AI時代のエンプラ攻略を学ぶ ──RightTouch×カミナシが語る、経営層の懐に潜り込む“戦略パートナー”への転換

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野村 修平

北海道大学大学院卒業後、ワークスアプリケーションズに新卒入社。最年少で新規開拓法人営業チームのマネージャーへ昇格。その後同社の柱となる既存顧客専任の営業チームを新規事業として立ち上げたのち、アメリカ事業の立ち上げを牽引。帰国後、2018年よりプレイドに入社し、エンタープライズセールスの立ち上げを担う。2021年に社内起業でRightTouchを立ち上げ、現在は同社代表取締役としてビジネス全般をリード。

諸岡 裕人

1984年生まれ。2009年 慶応大学経済学部卒業後、リクルートスタッフィングで営業職を担当。2012年 家業であるワールドエンタプライズ株式会社に入社し、LCCのエアアジアジャパンやバニラエアの予約センターの立ち上げ、JALの羽田機内食工場の立ち上げなどに携わる。その中で感じた現場のペインを解決するため、2016年12月に株式会社カミナシ(旧社名:ユリシーズ株式会社)を創業し、ノンデスクワーカーの業務を効率化する現場DXプラットフォーム「カミナシ」を開発。

「SaaSの質こそが、勝負を分ける」という時代は、あっという間に終わりを告げた。 生成AIの登場により、ソフトウェアの機能は瞬く間にコモディティ化し、投資家たちが「ピュアなSaaSにはもう投資しない」と公言するシーンも増えてきたようだ。シリコンバレーだけでなく日本でも「SaaS is Dead」論が激しさを増す中、日本のスタートアップシーンの最前線ではどのような動きがあるのだろうか。

今回フォーカスするのは、泥臭い「現場」に潜ることで、AI時代特有のMoatを掘り続ける、2人の異端児だ。

一人は、3.1兆円規模の巨大市場でありながらDXがなかなか進まなかった「カスタマーサポート(CS)」領域の変革者。2025年10月に全プロダクトを『QANT(クアント)』ブランドへ刷新し、新たなCSインフラを築くエンタープライズAIプラットフォーム企業、RightTouchの野村修平氏だ。

もう一人は、デジタル化から取り残され続ける構造に置かれた3,900万人の「ノンデスクワーカー」を救い、一人ひとりの才能を解き放つことをミッションに、全国のさまざまな業種・業界17,000超の現場に導入が広がる挑戦者。日本全体の労働力不足解消にも寄与しようと奮闘するカミナシの、諸岡裕人氏である。

SaaS企業としてスタートした共通点がある彼らが到達した結論は、あまりに逆説的だ。それは、「プロダクトカンパニーと見られたら負け」。

スマートな機能売りではなく、顧客の懐に深く入り込む「戦略パートナー」として振る舞うことこそが、エンタープライズの顧客とともに世界を変える勝ち筋だと捉えている。

美しいスライドを描くコンサルティングでもなければ、構造化されたデータを奇麗に整えるプロダクトでもない。生きた非構造データを泥臭く集め、独自の仕組みでそれらを操り、プロダクト×ソリューションを基に戦略パートナーとしても振る舞う。そんな全方位戦略を取ることのできるスタートアップこそが求められる時代なのだ。そして、それを最前線でけん引するのがエンタープライズセールスという役割である。

RightTouch・カミナシともに、エンタープライズセールスの躍動こそが、今後の非連続成長の角度を占う。その背景にある想いや象徴的な事例、そして今後に向けた戦略を、両代表に語り合ってもらった。

  • PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
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経営層はなぜ、あなたの「プロダクト」に興味がないのか

「御社の課題を解決する、画期的な機能が実装されました」

もしあなたがエンタープライズの経営層に向かって、意気揚々とそんなプレゼンをしているなら、今すぐ止めたほうがいいかもしれない。二人は、自身の経験から得た残酷な真実をこう表現する。

野村最近はもう、お客様であるエンタープライズの経営層から「プロダクトカンパニー」と見られたら、その時点で負けだと思っています。

諸岡確かに……なるほどです。

野村なぜなら、AIという正解のない問いを前にして、彼らが求めているのは「ツール」ではないからです。安全性や品質、人手不足といった経営アジェンダを共に背負い、霧の中を並走してくれる「相談相手(パートナー)」を探している。

機能の優位性を語れば語るほど、私たちは「ベンダー」という箱に入れられ、意思決定のテーブルから遠ざけられていってしまう。私たちが今「エンタープライズAIプラットフォーム企業」と自称しているのも、そうした背景からです。

