップも、マイクロソフトのプロダクトをフル活用しているというのだ。そのパッケージとなる『Microsoft for Startups Founders Hub』というプログラムが今、大きく拡充されている。

日本法人・日本マイクロソフトには、スタートアップ支援をミッションとするスタートアップチームまで組成されている。その姿勢や思想は、もはやスタートアップパーソンだ。新産業を創り出していこうとする同志として、大きな刺激を受けること、間違いなし。「なぜ今、起業家がマイクロソフトに殺到しているのか」を、大解剖する。

  • TEXT BY YUKO YAMADA
SECTION
/

日本のスタートアップエコシステムに、まだ足りないピース

これらの有名なスタートアップやベンチャー企業の共通点は何か?それは、あのテックジャイアント、マイクロソフトのサービスをフル活用している、ということだ。

と言っても、チャットやビデオ会議にいつもTeamsを使っている、というだけではない。セールスや開発といった事業の根幹の部分で、大きな支援を受けているのだ。

特に近年成長が著しいSaaS企業については新型コロナによるワークスタイルの変革もありマーケットの拡大が続いている。新規参入の増加による競争環境の激化や、継続的な顧客エンゲージメントの形成など課題も大きいのが事実。そこでMAU2.7億を超えるコミュニケーションプラットフォームであるTeamsとの連携を実現し課題を乗り越え急成長を遂げている。

日本マイクロソフト株式会社 スタートアップチーム 藤田万柚子氏

藤田私たちと手を組めば、シード期でもエンタープライズ相手にヒアリングができます。技術支援が手厚いため、スピードが重要なMVP(Minimum Viable Product)開発時にも、基盤の構築に時間をかけず、プロダクト本体の開発に集中していただけるような支援を心がけております。

だからこそ、スタートアップの経営者から選ばれるパートナーになっているんです。

戸谷こうした活動がまだあまり知られていないのが、悔しいですね。日本でも年々拡大が加速しているスタートアップエコシステムを、さらに活性化させるべく、これからもスタートアップに選ばれるパートナーとしての活動を加速していきたいですね。

日本マイクロソフト株式会社 スタートアップチームリーダー 戸谷仁美氏

スタートアップチームでプログラムサポートを担う藤田万柚子氏と、リーダーを務める戸谷仁美氏が語るのは、単なる意気込みではない。中身の伴った話だ。日本マイクロソフトが総力を挙げて、スタートアップ支援に乗り出し始めているのだ。

詳細は後に触れるが、マイクロソフトと組むことでスタートアップが単独では成し得ないさまざまな取り組みはもちろんのこと、わかりやすく言えば「シード期の調達1回分」くらいのおトクさも存在する。

だがそもそも、なぜそんなことをしているのか、どういうメンバーがしているのか、気になる読者もいるだろう。そこでまずはスタートアップチームについて聞いていく(支援プログラムの詳細を知りたい起業家・経営層の読者は、まっすぐ最終セクションまでスクロールいただければ幸いだ)。

チームメンバー一人ひとりの話を聞いていくと、このチーム自体が非常に「スタートアップ的」であり、かつ、「スタートアップに対して強い想いを持っている」と感じられる。業界を限定せず広く支援しているためか、把握している知見や情報も豊富だ。だからこそ、名立たる企業の事業家たちが実際に、背中を預けているのだ。

ベンチャー投資は日本でもかなり増えてきた。だが、世界で勝てるスタートアップはまだまだ少ないというのが実情だろう。一体、何が足りないのか。この問いに対する一つの解となるのが、世界随一のテックジャイアントによる力強い支援、なのではないだろうか。今後の経済成長を期待する上で、重要なピースになり得る存在だ。

なお、日本では約500社のスタートアップがマイクロソフトと連携しているとのことだが、世界規模で見れば約1万社ものスタートアップを支援しているのだという。日本国内では、まだほとんど活用されていないと言える。

