連載その仕事は、ハイスタンダードか? 「世界を変える」へ一直線、ビットキーの秘密

「成長」なんて求めるな──創業4年・240名組織のビットキーが明かす、組織と文化の創り方

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インタビュイー
江尻 祐樹

1985年生まれ。大学時代は建築/デザインを専攻。2008年にリンクアンドモチベーショングループへ入社。入社2ヶ月目に初受注を達成し、その後様々なコンサルタント業務に従事。2009年末、ワークスアプリケーションズへ中途入社。コンサルタント配属後1年でMVPを獲得。2014年には、4000名の中から社長賞を受賞し、数百名程度のコンサルタント・サービス組織の統括も経験。2017年末、旧知のエンジニア中心にメンバーを集め、ブロックチェーン/分散システム研究会を発足。2018年8月、そのメンバーを中心に株式会社ビットキーを創業。ブロックチェーン/P2P・分散技術を活用した、全く新しいデジタルID認証/キー基盤を開発するスタートアップのCEOとして新たなスタートを切る。

福澤 匡規

2008年に新卒でワークスアプリケーションズに入社。社長賞や最高受注額の4度更新など営業プレイヤーとして活躍したほか、300人のセールスを束ねる責任者などを歴任。退社後の2018年にビットキーを創業し、COOに就任する

寳槻 昌則

1985年生まれ。起業家の父と画家の母の間に三男として生まれる。中学卒業後すぐに大検の資格を取り、独学で京都大学へ入学した。在学中は映画の助監督や教育スタートアップ立ち上げを経験し、2011年に新卒でワークスアプリケーションズに入社。2年目でアメリカ事業立ち上げ責任者に選ばれ、ニューヨークとロサンゼルスに拠点を設置する。2018年にビットキーを創業し、CCOに就任する。

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「成長できる環境でキャリアを積みたい」「成長企業で仕事をして自分を成長させたい」──若者がキャリア展望について語るときに、思わず口を衝いて出てきそうなフレーズだ。しかしこの成長意欲を、例えば企業の採用面接で前面に押し出したとき、決してポジティブなだけではない印象を与えてしまっていることに気付いているだろうか。

2018年に立ち上がったスタートアップ・ビットキーは、創業から4年目で社員数が240名を超える。急速過ぎると言えるほどの組織づくりを進めてきた。その採用や育成の中で、CEO江尻祐樹氏、COO福澤匡規氏、CCO寳槻昌則氏という3人の創業者たちは、どのような葛藤を抱え、どのように立ち向かってきたのだろうか?

彼らの目から見た、「個人の成長」とは何か、組織の「成長」とは何か。事業の急激な成長の只中にいる彼らは口を揃えて「成長は目的ではない」と言う。採用や育成に関して抱える“ホンネ”から、スタートアップパーソンとしての振る舞い方を学びたい。

  • TEXT BY YASUHIRO HATABE
  • PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
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成長とは「変化」すること。
新しいこと、やったことのないことを選べ

寳槻ビットキーは「世の中に価値を創っていくための手段やプロジェクト」だと思っています。1人の影響力では決して成し遂げることができないような大きな価値を生み出して、世界中の人たちの「日常が変わる」ということを実現していく。

一人ひとりの成長も、もちろん原動力として必要ではありますけど、それは外向きに価値を生み出していった結果として表れるもの。それ自体が「目的」ではないですよね。

急成長スタートアップにおいて、社内メンバーはどのように成長を遂げていくのか。そんなテーマで始めた鼎談において、Chief Creation Officer(CCO)の寳槻氏が鋭く語り始めた。

寳槻描いたビジョンのスケールが大きければ大きいほど、それを実現するためには一人ひとりができることを増やさなくてはいけないし、そのできることの効率をもっと高めていく必要がある。だから僕は経験したことのないことをどんどんやってきたし、その結果、できることも増やしてきた。それを「成長」と呼ぶべきなのかもしれないけど、結果論でしかないし、狙って手に入れるものではありません。

