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お客様から選ばれる営業に必要な力とは

前回の記事では、お客様が発注先を選ぶ心理と、選ばれる理由を作る思考プロセスを解説しました。どうやったら、「当社が選ばれる理由」を作りや...
前回の記事では、お客様が発注先を選ぶ心理と、選ばれる理由を作る思考プロセスを解説しました。どうやったら、「当社が選ばれる理由」を作りやすくなるのか。 これを、今回の記事で述べていきたいと思います。
成長ベンチャーの多くが突き当たる壁、営業の組織化。トップ営業マンに依存せず、売れる営業組織を科学的に構築する方法とは如何に?
17-10-16-Mon
高橋 浩一 (たかはし・こういち)
TORiX株式会社 代表取締役CEO

前回の記事では、お客様が発注先を選ぶ心理と、選ばれる理由を作る思考プロセスを解説しました。どうやったら、「当社が選ばれる理由」を作りやすくなるのか。 これを、今回の記事で述べていきたいと思います。

“迷う”お客様の心理を理解する

勝ち続けられる営業組織を作る上では、「接戦における勝率」を上げることが必要であると第1回の記事でお伝えしました。

接戦案件においては、お客様が購買決定をする際、その直前に「迷い」が生じています。すなわち、複数の選択肢があり、どちらを選ぶか決めきるのが難しい、ということです。

心理学の話になりますが、人間は自分の持っている複数の情報の間に矛盾が生じている場合、その矛盾を自分を正当化する形で低減、もしくは解消しようとする性質があります。

このときのモヤモヤを「認知的不協和」と言います。矛盾している状態自体は「不協和」というのですね。

営業における「認知的不協和」とはどういうことなのか。具体的に考えていきましょう。

例えば、ある会社に発注しているお客様が、他の会社からも提案を受けていて、その新しい提案もまんざらではない状況を考えてみます。こういうときは、「新しい会社の提案は魅力的だが怖い」という選択肢と、「既存先は改善の余地ありだがリスクが低い」という選択肢で迷っているわけです。

特に、ベンチャー企業が新しいソリューションを開発し新規営業していく際には、お客様からすると、たとえ斬新で魅力的な提案であっても、「会社の知名度の低さ」や「ソリューション自体の実績の乏しさ」が迷う要因となることが多いでしょう。

しかし、お客様は迷っている状態のままではいられません。両方の選択肢を同時にとることはできないため、矛盾、すなわち不協和が生じているのです。お客様はこの不協和な状態に耐えることができません。

お客様にとって安易な選択肢は、リスクのある新規の候補先をお断りすることです。

「新しくきた会社の提案内容を既存先にそれとなく漏らして、安心できる既存先に発注するか。まだ人間関係のない新規先の方が断りやすいし、理由をつけて断っておこう」となります。

そうすると、「新しい会社の提案は魅力的だが怖い」と、「既存先は改善の余地ありだがリスク低い」とで迷っていたお客様の不協和状態が解消されます。

この「不協和状態が解消される」というのは、言い換えると、「言い訳が見つかって楽になる」という状態とも言えます。楽になるというのは、「自分の選択・判断は間違っていないぞ」と、正当化できた状態のことです。

「迷ったお客様は、”作りやすい理由”や”言いやすい理由”で自分を正当化し、言い訳しやすい人に言い訳する」というのはとりわけ重要な、知っておきたい事実です。要は、「断りやすい人に対して断る」のである、ということです。

ベンチャー企業にとっては、大手企業から新規案件を受注したいときにも起こりやすい状況ですね。

「うちの会社は過去の取引実績が稟議を通す上で重要視されるから…」「歴史の浅い会社さんへの理解がない上司がおりまして…」など、どれだけ自社の提案が魅力的であっても、会社における慣習を持ち出してお断りされることがよくあります。これも、「断りやすい人に対して断る」事例の1つです。

もし、他の会社とのコンペ提案で自分がお客様から断られたら、それは「複数の選択肢で迷ったとき、自分に対して断る方がラクだったから」と考えてみることが、勝率アップへの第一歩です。

質問力・価値訴求力・提案ロジック構築力・提案行動力という四本柱

では、接戦案件を制するために、具体的にはどのような力が必要になってくるのでしょうか。 鍵となる4つの力が、これからご説明する「提案ロジック構築力」「質問力」「価値訴求力」「提案行動力」です。

まず1つ目は、「営業が提案する裏側で、お客様はどういう思考回路で発注先を選ぶのか」という観点から発想し、論理を組み立てていく「提案ロジック構築力」です。

個人向けの営業(いわゆるBtoC)であれば、お客様個人の気分や感情で衝動買いということもあります。しかし、特に法人営業(BtoB)の世界では、会社のお金を使うのに誰かの個人的な気分・感情で決めるというプロセスだけで完結することは少ないでしょう。

たとえ仮に、誰かの個人的な気分・感情があったとしても、しっかりそれを正当化する理由というのが社内では必要となることがほとんどです。したがって、まずはベースとしてこのロジックをしっかり作れる、ということが大事になってきます。