既に事例は少なからずある。内情をたっぷりと聞いた。

SECTION
/

テックジャイアントで躍動する、スタートアップライクなチーム

マイクロソフトのスタートアップ支援は、世界に散らばる複数の組織で押し進められている。その窓口となり、的確な支援につなげていく役割を日本で担っているのが、戸谷氏率いるスタートアップチームである。20~30代の若手メンバー5名からなる少数精鋭チームだ。

戸谷このチームはみなフットワークが軽く、各々異なる強みを持ったメンバーばかりです。私たちもスタートアップのように小さなTry&Errorを繰り返しています。スタートアップと伴走するからには、これが絶対に必要な姿勢だと思っています。

支援の内容はもちろん、マイクロソフトが誇るサービス群や技術的な知見、そして世界規模のネットワークといったリソースをフル活用したものです。

face to faceでお話をさせていただけける機会があれば、これまでのマイクロソフトに対するイメージが変わるかもしれません。スタートアッププログラムの各オファリングも大事ですが、「人」でも選んでいただけるチームでありたいと思いますし、「顔が見える」スタートアップチーム、プログラムでありたいと思っています。

こう熱く語る戸谷氏。

確かにマイクロソフト製品は、WindowsというOSや、Word・Excelなどのように昔からPCに入っていたものというイメージが強いがために、どちらかというと「大企業支援を行うベンダー企業」というイメージを持つ人が多いかもしれない。TeamsやOneDriveといったクラウドサービスは企業の規模に関わらず広く利用されているものの、「スタートアップの支援で大きな力を発揮する企業」というイメージは、まだ広がっていないというのが実情だろう。

しかしマーケティング担当の海老島氏は、「スタートアップを次のステージに押し上げていく力が、間違いなくある」と力を込める。

海老島おっしゃるようにマイクロソフトは、どちらかというと大企業さんをお客様として、長いお付き合いをしています。

一方でここ数年は、スタートアッププログラムや、ソーシャルグッド企業向けのプログラムも用意し、大小さまざまな支援の実績を積み重ねてきました。

また、運営するCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)から投資したノルウェー発Edtech企業のKahoo(カフート)が2021年に上場するなど、イグジットに至る実績も残しています。日本国内での投資はまだありませんが、近いうちに起こる可能性もあるかなと推察しています。

こうしたかたちで世界中のスタートアップの成長を実現させていく力が、マイクロソフトにはあるんです。これを日本でも広げていくことが、私たちの追っているミッションです。

既にいくつかの社名を挙げたように、上場後も事業成長を続ける企業さんへの支援を見てもらえれば、その力がよくわかると思います。

日本マイクロソフト株式会社 Azureビジネス本部マーケットデベロップメント部プロダクトマーケティングマネージャー 海老島幹人氏(左)

日本マイクロソフトは、1986年に設立してすでに35年の月日が経つ。そのため、相対的に社員の平均年齢はやや高い。だが、スタートアップチームでは20代を中心としたメンバーたちが、泥臭くも忍耐強く、他の社内メンバーを巻き込みながら、マイクロソフトの印象を大きく変えていこうとしている。

日本マイクロソフトにおいてスタートアップチーム自体が、新進気鋭のスタートアップのような存在なのだ。

SECTION
/

「非連続成長」の近道へ!エンプラ開拓を全面支援

あのテックジャイアント・マイクロソフトなのだから、スタートアップを支援する力を持っている、というくらいまでは少し聞けば想像できるだろう。とはいえ、具体的にどんなことをしてくれるのか、それを早く聞かせてくれ、そんな声も聞こえてくるようだ。

スタートアップチームのメンバーそれぞれが、どのような企業を相手に、どのように動いているのか。ここから紹介しよう。

戸谷最近増えているのが、エンタープライズ(大企業)とスタートアップのマッチングですね。この黒子的な活動が増えています。

戸谷氏がまず言及したのは、エンプラとの関係構築について。

スタートアップの多くは先進的なITプロダクトを開発・提供している。しかしながら近年のスタートアップエコシステムは多様化しており、創業初期から大企業との共同開発を経てプロダクトをローンチするケースや、ある程度ユーザー数が増加してから大企業との連携を模索するケースがある。

