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INTERVIEW
栢森 加里矢 野島 繁昭
18-03-14-Wed
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教えて栢森社長!
仮想通貨ってバブルですか?
本当に世界が変わるんですか?

TEXT BY YASUHIRO HATABE
PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA

フィンテック、仮想通貨、ブロックチェーン…最近よく聞くけれども、
「投機だ」「バブルだ」しまいには「資産が不正流出した」と、ネガティブなニュースが多い。

でも、何も分からないまま、論調に流されていいのかという疑問も残る。

仮想通貨やブロックチェーンという技術が世の中に提供する価値とは何なのか、社会をどう変えるのか、
仮想通貨取引プラットフォームを提供するQUOINEの栢森加里矢社長に、
スローガンの野島繁昭が切り込んだ。

栢森 加里矢 (かやもり・かりや)
QUOINE株式会社 CEO
栢森 加里矢 (かやもり・かりや)
東京大学法学部卒業、米ハーバード大学MBA取得。三菱商事、Globespan CapitalPartnersを経て、ソフトバンクグループにてアジア地域の企業買収・ベンチャー投資などを担当。2014年11月に、QUOINEを共同創業、2016年4月より同社CEOを務める。
QUOINE株式会社
CEO
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野島 繁昭 (のじま・しげあき)
スローガン株式会社
野島 繁昭 (のじま・しげあき)
東京都出身、私立武蔵高校卒業後、早稲田大学理工学部電気・情報生命工学科に入学。Change For Japanパートナー、VOICE副代表など、プロフェッショナルボランティアの普及活動などに取り組む。その後、スローガンに学生インターンとして参画後、大学院を中退し入社。2011年秋より京都支社を立ち上げ京都支社長に就任。2014年6月より東京本社に帰任し、Goodfindの名物講師として名を馳せる。現在はGoodfindのメディア責任者を務める。
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仮想通貨はこれからますます、グローバルに普及する

野島仮想通貨というと、なんだか儲かるらしいというイメージはあるのですが、ニュースなどでは「バブル」と言われていたり、「ブロックチェーンは優れた技術として残るが、仮想通貨に未来はない」と言われていたりもします。実際のところ、どうなのでしょうか。

栢森最初にお話ししておきたいのは、仮想通貨とブロックチェーンは表裏一体だということ。仮想通貨はブロックチェーンの最大の産物であり、ブロックチェーンという基盤の上で動く最も主要なアプリケーションです。

仮想通貨があったからこそ、ブロックチェーン技術が広く知られるようになりました。だからそこを分けて考える必要はないと思っています。

ただ、ブロックチェーン技術が、金融業界やそれ以外の業界をも根本的に変える可能性を秘めていることは確かです。今の大学生の多くも、いずれはこの業界に従事する形になると思います。

 

野島「バブル」、一時的なものではないかという指摘についてはいかがですか。

栢森時間の流れの中で「波」はあります。先頃起こった取引所への不正アクセスによる仮想通貨の流出事件があったりする中で、仮想通貨が金融商品であり、それ故に公共性・社会性を担保しながら事業運営していかなければならない、という視点を欠いた会社は業界から退場を余儀なくされることもあるでしょう。

ただ長期的な視点に立ってみると、縮小傾向にあるFXや株式とは逆に仮想通貨の取引量は伸びています。今後は、仮想通貨が金融の一大アセットになっていくはずです。

野島そう考えられる根拠はどこにあるのでしょうか。

栢森ビットコインを例に取ると、生まれながらのグローバルアセットです。株式のように、日本株とか米国株というものはなくて、最初からボーダレスな資産であるということ。そして、それをアプリ一つで売買できてしまう。今後もさまざまな仮想通貨、トークンが出てきます。

そしてそれらは、一つの国や中央銀行にとらわれない通貨です。日本円は、米ドルやユーロに次ぐ国際決済通貨ともいわれているのでそこまで意識することはありませんが、一部の国々では法定通貨が弱くなっている。別の言い方をすると価値が下がってきています。

例えば、中国や韓国、インド政府は仮想通貨に否定的な見解を示しているんです。これは裏を返すと、仮想通貨が法定通貨を脅かす存在になりかねないと考えているから、と言って差し支えない。

このような各国の対応もそうですが、今の法定通貨の価値は、国家や中央銀行にある種“操作”されていると感じている人も多いのではないでしょうか?