僕、あるいは江尻も福澤も、創業した3年前に比べるとかなり脱皮していると思います。だけど別に「自分が成長したい」と思ってきたからそうなったわけじゃない。社会的に大きな価値を生み出したいし、事業を前進させたいと思ってやってきて、振り返ってみたら脱皮したぬけ殻が自分の後ろにたくさん転がっていた、ただそれだけの話です。

江尻人が成長するというのは、どんな経験が積めるかとか、どういう人、どういう仕事に携われるかが重要で、それを経て、自分自身がどう「変化」するかが、ほぼ全てだと思うんですね。

今までやったことがないことをやらないと、とりあえず「変化」はないわけです。だから、新しい刺激を受けられたり、今までにない経験をできるような、自分にとって「変化率の高そうなところ」を選ぶことは大事だと思っています。

その「変化」の中で、できるだけ早く、できるだけたくさんの視点や視座を獲得することで、「自由」というか、その仕事を本質的に「楽しめる」状態が手に入る。僕自身「読む力」というか、仕事をするうえでのリテラシーをできるだけ早く揃えることは意識していましたね。

寳槻氏とは異なる視点で「成長」を分析するCEOの江尻氏。中でも強く指摘したのは、「裁量権」という言葉が、世の中でいかに勘違いされてしまっているか、という点だった。

江尻キャリアの話でよく出てくるキーワードが「裁量権」。成長したい、そのために「裁量権の大きいところへ行きたい」ってよく聞きますよね。

僕からすると、「それって、本当に大丈夫?覚悟ありますか?」と思う。深い思考や強い意思を持っていて、かつ高い実行能力が本当にあるのであれば、裁量権はどんどん渡していきたい。ビジネスが急速にスケールしているから、渡したい領域は本当に無数にあります。

でも、「裁量を持つ」「すべてのことに責任を持つ」というのは本当にプレッシャーのかかることだし、覚悟の要ることで、意思や実行能力が十分ではない人が裁量を持ってしまうと潰れてしまうかもしれませんよね。

ビットキーだけの話でなく、どこの会社でも未経験の人にいきなり裁量権を渡すことにはないと思います。「裁量権が欲しい」と、転職の目的の一つとして言う人がいたら、それは間違っている。権限がないとできないことなんて本質的にはないと思っていて、権限があっても、なくても、「これをやる」「こうやって実行する」という意思や思考、その実行こそが大事だと思うのです。

その意思やパフォーマンスが信頼に繋がり、やがて「裁量」に変わっていく。そういうものなのではないでしょうか。

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自らの「意思」を持つことからすべては始まる

意思を持つことは、裁量権が与えられる前提条件。江尻氏は、以前のインタビューでも「意思を持って仕事ができる人に、仲間になってほしい」と語っていた。

そこには、一般的な意味での「当事者意識を求める」こと以上の意味が、意識して込められている。

江尻ビットキーは現在240名ほどの規模になっていますが、そうは言っても全員この3年間で入ってきた人たちです。大手企業の出身者もいれば、スタートアップ経験者もいますし、コンサル出身者もいますが、出自・出身が全然違うので、当然ながら全員がすぐに同じ目線、同じ基準で意思を持てている状態になるかというと、いきなりそうはなりません。

「まあ、たいていの企業において、本当はそうであるべきだと思いますが……」と前置きしつつ、求めている「意思」について力強く語り続ける。

江尻営業の話で例えるならば、同じ「受注」でも、単にその案件の受注額を加算して事業計画の目標数値を達成するためだけの受注と、「美しい受注」と呼べるものがあると思っています。

後者は、事業が大きく飛躍したり、プロダクトが育ったりというような事業貢献性のある「受注」です。プロダクト開発においても同じで、瞬間的によさげなものがつくれたとしても、中長期的に見たら全然意味がないモノづくりがある。それはつくっても仕方がないわけです。

