連載その仕事は、ハイスタンダードか? 「世界を変える」へ一直線、ビットキーの秘密

事業とは、サイエンス×アートだ!
LayerX松本・ビットキー江尻が語り尽くす、スタートアップの面白さ

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登壇者
江尻 祐樹

1985年生まれ。大学時代は建築/デザインを専攻。2008年にリンクアンドモチベーショングループへ入社。入社2ヶ月目に初受注を達成し、その後様々なコンサルタント業務に従事。2009年末、ワークスアプリケーションズへ中途入社。コンサルタント配属後1年でMVPを獲得。2014年には、4000名の中から社長賞を受賞し、数百名程度のコンサルタント・サービス組織の統括も経験。2017年末、旧知のエンジニア中心にメンバーを集め、ブロックチェーン/分散システム研究会を発足。2018年8月、そのメンバーを中心に株式会社ビットキーを創業。ブロックチェーン/P2P・分散技術を活用した、全く新しいデジタルID認証/キー基盤を開発するスタートアップのCEOとして新たなスタートを切る。

松本 勇気

東京大在学中に、創業直後の株式会社Gunosyに入社し、マザーズ上場後にCTOに就任するなど技術組織全体を長く統括。新規事業開発室の室長も務め、現在の株式会社LayerXの前身となるブロックチェーンR&D組織の立ち上げも担った。2018年10月、合同会社DMM.comに移り、CTOに就任。プロダクトの基盤移行など、開発組織の変革を主導した。2021年3月、Gunosy創業者・福島良典氏率いるLayerXにジョインし、代表取締役CTOに就任。

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ホリゾンタルとバーティカル、キャリアと投資、デジタル化とDX。スタートアップパーソンが日々直面しているそんな命題について、思考を一気に深められる。そんなイベントを開催した。これはそのレポートだ。

招いたのは、LayerXのCTO松本勇気氏と、ビットキーのCEO江尻祐樹氏。いずれの企業に対しても「事業を急成長させている大型スタートアップ」というイメージくらいは持っている読者が多いだろう。今回伝えたいのは、この2社の隠れざる魅力──、というわけではない。もっと根源的な話を聞いていった。

世の中をどのように見るか、ビジネスをどのように捉えるか、人生をどのように過ごしていくか。スタートアップ界隈でも特に稀有な経験を積んできた事業家2人の言葉の数々。120分に及ぶ密度の濃い対談で、残念ながらレポート化がかなわなかった部分も少なくないが、特に学びの深い部分をピックアップした。それでも、文量は1.6万字を超える。この内容を楽しんで読み、実践に移していくことができれば、一流のスタートアップパーソンへの道が開けていくだろう。

  • TEXT BY YASUHIRO HATABE
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スタートアップはDXの先駆者となり、ロールモデルになれ

今、事業を語る上で外せない話題が、コロナ禍とDXだ。特に、スタートアップを語る上では欠かせない。とは言うものの、「リモートワークできるようにする」「オンライン会議ツールを導入する」などのような各論、枝葉末節がクローズアップされるばかり。

もっと広く深い話を期待して、話を振ってみると、広がり、ふくらみ、とどまるところを知らない議論のキャッチボールが始まった。細かいことは気にせず、そのまま耳を傾けてみてほしい。

松本今、みんなが「DX」って言いますけど、人によって指しているものが全然違いますよね。最近気づいたところだと、世間でよく話題にのぼる「AI」って、単なるプログラミングのことじゃないかと思ったりもしました(笑)。

昔の「IT化」も、今言われている「DX」も、同じように漠然と捉えられているんだろうなと。だからといって、それらを否定するような形で「本当のDXとは」を語り始めるのもどうなんだろうと思うので、ご存知のかたもいるかもしれませんが、最初に、LayerX社内で、デジタル化やDXをどう捉えているかを紹介したいと思います。

株式会社LayerX 代表取締役CTO 松本勇気氏

そう言って松本氏は、企業・ビジネスのデジタル化をLevel 1〜4の4段階に分けた捉え方について説明した。LayerXが2020年に行ったピボットの経緯も含め、CEO福島良典氏のnoteで語られているので、参照されたい。

松本最初は、1980〜90年代に始まった流れで、「ツールの電子化」と言えるものです。それまでは情報を紙という媒体で保存していたものを、データ化してデータベースに保存するようになりました。それがLevel 1のデジタル化。

その次の段階、Level 2は「業務のデジタル化」。情報はデジタル化したけれども、結局PDFでやりとりしたり、それを人が読んでデータベースに打ち込んでいったりと、業務プロセスは変わらなかった。そこをデジタル化するのが第2段階と捉えています。

その先がLevel 3で、「業務の高度化/ビジネスの構造変化」。デジタルでしかできないような意思決定を行ったり、自動化を図る段階。これをLayerXでは「Digital Transformation(DX)」と定義していて、今世間で言われているDXもこのレベルなのかなと思います。

さらにもう少し先にもう1つの段階、Level 4の「会社横断・業界横断でのデジタル化」があると考えています。

日本の企業では、その多くがまだLevel 1に至るか至らないかという状況です。これをLevel 2にするのか、いきなりLavel 3に持って行くのかは議論があるんですけど、この辺りに取り組んでいるのが、今僕らがやっているDXだろうと思っています。

LayerXによるデジタル化/DXの整理(提供:株式会社LayerX)