しかし、自社がお客様から選ばれる理由を作るためには、自社にとってのネガティブな要素と、対立する案のポジティブな要素に対して、しっかりと双方を打ち消せる要因を作って提案することが必要です。

その要因を作っていくためには、お客様からのヒアリングによって情報収集していかなければなりません。

それが2つ目のスキル、「質問力」です。

例えば、自社の提案は「価格が高い」とお客様から言われているとします。これはマイナス要因が発生しているわけですが、もし「お客様は複数の年度にわたった投資対効果でどの提案を選ぶか考えている」という情報が手元に収集できていたら、「それは単年度の予算で見ると他社より高いけれども、複数年の投資対効果で見たら逆に他社より高くはないですよ」というふうに切り返せるかもしれません。

また、「お客様は、単なる金額ではなく、費用対効果で検討している」いうような情報が手に入ったら、価格の数字それ自体よりも、その費用対効果を訴求することによって、値下げしなくても売れるかもしれません。

ただ、いずれにしても、意思決定に関する情報をお客様からもらわないといけないわけです。

あるいは、先に入り込んでいる競合の提案についても、「長いこと付き合っている他社さんがいいんですよ」とおっしゃるお客様に対して、

  • 長年の取引があることで、よくわかってくれていてコミュニケーションコストが低いのがいいのか
  • 付き合いが長いことによって、要望に対してスピーディに対応してくれるのがいいのか
  • お客様に合わせて柔軟にカスタマイズして合わせてくれるのが良いのか

このように、気に入っている「理由」の候補はいくつか考えられます。競合をひっくり返していくには、「それは当社でもこういうやり方でできますよ」というように提案していく必要がありますが、そのためには、しっかりと相手から情報収集をするための質問力が大事になってきます。

しかし、難しいのは、「こちらが欲しい情報」は明確でも、それをお客様が教えてくださるかどうか、という問題があります。

そこで必要になってくるのが、3つ目の「価値訴求力」です。

質問力によって相手からどんどん情報が入ってくると、ロジックを作る材料が豊富になっていきます。お客様が何でもこちらの質問通り答えてくれたら楽なのですが、実際は、「判断が悩ましい」という時点で他の案にも一定の魅力を感じているわけですから、お客様がそう安々とは情報を教えてくれない場合があります。

そのようなときは、「情報を出すだけの価値がある」とお客様に感じて頂かなければなりません。

特に、スタートアップやベンチャーの場合、お客様がこちらのことをあまりご存知でない場合が多いでしょう。

そこで、「当社は御社と同業界のお客様に対して実績も持っています。だからお役に立てますよ」というメッセージや、「自分はその案件に関してすごく細かいリスクの部分までを知り尽くしています。だから安心してお任せください」というように、お客様に期待感や信頼を持って頂くための材料を提示できると、こちらもお客様に対してより多くの質問をできるようになります。

ここまで、「提案ロジック構築力」「質問力」「価値訴求力」という3つのスキルを説明しました。この3つがしっかりと発揮されていると、「お客様からどんどん情報を頂いて、そこでお役立ちの要素(価値)を提供し、さらに情報を頂いて、材料がより豊かになったところで、緻密なロジックを作る」ことができるようになっていきます。

このしっかりとしたロジックが作れるようになってくると、当然受注の確度が高まっていくわけです。3つのサイクルが相互に関係し合うようになることで、「自社がお客様から選ばれる理由」が深まっていきます。

しかし、こういったことが、「たまたま相性が合う一社にだけできる」という営業と、「お客様が変わっても応用を利かせて、どんな会社に対しても実行できる」という営業では、どちらが勝率が高いかというと、当然、後者になります。

それが4つ目のスキル、「提案行動力」です。

提案行動力というのは、ある勝ちパターンを何社にも応用させることができる、あるいは、一連の提案の動作を素早く回すことができる、効率的に回すことができる、というような、実行力・遂行力を指します。提案行動力が高いと、営業活動の応用範囲が広くなっていきますね。

今回ご説明した4本柱である「提案ロジック構築力」「質問力」「価値訴求力」「提案行動力」が、組織全体でレベルアップしていくと、接戦における勝率アップの再現性が高まっていきます。

とは言っても、この4つのスキルがどのように発揮されるかの具体的場面は、営業モデルの種類によって異なってきます。

たとえば、1人の営業担当が数百件のリストを抱えて、テレアポや飛び込みをしていくようなモデルと、1人の営業担当が数社の大口顧客を深掘りしていくようなモデルでは、「ツボ」が違うはずです。

次回は、営業モデルの違いと、それに応じた4本柱の活用イメージについてお伝えします。

勝てる営業組織の戦略的な作り方

成長ベンチャーの多くが突き当たる壁、営業の組織化。トップ営業マンに依存せず、売れる営業組織を科学的に構築する方法とは如何に?