単発的、瞬間的ではなく「本質的な価値」を生むためには、何か事実を捉えたらそれを咀嚼、思考して、自らの意見、意思まで昇華させるという行為を徹底的にやる必要があります。

僕の意思と、福澤の意思、寳槻の意思。それぞれ違う思考プロセスを経て形成された意思が、同じファクトを元に成り立っているかどうかを確認した後に、本気でぶつけ合うと、3人の良いところを合わせてより良い答えが出せる。つまり、価値をより高めることができる。

これと同じことを、ビットキーでは大なり小なり全員に求めています。

確かに、価値の創出に対して意思を持つことは間違いなく重要だ。誰もがそうしたビジネスパーソンになれるよう努力をすべきだという考えに、賛同しない人はほとんどいないだろう。

だが一方で、それが非常に難しいというのも事実だ。誰しもが最初からできるわけではないだろう。ではビットキーではどのように、それができる状態へ引き上げていくのか。

江尻まずは問いますよね、意思を。僕らのあいだでも問うし、マネジャー陣にも問うている。メンバーから「どうすればいいかわからない」と言われたときには「どうしたいか考えたの?」「どうしたほうがいいと思うの?」と問う。だから、毎日が練習です。

寳槻会議の中でも「あなたの意思は何なの?」という問いかけは日常的にあります。「お客さんにとって、世の中にとって、会社にとってどういうふうにしたほうがいいと思う?」と問いかけると、意外と考えていなくてハッとするんですね。

江尻日常の中で問うのが一番早いです。あとは、ただ問われるだけではできるようにならないので、意思を持って仕事をしているメンバーを見て、模倣する。

福澤意思を持つと、がらっと行動が変わるんですよね。社会的な価値や何かを前に進めようという気持ちを持つと本当に変わる。

逆に気をつけなきゃいけないのは、意識が自分に対して向いている状態。例えば「自分が評価されたい」とか「良く思われたい」と思っていると、何か指摘されたりアドバイスされたりしても、すんなり受け入れられない。より高いパフォーマンスを出すためのフィードバックなのに、自分を否定されていると勘違いして、殻を閉じてしまう。

そういう状態に陥らないように、脱していけるような育成やマネジメントはかなり意識していますね。

寳槻それと、「実際にやってみせること」も大事だと思っています。例えば、銀行だったら銀行、商社だったら商社の「(文化的な)色」がありますよね。なぜそれが生まれるかと言うと、先輩や上司をロールモデルにして、近づいていくからでしょう。それと同じで、意思を持って仕事したほうが断然楽しいし、そういう人を見たら「あの人は会社を使い倒して、生き生きと働いているな」という憧れの対象になると思うんですよ。

江尻マネジメントレイヤーは、メンバークラスに対して「意思を持った言動」を促しながら育てていく必要があります。だから、マネジャー自身が意思を持った仕事ができている必要があります。その意味では社内に体現してくれている人がたくさんいますね。

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「ヘルシーコンフリクト」で価値を生み出す

ここまで、マネジャーとメンバーの関係性に焦点を当ててきた。しかし、それをさらに部門間を越えて繋いでいくことで、事業をより良いものにしていくことができるのだと、江尻氏は強調する。

江尻垂直の上下関係の中で生まれる憧れもあるんですけど、これが部門を越えて起こると圧倒的に楽しいんですよ。

顧客のことを考えて「こういうふうにサービスを提供したほうが一番良い」という意思を持っているセールスやCS部門のメンバーと、「こういうプロダクトを通じて顧客に価値を提供するのが一番良い」という意思を持つプロダクト部門の開発者がいて、これらの意見というか、意思を部門の垣根を越えてぶつけ合うと、お互いに自分の仮説を補強するヒントを得られるんですよね。

これがあらゆる部門で起きていたら、こんなに楽しいことはないわけですよ。同じ部門内であっても、異なる意思を持つ人がそれを伝え合えば、異なるアプローチが見つかって面白い。