マイクロソフトが持つ強みは、どのようなケースのスタートアップとも並走して、成長を非連続的・最大化させることが可能であるという点だ。

戸谷私たちのアセットの一つが、エンタープライズとのネットワークです。最近ではマイクロソフト社内のセールスチームから、新規事業立ち上げにおけるスタートアップとの連携の相談を多くもらうようになりました。ご担当者様も様々で新規事業部、DX推進部、CVCのご担当者さまなど多岐に渡り、その案件内容も多種多様です。

予算がついている案件なのか?スタートアップとのお引き合わせ後、事業部へのトスアップのイメージは持てるのか?など確認させていただき、まずはスタートアップチームがカウンターパートとなり、スタートアップ各社さんのソリューション紹介をエンタープライズ企業にさせていただく事もありますし、コンディション次第で直接お引き合わせするケースも増えています。

例えばPKSHA TechnologyやKAKEAIといったスタートアップでは、MAUとしても非常に大きなTeamsとの連携を始めとして、開発支援、その後のGTM支援を強く推進しており、サービスの成長角度を上げることができている(詳細は2022年4月8日に開催される「Microsoft Startup Day」にて公開予定)。

マイクロソフトとの連携によって、マーケットでの認知度拡大やユーザー数拡大、他社との大きな差別化にまでつなげることができているのである。

エンプラ側もスタートアップ側も大きなメリットを享受できるはずなのだが、そのきっかけを見つけたり、話をスムーズに進めたりする点で難しさがある。それを、マイクロソフトが定性的に解決しているのだ。

そのために意識していることとして戸谷氏が強調するのは、「正しい期待値コントロール」だ。

戸谷「スタートアップは魔法の杖ではなく、ビジネスパートナーだ」と意識しています。予算もついていない、トスアップのイメージも掴めていない状態でお引き合わせしてしまうと、もったいないミスマッチが起きてしまいます。その為、双方の期待値を正しく設定した上でのマッチングを心掛けています。とても「泥臭い」活動になりますね。私たちスタートアップチームのメンバー一人ひとりが、ヒアリングや調整を地道に続けることが本当に大切です。

私たちは、スタートアップが世界に羽ばたいていく未来を創りたいんです。あくまでその一つの手段として、エンタープライズとの共創がある。そしてもちろん、他の方法もある。長期的に見て、日本から世界を舞台に活躍するスタートアップの誕生の為に今ある私たちのアセットを使い倒したいという想いが、根っこにあるんです。

このように、手厚くサポートする体制を整え、スタートアップとの新たなリレーションを求めている。ところでエンプラとのつながりで考えるならば、SaaS企業とも相性が良さそうだ。そう聞いてみると、すでに実績もあるとのこと。

海老島日本でも最近、SaaSスタートアップがかなり増えていますよね。そんな中でどこの企業も躓いているように感じるのが、エンプラへの営業です。

そんな企業さんたちに特に伝えたいですね。詳細は明かせませんが、一部上場企業に対する営業の支援を、実はかなり多くやらせていただいているんです。

東証一部上場企業の99%が、マイクロソフトを利用している顧客なんですよ(笑)。このつながりを利用しない手なんて、あります?

SECTION
/

メタバースだけじゃない。
ディープテックにも、マイクロソフトの知見を活かす!