江尻僕らが見ている世界もほぼ同じですね。自分たちの日々の業務や、その一歩先にある事業そのものを、デジタルの力でより価値あるものに変えていく。そういう思想や意思をいかに強く持って進められるかが、DXに取り組む上で根本的に重要なテーマだと思っています。

株式会社ビットキー 代表取締役CEO 江尻祐樹氏

松本意思/意志は重要ですよね。何かを改善したいからデジタル化するのであって、どういう方向に改善したいのかが明確だからこそ初めてDXに取り組めるわけです。それなのに、「とりあえずこのソフトウェアを導入したらDXだ」「機械学習を入れたらDXだ」みたいな勘違いをされているケースはあると思います。

江尻僕は以前、それこそインボイスとか債権・債務管理など含めた基幹システムの開発に関わっていたので、この領域には土地勘があります。その僕から見ても、松本さんが仰るように「特定のソフトウェアを入れておけばいい」みたいに考えている人はまだ多い。

一方で、“やってる感”を出すだけでなく「何か本業にインパクトを与えなきゃ」と考えている人も、最近は徐々にですが増えてきている感じがします。ただ、デジタルのリテラシーや事業理解の解像度が低くて、具体的な予算感や実現感が持てていない。

そこに対してスタートアップは“突っ走れる”ので、具体的な解を示したりロールモデルをつくったりしていく方向にチャンスが広がっているんじゃないかと感じることはあります。

江尻氏が「見ている世界はほぼ同じ」と語った点を裏付けるかのように、キャッチボールは速いペースで続いていく。

松本コンサルタントのように「あなたの会社を変えますよ」と言うより前に、フロントランナーになって同じ事業を自分たちでやってみて、「こうやって運営しています」という像を見せるのは非常に有効な一手ですよね。実は、三井物産さんとやっているアセットマネジメントの会社は、まさにそういうことをやっていて。

アセマネって、紙とハンコの連続なわけですよ。投資家さんに不利益をもたらさないように、ちょっとした意思決定もハンコ、ハンコみたいな。一つの意思決定をするだけなのに、そのための負担がとても重いんです。

僕らは、そのプロセスを全て分析してシステムを全部内製して、デジタルにつくり替えているわけです。投資案件の情報が入ってきたら、即座に投資家さんに見てもらえて、投資するかしないかという意思決定までが瞬時に終わる、そういう世界をつくりたいなと思って。こういうものはやっぱり、やって見せないと提供価値が伝わらないんですよね。やって見せることで、「どうDXしたらいいのか」と言っている人たちが前に進めるようになる。

江尻先ほど松本さんに、ビットキーのオフィスの一部をご覧いただきましたが、東京建物さんと提携していてビルの共用部にも弊社の『workhub』が導入されているんですね。僕らはカード1枚すら持たず、顔認証でビルの入退館から執務エリアやワークブースの入退室までを行えますし、オフィス内もフリーアドレスにして空席をノーストレスで検索・予約して使えます。これまでにないほど自由な「働く」という世界観をすでに具現化しています。

そうすると「百聞は一見に如かず」で、来ていただいた人は「めっちゃいい!」「自分たちのビルにも入れたい!」みたいな反応になるんです。さきほど、松本さんからもそのような反応をいただきました(笑)。1つの実現例からデジタルのインパクトが伝わって、イマジネーションを刺激して、それをきっかけに人が動き、大企業が動き、業界が動く。そういう事例が、どの領域でもいいのでボコボコ出てくると面白いなと思っています。

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大企業は、ちょっとした失敗をたくさんできる環境に

小気味よい掛け合いが、途切れることなく続く。しかし、視聴者を置いていくことはなく、松本氏は問いかけるようにまた話し出す。

松本別の観点で少し話をします。今、大きな企業にいて自社を改善したい人は、「結局どうすればいいのか?」が気になるんじゃないでしょうか。僕は「失敗できる環境づくり」にヒントがあると思っています。

ビットキーさんにしろうちにしろ、プロダクト開発をする中でたぶんものすごい数の失敗をしてるんですよね。とにかく開発サイクルを短くしていって、例えばソフトウェアの開発だったら2週間とか1週間という短いサイクルで改善していく。改善をすると、当然ながらたくさん失敗します。でも失敗しないと、新しいことを発見できないわけです。

にもかかわらず、事業が安定してくるとどうしても業績にダメージを受けたくないから、「昨日と同じやり方で今日もやろう」という考えになってしまいがちです。

松本そうならないように、ちょっとした失敗ができる環境をつくる、それは製品サイクルを短くするのも一手かもしれないし、ちょっとした改善をいつでも加えられるような仕組みを入れるのもアリかもしれません。その最たる例が、テスラの自動車ですよね。

「車はハードウェアであり、開発の重いプロダクトだから速い改善なんて難しい」と思う人が多いかもしれませんが、ソフトウェアのアップデートは1週間とかの単位でかかっているんです。それに、ハードウェアであっても、ちょっとした工夫で毎日改善できるようになっていて、失敗だったらすぐ切り戻しができる仕組みがある。

これ、実際には、安定した事業とは相性が悪いです。マネジャーからしたら、安定を守るべく失敗させないほうが評価される環境なので。でもそこで歯を食いしばって、ちょっとした失敗をさせて新しいものを見つけに行く。それができる仕組みや雰囲気をつくること、そういう文化変革みたいなものがDXの第一歩で、デジタルに限らずトランスフォーメーションのために大事なことだと思っています。