そうやって、意思と意思のぶつけ合いから生まれる価値に「楽しみ」や「面白さ」を見いだせる人が多い会社は、自分が働いていて幸せだなと感じるし、これこそが価値が生まれるということに最も直結するものだと思っています。

福澤先ほど話したことで、意識が「外、社会」に向いているか、「内、自分」に向いているかがやっぱり大切です。前者で取り組んでいれば、たとえ誰かと意見が衝突したとしても、そこでの指摘やアドバイスをすんなり受け止められる。自分がどう見られるかはどうでもよくて、良い仕事をしたいと思うだけなので。そうすると吸収力も上がります。

さらに言うと、そういった議論やものの進め方をしていると、自分の意思や意見を人にぶつける前に、「これをするリスクは何か?」「別のよりよいアプローチはないか?」と自分自身でより緻密にシミュレーションするようになる。だから、「神は細部に宿る」じゃないですけど、細かいところまで詰めて、意思やシナリオを持って、考えられるようになりますよね。

最近では、Googleが提唱した「心理的安全性」という言葉が一般にも広がり、一定の支持を得てきた。半面、「心理的安全性」という言葉を盾に、厳しい指摘に耳を塞いだり、指摘すべきことを避けたりする風潮もある。そうした、いわば“勘違い”を、組織づくりにおいては徹底して排していく必要があるとも語る。

江尻思っていることがあるのに指摘すらせず、単に仲良く楽しくというだけでは本質的な価値創造はできないし、そこに成長もありません。それってある意味、残酷なことだと思います。ある時に、力が足りないと気付いてももう遅いから。

だから、ビットキーでは健全な衝突や摩擦は「ヘルシーコンフリクト」として推奨しています。社内でこの3人で話していると、よく喧嘩しているように思われるんですけど(笑)、実際は「本音」で話し合っているだけ。それでもよい関係性が保てるのは、全員が価値創出への意思を持っているからです。

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経験の先に「視点」の獲得、「視点」が面白さを生む

それでも、多くの人は明確な意思もなく「自分はこのままでよいのか」という漠然とした不安から、「成長したい」と口にしてしまいがちだ。そのような不安に囚われたことはないのだろうか。そして、そのような不安とどう向き合うと良いのだろうか。

福澤自分自身は、会社に勤めていたときから不安に思ったことはないですね。20代の頃でもありませんでした。しかし、同じことの繰り返しで停滞を感じてしまうことだけは駄目でした。不安というよりも、心がストレスを感じてしまうんです。僕の性格的に、同じことを繰り返していると仕事の質が下がってしまうので、新しいことに取り組むことで質を高めています。

ただ、そうやって「新しいこと」に取り組む際に、「より難しいことをやろう」とか「自分を成長させることをしよう」という考えは全くなくて。とにかく「やったことがないことを」という観点しかありません。だって、どっちが難しいかとか、自分を成長させられるかとか、やってみないとわからないじゃないですか。

福澤氏も、寳槻氏が言うように「気付けば脱皮したあとのぬけ殻が転がっていた」ということのようだ。

福澤自分が創業してからの3年間で実感したのは「成長」というよりも、やっぱり「変化」ですね。「こういうこともできるようになった」とか、「こんな人たちと一緒に仕事ができた」とか。新たな刺激をたくさん受けて、やったことがなかったことをいろいろ経験できたので。

自分自身のキャリアや成長について不安があるのであれば、やったことのないことを経験して、できることを増やしていけばいいのではないではないかなと思っています。その時々で面白そうなものや興味があるものに飛びついてみるのって、けっこう楽しいですよ。

だって、5年先や10年先のキャリアを描き、そこから逆算して今年何しよう、来年は何をしようと考えるのって、考えることは重要だけど、それ通りに進んでいくのって、面白くないと思うんです。1年後には興味があるものとか向かいたいものが変わっているはずですし、マーケットや世の中がどうなっているかも、わからないじゃないですか。