戸谷氏が紹介したように、営業観点でのマイクロソフトによる力添えは、大きなものだといえるだろう。だが他にも、事業開発の観点で興味深い事例がいくつもある。大手法人向けのAzure技術営業をしていた経歴を持つ南澤拓法氏は、ディープテック領域での連携支援を力強く押し進めている。

南澤宇宙や人工知能、IoTなど、ディープテックと呼ばれる事業領域に、日本のスタートアップも多く参入し始めていますよね。そうした企業さんからのご相談を、私はよく受けています。お客様のご要件や抱えられている課題を、技術とビジネスの両面で解決することを目指しています。

日本マイクロソフト株式会社 スタートアップチーム 南澤拓法氏(左)

高専でIT技術を深く学んできたバックグラウンドを持つ南澤氏は、その知見をベースに、マイクロソフトが持つ豊富な技術アセットを活用した支援の在り方を探っている。

南澤私自身、以前からブロックチェーン技術に特に強い関心がありました。大手法人のお客様へのブロックチェーンサービス導入実績もあります。なので、この経験を生かして、現在はブロックチェーン技術を活用するスタートアップ企業への支援に特に注力をしています。

我々が提供するパブリッククラウドのAzureは、ブロックチェーンをグローバルに運用する上で必要となる多種多様な機能がサービスとして提供されています。お客様がサービス開発に集中し、リリースを迅速に行える仕組みを提案しています。

もし自分で起業をするとすれば、「実生活の中で目には見えない価値のトークン化」や「予測市場」に関連したビジネスをしてみたいです。現在は日々、最先端の技術を使ってグローバルにビジネスをされている非常に優秀な起業家の皆様とお話をさせていただき、刺激を受けています。プラットフォーマーという立ち位置で、スタートアップ企業の事業成長に携われることが、今はとても楽しいです。

まるで起業家のように、目を輝かせて技術の話をする。こんなユニークな人物が、マイクロソフトの新たなミッションを一身に背負い、スタートアップに伴走しているのだ。

一方、藤田氏は、ヘルスケア領域の中でも特にディープテックと言われる、バイオ技術や手術AI事業の支援をはじめ、B2Cサービスの中の機械学習など、幅広い分野に力を入れている。南澤氏とは異なり、技術的なバックグラウンドを持つわけではないと言うが、どのように進めているのだろうか。

藤田私は特定の技術領域には特化せず、業界カットの目線で興味深いスタートアップと日々会話させていただいております。最近は、医療業界の中の、手術内で使われるAI開発や、健康促進・維持のためのソフトウェアサービス等をご支援させていただいています。他にも、全くジャンルの違う、B2Cのゲーム関連サービスなども見させていただいています。

ディープテックと呼ばれるニッチな分野から、自分がコンシューマーとしても親近感のあるサービスを包括して支援できているのは、個人的にはとても勉強になりますし、ワクワクします(笑)。

このように、様々な業種業態の中で、マイクロソフトが持つ豊富な技術アセットをどのように活用できるのか、社内の技術者ともよくディスカッションしています。まさに今の自分の立場だからこそ、スタートアップ業界の多様な方々と事業的・技術的なお話ができ、なんて贅沢な日々なんだろう、と良い刺激を受け続けています!

世界のITトップ企業が、メタバースやNFTといった先進技術の分野に事業領域を広げようとしていることに注目する人は多い。だが、その他にも社会変革につながる新技術は多くある。マイクロソフトがその知見を活かす現場も、もっと多彩なはずだ。そう考えて、南澤氏や藤田氏は自分にしかできない挑戦を見つけようとしている。

SECTION
/

AzureもGitHubも、事実上の使い放題を実現

スタートアップチームで躍動する一人ひとりが、スタートアップに対する熱い気持ちを抱き、新たな支援を実行していることが、少しずつ伝わってきただろうか。だが、これだけではない。

マイクロソフトによるスタートアップ支援は、世界中をワンチームとみなしたかたちでも行われているのだ。

藤田インダストリー(産業や業界といった枠組み)ごとに、新規事業の立ち上げや起業について相談するセッションを、定期的に開催しています。私たちスタートアップチームはもちろん、マイクロソフト社内のさまざまな現場にいるメンバーを巻き込んで実施しているんです。

これらの相談セッションを行う背景には、やはりマイクロソフトの技術者の人気があります。マイクロソフトが発信する技術研究におけるプレスリリースや、グローバルのイベント等を見たスタートアップから「面白い、○○の技術活用についてディスカッションさせてほしい!」という要望をいただくケースが増えています。