江尻例えば、先ほども触れたここのオフィスのビルに入っている『workhub』というプロダクトの製品群は、全製品で月平均2回くらいは小さいバージョンアップをしていて、年間でおよそ1,600機能をリリースしています。結構な量とスピード感ですよね。

ただ、大企業の場合って、「1〜3年後くらいまでの長期スパンでの成功に対してコミットしないといけない部分」、言いかえるなら「失敗ができない部分」があると思うんですね。すでに100万人のユーザーがいる製品で大失敗してご迷惑をおかけしまくるというのは、さすがに避けたいことだと思うので。

僕らもフィジカルなプロダクトを扱っているので、そこに関しては、ウォーターフォールのような昔ながらのやり方で品質を高めていかなければいけない部分もあり、その難しさは正直なところ結構あります。一方で、事業自体はソフトウェア的に小さい失敗ができる環境やフィールドを用意している部分もあり、それによって全体的にうまく進められている感覚があります。その辺りのバランスをどう取るかを、経営陣は考えるべきなのだと思います。

中長期の大きなゴールに対して、歩き始めの初期の1〜3カ月、長くて半年くらいの間に、小さな失敗をどれだけ早くたくさん重ねられるか、それができる文化変革ができるかどうかは、大企業かスタートアップかを問わずとても重要ですよね。

松本大事なのは「不確実性」が高いものに対して、仮説を持ってそれを検証していく活動をどれだけ数多くこなせるかだと思うんですよね。それは、ソフトウェアづくりに限らず。ハードウェアをつくるにしても、物やファームウェアは失敗できないのだとしても、例えば製造工程には改善余地があったりする。

そうやって一つひとつ分解して見ていけば、攻められる領域があるんですよね。自分たちの業務にきちんと向き合って、「本当にこれって全部失敗できないんだっけ」「いや、この部分は失敗できるよね」みたいな議論をしていくのが、DXにはすごく大事だと思っています。DXというか、事業ってそういうものですよね。

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サイエンスとアートの掛け合わせこそが、ビジネスの面白さ

「大企業には文化変革が必要」と指摘する両者。しかしもちろん、大企業を批判しているわけではない。むしろポテンシャルは大きいと考えている点も共通している。その背景が、今度は江尻氏から先に語られた。

江尻結局は「全体視点から見て、最適化するようなやり方って何なの?」と考えることが最重要だと思うんです。LayerXさんのアセマネの例だと、初めから終わりまで、順番はあるけどいろいろ揃えていこうということですよね。僕らも同じように、HomeとかWorkspaceとか領域を分けて捉えていますが、基本は「全部やる」なんです。

最終的なゴール、理想の状態を実現するにあたって、本当に必要なものは何か?という視点でいろいろ削ぎ落していくこと、健全な「選択と集中」をしていくことが重要。

スタートアップが当たり前にやることとして、「最初は尖った人たちにしっかり刺さるものをつくる」ってありますよね。いきなりマジョリティを相手にするのではなく、ニッチなところから攻めるべし、という。大企業さんにもこのやり方は合うと思いますけどね。大きいマイナスは出にくいですから。小さなプラスを積み上げていって、数年後に一気にマジョリティに使われる、そういう時間軸で捉えればいいだけ。

小さいツールを開発しました、入れてもらえたけれど使われ続けませんでした、やめました、次はこんなツールをつくりました、使われませんでした、っていうのを繰り返しても、当たりは永久に来ない。時間軸を考えたアプローチをとることができれば、大企業からスタートアップ的なイノベーションがポンポン起こるんじゃないかなと思っていつも見ています。

松本大企業でもスタートアップでも、実はプロダクトの品質をしっかり守っているようでいて、実は不具合的な意味合いでの品質以外にはあまり目が向いておらず、そもそも他の指標の設計や計測すらしていなかった、みたいなケースはたくさんあると思っています。今のプロセスや品質を守ることが目的化していて、その指標に関しては100%達成してるんだけど、顧客満足度を計測してみたらめちゃくちゃ低いとか。スタートアップがつくるアプリの方が使いやすいと感じる人がいる背景には、こういう課題があるんじゃないかと感じます。

事業ごとにいろいろなKPIがありますよね。例えば車だったら、モノとしての性能や品質に関する指標もあれば、快適性とか室内の空気の状況なんかの指標もある。そういったものの中から重要なものを見極めて、その全部を正確に計測して初めて、「失敗の予算」がつくれると思うんですよ。例えば、「こういう指標があるんだったら、こちらの指標は多少ダメージを受けても許容できるから、失敗覚悟でチャレンジしてみようよ」みたいな。

LayerXのValueの1つに「Fact Base」という言葉があって、「その意思決定は本当にファクトに基づいたものなのか?」と常に問います。核心を生み出せない企業では得てして、今のプロセスや品質を守ることが金科玉条になっていて、ファクトに基づいた意思決定じゃなくなっているケースが多いと思うんですね。

だから、レガシーな企業の中でDXをやるのだったら、まず数字をちゃんと取ってみるところからスタートするのも一つの手なんじゃないかなと思いますね。

江尻すごくCTOらしいお話だと思って聞きました。ファクトベースで議論して、裏付けを持って意思決定することは、僕らも本当に大事にしたいと思っています。ただ、ファクトって数値化できるものだけではない、とも言いたい。

