SaaS is Dead?3年前から言ってます──TAM49兆円の“BPaaS”は既にARR20億円超。AI活用で高利益へ、kubellだけが持つ「産業創出への道筋」

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インタビュイー
福田 升二

2004年伊藤忠商事株式会社に入社。インターネット関連の新規事業開発・投資業務に携わる。2013年に株式会社エス・エム・エスに入社。介護事業者向け経営支援サービス「カイポケ」や介護職向け求人・転職情報サービス「カイゴジョブ」などを中心とする介護領域全体を統括する。2018年に同社執行役員に就任。2020年4月よりChatwork株式会社(現 株式会社kubell)に入社し、2020年7月に執行役員CSO兼ビジネス本部長に就いた後、2022年4月に取締役COOに就任。

桐谷 豪

大学在学中より創業フェーズのスタートアップに参画し、ジョイントベンチャー設立や複数事業の立ち上げに従事し、ユニコーン企業へ。その後、AI系ベンチャーである株式会社ABEJAへ入社し、データ関連サービスの事業責任者を担う。2020年10月に株式会社kubell(当時 Chatwork株式会社)に入社し、BPaaSのサービス立ち上げ責任者を務めたのち、2024年1月より執行役員に就任。インキュベーション領域を管掌し、新規事業の推進とR&Dを担当。2025年7月に執行役員CSOに就任、2026年1月より現職。

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AIの進化で「ほとんどのソフトウェアがいらなくなる」とも言われる激動の時代。世界では、単一のAIアプリケーションで瞬間的に急成長を実現する“シューティングスター”が次々と生まれては、さらに激しい競争を繰り広げている。

しかし、株式会社kubell(旧 Chatwork株式会社)の経営陣である福田氏と桐谷氏は、BtoBビジネスによる社会変革の中心はアプリケーションレイヤーの機能競争ではないと断言する。

「最大のMoat(競合優位性)になるのは、『オペレーションの総量』だ」。

日本の事業者の99.7%を占めるSMB(中小企業)市場の「人手不足」課題に直接向き合い、チャットツールというディストリビューションチャネルを武器に「BPaaS」を展開する同社。

本記事では、彼らがなぜこの未踏のメガマーケットにおいて既に、SaaSでARR約97億円、BPaaSでARR約20億円(2026年3月末日時点)の実績を早くも残せているのか。事実上の「勝ち」を確信し、「コールド勝ち(圧倒的な勝利)」への飽くなき挑戦を進めているのか。そしてなぜ若手人材を次々と抜擢し、経営課題として育成にコミットしているのか。その戦略と実態を、改めて紐解いていく。

前例なき事業構造と、若手人材の抜擢。一見異なる2つのテーマは「人口減少という最大の社会課題を解く」という一本の太い線で繋がり、やがてAIメガトレンドの最前線がここにあるというストーリーに至る。この二人が今、若手に伝えたいメッセージとともに、深く聞いていこう。

  • PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
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AI時代の戦略論。アルゴリズムやUIの先にある「オペレーションの総量」という究極のMoat

「最大のMoat(競合優位性)になるのは『握っているオペレーションの総量』です」

AI時代の勝敗は
「現場のオペレーション量」で決まる

表層(いずれ代替される)

データ・アルゴリズム・UI

真のMoat(競合優位性)

泥臭い現場の実務を
どれだけ握ることができるか

取材内容等を基にFastGrowにて作成

AIエージェントが言語を起点として自律的にタスクを処理し始める時代。そんなAIビジネス全盛となっていく中、多くの企業が優れたアルゴリズムの開発や、アプリケーションレイヤーでの卓越したUIや機能の提供に、しのぎを削っている。

kubellのCSOである桐谷氏は、そうしたトレンドを否定はしない。業界・業務課題がより多く解決される社会に向け、それも一つの道になるからだ。

しかし、真に社会を変革するプラットフォームになり得るかというと、「話は別だ」と語り始める。

桐谷UIやアルゴリズムで瞬間的に突き抜けるAIプロダクト・AIソリューションが国内外で多く生まれるようになっています。このエコシステムが日本にも広がり始めているのは素晴らしいことです。