解決すべき課題や目指すプロダクト構想がなかなか固まらないスタートアップも、少なからずありますよね。そうした起業家の方々に対して、特定のインダストリーに関する知見を深く持つマイクロソフトのエキスパートとの壁打ちの時間を提供するんです。業界課題や顧客課題、まだ存在しないプロダクトのかたちなど、広くディスカッションし、事業のヒントを探ることができます。

先に触れたエンプラとつなぐ支援も含め、スタートアップチームは社内人材を積極的に巻き込んでいる。その狙いは、「マイクロソフトは、旧来のテック企業ではない。新産業の創造を積極的に支援していく、未来を向いた総合テックカンパニーである」というようなイメージを醸成することでもあるのだ。

展開するプロダクト群や、M&A戦略の中にも、スタートアップ支援の色が見える部分は少なからずある。南澤氏はこの点も強調する。

南澤Office製品やWindowsといったプロダクトのイメージが強いかもしれませんが、トレンドに合わせて多彩なサービス展開を進めている点にも注目してほしいですね。

例えば『GitHub』は、2018年にマイクロソフトグループの一員になりました。セキュアなソースコード管理やCI/CDツールなど迅速な開発に必要となる機能が提供されています。Founders Hubでは最上位版であるGitHub Enterpriseも無償でご利用をいただけます。

また、MRヘッドセットのプロダクト『HoloLens』を活用した事業創造も、一緒に進めることができます。技術担当者とディスカッションすることだって可能ですから、例えばメタバース関連で新たな事業を検討したいと考える起業家さんにとっては、非常に有益な機会になります。

グループ企業であるLinkedlnのサービスも、起業家さんたちにとっては有用ですよね。採用やマーケティング・スキリングなど、さまざまな活用法があります。

このように、さまざまなプロダクトを関連付けて、幅広い支援のかたちを考えています。

インタビューは、Teamsの独自機能「Togetherモード」も使用して実施

そして「今、改めて伝えたいこと」として、これらの人的支援やプロダクトによる支援をまるごと受けることができる『Microsoft for Startups Founders Hub』というプログラムについて語る。

LinkedInアカウントから利用を申請するだけで、技術支援も人的支援も、様々なものを受けられるようになっている。シード・アーリーフェーズのスタートアップなら、絶対に知っておいて損はないプログラムだ。

特に反響が大きいのが、Azureの無料利用枠。今までは2年間で1,200万円分が上限だったが、最大4年間で1,600万円にまでその枠が引き上げられた。もちろんその他に、マイクロソフトの商品群であるMicrosoft365、Visual Studio、GitHub、Power Appsも無料で使用することができる。全てを合わせると、3,800万円相当のプロダクト提供ということになる。

また、世界中に存在するマイクロソフトのプロフェッショナルなメンバーと1on1ができるという機能もある。事業を前に進めるためのヒト・モノ・情報という重要なアセットを借りることができるというわけだ。

藤田例えばAzureそれ自体を開発しているエンジニアや、他国でスタートアップ支援を担当するメンバーなどと、事業創造について自由にディスカッションができるんです。

実際に、国内のシード・アーリーフェーズの企業の加入が増え始めているという。マイクロソフトによるスタートアップ支援は、まさにこれからが本番を迎える。

SECTION
/

シード期の調達と、同じ価値が!?