僕、経営やプロダクトづくりのみならず、営業もめっちゃ好きなんですけど、営業の仕事って「売る」仕事ではなくて、相手に意思決定させる仕事だと思っているんですね。特に大企業さんが相手の場合、意思決定させるうえで最も重要なのが、数多くいるステークホルダーとの関係性やそこにいる人の感情までをもファクトとして捉えることです。

例えば商談を進める時に、ある特定の人たちを無視して進めてしまうと何かマイナスの要素が生まれるのでケアしなくてはならない、そういう構造が実はよくあります。それをいかにクリアするかが、営業をする上でとても重要。データというファクトに基づいて考えることが重要であるのと同様に、大企業も事業を動かすのは人・組織だということを理解して、そこに生まれる感情というファクトを踏まえてアプローチすることも、すごく大事だなと思って事業をやっています。

松本前職のDMM.comで組織改革をしたときに、それと全く同じことをやりました。コミュニティ分析です。この人とこの人はどういうつながりで、この間のリンクはどういう重み付けがされているのか、みたいなことを考えながら、人のネットワークグラフを頭の中に描いてみる。すると、信頼関係ネットワークのようなものが浮かび上がってきて、その関係性を正負まで含めてイメージできるんですね。

そのネットワークの中で、「誰を動かしたら、何が起きて、誰にどう伝わって、最終的に合意形成・意思決定ができるか」といったシミュレートをしていく、そんなことをしていました。ネットワークグラフでは、人の感情も含めて僕はファクトだと思っていて、意識することが多いです。

江尻そうですよね。僕らも相手の組織図を把握して、キーパーソンを見つけて、関係性を構築して、その人をテコにして組織を動かして意思決定まで持っていこうとする、そんなことを考えながら営業してきました。

なんですけど、最近はもっと営業効率を高めなくてはならないということで、自分がいきなり先方のトップに会いに行って、その構造を理解してもらって、そのトップの方に社内の関係部門の調整をしてもらうというやり方をするケースも出てきています。ややドーピング的なんですけれども(笑)。

松本さんのお話を聞いて「CTOらしい」と言ったのは、考え方がサイエンスでありエンジニアリングなんですね。仮説を検証して不確実性を減らしていくという話はまさにエンジニアリングの本質ですから。ネットワークグラフを描いて分析していくのもサイエンスの領域だと思います。

同時に、ビジネスの世界ではどこかに「感情」のようなアートの領域があって、例えばいきなりトップ交渉して一撃で社内の軋轢などを解消していく、なんてことも起こり得るわけです。そういう、アートとサイエンスの掛け算が事業を面白いものにするんじゃないかなと思っています。

松本基本的には自分をサイエンスの人とは思ってるんですけど、一方で「一緒に飲みに行く」みたいなこともかなりしますよ。例えば、コミュニティに入り込むために情報を収集しなければいけない、となると、構成する人の被りが少ないコミュニティから順にがーっと飲みに行くとか。最後はもう、気合いで会いに行くしかないよねみたいな(笑)。

サイエンスで詰めて詰めて、さらに詰めて、最後のところにやっぱり気合いがあると思っていて。気合いとかアートとか、あるいはMission/Visionみたいなもの、これらは「燃料」です。それをエンハンスするために全てのサイエンスはあると思っているので、そういうものはすごく大事だと思っています。

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大きな目標を見据えた上で、そこに至る道の第一歩を決める

すでに腹八分目という読者もいるかもしれないが、実はここまで、まだ三つあるうち一つ目の話題に過ぎない。次に聞いていくのは「Mission/Vision」について。

もともと2社はDXをしようと会社を設立したわけではないが、そんな両社が本質的なDXを体現していることも事実。どのようにMission/Visionを立てて、事業を選択し、プロダクト開発・事業開発を行っていったのだろうか。

松本LayerXは大きくピボットをしましたけれども、明確に変わっていないことがあります。それは、行動指針です。行動指針は我々が大事にしている価値観、どういうふうに我々は顧客に価値を提供していくのかを明文化したもので、「Be Animal」「Bet Technology」「Fact Base」「Trustful Team」「徳」の5つがあります。

Missionは創業当時のものよりも洗練されて、現在は「すべての経済活動を、デジタル化する。」を掲げていますが、事業を生む上でのいわば“土壌”となる行動指針は不変です。

この土壌の上でどうやって事業領域を決めているのかという話ですが、僕らはいきなり請求書処理をやろうと言い出したわけではありません。最初はブロックチェーンという技術に対する熱狂からスタートしたんです。僕はGunosyで育休をとっていたときに、ビットコインのサトシ・ナカモト論文やイーサリアムのイエローペーパーなどをずっと読んでいて、「なんだこの技術は!?」と心底驚き、興奮していました。そこからR&Dをやりはじめたのが、LayerXの始まりです。

僕らはブロックチェーンを、会社と会社をより滑らかにつなぐ仕組みだと解釈していたのですが、みんなが「DXだ、DXだ」と言うわりに会社も業務もデジタル化されてないので、そもそもブロックチェーンに業務がつながらないんですね。だからその前に、会社自体のデジタル化をしなければと考えたわけです。

