INSIGHT
18-09-11-Tue

VTuber市場の可能性──“第二のUUUM”はどこまで熱狂を起こせるか?

TEXT BY AZUSA IGETA

3DCGキャラクターがYouTubeで動画を配信する、
バーチャルYouTuber(以下、VTuber)が話題だ。

ゲーム実況アプリ「Mirrativ」を提供する株式会社ミラティブが先日公開した、
誰でもVTuberになれるアバター機能「エモモ」は大きな反響を呼んだ。

リリースからわずか1週間で実利用者は4,000人を突破し、
国内のVTuber人口は倍増したという

急速に拡大するVTuber市場には、
ミラティブをはじめ様々なプレイヤーの参入が相次いでいる。

本記事ではVTuber事業を手がけるプレイヤーを紹介し、
巨大市場を作りあげたYouTuberと対比しつつ、VTuber市場の可能性を探っていきたい。

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拡大するYouTuber市場。国内市場規模は219億円に

VTuber市場の可能性を探る前に、まずはYouTuber市場についておさらいしておこう。株式会社サイバーエージェントの子会社で、若者向けのマーケティング事業を行う株式会社CA Young Labの調査によると、国内におけるYouTuber市場規模は2017年時点で219億円。さらなる市場拡大が見込まれており、5G実用化以降の2022年には579億円規模(17年比約2.6倍)に達すると予想されている。

YouTuber誕生のきっかけとなったのは、2007年に発足した「YouTubeパートナープログラム」。YouTube上で動画を投稿するクリエイターが、表示される広告や「YouTube Red(YouTubeの有料版サービス)」の利用者からの視聴で収益を受け取ることができるプログラムだ。開始当初は、YouTubeが厳選したクリエイターのみが参加できるものであったが、2011年には一般ユーザーにも開放され、YouTuber人口は一気に拡大した。

人気YouTuberの活躍が続く中で、誕生したのが「マルチチャンネルネットワーク(MCN)」。再生回数を稼げるYouTuberのマネジメントを行う組織の総称で、YouTuberの芸能事務所と言われている。日本トップのYouTuber事務所であるUUUM株式会社は、2017年8月に東証一部上場を果たし、The Walt Disney Company(ウォルト・ディズニー・カンパニー)は大手MCNMaker Studios(メーカースタジオ)を5億ドル(約570億円)で買収した。

日本トップのYouTuber・HIKAKIN(ヒカキン)氏の年収は億を超えると言われており、日本FP協会が発表した2017年の「小学生のなりたい職業ランキング」では、男子部門の6位にYouTuberが浮上。YouTuberはひとつの職業として確立しつつある。

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事務所からファンド、クリエイターの支援まで。VTuber市場に進出するプレイヤーたち

【自己紹介】はじめまして!キズナアイですლ(´ڡ`ლ)

生身の人間であるYouTuberとは違い、架空の存在であるVTuber。日本でその名前が聞かれるようになったのは、ここ最近のことだ。2017年末にVTuberのパイオニア的存在であるキズナアイの動画が盛大にバズり、その時期にデビューした輝夜月(かぐやるな)をはじめ、ミライアカリ電脳少女シロなど地道に活動を続けていたVTuberにも注目が集まった。

まさに伸び盛りである市場に注目し、VTuber事業に積極的な姿勢を見せるプレイヤーを紹介しよう。主軸事業として巨額の投資を行うメガベンチャーから、日々増加するVTuberをマネジメントする事務所、クリエイターを支援するツールまで、そのジャンルは多岐に渡る。それぞれの特徴を紹介し、VTuber市場の可能性を探りたい。

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GREEは100億円を投資。ファンドや配信プラットフォームなど、多方面からVtuber事業に注力

ゲーム事業、メディア事業に続く「第3の柱」として、VTuber事業に注力していくと発表しているのが、グリー株式会社(以下・GREE)。市場拡大に向けて、VTuberに関連するクリエイターやスタートアップ企業へ投資する「VTuberファンド」を開始した。その規模は総額40億円。