諸岡まったくおっしゃる通りだと感じます。そうしたお付き合いをさせていただけている事例が私たちもあります。なので、「鋭い表現だな」と感じました。

先方が求めているのは、プロダクトの話ではなく、課題解決あるいは戦略思考の話なんですよね。

取材内容等を基にFastGrowにて作成

経営者は「答え」ではなく「共に問いや答えを探すプロセス」を買っている。

従来のSaaSプロダクトは、多くの場合、一般的な“答え”となるフローを提案し、それに合わせて顧客が出入力などの操作をするというものだった。これが生成AIの登場によって陳腐化し、時代遅れな事業戦略になっているということは、FastGrowの読者なら多くがイメージしていることだろう。

だが、ここで勘違いしてはならない。これは「プロダクト開発よりもコンサルティングのケイパビリティこそが、スタートアップにとって重要」という単純な話ではない。

野村ある金融機関さんでの話が非常に象徴的なので紹介させてください。そこでは、ある著名なコンサルティングファームから100名規模のチームが入り、数カ月にわたって、コンタクトセンター業務のAI化プロジェクトが進められていました。

「その現場で、なかなか狙った成果が出ない」とお聞きしたんです。

コンサルタントの皆様は、コンタクトセンターでの業務について見聞きした経験が豊富なわけではありません。これが実は、成果が見えるまでのスピードという観点では、致命的なんです。

そんなタイミングで私たちもご相談をいただくことができました。まずは一部のデータからいただき、私たちの既存のプロダクトに載せ、即座に「VoC(*)の分析結果」を可視化して見せました。それだけで、先方の担当者は驚きを隠せず、その上長の方々も「そう、これはイメージ通りだ」と。

*……Voice of Customer、顧客の声

諸岡面白いですね。100人のコンサルタントが活きる場面と、プロダクトを持つ我々が活きる場面は、異なるということですよね。

コンサルタントは「人」で戦うが、彼らが去ればノウハウも消えてしまう。一方で、RightTouchのようなAIスタートアップには「プロダクト」がある。泥臭い現場で磨き上げられた勝ちパターンが、モデルとして実装されているわけだ。加えて、プロダクトを進化させ続けるために、国内外の技術や市場の最新トレンドを追いかけ続け、目指すべき方向性についても熟慮とトライアンドエラーを重ねていく必要がある。

これらの蓄積によって、創業からわずか数年程度のスタートアップでも、エンタープライズ企業の戦略パートナーになる事例が増えているのだ。

野村経営者は「相談相手」を求めていると先ほど言いましたが、もちろん、ただの話し相手では不十分だと思っています。

必要なのは、「戦略の壁打ちを起点に、前例のない解決策を提案・実装し、データを資産に変える支援まで伴走していく」ということ。そのためにはプロダクトも、不可欠な武器です。

諸岡そういうエンタープライズ向けにプロダクトを売る場面も含まれますから、その時には「プロダクトカンパニー」として対応することになりますよね。逆に、先ほどのようにパートナーとしてお付き合いする際には「最先端ソリューション・戦略策定パートナー」として対応する、という感じになりますね。

戦略策定は非常に重要ですが、プロダクトから得られるデータの蓄積だったり、そこからのインサイトだったりを捉え、改善のPDCAを回していける状態をつくって初めて、うまくいくものだと思います。

野村そうですね。「デジタル化やAI活用は始めてみたけれど、どう扱っていくべきなのか」と悩んでいるエンタープライズの経営者はまだまだ多いですから。

私たちは創業当初から、SaaSプロダクトの提供にこだわりすぎることなく、経営から現場まで「一気通貫」での設計支援をしてきました。

最近では、お客様側から「僕らと一緒に何をやればいいか教えてほしい」と、全体戦略のオーケストレーションのご要望をいただくケースも増えています。

諸岡最近、ある投資家が「もうピュアなSaaSには投資しない」とはっきり言っていました。つながる話だと感じますね。

構造化データが多い領域であれば、AIによる模倣も容易だと言われています。だからこそ、まだ誰もデジタル化できていない、面倒くさくて誰もやらなかった“泥臭い現場のデータ”を持っている企業にこそ、勝ち目があると考えているそうです。

まさに、私たちが相対している「エンタープライズの現場」こそ、難しくも、評価も受けやすくなる領域になるんですね。

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AI活用は「地味で複雑な現場」から始まる──スタートアップが戦略パートナーに躍り出る好機