ですが、この流れの中だけでは、本当に日本中が豊かになるようなイノベーションが生まれやすいとまでは言えないのではないか?そんな疑問を持っています。

というのも、タスクが自動処理されるAIエージェント全盛の時代において、真のMoat(競合優位性)となるのはデータやアルゴリズムでは十分ではないと考えているからです。

「現場のオペレーション」をどれだけ多く握ることができるか──その総量の勝負になるはずです。

今、日本では、「エンタープライズ向けAI事業」というマーケットがまさにレッドオーシャン。いわゆるGAFAMに代表される世界的なビッグテックや、戦略系やIT系も含めたコンサルティングファーム、年間売上規模で数十億円を突破しているITベンチャー企業、さらにはこの1~2年の間に新たに生まれたAIネイティブなスタートアップまで、多くのプレイヤーが存在し、今も増えている。エンタープライズの長く深いバリューチェーン・サプライチェーンを捉えようとする激しい競争が続いていきそうだ。

だがその一方で、日本の事業者の99.7%を占めるSMB(中小企業)向け事業のマーケットは、それほどの過熱状況にはない。なぜか?

それは「むしろ攻略難度が高い」という実態があったからだ。

福田実態を知らない人は「SMBというマーケットは競合が少なく、kubellはブルーオーシャンを戦っている」と言います。ですが、私たちの実体験を基に表現するなら、「この市場は、ブラックオーシャン」です。

競合が少ないのは、「サービスを広げる難易度が高いから」です。

0.3%の
「大企業市場」

レッドオーシャン

GAFAMや多数のAI企業で
競争は激化・過熱

99.7%の
「SMB市場」

ブラックオーシャン

開拓が困難で競合は極少
難攻不落な「独壇場」

取材内容等を基にFastGrowにて作成

福田この難攻不落の市場を、国内最大級のビジネスチャット『Chatwork』というSaaSプロダクトで泥臭く開拓してきました。ここまでの道のりは長く大変な部分もありましたが、想定どおりのペースで市場に深く浸透し、最近は広告宣伝費を絞りながらもオーガニックに成長し続けるほどになっています。

そして何より最大の強みは、『Chatwork』が「コミュニケーションツール」であること。顧客企業内の業務オペレーションを網羅的に把握し、日々の何気ないやり取りの中に細かくアプローチすることで、自然に新たな仕事を請け負い続けることができるんです。

これが、後ほど詳しくお話しする「BPaaS事業の成長」の、明確で大きな要因です。

kubellが持つのは、単なる顧客リストではない。日本社会の血流とも言える「全国の中小企業の、現場の実務」への、いわば直通回線というわけだ。

これが、桐谷氏が強調した「オペレーションの総量が、深いMoatになる」という言葉の裏側だ。

桐谷OpenAIやGoogle、Anthropicがどれだけ進化しようと、たとえば九州の地元に根差した不動産屋さんの経理業務のオペレーションを直接握ることは不可能に近いでしょう。こうした部分に、我々だけが数多くピンポイントでリーチできる。

その結果として、とてつもない量の現場オペレーションを握ることができ、これからもさらに増やしていける。ここに、我々は最新のAIを使って圧倒的に生産性の高い業務遂行を実現し、人口減少による労働力不足を解消していくほどのインパクトを創出できると考えています。

福田桐谷がこのBPaaS事業立ち上げを進めるときに、「『Chatwork』の基盤の上でやるからには、『勝ち』か『コールド勝ち』しかないよ」と伝えたことを改めて思い出しますね。