松本じゃあどこからスタートしようかというときに、CEOの福島(良典)が顧客候補100社をリストアップしてきたんですね。その100社に、「自分たちはこういうプロダクトを考えたんですけど、どうでしょうか」とひたすら聞いて回ったんです。現場の声を聞いたり、ファクトをもとに分析したりする中で、請求書処理がデジタル化のキーになりそうだということが見えてきた。そうやって『LayerX インボイス』(現:『バクラク請求書』)の事業に決まったんですよね。

そこからはもう、僕らの会社では爆速開発って言ってるんですけど、とにかく開発スピードを上げて、顧客価値を早く検証していこうという考え方で、MVPを最初の1カ月半くらいでリリースしました。実際に顧客に刺さっているのが見えてきたら、そのプロダクトだけではカバーできないエリアに向けて、『LayerX ワークフロー』(現:『バクラク申請』)『LayerX 電子帳簿保存』(現:『バクラク電子帳簿保存』)と、サービス提供を広げていきました。SaaS事業についてはそんな感じです。

江尻僕らは、プロダクト開発の部分とビジネスの部分のバランスでいうと、セールスやCXのビジネス面でも強力なメンバーが創業時から揃っていたこともあって、事業領域の選択はLayerXさんとは異なる成り立ちでしたね。

僕らは、「面白いことをずっとやっていきたい」という根っこから始まっています。じゃあ一番面白いことは何かというと、「最も社会的価値が高いこと、インパクトが高いことをやる」であったり、「一度プロダクトを出したらそれで満足して終わりではなく、20年でも30年でも答えが出ないテーマをずっと追い続ける」ということ。

わかりやすくいうなら、iPhoneやGoogleのように、人々の生活や仕事をガラリと変えること、しかも何億人という単位の人々に使われるという状況。その状況を、僕たち自身が主役として生み出すことに、無上の面白さ、楽しさ、喜びを感じる。そういう発想が根底にあります。

そして、そういう状況を生み出すことを見据えた上で錬磨したのが、少なくとも20年や30年では陳腐化しないであろう「Connect everything テクノロジーの力で、あらゆるものを安全で便利で気持ちよく『つなげる』」というMissionであり、そこへ至る最初の一手としてスマートロックの事業を選択しました。

そのような状況にたどり着く過程には、イノベーションを起こす「0→1」、「1→10」の型化、「10→100」で広く展開して定着させること。このどれもが必要で、どれが偉いわけでもない。ただ、世の中で何億人という人々の生活がガラリと変わっている状況を目指して、最初のプロダクトをまずはつくっていこうという発想で全てやっています。

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事業を立体的に捉え、目標へ複線的にアプローチする

ビットキーとLayerX、全く異なる事業をしている両社だが、その裏側には意外と共通点もありそうだ。そう感じて聞いていると、自然とそんな話題に移行した。キーワードは、「ホリゾンタルとバーティカルの共存」だ。

松本江尻さんの話を聞いて、「やりたいことや向かう先を、矮小化しないこと」ってめちゃくちゃ大事だなと、そこが一番共感しました。

例えば僕らLayerXは今、請求書処理のSaaSをやっていますが、なぜ今これをやっているかというと、その後ろに1000兆円のBtoB決済市場が広がっているからなんですよ。

日本って100年ぐらいずっと請求書払いをやってきて、これが当たり前のものになっている。僕らがBtoCのサービスを利用するときの決済って、QRコードでピッとやって終わるのがすでに当たり前じゃないですか。でもBtoB決済の1000兆円の市場では、こういう変化がほとんどない。この現状を変えていくという、大きなビジョンがあって、それを変えにいくのが課題。そこへ向けた第一歩として、請求書処理からスタートしているわけです。

日本には、実はもう1つ「1000兆円」があります。今、日本人の個人資産が金融資産も含めると2000兆円あって、そのうち現金・預金で1000兆円なんですね。1000兆円のお金が死んでいる。アセットマネジメントの事業は、この1000兆円を目覚めさせようという大きなビジョンが根底にあります。

この1000兆円を目覚めさせるために何が必要かと考えた時に、第一歩としてアセットマネジメントにデジタルの力を持ち込んで、今死んでいるお金を市場に還流させようとしているわけです。

そして、この請求書処理のSaaS事業とアセットマネジメント事業は、どちらも「すべての経済活動を、デジタル化する。」というMissionに紐づいています。その一番やりたいこと、Missionがまずあって、それに対して適切な手段を選んでいく。

そのスタートはどんなに小さくてもいいんだけど、登りながら、0→1、1→10、10→100の道筋をだんだん描いていく、みたいなことが事業づくりにおいて一番大事なんじゃないかと思っています。

江尻僕らは最初にスマートロックを選んだわけですけど、Missionである「Connect everything」に基づいて、扉をコネクトすることから始めたんですよね。

例えば、宅配サービスの再配達が生じることによる社会的損失は、国土交通省の試算によると5000億円にものぼります。不在再配達問題1つ取ってもそこそこ大きな社会問題ではあるので、これをテーマにしてスマートロックをやっているスタートアップはあると思いますが、その1つの問題だけに向けて直線的にアプローチすると、解決が遅いんですよ。