ここまでの話を裏付けるように、この2社では、エンタープライズ向けの事業展開が非常にスムーズに進んでいる実績がある。

野村契約社数のうち、多くがエンタープライズ企業です。

創業初期はSaaS企業やD2C企業からも引き合いをいただきました。ですが、われわれの事業領域であるコンタクトセンター支援では、エンタープライズにこそ大きな価値を提供できる。そう考え、重点的に強化するようになりました。

出典:RightTouch Company Deck ver1.3

諸岡カミナシも、売上の約25%がエンタープライズからになっています。

エンタープライズ向けセールスを強化し始めたころは、飲食店やホテルといった「多拠点型」エンタープライズとの案件が多かったですね。

ですが最近は、製造業などの案件を増やすこともできています。

出典:株式会社カミナシ 会社紹介資料 / カルチャーデック

カスタマーサポート(CS)やノンデスクワーカーの現場は、華やかでスマートなテック業界の中では地味な事業領域に映るかもしれない。しかし、両代表はその認識を、あえて強く否定し、課題の大きさや複雑さからむしろ「AI活用がもっとも進むべき領域の一つ」だと語り合う。

諸岡日本を代表するようなブランドを持つ超エンタープライズであっても、工場や物流の現場ではデジタル化が進んでいないところもあります。

1分1秒を無駄にできない現場作業が多いため、PCやタブレットの操作というデスクワーカー的な仕事は増やしにくい。非正規雇用の働き手が多く人材の流動性が高い現場も少なくないため、デジタルテクノロジーの活用を覚えてもらうことも簡単ではないんです。だから、経営層やコンサルタントのようなデスクワーカー側の発想でソリューションを提案・実装しようとしても、なかなかうまくいかない。かといって、現場には余裕がなく、ボトムアップでデジタル化が進むような環境ではありません。

労働力不足の煽りを受ける最前線がこのままではまずい。変革待ったなし、という状況です。この課題に特化し、現場目線でのDXを「現場まるごとDX」と名づけて取り組んできたのが私たちカミナシです。このことが浸透し始め、ご紹介も含めた引き合いが増え始めており、AIも私たちの追い風になっている感覚が強くあります。

野村コンタクトセンター(コールセンター)をめぐる状況にも似たところがありますね。お問い合わせ窓口を中心としたカスタマーサポート領域は、そもそも多くの人にとって現場のイメージが湧きにくいんです。

だからなのかわかりませんが、デジタル化によって大きなインパクトが生まれる印象も薄いようです。10年ほど前までは、コンタクトセンターを抱える企業の経営層ですら、ほとんど意識が向いていなかったのが実情です。

ですが、実は今、コンタクトセンターが、生成AIのユースケースをつくる投資先として、第一・第二候補の経営テーマになっているんです。特に大きく潮目が変わったのが2025年6月、OpenAIとのプロジェクトでアフラックがコールセンターの人員を5割削減すると表明したこと。それ以来、この業界では「AIオペレーター」という言葉が一般化し始め、意識が明確に変わっていきました。

諸岡私たちのお客様でも、工場や物流まで含めたオペレーションの最適化という経営課題にフォーカスするエンタープライズが多くなっています。「フィジカルAI」も注目されはじめていて、相対する経営者の感覚はどんどんアップデートされている感覚があります。

そのおかげで私たちカミナシは、AI時代において誰も持っていない「現場のユニークなデータ」を持つプレイヤーになり始めています。

創業からわずか数年ほどのスタートアップが、エンタープライズの経営陣から、戦略パートナーとして期待される。そんな動きが当たり前になり始めているのだ。

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泥臭さこそ、エンタープライズ攻略のカギ

各社のエンタープライズ支援事例についても具体的に見ていこう。冒頭で触れたRightTouchの事例も印象的だったが、カミナシの事例のダイナミックさにも驚かされる。

諸岡セブン-イレブンさんのお弁当やパンなどの食品メニューをつくる工場が、全国に約180あるのですが、ほとんどの工場でカミナシのサービスをご利用いただいています。

食品製造企業における喫評の経営テーマは、トレーサビリティ(品質管理における追跡可能性)です。

その現場で、私たちはソフトウェアの提供にとどまらず、ハードウェアとの連携を含めてお客様と取り組ませていただいています。

導入事例はこちらのページ等を参照

もしかしたらカミナシのサービスを「紙無し(≒ペーパーレス化)」と認識している読者もいるかもしれないが、もはやその枠には留まらなくなっていることがよくわかる。

諸岡たとえば「工場の各工程で何が起きているのか」を、データとして拾い上げるんです。そうして、経営者向け・現場監督向けなどさまざまな形でダッシュボード化することで、人間がチェックできるのはもちろんのこと、システムが自動で「オールグリーン(問題なし)」というお墨付きを与えられるようにもなる。エラーが起きても、経営も現場もすぐに、課題や対応策を認識・特定できるんです。