あなたがお金を3年間預からなければならないとして、政策の変動が激しく、貨幣価値も変動しやすい「人民元」で受け取りたいでしょうか?「日本円」ですら、日本銀行が紙幣を大量に刷ることによって国家としてインフレを誘発しようとしています。

そう考えると、一つの国家権力にとらわれず、誰かによって“操作”しづらい世界的通貨として、仮想通貨を利用する人たちが増えていくと考えるのが自然です。

仮想通貨ビジネスを日本がリードできる3つの理由

野島栢森さんがおっしゃる通り、仮想通貨が今後世界に浸透したとして、その業界を日本はリードできるのでしょうか?

栢森私は日本こそ仮想通貨業界における世界の中心プレイヤーになれると思っています。

仮想通貨業界に限らず、「世界の中で日本がメインプレイヤーになれる業界かどうか」を考えるとき、押さえておくべきポイントが3つあります。1つ目は、「グローバルで発展する可能性があるかどうか」。2つ目は「日本から参戦できるかどうか」。最後に3つ目は「圧倒的な技術的優位性があるかどうか」です。

 

野島「グローバルで発展する可能性があるかどうか」から、詳しくうかがえますか。

栢森まず1つ目、産業として世界が必要としているか、という観点です。人工知能(AI)なんかはいいと思います。逆に、日本特有のトレンドや市場だけを相手にする業界は、世界的には大きく発展する可能性がないことは明白です。

先ほど話したように仮想通貨はもともとグローバルアセットであり、すでに世界中で受け入れられています。法定通貨が比較的信用力を持たないエマージングマーケット(新興国市場)では、仮想通貨のニーズがより高まっていくでしょう。

仮想通貨は、国や中央銀行など、ある特定の発行体が関与しない、完全に分散化され、民主化された通貨、すなわち「みんなの通貨」なのです。それが、将来世界の基軸通貨になっていくと信じています。

野島「日本から参戦できるかどうか」についてはいかがですか。

栢森先ほど「AIはいい」と言いましたが、この分野の研究開発の最先端は米国が中心です。米国発で伸びていくわけですね。かつてのサーチエンジンやコンピュータのOSもそうでした。その領域の発展に日本人がどこまで貢献できたのかというと、ほとんどできていません。

逆に、仮想通貨に限って言えば、日本は先進国です。世界にはたくさんの国がありますが、国レベルで仮想通貨についてしっかりと法令・ガイドラインを定めて施行しているのは今のところ日本だけなのです。だから、「日本発」、グローバルで大きくなれる可能性があります。

野島なぜ日本はそんなに法整備が進んだのですか。

栢森業界を揺るがす事件があったからじゃないでしょうか。世界で最初に大きな問題が起きたので、しっかり業界をコントロールしていこうという気運が高まったのでしょう。

あとは、ユーザー層にとって仮想通貨が身近だったことも大きいと思います。もともと日本人はFXに慣れ親しんでいますし、Tポイントや航空会社のマイレージのようなロイヤリティーポイントも大好き。僕はあれも一種の仮想通貨だと思うんですよね。法令が国レベルで整備されていくのと、それを受け入れるユーザーの土壌がいい意味でシンクロしたため、日本は仮想通貨の先進国になったのだといえます。

意外かもしれませんが、米国では仮想通貨に関する法令整備もビジネス自体も、あまり進んでいないんです。なぜなら米国は“合衆国” であるがゆえに、州ごとに法令が異なり、仮想通貨に関しても異なる見解を持っているためです。このような状況も、日本がこの領域をリードできる後押しになってきます。

野島3つ目の「圧倒的な技術的優位性があるかどうか」についてはいかがですか。

栢森分散型システムを支え、仮想通貨の裏側にある技術である「ブロックチェーン」に精通したエンジニアって、グローバルでもまだそれほど多くありません。生まれてまだ数年の技術ですから、世界の誰もがスタート地点が同じ。先ほど日本は仮想通貨先進国と言いましたが、そういう盛り上がっている国に、優秀なエンジニアをはじめとするタレントも、お金も、情報も、あらゆるリソースが集まってくることは歴史が証明しています。

スタートアップやベンチャーにとっての資金調達オプションとして、株式上場に変わる世界的トレンドになろうとしているICO(Initial Coin Offering)も、日本が世界で初めて法整備を進めているんです。

日本はいま国家として、個人にも法人にも、仮想通貨を普及させやすい市場環境を整えようとしています。そのような環境が成立すれば、仮想通貨の世界で日本がハブになり得るわけです。

野島仮想通貨が面白いと目をつけた、例えばMITのような研究機関や、アメリカのシリコンバレーや中国の先端系企業がこぞってエンジニアを集めて参入してくるようなことはないのでしょうか。

栢森もちろん今後起こると思います。ただ、アメリカはドルが基軸通貨であり、あえて仮想通貨を国として受け入れなくてもいい状況にあります。だからまだ、比較的AIへの関心が強いんです。ただ、遠くないうちに参入してくることは間違いない。

中国に関しては政府の規制が厳しい状況にはありますが、中国の取引所はグローバルに展開しているところも多く、こちらも今後はQUOINEをはじめとした日本企業とも競合してくるはず。

いずれにせよ、競争は待ったなしの状況です。

その意味で、僕がいつも金融庁に言っているのは、「あまり規制をがんじがらめにすると、イノベーションを阻害する」ということです。せっかく日本が世界的にリードできる産業になるかもしれないのに、その育成を阻むようなことはやめてほしいと伝えています。

野島実際に、QUOINEには世界から人材が集まってきているのでしょうか?