僕らが事業をスタートするとき、「スマートロック」という言葉を知らなかったくらいで、要するにスマートロックというプロダクトが起点ではないんです。

「Connect everything」というMissionがあって、そこから扉をコネクトするという初手を決めた。それによって生み出される価値は、再配達の問題の解消だけでなく、家事代行、ペットシッターといった別のサービス事業者と人をつなげることにもなります。それ以外にも、スマートロックのエントランスがあるマンションやビルは付加価値が高まるので、不動産会社は賃料を高く設定できる。

そうやって直線的ではなく立体的に捉えていくと、いくつものマネタイズポイントをつくりながら、目指している「今とは全然違う未来」にたどり着く道筋ができていくんですね。その中のどのルートからどう行くかは運や縁によって変わるんですけど、行き着く先は1つなんです。

江尻具体的には、マンションを舞台にした共用施設の予約とか、スマートロックを使ったアクセスの予約、あるいはオフィスビルを舞台にしたオフィスやコワーキング施設の会議室の予約、備品の予約。これらを扱えるプロダクトをつくっているのですが、注目してほしいのは全部「予約」だということ。

先ほど松本さんが話したのは要するに、「請求書処理はホリゾンタルに見たらどこでもやっている」ということ。同様に「予約」というものも、鍵を使って認証して何かにアクセスする行為も、どこでもやっていますよね。そういうものを抽象化して1つの「予約」のエンジンをつくって、プライベートも仕事も含めたどの場面でもホリゾンタルに使えるようにしています。

ただし、マンションでの利便性・体験性が高いUIやUXと、オフィスビルでのそれは違います。また、ユーザーの立場、例えば配送会社の配送員とそれを受け取る人との間でも、それは大きく違いますよね。事業全体の見方からは離れて、各プロダクトはドメインごとに特化してバーティカルにつくり込んでいく必要があります。

ホリゾンタルにやりながら同時にバーティカルにつくる──、これが非常に難しくて、でもそれにチャレンジすることはビットキーの最大の面白さの1つだと思います。

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複数プロダクトの組み合わせで、未来の「地図」を

ホリゾンタルなサービスを、いくつものアプローチで実現していく。そのことによって、多大なインパクトを実現しようとしているのが、ビットキーとLayerXの共通点だということが見えてきた。松本氏がこの点を重ねて指摘し、議論を立体的に描いていく。

松本今の話、すごく納得するところがあります。未来の地図が、全体で見ると、複数のプロダクトの組み合わせで構成されているという辺り。LayerXでも請求書処理の『LayerX インボイス』(現:バクラク請求書)から始まって、その周辺で必要な『LayerX ワークフロー』(現:『バクラク申請』)『LayerX 電子帳簿保存』(現:『バクラク電子帳簿保存』)へとプロダクトラインアップを広げていますが、全部つながって1つのプロダクトなんですよね。最終的には、これをつくれる組織自体がプロダクトだと思っています。

出てきたキーワードの中でホリゾンタルとバーティカルってあったんですけど、僕らは「広さ、深さ、遠さ」の3軸の話をよくするんですよ。ホリゾンタルに取り組む、バーティカルに取り組む、それに加えてもう1つ気にしないといけないのが、技術進化だと思っていて。

例えば、プライバシーテックって、すごく「遠い」ことをやってるんですよね。遠く未来の世界を見ながらやっている。人と人がデータを共有するようになると、そのプライバシーを守らなければならなくて、その危険性を多くの人はまだ気付いていないけど、有識者たちが気づき始めてEUのGDPR(一般データ保護規則)のようないろんな規制ができているわけです。

でも、守る意識ばかりだと、不便になってデータを使いにくくなる。これこそ、僕たちが乗り越えなきゃいけない壁だと思っていて。個人の権利を守る、でも利便性もつくる。この二つの矛盾するものを両立させる。そのための技術を研究開発しているのが、実は3軸目のプライバシーテック事業なんです。

ホリゾンタルのSaaS事業があって、アセマネの事業で縦に深く掘っていって、遠くを見据えて研究開発する。僕はCTOですから、テクノロジーで会社が負けたら僕の責任だと思っているので、遠くを見据えていくことが特にすごく重要で、だからこそスタートアップにしては珍しくR&D組織を最初から持って取り組んでいます。

江尻プライバシーテックの話の中で、安全性と利便性、トレードオフにあるものを両立するという話がありましたよね。僕らのMissionにも「テクノロジーの力で、あらゆるものを安全で便利で気持ちよく『つなげる』」とあって、安全性と利便性と体験性を全て併存する形でつなげる、ということを言っているんですね。だから、僕らの技術の基盤となっている『bitkey platform』も同じような発想を持っていて、着眼点や着想が近いなと思いました。

松本バーティカルとホリゾンタル、あるいは広さ、深さ、遠さみたいに、多面的に、立体的に考えながら会社の全体の地図を描いていって、そこに対して組織が出来上がってくみたいなことがスタートアップとして大事で、それを描くためには一番最初のMission/Visionが大事ということなのかなと思います。

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キャリアは、投資。
目先の年収で選ぶな、長期の利得を捉えよ

さて、ようやくたどり着いた三つ目のテーマ。それは「スタートアップというキャリア」。事業家として成長していきたい若者は、一体どのような会社や仕事を選ぶべきなのか、この正解のない問いを投げかけてみた。