要は、想像の範囲内の事業成長に留まらないように本気で取り組んでいこうということです。

「急角度での売上成長は当然の大前提」だと、社内ではずっと考え、話していました。

その上で、全国の中小企業が抱える人手不足問題の解消に大きく貢献しながら、AIをフル活用し、会社としての利益額・利益率も圧倒的な水準に高めるということを、それぞれ追究し続けなければならない事業戦略なんです。

もし、BPaaSの売上すら成長させられなかったら、相当センスのない企業だったということになると思っていました(笑)。

桐谷ここまでの実績で、「kubellのBPaaS事業の売上は伸び続けそうだ(=勝ち)」と感じられるくらいには進んできたと思います。そしてここからしっかり「社会的インパクトの極大化と、利益率の向上(=コールド勝ち)」にもっていかなければならない。そのためのAI活用が本格化していくところです。

kubellが挑んでいるのは、既存のSaaSの延長線上のビジネスではない。テクノロジーが普及するスピードと、中小企業の現場が置き去りにされるスピード。その「巨大な差分」を埋め尽くし、日本の産業構造そのものを書き換える戦いだ。

そして、この前人未踏の領域において最大の武器となるのは、まっさらな状態でAI時代の地図を描ける「若き才能」である。

次章以降、kubellが持つ圧倒的な事業優位性のカラクリから、この巨大事業構想の最前線で若手が抜擢され続ける理由、さらには野心あるビジネスパーソンにとって最高のキャリア環境だという証明まで、スピード感をもってお伝えしていく構成となっている。特に20代の読者にはぜひ、現代のビジネス構造を自分なりに捉えて新たな行動を起こし続けるために、この内容をキャッチアップしていってほしい。

取材内容等を基にFastGrowにて作成

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チャネル×収益基盤が生み出す「コールド勝ち」への独自構造

kubellのBPaaS事業は、すでに年間売上高11億円以上の規模へと成長。市場に明確なニーズが存在することの証明に他ならないと同社は捉えている。

BPaaS事業の成長実績

年間売上高

(2025年12月期)

11.9億円

YoY +77.8%

ARR(年間経常収益)

(2026年3月末日時点)

20.3億円

YoY +75.2%

取材内容等を基にFastGrowにて作成

だが、COOの福田氏から、新規事業が軌道に乗ったことへの高揚感が語られることはない。他社には決して真似できない「構造的な優位性」から、このビジネスモデルで求められる「コールド勝ち」を必然にするための挑戦へ、気を引き締めている。

そもそも、世の中がようやく「SaaSの限界」を囁き始めた今、彼らはすでにその先のフェーズに身を置いているわけだ。実は3年前、彼らがBPaaS事業を立ち上げた際、すでにこの未来を投資家や市場に向けて提示していた。

桐谷3年前にBPaaSをリリースした際、SaaSが直面する壁についてスライドで提示していました。「SaaS is Dead」と言われる前からの話です。

出典:2022年12月期本決算説明資料(2023年2月発表)

桐谷今、世の中がようやくその見立てに追いついてきた感覚です。

3年前
現在
kubell (3年先行)

すでに限界を予測し
BPaaS事業を立ち上げ

BPaaS事業の現在地

ARR約20億円へ急成長
※2026年3月末日時点

業界トレンド

SaaSがDXの本命と
いわれていた

業界トレンド

ようやく「SaaSの限界」に
気づき始める

取材内容等を基にFastGrowにて作成

しかし、他社が今からこの市場に参入しようとしても、そこには構造的な壁が存在する。

福田BPaaSというモデルは、普通のスタートアップがそれ単体で立ち上げようとするのが非常に難しいものです。

顧客を獲得するために、まず多様なチャネルでのマーケティングが必要になり、その後に全国各地でのセールス活動までが不可欠。ここまでだけでも、リソース面での負荷は相当なものになります。

そこを何とか乗り越えたとしても、顧客の業務を巻き取り、裏側で処理体制をつくるためのオペレーション構築には、また別のコストが重くのしかかってきます。

この構造的な壁を越えることは、単体のスタートアップでは、リソースとアセットの限界から成立させるのが難しいのが実態です。

提供:株式会社kubell2023年6月の全社総会でのスライド)