さて、スタートアップチーム一人ひとりの熱量に加えて、柔軟な支援方針についても魅力を感じる起業家の読者がじわじわ増えてきたのではないだろうか。最後にせっかくなので、藤田氏も言及した『Microsoft for Startups Founders Hub』について詳しく聞こう。

既に触れた部分もあるが、注目すべきは3点。1点目は、数々のクラウドサービスを無料で使えるという“出血大サービス”で、その範囲がさらに拡充されたこと。たとえばAzureは、最大で1,600万円相当分まで利用することができる。2点目は、マイクロソフト社内の人的・知的アセットを借りられること。そして3点目は、創業年数や収益規模といった縛りがなくなり、支援を受けるための敷居が大幅に下がったことだ。

基本的な支援内容は、環境支援、技術支援、事業支援の3つで展開をしている。内容は以下の通り。

2点目として触れた部分は、この図の右下で『Startup Mentor Program』として準備されている。その魅力を、藤田氏が解説する。

藤田世界中にいるマイクロソフトの社員から、親和性の高い方々をおつなぎさせていただきます。例えば、Azureを開発しているエンジニアや、他国でスタートアップ支援を担当しているセールス責任者などと、自由にディスカッションできます。

新たな事業のタネとなる社会課題を見つけたり、海外の競合の状況をマーケティング観点で調査したり、あるいは組織づくりのアドバイスをもらったり、さまざまな活用が可能になります。

このように、多岐にわたる支援を行う枠組みを次々と整備しているマイクロソフト。だが、引っ掛かることもある。いったいなぜ、こんなことをしているのか?という点だ。マイクロソフトの収益に、どのようにつながっていくのだろうか、そんな疑問も率直に投げかけた。すると返ってきたのは、「儲けを計算してやっているわけではない」という答え。

海老島「AzureもMicrosoft365も、唯一無二の高機能プロダクトなのだから、スタートアップからも対価をもらって提供すべきだ」という考えかたもあるでしょう。ですが、今の日本経済にとって必要なのは、私たちの収益よりも、スタートアップがより速く発展していくこと、だと思うんです。

「あるべき新規ビジネス創造の手法に対して、マイクロソフトができることは何だろうか?」という課題意識から、一人ひとりが動いている。だからこそ、起業家さんたちから信頼をいただけているのだと思います。

南澤気軽にお試しで使い始めていただけるというのも大事なポイントですね。その後の本格利用が条件になっていると誤解されることもあるのですが、そういったことは全くありません。

なので、創業経営者に限らず、エンジニアの方々の「一部の機能を試してみたい」「遊びで試してみたい」という考えから始めてみるのも大歓迎です。食わず嫌いせず、まずは一度触っていただいてからご評価をいただけたら嬉しいです。

藤田敷居が下がったという点でも補足させてください。実は昨年10月のリニューアルを経て、以前は弊社の営業担当者を介さなければ申し込みができなかったのが、今はWeb上でサインアップするだけでできるように変わったんです!だから、ぜひまずはお気軽に始めてみてほしいんです。

南澤ちなみに、ここまでの説明からもわかると思いますが、「無料のクレジットをお渡しするから、あとは自分たちで頑張ってね」というスタイルではありません。スタートアップのビジネスを支える立場として、目指すゴールに対して同じ方向を見て一緒に伴走する存在であろうとしています。

世界最大規模のリソースをフル活用し、熱量高くスタートアップに向き合うこのチーム。日本のスタートアップエコシステム発展を加速させていく切り札になっていくことが期待できる。世界での戦いを目指すなら、創業期からハングリーに、テックジャイアントの力も借りて挑戦すべき、そう感じさせられた。

海老島最後なので直接的にお金の話で、わかりやすく説明して締められればと思います。計算してみると、マイクロソフトのクラウドサービスを、最大で4000万円分くらい使うことができることになります。これはシード期のスタートアップにとっては、資金調達を1回完了したのと同じですよね。検討を始める材料としては申し分ないと思いませんか?

しかも、今後もさらなる拡充を進める方針です。例えば提携サービスを優先的に使えるようになるなど、ですね。スタートアップ企業にとってますます必要不可欠な存在になっていくために、仕込みを続けています。乞うご期待ください。

こちらの記事は2022年03月14日に公開しており、
記載されている情報が異なる場合がございます。

記事を共有する
記事をいいねする

執筆

山田 優子

おすすめの関連記事

会員登録/ログインすると
以下の機能を利用することが可能です。

When you log in

新規会員登録/ログイン