江尻氏は、「仕事に何を求めるかによってどのような会社ないし仕事を選ぶかは違うので、一概に答えるのは難しい」としつつも、成長意欲の高いFastGrowユーザー向けにアイデアを示した。

江尻1つは、「変化率」が高いフィールドを求めたほうがいいということ。僕自身の体験でしか語れないですが、僕はこれまで自分から機会を獲りにいったおかげで、かなりしびれるフィールドで「変化」を経験しながら仕事をさせていただいて、できなかったことができるようになりました。

もう1つのキーワードは「意思決定」です。ただ、「意思決定の経験を多くすると成長できる」みたいな話をよく聞くんですけど、僕はそれはちょっと違うと思っています。極論をいうと、意思決定の経験だけを求めるなら起業すれば全ての意思決定は自分なので、それでいいという話になってしまう。

そうではなくて、意思決定を周りに促す経験や、意思決定に至るための高いレベルの合意形成に自分が関与した経験が大事だと思うんです。

これはビジネスサイドだけでなくエンジニアも同じです。プロダクトをどの順番でつくるか、どういう技術を採用するか、全て意思決定です。これを自分でする経験も大事だし、チームでプロダクトづくりを進めるときに他の人と高いレベルで議論したり多面的に検討したりして、その中で合意形成を導いていく経験も大事。どちらも、大きな成長につながると思います。

なので、ちょっと抽象度が高い言い方ですが、そういう環境やフィールドがある会社や仕事を選ぶのがいいんじゃないかなと思います。

一方の松本氏。少し異なる角度から持論を展開する。

松本いつも僕が人にキャリアの話をするときは、「投資家の視点を持て」と言っています。

例えば今20歳で、大学卒業が見えてきたところ、でも専門性は何もない。ただ、時間と体力という資産は持て余すほどある。これをどう投資していくのかという発想に立ってほしいです。

例えば「起業する」のだったら、それは自分の株を買うという投資ですし、会社に就職するということは、その会社に対して自分の時間を投資していくことになります。いずれにしてもその中で、どうすれば自分の利得を最大化できるのか、仮説=目標を持つことが大事です。その目標に対して、どういうアクションが必要なのかをブレークダウンしていく。

そして、市場環境を見て、世の中の潮流がどこへ向かうのかを分析しながら、自分の掛け金をどこに置くかを決めていく。ただ、30代、40代と年齢が上がるにつれて、体力が減少したり、安定を意識したりする必要性が生じます。例えば家庭を持つとか、イメージしやすいですよね。

松本そうすると、自分の資産の中で、投資にアロケートできる量が減ってきます。そうなる前に、どういう検証を終えてなければいけないかを考えながら、掛け金の置き方を考えていくことが必要だと思います。

いまの僕の話も、江尻さんの話も、会社づくりの話と全く同じですよね。自分という会社のMission/Visionを考えて、そこに向かって仮説検証を繰り返していく。それを意識することが大事。

「本当に自分のなりたいもの」って言われると考え込んでしまうかもしれませんが、心の底からそう思ってなくて別にいいんです。ただ、仮説を持たないことには動けないし、フィードバックを得てそれを分析することもできないので、何かしらの仮説を持つことからスタートするのが大事です。

松本氏による独特の例えに、江尻氏も呼応する。

江尻面白いですね。僕は、ビジネスにおいて「対価性」を重要視しています。

「市場価値」という言葉がありますが、みなさんそれを何で測っていますか。多くの人は年収で見ているでしょう、入社する時点の。でもそれは間違いなんです。

お客さんがいて、今すぐ5000万円は払ってもらえない、けれども1年後に1億円分の購入をコミットしてもらえる、そういう状況があるとしますよね。だったら対価性は高いので、現時点での5000万円の支払いを見送ってでもすぐに契約しましょう、プロジェクトを始めましょうというケースがある。

市場価値もそれと同じ。入社時点の契約における年収額の100万円や200万円の違いにこだわったとしても、対価性でいうとめちゃくちゃ悪い可能性があります。逆に、入社後の環境が、ストレスなく熱量を持って働けて、かつ希少価値が高い仕事、変化量の高い仕事にどんどんチャレンジできる、レベルの高い意思決定に参加できる、そういう環境であれば、僕の経験則では対価性が高いといえるわけです。結果的に、先々の年収とかにもつながるでしょうし。

だから、年収の数字だけを見て市場価値を測るのでなく、「自分が得たい対価が何なのか」を考えて、お金の代わりにそこで積める経験がかけがえのないものだったら、チャレンジしていけばいいと思いますね。

松本僕はよく、自分の価値のことをバランスシートに例えます。投資家の視点を持てといっている理由の1つは、この「バランスシートの右側をどうやって膨らませていくか」という思想が大事だからです。

先ほど例に出した20歳の大学生で言えば、持てる資産は時間しかない。でもそこにスキルを身につけていけば、それは目減りしない価値、資本になるわけです。あるいはその中で得られた信用もバランスシートの右側に積み上がっていく。場合によっては、多少の虚勢を張って信用を少し“借金”してくるみたいなやり方もありますけど、それも意図的に使えばいい。

先ほど江尻さんが「対価性が高い」と言っていたもの、これが右側にどんどん積み上がっていくほど、できる仕事がより大きくなっていったり、いろんな可能性が開けてきたりする。右側の膨らませ方にも戦略を持って、それらをどこにアロケートしていくかで、人生の振る舞い方は変わってくるので、意識するといいのかなと思います。