江尻ただ、一般的には「自分のやりたいことがわからない」という人がいることは理解はします。だとしたら、さきほどの話の繰り返しになりますが、「変化率の高いところ」とか「新しい変化が求められるような仕事」をすればいいんじゃないかと思いますね。

そうすると、日々、大なり小なり何かしらの変化が起きるので、それによって新しい視点が獲得されていく。その中でヒントを見つければいい。

福澤「変化率の高さ」は確かにわかりやすいキーワードかもしれない。

江尻そのときに重要なのは「壁をつくらない」ことだと思います。例えば、採用担当だから営業のことまで知らなくていい、考えなくていいとか、開発のことはエンジニアだけが考えるみたいな感じになると、いつのまにか壁ができて、大きな変化が起きなくなってしまう。変化率が小さくなってしまうからです。だから、自分の中に、知識や担当領域の「壁をつくらない」ことはとても大事です。

寳槻そうしたことを続けていくと、一つひとつの能力は確かに上がっているんですよ。例えばコミュニケーション能力とかね。でも、その成長量って、たぶん起業する前の方がずっと大きくて。やっぱり20代って勤勉ですし。それを差し置いても、さきほどの江尻の話を聞いていて思いましたが、この3年間でたくさん動いた結果、「たくさんの視点」を持てるようになりました。この「視点の獲得」が結構大きいのかもしれません。

ある仕事をやるにしても、今までは1つの角度からしか見えなかったものが、別の角度からも見られるようになる。すると、自分なりの意思を持ちやすくなる。例えば、生まれて初めてレストランでステーキを注文したときに、ウェルダンとかミディアムとか、どの焼き加減がどうかもわからないし、どれが好きかもわからないじゃないですか。でも、いろいろと知識や経験を重ねて、たくさんの視点を身に付けたあとで体験をすると、自分の好みが言えるようになりますよね。それと同じというか。

「やりたいことがわからない」という人は、そういうたくさんの経験をしていないから、自分の好みとか意思が持ちづらかったりするんじゃないかな、と。だから、まずはいろいろと経験して、変化することで「たくさんの視点」を身につけよう、と言いたいです。

江尻そこに関しては、僕は20歳くらいからなんとなく気付いたんです。できるだけ多くの領域について、できるだけ早く専門性を獲得したほうが、ビジネス上自由に動き回れたり、自由に自分の意見を述べられるようになる可能性が高いだろうなということに。そうしたほうがより楽しく働けるし、より大きいアウトプットができると感じたことが、今に繋がって、ものすごくたくさんの専門領域を持てているのだと思います。

なぜそう思ったかというと、学生時代に建築・デザインをやっていたことと関係があります。アートなんかもそうなんですけど、知識や教養を手に入れてみると、まったく見方が変わってくるんですよね。例えば、日本画を見て、普段は絵画を見ないような人からすると「すごい絵だ」という感想になるかもしれませんが、専門家から見れば、その絵がすごいとかすごくない以前に、どういうコンテクストで、どういった技法で描かれたかに目が向きます。その一つひとつに意味があって、そういう知識があるほうが絵画を楽しめますよね。

料理やお酒も同じで、普通に「おいしいな」と思って味わうこともできるんですけど、一定程度上の経験や教養があると、より深く、高度に楽しむことができるでしょう。それってビジネスも全く一緒だと思っていて。

別に超一流の専門家にならなくてもいいんですが、ある程度の教養──それを「視点の獲得」と呼ぶべきなのか、「自分で実行できる」という感覚なのか、「専門家とコミュニケーションできる」という知識レベルなのかはわかりませんが──それがあることによって物事を捉える解像度も実行のレベルも上がるんです。

だから、成長するかどうかなど考えずいろいろやってみて、知識や経験を幅広く身につけたほうが仕事も面白くなるんじゃないかと思います。

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大切なのは「この人」と一緒に何かをやりたいか

福澤ここまで「自ら意思を持とうよ」という話をひたすらしてきましたが、今この瞬間、「そんなもの持ってないかも」という人もいますよね。そういう人へのおすすめは、「飛び込んでしまう」ことです。そういう強い意思を持った人の近くや、そういうものを持たざるを得なくなってしまう環境へ「飛び込む」こと。