ここまで各現場に合わせて設計・実装して初めて、経営層のテーマに刺さる価値を出せる。

このように、壮大な経営テーマの挑戦に伴走しています。製造業なら「生産性向上」、食品関連なら「トレーサビリティ・品質向上」、物流なら「安全」と、業界ごとに経営レベルの明確なテーマがあります。現場のデータを正確かつリアルタイムで集め、経営課題の解消に直結するアウトカムを出すという戦い方を泥臭く進めています。

セブン-イレブンの事例でも、トップダウン狙いのエンタープライズセールスがいきなりうまくいったという単純な話ではない。まさに泥臭く、少しずつ広げていったのだ。

諸岡セブン-イレブン・ジャパンの品質管理部門、そして各工場を運営する企業の経営者や現場の責任者、担当者、さらにはハードウェアメーカーに至るまで、無数のステークホルダーと連携して一つの方向に導くという仕事に、私たちの存在価値があります。

最初からいきなり全体に導入いただくのではなく、一つか二つの工場から始めます。そこで出た成果を、セブン-イレブンの取引業者さんたちに対して、都度、細かくお伝えする。そうして少しずつ、理解者を増やし、導入現場を増やしていきました。

影響力を強く持つ工場に早期に協力していただけたおかげで、これまでの約2年間で一気にクロスセルのように広げていくことができました。

そして、この実績がまた、大きな価値を持つ。その後の別案件では、経営層に対して直接、データ取得・活用の提案を行い、「初めから数十の全拠点に導入」という展開も出始めているという。

泥臭い拡大戦略はRightTouchも同様だ。彼らが相対するCS部門もまた、社内での予算獲得という大きな壁に直面している。

野村CS部門は長らく、“コストセンター”というイメージの存在だったことから、新しい施策のための予算を取ろうとすること自体に苦手意識がある現場も多いんです。デジタル投資の経験も少ないため、現場の担当者はどう稟議を上申していいかがわからないことも。

だからこそ我々は、その一人ひとりに寄り添い、盛り立てるようなコミュニケーションと検討支援を進め、たとえば稟議書を一緒につくるくらいの動きをとっています。

セールス用語で言う「チャンピオン(*)」になってもらうべく、私たち側が「裏のチャンピオン」になって支えるという形ですね。

*チャンピオン……顧客組織内で自社のサービスを強く支持し、社内の合意形成や意思決定を主導してくれるキーマンのこと。単なる「検討担当者」ではなく、導入の成功を自らのミッションとして捉え、共にプロジェクトを推進してくれる存在を指す

また先述の通り、「AIオペレーター」というキャッチーな言葉が普及したことで、エンタープライズの経営トップ層までもコンタクトセンター改革に関心を持ち始め、強烈な追い風が吹いているという。

野村いまや、経営者の多くが「AIオペレーター」という言葉を使うようになっています。これまではすぐには通らなかったような私たちのご提案内容が、逆に先方の役員レイヤーから相談が来るような「神風」が吹いている部分もありますね。単なる部門のコスト削減ツールではなく、部門横断で経営インパクトを出すための全全社的な構想が、明確に求められる場面が増えています。

私たちは、VoC(顧客の声)データをマーケティングなど他部門でも活用し、会社とCS部門をつなぐ“架け橋”にすることで、カスタマーサポートを経営の中心に据えることを目指していますから、まさに願ったり叶ったり。

そうして経営アジェンダを直接動かしていくダイナミズムを感じられるのがRightTouchのエンタープライズセールスなんです。

「神風」をしっかりと追い風に変えて、エンタープライズの経営層の「コンタクトセンターを、コストセンターから、経営の中心へ」というパーセプションチェンジを徹底支援する。そんなやりがいの大きな仕事がここにはあるのだ。

野村ただし、「AIオペレーター」という言葉で指す意味・内容や、実際にどのような変革の実現を目指すのかというビジョンは、まだまだ大きなばらつきがあります。私たちはリーディングカンパニーとして、その議論を牽引していくべき存在だと考えています。そのためにも、最前線でエンタープライズセールスが担う役割は大きいですね。

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「一足飛びのDX」は幻想だ。現場の解像度をプロダクトとサービスの両輪で埋める「実装パートナー」の覚悟

諸岡ところで、戦略パートナーとして、エンタープライズの経営陣と相対して議論するというのは、非常に高難度な仕事だと感じます。採用や育成も大変だと思うのですが、どのように対応してきたんですか?