1号案件としてアメリカに拠点を置くOmnipresence(オムニプレゼンス)へ出資することも発表している。同社はスマホのカメラから3Dアバターを使ったライブ配信ができる「Facemoji」を開発するスタートアップだ。

株式会社Wright Flyer Live Entertainment

GREEは今年4月、VTuber特化型のライブエンターテインメント事業を担う100%出資の新会社Wright Flyer Live Entertainment(ライトフライヤーライブエンターテイメント)も設立した。同社はキングレコード株式会社との共同出資でVTuberに特化した音楽レーベル事業会社株式会社RK Music(仮)を設立している。

そして、8月7日には、VTuber専用のライブ配信プラットフォーム「REALITY」をリリースした。今秋にはスマホからオリジナルアバターを作成し、VTuberとしてライブ配信ができるアバタープラットフォームのα版「REALITY Avatar(仮称)」の公開も予定しているという。

GREEはこれまでにソーシャルゲーム事業やVR事業を手がけてきた。これらを通じて蓄積してきたノウハウや、クリエイターとのネットワークを活かし、クリエイターや関連スタートアップへの投資、収録・配信スタジオの開設なども予定している。VTuber関連事業に対して100億円規模を投資し、さらなる市場拡大を目指すという。

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アイドル特化型や海外進出特化型も。バラエティ豊かなマネジメント事務所が続々登場

ENTUM

YouTuber市場でスケールしたUUUMのように、VTuberをマネジメントする事務所も続々と登場している。人気VTuberであるミライアカリの運営を行う株式会社DUOが開設した「ENTUM(エンタム)」をはじめ、アイドル特化型のVTuber事務所「KAGAYAKI STARS」、海外進出特化型バーチャルタレント事務所「WINKS」などバラエティ豊かな事務所が相次いで設立されている。前述のGREEと同様に、新規事業としてVTuber市場に参入したサイバーエージェントも、VTuberのマネジメント事業に特化した新会社「Cyber V」を設立した。

マネジメント事務所は、彼らの制作をサポートしたり、オリジナルグッズの制作やメディア対応も請け負っている。また、新しい才能と出会うため、定期的にオーディションも開催している。増え続けるプレイヤーから人気VTuberを輩出するためには、他社との差別化も重要な鍵となるだろう。

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スマホ1台で手軽にVtuberになれるサービスから、3Dキャラクター作成ソフトまで。クリエイター支援サービスも続々登場

ホロライブ

VTuberになるためには3Dモデルを作るための費用と専門知識が必要だった。しかし、冒頭で紹介した、スマホ1台でVTuberになれるエモモなど、手軽にVTuberになれるサービスが増えている。

スマートフォンアプリの開発などを行ういちから株式会社が提供しているのは、iPhone X専用のバーチャルライブアプリ「にじさんじ」。iPhone Xが搭載している「Face ID」を使って、キャラクターに自身の表情の変化をトレースし、その映像を配信することができるものだ。今年6月に総額約2億円の資金調達を成功したカバー株式会社も、同様のアプリ「ホロライブ」をリリースしている。

さらに、3Dキャラクターそのものを作成できるサービスも登場した。今までは、3Dキャラクターそのものを作れる人はごくわずかであった。イラストを描くことが得意な人であっても、3Dのキャラを描くことは難しいからだ。

その突破口として、イラストコミュニケーションサービスを提供するピクシブは今年8月から、お絵かき感覚で3Dキャラクターを作成できるソフト「VRoid Studio」の提供を開始した。これを使えばプロのクリエイターでなくても、オリジナルのキャラクターを1から創り出すことができる。

資金や専門知識がなくてもVTuberになれる、これらのサービスの増加に伴ってVTuber市場はさらに拡大するだろう。

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YouTuberよりも参入ハードルは低いが、収益モデルは限定される