マーケティング・セールスと、オペレーション。この高い壁を前に、多くの企業は立ちゆかなくなる。しかし、kubellにはこれらを突破できる圧倒的な優位性がある。

それが、国内で多くの中小企業に利用されており、すでに強固な利益を生み出し続けている『Chatwork』という事業なのだ。

この事業で築きあげた顧客基盤を通じ、中小企業のニーズを的確に捉えながら、マーケティング・セールス活動まで一気に進行できる。加えて、これまで積み上げてきた収益基盤を、そのままオペレーション構築に集中投資することもできる。

kubellは数々の壁をすでに構造として突破している数少ない企業なのだ。これが、福田氏の言う「コールド勝ち」が必然になり得る背景である。

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AIの指数関数的進化を「最大のアップサイド」に変える、稀有な事業構造

業務プロセスそのものを巻き取るBPaaS事業は、AIの進化を直接的な「利益率の向上」へと転換する。これは単に「SaaSの限界」という逆風を耐え凌ぐための防衛策ではない。AI時代において最大のアップサイドを得て成長していくための、極めて稀有な事業構造なのだ。

桐谷GPTのモデルはこの5年ほどで、価格が1/1000(*)ほどにまで改善されています。

GeminiやClaudeなども同様で、AIプロダクトに大きなアップデートがあった際に、自社のプロダクト価値が脅かされると焦るSaaS企業は多いでしょう。

しかし、業務オペレーションそのものを握っている我々からすれば、純粋に「裏側の処理コストが下がる」ことを意味します。テクノロジーの劇的な進化が、すべてポジティブな方向に倒れる構造をビジネスの変数として仕込むことができている。ここまでできている会社は、私の知る限り日本の中でも本当に少ないはずです。

*……OpenAIの公開情報などによると、2021年ごろのモデルは約$0.06/1,000tokens、2026年には約$0.000025 ~ $0.000075/1,000tokensほどなので、1/800~1/2400程度の改善実態があると考えることができる

AIが進化して安くなることは、SaaS事業にとってはコモディティ化による「価格破壊」という危機につながり得る。しかし、BPaaS事業にとっては、業務コストの低下がそのまま利益率の向上へと直結する。

福田AIを前面に出してビジネスをつくろうとすると、結局は基盤モデルを持つプラットフォーマーに主要な利益を持っていかれてしまうかもしれない。

だから我々は、顧客に対してAIの価値を売るのではなく、あくまで内部の利益率を上げるための「手段」としてAIを使っていきます。そうすることで、二次曲線的にコストを下げつつ、性能は上がっていく。その先に、圧倒的な利益創出構造をつくることができる。

だが、なぜ、世の多くの企業はAIを裏側に隠さず、そのまま顧客に売ろうとしてしまうのか。

福田「AIのサービスが欲しい」という顧客に「AIソリューション」を提供しようとするのは、シンプルでわかりやすいモデルとなり、営業も開発も進めやすそうですよね。ですが、それではどうしても機能比較の競争になっていきます。

次々と新しいサービスが出てきて、10億円の案件が5億円、1億円までディスカウントされていく流れに巻き込まれかねない。エンタープライズのマーケットで起きているのはまさにこれです。

だから我々は、提供する価値と顧客が感じる価値を、あえて「ずらして」いるんです。

「AI」を売る事業では、価格競争に陥り、社会課題の解決に直結させにくくなっていく。そんな懸念から、kubellはSMBに向けたアプローチにおいて、その考え方に「ズレ」を敢えてつくったのだ。

福田顧客の切実なニーズは「IT化したい」「DXしたい」ではなく、「とにかく人が足りない」この一択です。だからこそ、顧客からすれば「kubellに頼んだら人手不足が解消した」という状態をつくる。この課題に対するアプローチのずらし方が、他社とは根本的に異なります。