例えば、僕は江尻と比べたら、学びに対してそこまで強い意思を持っているかというと、ちょっと自信ないです(笑)。「自分がこの領域には意思が持てていない」と理解したなら、それができている人、例えば江尻のような人と一緒に働いて、刺激を受けて、結果的に身についているみたいな選択肢もありかなと思います。

江尻そう言ってもらえてありがたいですし、組織に貢献できているのだったら嬉しいですね。僕はとにかく、新しいことをどんどん勝手にやっていくので、近くにいる人がその流れを見て刺激を受けたり、一緒に学んだりすることはできると思います。

そのような「環境」を「企業」に読み替えてみると、例えば転職活動の際に、どうやって企業を見極めればよいのだろうか。

寳槻見極めは無理じゃないですか(笑)。Webサイトや面談の中で嗅ぎ取れるものは限られていますし。例えば365日、美味しいものに新しく出会うのは無理でしょう。それがわかった状態で判断をしたいのだとしたら、毎日、すでに食べたことのある同じものを食べ続けるしかなくなってしまう。

企業や人との「出会い」というものは、コントロールがあまり利かないと思っています。世の中には出会いの確率が広げられる方法論とかもあると思うんですけど、僕はそういうのはあまり信じていないです。

映画を観る前に、どれを観るか決めるためにものすごく事前リサーチする人、たまにいますよね。「絶対に最高の映画しか観たくない!」みたいな。でも、そんなことをして選ぶのに時間をかけるくらいなら、目に付いた映画から観てしまったほうが早い。自分の直感を信じてチョイスすることがすごく大事なんじゃないかなと思います。

福澤大きく切り分けることはできるかもしれないですけどね。明らかにオペレーショナルな会社ではなく、変化率の高いところをキーワードに探すみたいな。そのぐらいの仮説持って選ぶことはできると思います。ただ、結果的にそれが当たりか外れかは、実際に入ってみないとわからない。

江尻究極を言えば、自分が吸収したい「人」がそこにいればいいと思うんですよね。変化率が高い環境で、裁量と意思を持って仕事をしている人。自分が持っていない何かを早く吸収するためには、模倣するのが一番手っ取り早いので。自分が吸収したくなるような動き方をしている人の近くにいた方が、より多くのことを吸収できるわけじゃないですか。

僕にも、福澤や寳槻に対して「ここは勝てない」というものがあるし、2人にも「江尻にここは勝てない」という領域ってあると思うんですけど、でもお互い間近で見ていれば、より多く吸収できますよね。

そういう「人」がいるかどうかをできるだけ事前に見極めようとするなら、面談や面接の中で「この人と一緒に働いたら絶対面白い」とか「この人から吸収したい」と確信的に思える人と出会えるかどうかですよね。

福澤だから「出会い」の瞬間一つひとつを大切にして、この瞬間、この人から「どんなことを学べるか」を大切にしたいですよね。

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この試合の「ピッチ」に立つか、
「観客」として観るか、どちらがいい?

「強い意思を持って、自身の仕事に取り組み続ける」という姿勢について、ビットキーでは「ハイスタンダード」という共通言語を使用している。これも組織づくりにおける重要な施策の一つになるのだろうが、どのような意味を込め、どのように使っているのだろうか。

江尻できるだけスケーラビリティを持って、多くの人、多くのマーケットに対して価値が最大化するような目線の高さを僕らの「当たり前」にして、全ての仕事や価値の生み方を考えていきたい、そういう思いを込めた言葉です。