江尻僕が言ったような年収とか瞬間的なフロー収入だけを考えるのは、P/L脳なんですよね。でも、B/Sを膨らませていったほうが最終的には豊かになれたり取れる選択肢が多くなったりすると思いますし、先ほど松本さんが言ったように、家庭を持ったときに、切り崩せばいつでもP/Lを膨らませられるアセットを持っているほうがいいはず。そういう意味で、すごくしっくりくるなと思って聞いていました。

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人生・仕事を楽しむためには、心と体の健康を

最後は、人生・仕事を楽しむために最も必要なことは何かを聞いた。すると返ってきたのは、意外な答え。二人とも「健康」を語り出した。

松本健康じゃないですかね。これに代わる資産はないと思います。僕、実は「健康オタク」なんですよ。どれだけ自分を働かせられるかみたいな考えになっちゃうので。人にそうしてとは絶対に言わないですけど(笑)。

楽しいことがあったり、いろんなチャンスが降ってきたりするんですけど、その時に最大のパフォーマンスを出せるかどうかはすごく重要だと思っていて。その意味で、自分の健康のメンテナンスは、すごく真面目に、丁寧にやるべきだと僕は思います。特に今は「人生100年時代」ですから、長期にわたって健康でいたいですよね。

だから、「寝ない自慢」をするのではなくて、めっちゃ寝て、寝ていない時間の密度にこだわったほうが絶対いいと思います。みなさん、ぜひサウナに行きましょう(笑)。

江尻松本さんがフィジカルな健康の話をされましたけれども、僕からはメンタルとかマインドの健康も大事だという話を。

僕は、ちゃんと寝てはいるんですけど(笑)、社会人になってからたぶん、月間の労働時間が300時間を切ったことは1度もないんですね。だけど、めっちゃ健康なんですよ。今年、スペシャルな人間ドックを受けたんですけど、1項目も引っかかりませんでしたし。

労働時間が過剰に長いことは一般論ではよくないんですけど、僕の場合は仕事がほぼ趣味なので。趣味の時間が長くても、たぶん健康を崩す人はいないと思うんですね。

「今は起業したからそう思うんだろう」と思われるかもしれませんが、サラリーマンのときからほとんど同じスタンスなので、要はマインドのありようなのかなと。仕事自体を楽しめているかはすごく大事。

あとは、1つのことをずっとやっていると、習得しちゃって飽きるんですね。その意味でも、変化率の高さにはこだわっています。世界はめちゃくちゃ広いから、「やったことがないこと」は無限にありますし、1つのことができるようになっても、それを広げていったり同じ領域でもっと高度なことにチャレンジしたりする。そういう考え方で働いていけると、すごく幸せなんじゃないかなと思います。

視聴者や読者にとっては、意外な話に思えたのではないだろうか。二人の個性も垣間見える言葉を多く楽しむことができたこのイベント。事業を考える上でのヒントが、きっと多く得られたことだろう。

ちなみにこの両社、いずれも事業成長に伴い、採用を加速させている。カジュアル面談から対応しているので、少しでも気になる場合はコンタクトを取ってみると良いだろう。

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番外編:2人の行動の共通点は
「未知を学び、アウトプットする」こと

イベント終了後、視聴者からいただいた質問の中から、印象的なものを一つピックアップして二人に答えてもらった。

質問は、「お忙しいなかで、自分にとっての対価性の高いものごとを見つける(更新していく)ために日頃行っている具体的な行動はありますか?」というもの。

松本①ファクトに向き合うため様々な人に会い話をすること、②未知の分野も含めて沢山の本を読むこと、③それらを整理・構造化し資料にまとめたり人に伝えたりすること、この3つは意識しています。

その中で、自分のやりたいことや市場の変化を感じ取り、自分なりの解釈をし続けることで新たな観点を見つけることを大事にしてきました。

江尻①試合に出続けること、②(いつでも試合に出られるように)座学は早めに終わらせておくこと、③自分の専門分野に限定をかけないこと、ですかね。

試合に出ること、それも一番痺れるフィールドに出続けることが重要だと思っています。知識があっても、ディスカッションやアウトプットをしないと意味がない。実践を繰り返すなかで、そこで求められるニーズや特有の条件等、リアルがわかってきます。

そういったフィールドに立つ選手として、いつ選ばれてもいいように座学、静的な情報インプットは人生の早いうちに終わらせておくこと。引き出しを増やしておくのは意識的にやっています。インプットをしたら、すぐにアウトプットをして、これを繰り返していくと、物事の取捨選択も効率的になってきます。

あとは、意外とやっている人が少ないと思っているのは「自分の専門分野に限定をかけないこと」です。僕はプロダクトアーキテクトを作ることも、営業も、資金調達も、企業経営に必要なことはもちろん、神羅万象、すべてのことを理解したい。分野を跨いだ学習や実践をすることで、本質論に、より早く、より深く、たどり着けると思っています。

イベントの延長でこれらの回答に触れると、また違った学びがあるだろう。二人のような事業家を目指そうと考える若者は少なくないはず。ぜひ、自分なりに解釈して、これからのキャリアや人生に活かしてほしい。

こちらの記事は2021年12月24日に公開しており、
記載されている情報が異なる場合がございます。

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執筆

畑邊 康浩

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