【ベンチャーキーパーソン名鑑】PdM編 Vol.11:カサナレ 中原 悠氏
「あの会社の急成長は、なぜ実現できたのか?」その答えは、最前線で事業の課題と格闘し、成果を出し続けている「ベンチャーキーパーソン」の仕事術に隠されています。
本連載では、スタートアップやベンチャー企業が事業を伸ばす上で避けて通れない具体的な「業務の壁」を、彼ら/彼女たちがどう乗り越えてきたのかを徹底解剖。
日々の業務ですぐに役立つ実践的なノウハウ、困難な意思決定を支えた思考プロセス、そしてリアルな成功と失敗の事例、そこから得たノウハウを、ご本人たちの言葉で共有する。(掲載希望企業はこちらのフォームからご回答ください。)
彼ら/彼女たちの生きた経験は、あなた自身の課題解決のヒントとなり、スタートアップやベンチャーでの活躍、あるいはキャリアアップを加速させる具体的な「処方箋」となるはずだ。
カサナレ株式会社における「PdM(プロダクトマネージャー)」の魅力とは?
以下、話者は中原さん
カサナレは、「任せられるAIを、社会の標準にする」ことを掲げるスタートアップです。私の役割は、プロダクト開発と、エンタープライズ向け生成AI活用システムの導入をリードすることです。
ただし、決して「開発ありき」では考えません。まず顧客の業務に入り込み、「どこに課題があるのか、解決したら何が変わるのか」を一緒に整理するところから始めます。制約や期待値を踏まえて、そこで初めてLLMを使ったシステム設計に入る。開発から保守運用まで一貫して伴走出来ることが、当社の強みです。
もう一つ大事にしているのは、エンジニアが力を発揮しやすい環境づくりです。プロジェクト管理の型化、ナレッジ共有の仕組み、ボトルネックの早期発見──まだ道半ばですが、個人の頑張りに頼りすぎない「組織としての強さ」を作っていきたいと思っています。
私自身、今もコードを書きますし、その一方で顧客との対話も欠かしません。現場を離れると見えなくなる本質があるからです。技術と事業の両面からお客様のビジネスに貢献できることに、大きなやりがいを感じています。
PdM(プロダクトマネージャー)の処方箋
処方箋 その1:両社の未来を考える
正直に言うと、これは自戒を込めた処方箋です。プロジェクト型の業務では、「いつまでに何を納品するか」に意識が向きがちですが、お客様のゴールはその先にあります。業務課題の解消だったり、売上や利益の増加だったり……状況に応じてさまざまです。
また一方でカサナレにも、長期で追いかけている戦略があります。目の前の案件を取ることに終始せず、お客様の投資ストーリーと自分達の戦略が、長期の時間軸で本当に噛み合っているか──その目線は常に持っておきたいと思っています。
処方箋 その2:隙を埋めるより、尖りを磨く
スタートアップのサービスは、隙だらけで当たり前だと思っています。むしろ「この部分だけは他と違う」という尖りがあるからこそ、スタートアップとして戦えるのではないでしょうか。ただ、その尖りが何なのか、自分たちでも明確に言葉にできていないことは意外と多い気がしています。
では、その尖りをどう見つけるか。それは、今お客様に実際に届いている価値を見つめ直すことで見えてくる。お客様が何に喜んでくれているのか、どこに対価を払ってくれているのか。そこにヒントがあるはずです。
改善というと、つい欠点を減らすことや機能を足すことに目が向きがちです。もちろんそれも大事ですが、まずお客様が感じている価値を起点に、そこを先鋭化させることを優先したい。
隙を埋める前に、尖りを磨く。言うほど簡単ではないですが、この順番を意識するようにしています。
処方箋 その3:一度に全てを変えようとしない
スタートアップにはスピード感が大事、とよく言われますが、一度に全てを変えようとすれば、結局どれも中途半端になり混乱を招く。「ベンチャーは何でも速く変えられる」というのは、幻想だと感じています。
重要なのは、変えた結果を確認することです。どんどん手を打って行くことができたとしても、何がどう効いたのか、わからなければ意味がない。しかも、プロダクトの改善なら数字で確かめやすいですが、組織やカルチャーのことはそう簡単に結果が見えるものでもありません。焦る気持ちは常にあります。でも、一つ変えて、何がわかったかを確かめてから次に進む。地味ですが、これがいちばんの近道だと信じています。
PdM(プロダクトマネージャー)を学べるオススメコンテンツ
オススメ:「人を動かす」
| 書籍情報 | |
|---|---|
| 著者 | デール・カーネギー |
| 出版社 | ディスカヴァー・トゥエンティワン |
| 出版日 | 2018/8/26 |
| Amazonリンク | ![]() |
PdMには、お客様や課題の深い理解だけでなく、社内ステークホルダーの尊重と方向性の統一が求められます。特に、エンジニア全員がプロダクトへの強い思想を持っている環境では、それらを1つのプロダクトに昇華させることは容易ではありません。この本には、全員が「プロダクトを通じて価値を創出している」と自覚し、主体的にコミットしてもらうための本質的なヒントが詰まっていました。
オススメ:「ゼロ・トゥ・ワン」
| 書籍情報 | |
|---|---|
| 著者 | ピーター・ティール |
| 出版社 | NHK出版 |
| 出版日 | 2014/9/25 |
| Amazonリンク | ![]() |
ベンチャーとしては、この本が示すように「10倍優れた、まったく新しいプロダクト」を目指して市場を独占することを目指すべき!という理想がありつつも、実際には1を10にしようとする堅実な発想に陥りがちだと思います。そんな時にこの本を思い出すことで、「ここは0→1で勝負すべきだ」と自分を奮い立たせることができます。チャレンジする勇気をくれる一冊として、個人的におすすめです。
キーパーソン中原 悠氏から皆さんへのメッセージ
現在のLLM市場はバブル期にあり、多くの企業が「LLMは本当にビジネスに欠かせないものになるのか」を模索している段階です。
私たちは、お客様の業務に深く寄り添うことで高い精度を実現できると考えています。そして、その精度の高さをお客様が確信できたとき、これまでにないビジネスが次々と生まれるでしょう。
そのためには、お客様の業務・課題・データに真摯に向き合い、深く統合することが不可欠です。未来を描きつつも、地道な作業を積み重ねていける──そんなエンジニアやマネージャーを募集しています。ぜひ採用ページよりご応募ください。
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こちらの記事は2025年12月19日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。
連載ベンチャーキーパーソン名鑑
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