栢森QUOINEは今、社員数が120人を超えましたが、8割が外国人ですね。そして、全社員のうち7割がエンジニアです。東京でコアの開発しているエンジニアは、実に国際色豊かですよ。ウクライナ人、ベトナム人、ロシア人、イタリア人、ドイツ人、カナダ人・・・。日本人が少ないのが切ないですが(笑)。

 

栢森でもここで一緒に働ける日本人は幸せだと思います。日本は40年後、人口が8000万人ほどになると予測されていますから、それを考えると、こういうグローバルな環境で働いて得られる経験は貴重です。

そういう環境なので、ネイティブレベルの英語力はマストです。ただ、苦手意識さえなければ、入社時点で英語力がなくても英語を使わざるをえない環境があるので、上達していきます。今働いているメンバーにも、入社前はほとんど英語で話せなかったものもいますが、みるみるうちに上達していっています。

日本人エンジニアが少ない、と言いましたが、ニューヨーク大学などアメリカの大学では、仮想通貨・ブロックチェーンの講座を開いていて、学生に大変人気があるのだそうです。日本からもブロックチェーンに携わるエンジニアやマーケター、経営者を増やすために、日本のトップレベルの大学でも、同じような講座を開設していただき、ブロックチェーンに関わる仕事をする人が増えていってほしいなと思っています。

今後、仮想通貨が「信用」を得ていくために

野島現状では、おそらく学生をはじめ多くの人は、仮想通貨は値動きが安定せず「バブル」と報道されたり、また不正アクセスによる流出もあったりして、「信用できないもの」という認識なのではないかと思います。今後、仮想通貨が信用を獲得していくために、超えないといけないハードルは何だと思いますか。

栢森不正流出事件などについては、業界としてきちんと啓蒙活動をしていかないといけないかなとは思っています。日本で報道されていないだけで、世界中の取引所で仮想通貨の流出・盗難事件は起こっていますから。

「金融サービス」というものは、技術的な安全性も大事ですが、何より社会性・公共性を保つことが重要です。社会にお金が回ってはじめて経済が伸びていくわけで、金融はその原動力としてお金を回す役割を担うものです。

セキュリティや社会性・公共性をおろそかにして、自分たちの会社の利益やお客様の利便性に重きをおいてしまうと、不正アクセスのようなことが起きてしまうわけで、それは金融サービスとしてはあってはならないことですね。

 

栢森価格の安定に関しては、時間が解決すると思っています。日本円も3〜5年くらいのスパンでは50%近く下落したり、金や石油のような商品市場を見ても価格が激しく上下動したりしますよね。あらゆるアセットクラスの価格は上下動するものなのです。

ただ、仮想通貨に限っていうと、まだ個人投資家が中心で一部の方々しか取引をしていないので、そこが価格の不安定さにつながっている面はあります。これから機関投資家や企業など、グローバルでいろいろなプレイヤーが参入してくればくるほど、取引量も多くなり、安定してくるでしょう。

また、仮想通貨でもさまざまな取引オプションが使えるようになることも、価格の安定にとって重要です。株式市場や商品市場では、先物取引や信用取引といったデリバティブのような取引機能が50年、100年という歴史の中で形成されてきました。それによって価格の乱高下が防げているわけです。

一方、仮想通貨は生まれてまだ10年も経っていません。これからさまざまな取引オプションが使えるようになり、市場がより成熟していくことによって価格が安定してくるものと思っています。

仮想通貨界の「東証」になりたい

野島仮想通貨・ブロックチェーンの業界にいくつも会社がある中で、働く場として選ぶ場合はどういう会社を選ぶべきでしょうか。

栢森一番いいのは、中の人の話を聞いてみることだと思いますね。カルチャーや目指していく世界観の違いもありますし、それが自分に合う、合わないということはありますから。

その点でいうと、QUOINEに関して知っておいてほしいことがあります。それは、他の仮想通貨取引所を運営する会社はBtoCがメインであるのに対して、QUOINEはBtoBに注力しているということです。

