3大トレンド「AI・SaaS・Fintech」に今、ディープダイブせよ
【LayerX×三井物産:後編】

インタビュイー
山本 忠太則
  • 株式会社LayerX 社外取締役 
  • 三井物産株式会社 コーポレートディベロップメント本部 金融事業部 アセットマネジメント事業室 プロジェクトマネージャー 

新卒で三井物産に入社し、資産運用事業、スタートアップ投資、デジタル金融事業を担当。アメリカやヨーロッパへの赴任経験も。LayerXとのジョイントベンチャーである三井物産デジタル・アセットマネジメントには立ち上げから携わる。2023年にはLayerXの社外取締役にも就任した。

松本 勇気
  • 株式会社LayerX 代表取締役 CTO 
  • 三井物産デジタル・アセットマネジメント株式会社 取締役 

東京大学在学時に株式会社Gunosy入社、CTOとして技術組織全体を統括。またLayerXの前身となるブロックチェーン研究開発チームを立ち上げる。2018年より合同会社DMM.com CTOに就任し技術組織改革を推進。大規模Webサービスの構築をはじめ、機械学習、Blockchain、マネジメント、人事、経営管理、事業改善、行政支援等広く歴任。2019年日本CTO協会理事に就任。2021年3月よりLayerX 代表取締役CTO就任。開発や組織づくり、及びFintechとAI・LLM事業の2事業の推進を担当。

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オープンイノベーションには「“異物”が必要だ」と語られた、三井物産・山本氏とLayerX・松本氏による対談。後編となるこの記事では、両社らのジョイントベンチャーである三井物産デジタル・アセットマネジメント(以下、MDM)のさらなるイノベーション実現について、より深く迫る。<前編はこちら

対象として語られたのは、すでに事業が立ち上がり、グロースし始めたデジタル不動産証券事業だけでない。第二・第三の事業についてもその構想をほのめかす。両社のさまざまな連携が、これから多角的に進んでいく期待を抱かせる。

後編では前編に続き「異物」をキーワードとしつつ、「AI・SaaS・Fintech」というグローバルメガトレンドとの関わり方が語られた。三井物産とLayerXだからこその個別事例として読んでも、これからこうしたオープンイノベーションが増えるという戦略論の一つの理想として読んでも、刺激や学びの多い内容だ。

  • PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
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強い“意志”のある現場に、今すぐ身を置くべし

──オープンイノベーションには“異物”が重要だという話がありました。どうすればイノベーションを起こせるような“異物”になれるのかを知りたいという若手世代に伝えたいことはありますか?

松本完全にポジショントークですが、「スタートアップにおいでよ」と言いたいですね。

やっぱり、「やってやる」という“意志”が何よりも重要なんです。とにかく「“めちゃくちゃ強い意志”を持つ人間の基で学んで、その意志の強さやノウハウを吸収してやろう」という姿勢でイノベーションに向かっていく熱に当たってみるのが一歩目だと思います。

僕自身も昔から、いろいろな先輩起業家と一緒に仕事をさせてもらって、そういう熱に触れてきました。「意思」や「野望」に従って何にも縛られずに仕事をしている姿だったり、その現場での意思決定の仕方だったり、仲間の集め方だったり……を目の前で1個1個見て学んできました。時には「朝に言っていたことと夜に言っていることが違うけれど、なんだか“意志”の力がすごい」と感じる場面もありましたね(笑)。こうしたことがすべて、今につながっています。

山本三井物産のような環境でも同じような熱にあたることができます。

異なる点があるとすれば、起点が「狭く深い」か「浅く広い」か、ということくらいでしょうか。

商社という世界は、あらゆる業界のあらゆるバリューチェーン、すなわち商流や金流や物流という大きな波に広く触れられます。しかし、個々人のキャリアのどこかのタイミングで、ある特定の領域にぐっと深く入り込むことになります。私の感覚としては、スタートアップに負けず劣らず、素晴らしい刺激を受けながら、イノベーションを起こす道を歩んでいけると思います。

──大企業でもスタートアップでも同じように、“異物”になっていけるんですね。

山本はい、そう思います。両極端な存在として比較されがちですが、今は少しずつ近づいていますよね。

松本最近、三井物産とLayerXそれぞれでインターンをしていた学生がいて、就職先としてもこの2社を含めて迷っているという話を聞きました。LayerXは大手と遜色ない選択肢になっているし、三井物産もスタートアップと張るほどフットワークが軽い大企業だと思われるようになっている。間違いなく近づいていますよね。