一般的なAI企業
kubell
顧客の要求

「AI」を求められる

顧客の要求

実は「労働力」を
求められていると見抜く

表(顧客への見せ方)

「AIプロダクト」
として提供する

表(顧客への見せ方)

AIの強みは見せず
「人力」のように提供する

裏(利益構造)

顧客にAIを比較され
「価格競争」で消耗する

裏(利益構造)

裏に隠したAIが進化するほど
「利益率」が高まる

取材内容等を基にFastGrowにて作成

顧客には「労働力(人手不足の解消)」を提供し、裏側ではAIを活用して自社の利益率を最大化し続ける。顧客に価値を届けながら、自社の収益構造も強化していく。──この両立を実現するため、同社はプロダクトのUX(ユーザー体験)において独自の設計思想を持っている。

福田我々のUXの理想は、金曜の夜にチャットでお願いした仕事が、月曜の朝には完璧にアウトプットされて送られてくるというものです。相手がAIだと意識させる必要すらなく、むしろ「自分が休んでいる間に完璧な対応をしてくれる、優秀なアシスタント(人)がいる」と錯覚するレベルの設計にしなければならない。

「人手不足」という国内の深刻な課題に対し、AIツールを売るのではなく、各現場のオペレーションにAIを違和感なく溶け込ませていく。

AIの進化による恩恵を、価格競争で削り合うのではなく、最大のアップサイドとして自社の成長へと転換し続ける。kubellは、AI時代の恩恵を受けながら、世の中のマジョリティにその恩恵を届けていける事業構造を持つ、日本でも極めて稀有な企業なのだ。

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「事業者の99.7%」「TAM49.1兆円」、未踏の社会課題に挑む“若手抜擢”の戦略的合理性

AIの進化を自社の利益へと変換し続けるkubell。しかし、彼らの視線は単なる「自社の売上最大化」には向いていない。彼らがBPaaSを通じて真に向き合っているのは、日本が抱える最大の社会課題「労働人口の減少における人手不足」を解消するという、極めて難易度の高いミッションだ。

桐谷人類史上初めて人口が減少していく局面に直面している日本において、事業者の99.7%を占めるSMB市場は、深刻な人手不足に陥っています。しかし、この限界を迎えている巨大なマーケットは、数十年にわたり、IT業界が事実上「なにも手出しできない」完全な空白地帯でした。

なぜなら、SMB向けに広くITサービスを提供しようとしても、ビジネスとして成り立たないという構造的な壁があったからだ。それに加え、ツールを渡すだけのSaaSでは、現場の人手不足という根本課題を解決できない。

この長きにわたる停滞状態を打ち破る可能性があるのが、AIを「BPaaS」として現場のオペレーションに直接組み込む、同社のアプローチだ。

ソフトウェア提供による業務効率化にとどまるSaaS企業や、AIツールを提供するだけの企業では、社会全体の労働力不足を全面的に解決することはできないと指摘する。

福田労働人口減少による人手不足という根本的な課題を解決するために、特定の事業領域・業務領域だけをIT化するアプローチでは不十分。

我々は、経理・労務といったバックオフィス業務など、一つひとつが何十兆円という規模を持つ巨大なマーケットにおける業務それぞれを直接巻き取り、それらを組み合わせ、新たな産業をつくろうとしているわけなんです。

kubellはビジネスチャットを含むBPaaSの潜在市場規模(TAM)を「49.1兆円」と試算し、公表している。

出典:2025年12月期 通期決算説明資料(2026年2月発表)

誰も解を持っていなかった底知れぬメガマーケットを攻略する上で、同社には非常に特徴的な組織戦略がある。それは、若手人材の継続的な育成・抜擢だ。

巨大な市場を開拓するには、豊富な事業開発経験を持つ人材が必要に思える。しかし福田氏は、この未知の領域においては「過去の成功体験」だけに頼るアプローチには限界があると語る。