寳槻そう聞くと、意識高い系に見えるかもしれませんが、そういうものではなくて、どちらかというと自分たちの「戒め」で言っている言葉ですね。

と、ここまで聞くと「全社員が同じ姿勢や考え方で取り組むべき」という、マッチョなカルチャーのようにも思える。多様性が重要視される時代に逆行しているのでは?という疑問もわくかもしれないが、もちろんそうではない。

江尻「適度なストレッチ状態」を当たり前のものにしようということです。僕らも含めて、ビットキーというチームのメンバー全員が「みんなが少しずつストレッチをして、チームとして限界を突破していこうぜ」という。結局、個々の戦闘力じゃなく、全員の戦闘力の総和で戦っているので、それを最大化したい。そういう思いを込めたのが「ハイスタンダード」です。

福澤僕らは社会や世の中の人々に対して、感動とかを提供する劇団の仲間みたいなものです。そこにはいろんな個性や能力をもった仲間がいる。主役の人もいれば、バイプレイヤーの人もいるし、大道具や音響が得意な人もいる。でも皆の目的は、観客をあっと言わせることであったり、感動で泣かせちゃうことだったりするかもしれない。ビットキーはそのための舞台であり、企画やプロジェクトのようなものです。

ここでは自分自身のスキルや得意を活かして、「なにか変化を起こしてやろう」という人が最もフィットします。そういうタイプの仲間には、このプロジェクトにどんどん集まってきてほしいと思っています。

寳槻僕は、というかこの2人もそうですが、ビットキーをいわゆる「スタートアップ」と思っていないんです。よく言われる「スタートアップ界隈」の1社に括られたくないというか。スタートアップってまだまだ、「頭のいい人たちがお金持ちになるための手段」という見方もあるじゃないですか。実際にそういう企業もまだあると思います。

でも、僕らは違う、と明確に言えます。事業をうまくやってちょっとお金持ちになりたいというわけじゃなくて、世の中に「価値を創る」ことをテーマにしている。

冒頭でも話しましたが、成長というものは本質的な価値を生み出した先に結果として生じるものであって、それ自体は目的ではない。それくらい「価値を生み出すこと」にこだわりを持っています。

江尻こんな僕らが偶然、3人も集まったというのも、かなりレアなことだと思いますね。世の中には、1人の強い創業者が高い社会課題意識を持って牽引している企業もたくさんあるかと思いますが、僕らはそうではない。

この3人、いや創業時から関わっているメンバー全員がそれぞれ異なる能力や経験値を持っている。みんな、起業しようと思えば一人でもできる、そんな強いメンバーが数十人いて、同じベクトルを向いて創業メンバーとして揃ったことが、とても面白い。だからこそ「チームで価値を生み出す」ようなカルチャーが最初から生まれたと思いますし、それがさらなる魅力に繋がっていると思います。

寳槻会社選びとか、仲間集めって、経済的な損得とか、事業のやり方の巧さに人がついてくるという面もあると思いますが、それには限界があると思っていて。熱量こそが人の心を動かすものだし、それが一番大事ですよね。

江尻そう、熱量はとても大事で、最後にこんな問いかけをしたいです。日本には、本気で世界を変えようと思っている、そして、実際にそれができそうなスタートアップはいくつありますか、と。「世界で闘う」というものさしを常に意識して事業を展開する、それを本気で心の底から実行しようと思っている人たちは、最近増えつつあるかもしれませんが、まだまだ少ないと思います。では、僕らはどうか。僕らは、そのつもりがある。日本だけではなく、世界中の人々の毎日を変えていく意思がある。

僕らが目指すのは「世界」です。このことを明確に発信していきます。ハイスタンダードの「基準」を「世界」というレベルに持っていきたい。そのために求めているのは、世界のトップレベルで戦うつもりのあるプレイヤーです。ワールドクラスの試合を「観客」として観るか、「ピッチ」に立つか、どっちで楽しみたいか?ということを自分に問いかけてみてほしいですね。

こちらの記事は2021年11月30日に公開しており、
記載されている情報が異なる場合がございます。

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執筆

畑邊 康浩

写真

藤田 慎一郎

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