山本そうですね。そもそも三井物産だって大企業を目指してきたわけではなく、事業をたくさん創出してきた結果、大きくなっただけです。この拡大のモメンタムは、もとからLayerXとも通ずるものがあるんだと思います。

松本大企業では生成AIといったメガトレンドの影響もあり、業態を変えるような動きが目立ち始めています。三井物産はその中でもトップレベルにフットワーク軽く、変化し続けていると感じます。社内には“意志”を持つ人がたくさんいて、一部は飛び出して起業することも少なくないですよね。

山本はい、「元物産会」という、OB/OGの集まりがあり、起業家も多いと思います(笑)。

松本そういう人たちが集まっている場所だからこそ学べることがたくさんあると思います。これは私の勝手な想像ですが、ゆくゆくは「LayerXマフィア(*)」ができるでしょう。意図して創ろうとはしていませんが、今LayerXに集っているメンバーの言動をみていると、そういった流れになりそうです。

そんな未来を描いたとき、今、私にできることは、強い経営メンバーを集めること。高い熱量や力強い言動を間近に見られることは将来の糧になります。だから、意志と能力の両方ある人をLayerXやMDMにもっと増やしていきたいですね。

*……「暴力組織」といったニュアンスではなく、「同窓生」という意味合い。アメリカでITスタートアップを数多く創出しているイーロン・マスク氏ら元PayPalメンバーらが「PayPalマフィア」と呼ばれるようになったのが由来。日本でも「ある企業を卒業した後に新たなビジネスの挑戦をしている人たち」を指して使われている

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AI・SaaS・Fintechの大波に乗り、「新たな金融」を生み出す

──世界のメガトレンドを押さえることが、イノベーションの創出において重要だという考えもあります。今、特に目を向けるべきことは何だと思いますか?

山本アメリカからSaaS×Fintechという最先端のビジネス潮流が広がってきています(*1)。ここ1年ほどで、AIがそれを加速させている現状ですね。この相乗効果は、とてつもなく大きなものだと感じています。

「Software Eating The World(*2)」という言葉が示すように、すべての経済活動がソフトウェアベースになり、そこから生まれるデータによってAIが自律的に成長し続ける。このサイクルがものすごく強力です。

*1……2000年代に登場したSoftware as a Service(SaaS)というビジネスモデルに、「Finance(金融)×Technology」を意味するFintechを結合させることで、これまでにない事業成長や社会変革を起こそうとする潮流。LayerX代表取締役CEOの福島良典氏がわかりやすくnoteにまとめているので参照してほしい

*2……シリコンバレーの著名な投資家Marc Andreessenが2011年に発表し、世界中のIT起業家に影響を与えた記事『Why Software Is Eating the World』で使われた言葉

松本そうですね。AIとSaaS、そしてFintech、これらは本当に面白くてですね……。(代表取締役CEOの)福島ともよく話しています。

「AIとは何か」を抽象化して言うと、アナログとデジタルをつなぐ架け橋なんです。まだ多く残るアナログなものを、LLMという技術によって処理できるようになっていきます。例えば、コンピューターが本を読めるようになり、その内容を基にした業務アウトプットを自律的に出せるようになりつつあります。これまで機械には代替できないと思われていた人間の仕事が一気に置き換わり、これまでより遥かに早く、正確に処理できる業務がさらに増えていくでしょう。

このような業務効率化を広げるのがSaaSというビジネスです。「自社で創ると数億円かかるかもしれないAI活用」を、年間数万〜数十万円くらいの低価格で多くの企業が導入できるようになる。

そこにFintechの考えを取り入れることができれば、新たな産業/事業を創出することにまでつながります。なぜなら、従来は投資や融資が届きにくかったところにまで、新たに大きなお金が届くような構造を生み出せることになるからです。

つまり、AIでアナログとデジタルをつなぎ、SaaSで活用を広げてデジタル化を急速に進め、Fintechで企業活動全体を活性化する、そんな絵が描けるんです。これは、LayerXが単独でできる部分もあれば、MDMというJV(ジョイントベンチャー)だからこそやれる部分もある。手を組むことで生み出せる新たな価値は他にもたくさんあると思うので、色々な事業を三井物産と模索していきたいです。

LayerXが、ここまでダイナミックにチャレンジできる会社になったのがうれしくて、毎日ニヤニヤしながら仕事をしています(笑)。

山本ちなみに、LayerXはまさにこの波に乗っているわけですが、最初から松本さんや福島さんが描けていたわけではないですよね?いつからどのように取り組んだんですか?