経験豊富なベテラン
抜擢された若手
ビジネスにおける武器

過去の成功体験・
アナロジー(類推)

ビジネスにおける武器

過去を捨てる柔軟性・
環境適応能力

前人未踏の市場では…

変化に対応できず、
むしろ「足枷」になる

前人未踏の市場では…

見えない正解に適応し
圧倒的スピードで突破する

取材内容等を基にFastGrowにて作成

福田この領域において「過去の成功体験」だけに頼るには、限界があります。

SMBへのBPaaS戦略は、前人未踏の挑戦です。過去にBPOやSaaSをやっていた経験豊富なベテランが、かつてのアナロジー(類推)に頼ってアプローチしても、うまく機能しないケースも少なくありません。見えないものを見に行くビジネス構造だからこそ、これまでの勝ち筋にとらわれない柔軟性、あるいは、変化に素早く適応する若さが、常に求められるんです。

桐谷若い世代は、環境適応能力が高い。しかも今はそこにAIというトレンドが重なっている。

私たち役員陣も「いつまで自分たちがこのポジションにいられるか」というスタンスでいますし、成長し続ける若手にはどんどん突き抜けていってほしいと思っています。

福田私自身も、かつてCSOとして参画し、COOになりました。現在、戦略の要であるCSOの役は桐谷に託しています。

AI時代の戦略を描くなら、私よりも明らかに解像度が高い桐谷が描くほうが大きな成果が出せると思いますし、万が一うまくいかない部分があっても経営としての納得性は高まる。

これは、役割を譲ったというよりも、コールド勝ちのための「最適化」なんです。

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若手抜擢は「文化」ではない。中長期で社会課題を解き明かす「株式会社」という器

このように、福田氏や桐谷氏を中心とした経営層の一人ひとりが、若手人材の育成と抜擢に多大なリソースを割いている。しかし、彼らが若手に機会を与えているのは、「若者の成長を応援する優しい会社だから」といった情緒的な理由からではない。

それは、彼らが描く壮大なBPaaS戦略を完遂するための、避けては通れない「経営課題」だからだ。

福田勘違いしてほしくないのは、私たちが「若い人が好きだから、育成にフルコミットしている」というわけではないということです。

もし1人や2人の経験豊富なビジネスパーソンで回せる事業なら、私は現場の人材育成にここまで関与しません。ピンポイントで採用して任せてしまえば、終わる話ですから。

世間によくある誤解
kubellの真実
抜擢の「目的」

若者の成長を応援する
(優しい文化・人事施策)

抜擢の「目的」

未踏の巨大市場を拓く
生存戦略・経営課題

生み出す「結果」

一握りの「天才」やエースの
属人的な力に依存してしまう

生み出す「結果」

優秀なビジネスオーナーを
「大量かつ継続的」に輩出する

取材内容等を基にFastGrowにて作成

しかし、何十兆円という巨大なマーケットを切り拓くには、圧倒的な「数」の事業推進者が必要になる。この巨大な課題に対して、既存の再現性のある型は通用しない。

福田私たちが挑んでいるのは、日本の労働力不足という深刻なビッグイシューです。対象としているマーケットの難易度が高いからこそ、自社の中で人材が育ち、事業をつくり続ける構造そのものが必要不可欠になります。

これは単なる人事施策ではなく、ミッション達成に直結する最大の「経営課題」だと捉えています。

事業開発の「型」が存在しない未踏の領域において、変化に適応できる人材を継続的に輩出することが何よりも重要になる。そして、この「継続性」こそが、桐谷氏が考える「株式会社」という組織に見出す、最大の意義でもある。

桐谷人の認知能力には限界があります。自分が生きている世代、長くても孫の世代ぐらいまでの合理性しか認知できないと思っています。

しかし、私たちが直面している「労働力不足」や「AI時代の社会構造の変革」といったアジェンダは、世代をまたいで解決していかなければならない壮大なものです。だからこそ、個々人の頑張りにはとどまらずに、長い時間軸での仕組みとして乗り越えていくことを考えなければならない。