生身の姿をさらけ出して時には体を張るYouTuberと、バーチャル世界の架空キャラクターとして活動するVTuber。手法は全く違えど、熱狂的なファンと拡散力を持っているという点において、両者は共通している。果たしてYouTuber市場のように拡大していくのだろうか。

ここからは、YouTuberと比較したときの特徴を挙げながら、VTuberの可能性について考えたい。

参入ハードルが低い

一部の人を除いて、ほとんどの人気YouTuberはタレントさながらに、自身の姿を世界中に公開している。オンラインで顔を出すことのハードルは下がりつつあるものの、いざ自分の顔をネットに公開するとなれば、踏みとどまってしまう人もまだまだ多いだろう。それに比べて、VTuberはビジュアルや年齢、性別に関係なく「なりたい自分」になれる。さらに前述の「簡単にVTuberになれるサービス」の登場により、その人口はますます増加していくだろう。

ハイペースに量産できる

自分自身を売りにするYouTuberは、基本的に企画・撮影・編集まで一気通貫で行い、手間暇かけて動画を作っている。反して、VTuberは、演者と運営が同一人物である必要がない。事実、キズナアイをはじめほとんどの人気VTuberは、複数人のチームによって運営されている。そのため、同じ時間の中で生成できるコンテンツの数はYouTuberよりも多い。配信するコンテンツの量が多いほどリーチは高くなり、その分ファンの獲得機会も多くなる。

制作コストが減ることで、コンテンツクオリティのPDCAも回しやすくなる。キャラクターデザインやトークを磨き込み、より多くの人を惹きつけるコンテンツを生成できるようになるのだ。

スポンサーを獲得しづらい

YouTuberの中には、商品紹介をメインに活動する人もいる。企業から依頼された商品を実際に使ってレビューすることで、視聴者に商品を宣伝しているものだ。実体のないVTuberにとって、このようなやり方で広告収益を得ることは難しい。

もちろん顔が見えないからこそ、正直なレビューやエッジのきいたコメントができるのかもしれないが、商品をその場で使ってみせることは現状では未だ難しい。スポンサーをつけて稼ぐためには、バーチャルならではの演出など、工夫が必要となるだろう。

活動範囲が限定される

HIKAKIN氏が人気テレビ番組のレギュラー出演を果たすなど、活動範囲を広げるYouTuberも少なくない。しかし、VTuberは基本的にオンライン上でしか存在することができない。いかにして露出を増やし、多くのファンを獲得するかが、VTuberの生存戦略となるだろう。

とはいえ、キズナアイは自身のファンが集う場として、リアルイベント『A.I.Channel Fan Event 2018』を開催し、BS日テレで冠TV番組も持っている。電脳少女シロもテレビ出演し、マツコ・デラックスとの共演を果たすなど、人気VTuberを筆頭に、少しずつ活躍の場所は広がりつつある。

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市場拡大の鍵は、“架空の存在”の可能性を拡張できるか

YouTuberもVTuberも、人気の指標となるのは活動場所であるYouTubeのチャンネル登録数だ。複数のチャンネルを使い分けているHIKAKIN氏の総チャンネル登録者数は、1250万人以上を誇る。対してVTuber界のトップを走るキズナアイの総チャンネル登録数は300万人強と、その差は圧倒的だ。

バーチャルストリーマー事業を展開する株式会社CyberVの調査によると、平均して1日に20人のVTuberが誕生している。果たして、HIKAKIN氏を凌ぐ人気者は登場するのだろうか。

“架空の存在”であるVTuberは収益を獲得する手段や活動場所が限定されている。だからこそ、彼らの価値を高めたり、可能性を広げることが市場拡大の鍵となるだろう。本記事で紹介したようなサービスはもちろんのこと、VTuberに特化した広告代理業やキャラクタービジネス事業などの需要も高まるのではないだろうか。予測不可能な動きを見せるVTuber市場に、今後も注目したい。

[文]井下田 梓

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