野村私と、共同創業者の長崎とで、とにかく手探り状態で一つずつ前に進めていくというのが実態でしたね。コンタクトセンターというのは、AIどころか、これまでデータやテクノロジーが十分に活用されてこなかった領域ですから、最初から「AI×コンタクトセンター」の事業推進をできる人など存在しません。

この「正解がない」ことこそが、RightTouchのエンプラセールス最大の面白さでもあります。お客様もAI活用の正解を持っていませんから、「一緒に新しい事業領域をつくっていきましょう」という共創のモードでプロジェクトを進められるんです。出来上がったものを売るのではなく、最先端の事例を自らの手で作り上げていく。難易度は高いですが、他では絶対に味わえないやりがいがあります

そうしてできてきた型のようなものを、ほかのエンタープライズセールスのメンバーと一緒にさらにブラッシュアップしているところですね。

諸岡なるほど、私たちも、エンタープライズセールスは執行役員CROの宮城が最前線に出て進めているので、似たところがありそうです。

エンタープライズの経営層の方々って、当然ながら、数年以上先の遠い時間軸を見ていますよね。ですから我々も、経営の視座をさらに高めて、業界・市場の動向をにらみ、お客様と自社それぞれがどうあるべきか、深く思考し、自社の事業戦略のアップデートも進めていっていなければ、パートナーにはなり切れないと感じますね。

そして、戦略パートナーとしての伴走から、実装パートナーとしての伴走にもつながる必要がある。

RightTouchは、自社プロダクトの導入支援にとどまらず一気通貫での伴走支援を実施する『RightTouch Professional Service』の提供を本格化させている(リリースはこちら)。

野村事業の中核を「AIコンタクトセンターの構築支援」とする中では、実際にお客様の中でAIを正しく機能させるために、非構造データを継続的に学習させ、循環させる仕組みが不可欠になります。しかし、多くの企業では、まずお問い合わせ対応を表面的にだけでも良くしようという程度のカスタマイズ開発にとどまってしまう。データを用いた本質的なPDCAサイクルを回すところまで、なかなか進めないんです。

そこで、AIコンタクトセンター実現の手前で、「目的の整理」や「データ環境の整備」など細かな作業も含め、プロフェッショナルサービスとして対応する形をとっています。エンタープライズセールスは、このプロフェッショナルサービスも含めた価値提供を組み合わせて提案・推進することになります。

一方のカミナシでも、ソリューションセールスや現場起点での実装支援には強いニーズを感じているという。

諸岡メディアでは、フィジカルAIの文脈で、ロボットの導入が工場運営の一つのトレンドとして語られています。ですが現場に目を向けると、実際に導入が進んでいるところはまだほとんどありません。各工場の経営者の方に聞けば「ロボットの登場に期待はしているが、今はまだまだ“高嶺の花”」と。

お客様の経営者の中でも、AIを含めたテクノロジー導入に向けた理解度にはかなり大きなグラデーションがあるようです。具体的に導入のイメージができる方はそう多くはありません。最先端のソリューションを一足飛びにご提案しても、響きにくいというのが実態です。

なので、現場や状況に応じて着実にDXを進めていくご提案・ご支援を丁寧に進めるべきだと考えています。私たちが掲げる「現場まるごとDX」はそういう思想なんです。

本記事冒頭で語り合ってもらった「プロダクトカンパニーと見られたら負け」という鋭い思想。その言葉の裏には、既存の成功体験に安住せず、常に顧客の最も痛い場所に寄り添い続けるという、スタートアップとしての凄まじい覚悟が宿っているのだろう。その後の議論を経て、改めてそう感じさせられた。

どんなにAIが進化し、ソフトウェアがコモディティ化しようとも、現場の歪みを見つけ出し、そこに血を通わせるのは、いつだって人の意思/意志だ。諸岡氏と野村氏が語ったのは、単なる事業戦略ではない。テクノロジーという武器を手に、日本経済の背骨であるエンタープライズの現場を「本気で変える」という、挑戦者たちの矜持である。

画面の中の美しさではなく、泥にまみれた現場の勝利を。その先にこそ、AI時代の真のMoat(参入障壁)が築かれるはずだ。その熱い現場があるこの両社の挑戦が、これからも楽しみだ。

こちらの記事は2026年03月27日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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藤田 慎一郎

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