僕らは簡単にいうと、“仮想通貨業界の東証”になろうと思っているんです。

例えばある個人投資家が、ある会社の株を買いたい時、東証で買うわけではないですよね。実際は証券会社を通して買うんですけど。それら証券会社が、東証というプラットフォームを使うわけですね。

一例を挙げると、トレイダーズ証券が運営する取引所「みんなのビットコイン」は、実はQUOINEが提供するプラットフォーム上でシステムを利用して運営されています。

その意味で、取引所をメイン事業としている他の企業とは、ビジネスレイヤーが異なります。BtoCがメインビジネスとは考えていないため、テレビCMにお金を掛けるのではなく、内部のプラットフォーム構築や、サービスの安定稼働、セキュリティに資金を回しています。

野島なぜQUOINEは「仮想通貨の東証」を目指そうと思ったのですか。

栢森僕らには、仮想通貨業界のエコシステム発展のために貢献していきたいというミッションがあるからです。顧客獲得競争をして、他社を蹴散らそうとは考えておらず、「QUOINEが提供するプラットフォームに来れば、流動性がありますよ」という環境を提供したいわけです。仮想通貨の決済会社も来てほしいし、取引所も、運用会社も、ワレット会社も来てほしい。みんなが使えるプラットフォームを用意しているんです。

しかも、日本だけじゃなくて、世界中の人たちが皆QUOINEを使ってくれる。分かりやすいように株式市場における「東証」に例えましたが、仮想通貨であれば国の法律と関係ないため、NASDAQとかEURONEXT、東証や香港の証券取引所、すべてをまとめた、世界の仮想通貨取引の基盤となり、大きな流動性を提供しようとしています。

国によってはBtoCのビジネスもやりますし、日本でも個人向けの取引所をやってはいますが、根っこのところはBtoBの会社です。

もちろん収益性で考えても、結局、流動性があるところに取引は集まりますし、多くの取引に活用してもらえるプラットフォームほど、手数料収入も多く得られて、経営基盤も盤石になります。

野島仮想通貨業界のエコシステムを発展させるというミッションについて、それが果たせたときに社会はどう変わるのか?という視点からもう少し詳しく教えていただけますか。

栢森僕はやっぱり、老若男女がコンビニでも郵便局でも銀行でも、どこでも仮想通貨の売買をしたり、お金として使ったり、送金できたりする状況にしたいと思っているんです。

銀行と比較すると、仮想通貨は手数料が圧倒的に安い。今だと、海外へ送金したければ、銀行の窓口に行って、手数料が約4000円、それに為替の差分を払って送金します。そして受け取る側でも手数料が取られて、しかも5営業日かかる。

これが、仮想通貨なら、手元のスマートフォンから、リアルタイムで手数料もゼロに近い形で海外へ送金できるようになるわけです。

そもそも、今の中央集権的な金融システムではグローバル社会を支えきれないと思っています。例えばインドネシアには、1万以上の島があります。そういう国土の形態において、銀行が支店を開設して金融サービスを提供するというビジネスモデル自体が非効率であることは明白です。

そのようにこれまで銀行が広く薄く利ざやを取ってきた金融活動の全てを、仮想通貨が取って変われる可能性を秘めています。

送金だけでなく、決済、運用、ローン、保険など、既存の金融機関が扱ってきたものを仮想通貨が片っ端から置き換えて、「脱・銀行」が世界中で進んでいくはずです。

でも、当然それをQUOINEだけで実現できるわけではないので、決済や送金、取引などのサービスを提供するさまざまなプロバイダーと連携していきたい。そして、その裏側の仕組みを支えるのがQUOINEでありたいわけです。仮想通貨・ブロックチェーンの産業は、イコール金融の未来。その実現をサポートする、リーディングプレイヤーでありたいと思っています。

野島最後に、仮想通貨・ブロックチェーンの業界に関心を持つ人に、メッセージをお願いします。

栢森今は、仮想通貨が儲かりそうだからちょっと買ってみようとか、友達に言われたから、みたいな形で関わっていっていいと思います。でも、今後20年、30年、あるいは40年先を考えると、実はこの業界の発展に一番深く関わっていくのが今学生世代の人たちなんですね。

これから仮想通貨とブロックチェーンが、あらゆる業界を、社会を、より良く変えていきます。その担い手になるということほど、やりがいのある仕事はないと思っています。

グローバル競争にさらされている分、仕事は大変ですが、たぶん大企業で5年かけて身につけることを、当社では1年で経験できるスピード感があります。そんな業界に自ら入っていって、業界の発展と共に自分も成長できるというのは、僕は幸せなことだと思います。

[文]畑邊 康浩
[撮影]藤田 慎一郎
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