人間の寿命や認知の限界を超え、数十年、あるいはそれ以上の時間軸で社会課題に向き合い続けるためにはどうすればいいのか。その答えが、同じ志を持った人間が集まり、次世代へとバトンを繋いでいく組織の存在だ。

桐谷短期的な合理性の限界を超えるためには、一定の思想やフィロソフィーを持った人たちが集まり、荒波に揉まれながらも、その「感覚」を何世代にも受け継いでいく仕組みが必要です。それこそが、市場経済における「株式会社」の本当の存在意義であるべきだと思っています。

日本社会が抱える「ビッグイシュー」を解き、そのフィロソフィーを次の世代へと繋ぎながら課題解決を進めていく。

この壮大な大義に本気で挑もうとする志ある人材にとって、kubellという会社は、最高の「成長環境」となる。

福田世の中にはたくさんのビジネスモデルがあり、もっとシンプルに稼げそうに見えるものも多くあるでしょう。

ですが、kubellではもっと、圧倒的に社会貢献性の高い事業を生み出し続けられるという強い自負があります。

私自身、これほどまでにフルコミットできる事業テーマはkubellの他にないと思っています。これ以上のやりがいを感じるビジネステーマは、他にまったく思いつきません。

FastGrow編集部から「たとえばOpenAIでLLMをつくる仕事には魅力を感じないのか?」と聞くと、「全く感じない」と福田氏は即答した。

社会的意義、事業構造の複雑性、そしてAIというメガトレンド。そのすべてが絡み合うkubellのBPaaSが、事業として知性と体力の限界を試される稀有なモデルだと考えているわけだ。そしてこの挑戦こそが福田氏にとっては、自身の経験や強みを活かしつつ、社会課題の解消に直結する、もっともやりがいを感じる事業なのだという。

そして桐谷氏は、この過酷な環境に身を置くことを「キャリア戦略」として捉え、今の時代の勝機と見る。

桐谷今は「行動量にきちんと比例してキャリアが輝く」時代です。

多くのビジネスパーソンが「仕事が楽しくない」「ワークライフバランスを重視したい」と足踏みをするようになっている。これは、逆にチャンスです。

もし全員が猛烈に頑張っている時代だったら、その中で突き抜けるのは難しかったかもしれません。この時代のルールを正しく認識し、メガトレンドのど真ん中でフルスイングするだけで、自然と頭一つ抜け出せる。これほどチャンスに溢れた時代はありません。

過去のドットコム・バブル、検索エンジン戦争、決済プラットフォーム(〇〇ペイ)の覇権争い。歴史が証明しているのは、「巨大な変革の渦中にいた人間が、圧倒的な市場価値を手に入れる」という事実だ。

桐谷このAIトレンドのど真ん中に身を置いた経験は、その後のビジネスパーソンとしての価値を飛躍的に高めます。

ルールを認識し、行動に移した人が、間違いなく成功すると思います。

AI時代の覇権を握る「オペレーションの総量」の獲得に始まり、チャネルを駆使した「コールド勝ち」の構造、そして国内事業者数の99.7%を占めるSMBの「人手不足」というビッグイシューの解決。

これら何十兆円という未踏の事業戦略は、過去のアナロジーにとらわれない「若手抜擢」という組織戦略と完全に表裏一体となっている。巨大な事業の醍醐味と、それをドライブするための若き才能。そのすべてが交差する場所こそが、kubellという会社なのだ。

成功体験にとらわれず、AIと共に新しい戦略を描き、自らポジションをつかみ取る──。そんな難しくもやりがいのある挑戦に全力投球できる環境が、kubellにはある。

同社が求めているのは、完成されたプロフェッショナルではない。この時代の本質を理解し、共に新たな産業をつくり上げる若き「ビジネスオーナー」たちだ。

こちらの記事は2026年06月15日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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藤田 慎一郎

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