松本おっしゃる通り最初からではないですが……2018年に僕、「銀行をやりたい」と言い始めていたんです。前職のDMM.comで大企業改革に取り組む中で、「会社間のお金の動きをもっとスムーズで無駄のないものにするべきだ」という強い課題感を覚えました。そのために、新しく銀行を創って、自由度や速度が高く、無駄のない、いわば「プログラマブルな金融」を実現させたいと考え始めたんです。

でもそのためには個社がデジタル化されないといけないので、CTO協会でデジタル化を広げるための取り組みをしたり、LayerXでバクラクを始めたり……という流れになっていきました。そしてMDMで、まさに金融事業をしています。

これらを今、改めて整理してみると、AI、SaaS、Fintechに収束してきたというわけなんです。

2021年の投稿

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MDMの「産業を生み出す金融」となるポテンシャル

──AI、SaaS、Fintechというメガトレンドの中で、これからMDMで何を生み出していくのか、教えてください。

松本「新しい産業が生まれていくためのお金の流れづくり」が、僕らのすべき仕事だと考えています。

MDM代表の上野さんが、明治維新直後の金融についてよく話をしています。強い国を創るために産業を興そうと、お金を引っ張って流していくのが金融という機能の興りだったんです。

しかし、現代社会にはそういう機能がより必要になっていると感じます。なので僕らは、この「産業を創る」という観点でお金を集め、新たな仕組みでの資金提供を可能にしていきたい。たとえば、スタートアップ向けのプロジェクトファイナンスや工場建設で「不動産である箱の部分にだけ出資する」といったスキームも、僕らなら可能です。

みなさんの大切な資産を社会を豊かにする原動力として運用させていただき、リターンを返しながら社会全体を発展させていく。1兆円くらいの資産を運用するようになれば、変化が目に見えて現れると思います。ここまでは、MDMをこのまま拡大していけばできそうです。MDMにはそれくらい大きなポテンシャルがあります。

山本松本さんが言ったように、MDMの可能性はものすごく大きいんです。まだ不動産を何個か証券化しただけで、リテールを始めたのは2023年からです。既存の枠組みの中だけでもまだまだ大きくなっていく。ものすごく大きな話になります。

──今後のさらなる展開についても、可能な範囲で教えてください。

山本まさに議論しているところです。松本さんの説明にあった「新しい産業の創出」に向けてMDMが取り組むのか、それとも新会社を創るのかは後の議論になります。

ビジネスアイデアを膨らませ、「誰がなぜ喜ぶのか」を探索し、その最適なスキームを緻密に考える、ということにじっくり取り組みます。そして、本当に新しい事業をやるのであれば、誰がマネジメントするのかというのも重要な論点になります。MDMの代表をやってくれている上野さんが新たに挑戦するという選択肢もありえますし、若手を抜擢するのも良い選択肢のはずです。

そもそも、金融という事業領域はとても広い。私は三井物産の社内で「デジタル金融」をキーワードに、LayerXとの連携以外でもさまざまな新規事業を推進しています。新たな展開が、どこからどのように生まれてくるか楽しみです。

松本LayerXとしても、2023年に三井物産のリードで行ったシリーズA累計102億円の資金調達(*1)をきっかけのひとつとして、三井物産との連携を強化したいと協議を始めています。

一例ではありますが、LayerXでは昨年、企業におけるAIやLLMを使ったデータの利活用や業務効率化を支援する「AI・LLM事業」をスタートしました。私自身もコードを書きながら深くコミットして、様々な大手企業様のお役に立てそうな手応えを得ています。ちなみに、MDMに対してはすでに「文書処理効率化ソリューション」として提供しています(*2)。

このようにLayerXでは第4、第5の事業を連続して生み出していきたいと考えています。もちろんそこには、意志のある“異物”である若手メンバーも積極的に抜擢していくつもりです。そのなかで、三井物産様との連携が再び実現できると嬉しいですね。

*1……調達についてのプレスリリースはこちら

*2……MDMへのソリューション提供についてのプレスリリースはこちら

こちらの記事は2024年03月04日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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藤田 慎一郎

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